【異世界転移400年目 (´∀`)日目】
なんかアインズさんにクッッッソ面白そうなこと聞かされたんだが。
ここからは王都の時と同じ、英雄モモンがゲゲルを防いで悪魔を倒してフィーバータイムで、他には特に面白そうなこともないかなー、って思ってた矢先だよ。大して注目してなかった、聖王国の聖騎士の皆さんの方で何かすごいのが出たんだって。
そっちにいるのは、北部から派遣された『カストディオ姉妹』……歴代最強の聖騎士って言われている、姉・レメディオスと、神官達を束ねる妹・ケラルトの2人の美人姉妹で、間違いなくこの国における最高戦力2人だっていうのは聞いてる。
けどまあ、私達から見ればお察しだし、でもそれの相手になる亜人達も……まあ、ちょうどいい相手なんじゃないかな、という程度の評価だ。
だからあっちの方は、適当に苦労して適当に討伐して、適当に目標達成するんだろうな、程度に思ってたんだけど……何かそこが予想以上に面白いことになってるらしいんだわ。
ていうか何、その『天然もののラブコメ系主人公』ってパワーワード? 超気になる。
で、ちょっと調べてみたら……予想以上に面白いこと起こってますね!?
誰この……カルウィン君って子? ホントにラブコメ系主人公じゃん! カストディオ姉妹相手にド異世界ドタバタラブコメやってるじゃん!
当然ながら、全く以て影も形も計画に含まれてなかった冒険者なので、何者だろうと思って、大至急調べてもらった。
その結果、以下のことがわかりました。
カルウィン・ヴィスコンティ。年齢、23歳。
主にソロで活動している冒険者で、階級はミスリル。
魔力系
生まれはどうやら普通の平民らしい。冒険者として登録したのは6年前で、そこからコツコツ鍛えて積み重ねて来て、努力の末に今の地位を手に入れたそう。
また、以前はソロではなくチームで活動してた時期もあったみたいだが、なぜか脱退している。今はもっぱらソロで、必要に応じて依頼ごとに他のチームと組んだりすることがあるくらい。
わかったのはここまで。
特別な出自とか、秘めたる過去とか、そういうのは全然……少なくとも、さっと調べた範囲では見つからなかった。
つまりあの子は、ガチでこの世界原産のいち冒険者であり……それでいてなぜか、ラブコメ主人公のごときラッキースケベを発生させる星の下に生まれているらしい……ということだ。
気になって私の方からも『管狐』を召喚して監視に当たらせてたんだけど……すごいよあの子マジで。
昨日の今日で、またラブコメ的なイベント引き起こしてるもん。
昨日はラブコメの王道、『お風呂で裸でばったり』をやって怒られたかと思ったら……今日は、作戦行動中の休憩時間に、入るテントを間違えて、レメディオスが着替えてる途中だったテントに入っちゃって、下着姿の彼女とばったり。
しかも直後に妹の方も入ってきて『またあなたは!』って蹴っ飛ばされてた。うーん、見事。
なお、レメディオスの方は、一応怒りはしたものの、『気をつけろよ』って呆れたような感じになってたな。気風ないし思い切りがいいというか、あんまり恥ずかしくない感じ?
狙っても起こすのが難しいであろうイベントをこうも引き寄せるそのT〇Loveる体質には、感動すら覚える。
しかもそれでいて、きちんと冒険者としてやることはやってるってんだからすごい。
亜人との戦闘になれば、第4位階までの魔法を使いこなす実力を遺憾なく発揮し、攻撃に支援に活躍している。
魔法発動までの動きが非常に滑らかで、難易度の高い魔法をコンボみたいに次々繰り出す様は、間違いなく一流の冒険者であると言っていいものだった。……もちろん、この世界の基準では、という注意書きはつくものの。
特に組んで力を発揮する機会が多いのは、件のカストディオ姉妹である。
この2人は、他の聖騎士や神官を大きく突き放すレベルで強い。なので、集団を生かした戦い方に加わるならまだしも、各々の力を最大限発揮した『個』としての戦いをする場合、部下達はついてこれないのである。
現状、この2人の本気についてこれるのが、カルウィンだけなのだ。
前衛を担当するレメディオス、後衛で魔法攻撃と支援を行うカルウィン、同じく後衛で支援や回復を担うケラルトと、何気にバランスもいい。
しかも、カルウィンが持っている装備の1つに、1日当たりの使用回数と制限時間が決まっているが、前衛として使えるゴーレムを作り出せるものがあったため、盾役としてレメディオスの援護をさせたり、自分達を守らせることもできる。
すごいな、誂えたように役割が上手いこと噛み合ってるよ。
今日も、昨日倒した
ネックは、その亜人達の潜伏先を見つけ出すための、聖王国の索敵能力がちょっとアレなことなんだけど……そこはサービスでこっちから情報を流している。
国内に進入した亜人の部族は、入ってきたまさにその時に、1部族に1体以上ずつ『影の悪魔』や『管狐』といった監視要員をつけてあるから、とっくに私達の方で全部位置を把握してるんだよね。それをちょっとずつ、聖騎士の皆さんにリークしている。
ただし、1つだけ……あのエルフの『信奉者たち』がいる場所については……聖騎士の皆さんではなく……こっちで処理させてもらうけど。
色々と都合もあるんでね、これくらいは勘弁してもらおう。
それはまあいいとして……この面白いラブコメ主人公君についてだ。
元々の計画にはない立ち位置のキャラクターなので、『計画のノイズになるなら始末しますか?』ってデミウルゴスが聞いてきたけど……これを捨てるなんてとんでもない! こんな面白そうな
打ち合わせの場でそう言ったとたん、『なんかやる気だなこの人』っていう感じのアインズさんの視線が飛んできた。大当たりである。めっちゃ遊ぶつもりだ。
ちょっとばかりシナリオに手を加えさせてもらっちゃおうかな~、彼の主人公属性を大いに生かす形で。
……この『聖王国編』の後にやる、超大規模な作戦のことを考えれば、ちょうどいい予行練習になるとも思うし。
☆☆☆
聖王国・某所。
「
ナーベ……ではなく、『ナーベラル・ガンマ』が放った、龍の姿を模した雷撃が、地面をなめるように走り……そこにいたエルフ達を蹂躙する。
抵抗しようとしても、防御魔法すら貫通され、ひとたまりもなく消し炭になっていく光景に、『信奉者』と呼ばれるエルフ達は『くそっ!』と悪態をついて、空中にいるナーベラルを睨みつけた。
対するナーベラルは、それを見ても何の思いも浮かんでは来ない。
その頭にあるのはただ1つ。これらは御方の実行される計画において、不要を通り越して害悪であるため、速やかに排除しなければならないという目的だけ。
「おのれっ……こんなところに来てまで、我らの邪魔をするのか! 憎き簒奪者の手下めが!」
「我々
その悪態に、ナーベラルは眉間にしわを寄せて不快感をあらわにした。
「至高ですって? その言葉を冠していいのは、真にその言葉にてその身を飾るにふさわしい41人の御方のみ……そんなこともわからず世迷言をほざくなんて、哀れな上に不快な奴らね」
「いちいち気にしても仕方ないですよ、ナーベラルさん。この手の連中に理解を求めるのは時間の無駄ですから」
そんな言葉と共に、夜の闇の中から現れたのは、『漆黒』において『ナーベ』のチームメンバーの1人として活躍している少女、トガヒミコ。
普段は割と愛嬌のある笑顔を浮かべていることの多い彼女だが、今は底冷えするような無表情を顔に張り付けていた。両手には、血まみれの鋭いナイフが逆手持ちで握られている。
そして、暗くて見えづらいが、彼女の背後には……喉を斬り裂かれて絶命しているエルフ達の死体がいくつも転がっていた。
ナーベラル同様、ここにいるエルフ達の『処分』のために遣わされた彼女は、淡々と目標の抹殺を進めていた。
「この……化け物どもがっ!」
追い詰められているのが明らかなエルフ達ではあるが、あがくのをやめるつもりはないらしい。
その中の1人が、地面に手をついて魔法を発動すると……その周囲の土がうねって形を成し、巨大な地属性の精霊となって立ちあがった。
エルフ王が使っていた『
それを複数召喚し、『行け!』と差し向けてくる。
「これらの精霊達は、雷の魔法に耐性を持っている! 先ほどの電撃でも簡単には倒せんぞ!」
「そう? じゃあ試してみましょう」
言った直後、襲い掛かってきた地精霊の拳が叩きつけられてきたのを、ナーベラルは転移で、トガは普通に回避した。
そして、先ほどと同じように、上空から降り注ぐ雷撃が地精霊達を直撃する。
エルフ達を一撃で消し炭に変えたそれらを受けて……しかし、多少の損壊は見られたものの、地精霊達はまだ問題なく動けるようだった。
「ちっ……面倒ね。でも、効いていないわけじゃない。なら、あと何度か……」
「いえ、ここは私がやります」
そこで割って入ったトガが、地精霊達の前に立つ。
どちらかと言えば小柄な彼女では、地精霊達の足踏み一つで踏みつぶされてしまいそうな頼りなさを覚える光景だったが……次の瞬間、トガの姿がぐにゃりと歪み、全く別の姿に変わっていく。
驚くエルフ達の目の前で、元々小柄だった少女は……さらに小柄な、白い髪と赤い目、そして狐のそれを思わせる耳としっぽが特徴的な、かわいらしい姿へと変貌した。
まぎれもなくそれは……トガにとって『叔母』にあたる、ラストの子供の1人……テレサの姿だった。
そしてそのテレサの姿で、トガは両手を頭上に高く掲げるようにして……
「
掲げた手の先から迸る、どす黒い穢れた血の色を思わせる、赤黒い色の光。それが波濤のように広がると同時に、獣の遠吠えを汚く濁らせたような轟音が響き渡り……それを浴びた地精霊達は、その体をひび割れさせ……次々に崩れ去っていった。
自分が召喚できる切り札と言っていいしもべ達があっけなく滅ぼされ、彼らの召喚に要した魔力もろとも消えてしまった喪失感に、青褪めるエルフ。
その周囲の取り巻きないし部下達も、今までどんな相手にも勝利して来た精霊の敗北・消滅に、信じられない、といった表情になっていた。
今、地精霊を召喚した彼こそは、前エルフ王の子の1人で、最も優秀な1人。父の理想をよく理解し、その達成のために力となることを喜びとしていた『信奉者』の筆頭格である。
ゆえに、『信奉者』達は彼をリーダーと仰ぎ、亡き王の悲願の成就のための旗印としていた。彼の下でこそ、それはいつか達成されるのだと信じて疑わなかった。
彼の切り札であった地精霊の召喚……偉大な王から、血筋と共に受け継いだその力もまた、信奉者が期待を寄せる大きな理由であった。
そんな夢が無惨にも踏みつぶされる瞬間は、すぐそこまでやってきている。
テレサの姿から元の姿に戻ったトガの隣に、ナーベラルが下りて来て着地した。
「今のは……アンデッド系の上級スキルよね? 私やあなたくらいのレベル、しかもドッペルゲンガーとして模倣した姿では、条件を満たせずに使えないはずなのに、どうやって?」
「私の
「そうだった? ごめんなさい、今まで見る機会がなかったから……忘れてしまっていたわ」
「……まあ、普段の冒険で、こんな力の出番なんてそうそうないですもんね。そういえば確かに……ナーベラルさん達の前でコレ使ったの、自己紹介の時以来でした」
さて、と呟くように言いつつ、ナーベラルとトガは、残ったエルフ達に向き直る。
「あいつらはもう……殺してしまっていいのよね?」
「ええ、でも死体は有効利用したいとのことだったので、きれいに殺した方がいいです。それも私がやりますね」
「そうね……なら任せるわ」
ナーベがそう言って一歩下がると、トガが逆に一歩踏み出す。
「く……来るな、化け物!」
「あ、大丈夫です、もうこれ以上近づかないので。……その必要もないですし」
言いながら……再びぐにゃりと姿を変えていくトガ。
今度はその姿は……白骨の顔を持つアンデッドの姿になった。
ナーベラルはそれを見て、一瞬、自らの仕えるべき絶対的支配者を思い出したが、すぐに『違う』と思い直した。
トガが変身した姿だから……ではなく、そもそもその元の姿の『
トガがコピーしたのは、彼女の生まれ育った拠点『空中庭園』の一角にある、『図書館島』で司書をしているオーバーロードの1人である。レベルはトガと同じ程度で、言うまでもないが、強さにおいてはアインズには遠く及ぶべくもない。
しかし、次の瞬間、オーバーロードの姿になったトガの背後に……巨大な時計の文字盤が現れ、カチコチと時を刻みだした。
それと同時に、トガが魔法を発動する。
「これでおしまいです。
通常、トガやナーベのような『
同格、あるいは格上の存在に変身した場合、発揮できる力はそのうちの何割かに留まる。そしてその再現割合は、相手と自分の力量差が大きいほど小さくなってしまう。
例として、ナザリック地下大墳墓は宝物殿の領域守護者、パンドラズ・アクターは……至高の41人の姿を模倣することができるが、発揮できる力はオリジナルの8割程度にとどまる。
加えて、『ワールドチャンピオン』などの、一部の能力は模倣できないという制限もある。
そのルールを当てはめて考えれば、トガがオーバーロードに変身したとしても……元々のコピー先のレベル自体が低いことも相まって、強力な能力は使えないことになる。
特に、『
しかし、彼女の持つ『
その異能とは……自分が取得している種族あるいは職業のうち、任意の1つを選んで、
これにより、たとえ1だけであっても、取得している種族や職業のレベルがあれば……それを最大まで引き上げ、その種族が使える全ての魔法やスキルを使えるようになるのだ。それが、極めた者のみに許された切り札的なものであっても。
そしてさらにこの異能を凶悪なものにしているのが……トガが『
もし彼女が普通の人間か、あるいは他の異形種であったならば、今自分が修めている職業や種族のうち1つを強化するという、異能の説明どおりの性能にとどまっていただろう。無論、それだけでも強力極まりない力であることに変わりはないのだが。
だが彼女は
その中から1つを任意に選んで『極める』ことができるのだ。今のこの光景のように。
『
トガの体から立ち上るように現れた、大鎌を振りかぶった死神の幻影が、エルフ達目掛けてそれを振り抜く。
彼らの体に、傷は一切刻まれなかった。
しかし、その『一振り』は……静かに、しかし一瞬にして、エルフ達の命を奪った。
動く者が1人もいなくなり、見事に残った『きれいな死体』を前に、トガ達は『よし』と任務完了を確認。
それらを回収してもらうために、後詰めのしもべ達に連絡を入れつつ、自分達はアインズが待つ宿屋へ戻りに帰路に就いた。