オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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今回で本章は終了となります。

ここから少しまたお時間をいただきまして、プロット等の確認・調整を行ってから、次の章に入らせていただきます。

……あと、更新再開後ですが……今までより更新ペースが落ちるかもしれないです。
もうすぐ『バイオハザードレクイエム』と『ぽこあポケモン』が出るので……大幅に時間をそっちに持ってかれる未来が見えます……



Coming Soon……!

 

 

 ここは、リ・エスティーゼ王国、王都リ・エスティーゼ。

 その中心部にある、王城の中……玉座の間。

 

 そこで、今王都で起こっているとある事件について、王や貴族達を前に報告がなされていた。

 

「昨夜もまた、犠牲者が出ました。これまでの事件と同じように、裏路地で、夜のうちに殺されたようで……目撃者はおらず、犯人特定は未だ……」

 

「そうか……何かわかったことはないのか? ……例えば、現場の痕跡など……犯人が人間かどうか、という点だけでも」

 

「申し訳ありません、陛下……」

 

 不甲斐なさそうに頭を垂れる男は、王都内部の治安維持を担う役人や兵士達のまとめ役のような立場にいる男である。

 ここ数日間、王都で起こっているとある事件について、王を始めとした貴族達の前で、捜査の進捗を報告していたが……期待に応えられるような内容は、残念ながら述べられていない。

 

 事件が起こるのは決まって夜。人気のない裏路地で。

 毎晩のように、罪もない民が殺されていた。

 

 犠牲者は若い女だったり、浮浪者の男だったり、歩くのもやっとな老人だったりと様々だが……犠牲者には1つ……体のどこかに入れ墨を入れているという、共通点があった。

 

 犠牲者に共通点がある、何件も連続しておこる殺人事件。

 この王都に住む者なら、このような説明を聞いて……すぐさま想像できることがある。

 

 数か月前、王都全域を恐怖で包んだ、悪魔達の殺人ゲーム『ゲゲル』。

 

 強力無比な悪魔の頭目たる『魔王ヤルダバオト』によって開催されたそれは、ある一定のルールに沿って殺人を行い、時間内に既定の人数を殺す、というマンハントだった。

 今回の一件と……よく似ている。

 

 ゆえに、玉座に座る王も、そこに集っている貴族達も……内心、恐々としながらその報告を聞いていた。よもや、またあの時のような恐怖の日々がやってくるのではないかと。

 貴族であろうと、屈強な護衛を揃えていようと、何もできずに無惨に殺されてしまうような……思い出したくもない惨劇が繰り返されるのではないかと。

 

「現在、最悪の可能性を考慮に入れまして……冒険者組合とも情報共有を行い、いざという時の連携も見据えて動いております。目下捜査中なれば、今しばし解決にはお時間をいただければと……」

 

「ふん、ばかばかしい」

 

 突如、横から割り込むように口を開いてきたのは……第一王子であるバルブロだった。

 馬鹿にしたように鼻を鳴らして言い放ったバルブロは、父であるランポッサ王を含めた、その場にいる者達の視線が集まる中、さらに続ける。

 

「必要以上に縮こまって怖がってどうする! あのようなことがそう何度も、頻繁にあってたまるものか……どうせ今回のは、先の一件を思い出して面白がった愉快犯の模倣に決まっている!」

 

「し、しかしバルブロ殿下。確かにその可能性はありますが、万が一ということもあります。警戒をおろそかにすべきではないと……」

 

 その近くにいた1人の貴族が恐る恐る意見するが、返答はまたしても、荒い鼻息1つだった。

 

 それを見て、はぁ、とため息をついて呆れた様子の王が口を開く。

 

「バルブロよ、そう頭ごなしに否定するものではない。その者達も懸命に捜査しておるのだ。それとも、お前にはそう断ずるだけの根拠があるとでもいうのか?」

 

「もちろんです、父上」

 

 その答えに、呆れたような目を向けていた貴族達の一部や、父ランポッサ、そして弟であるザナックも、『おっ?』と意外そうにして注意を向ける。

 ただ感情だけの思い付きで言っていたわけではないのか、と。

 

「ふむ……であれば、申してみよ」

 

「はい。今回の犠牲者の共通点は、『入れ墨を体に入れている』という点です。しかし、そのような特徴を持つ者はこの王都にはいくらでもおります。それこそ、ファッションとして入れている者から、傭兵などの荒事を生業とするものや裏稼業の者が箔着け目的で入れているものまで様々です。街を少し歩けば、見えるところに入れている者が、探さなくとも1人2人はいるでしょう」

 

 バルブロの口からは、すらすらと言葉が出てくる。

 自分の意見を述べはするが根拠に乏しく、感情任せなことがほとんどである彼には珍しいと、意外そうにしてザナックは聞いていた。無論、口に出しはしないし、顔にも極力浮かべはしないが。

 

「そして、あの事件の時の悪魔は……隠れてこそこそと人を狩るようなことはほとんどありませんでした。それこそ、白昼堂々であったり、夜であっても人目を気にせず、護衛ごと殺しに来ることがほとんどでした。今回のように、こそこそと狩ったりはしていなかった」

 

「ふむ……それは確かにそうだな」

 

「標的となる者がそこら中にいるにも関わらず、わざわざ夜、目立たない裏路地で、しかも一晩に1人犠牲者がいるかいないか……まるで、普通の衛兵にさえ見つかることを恐れているかのようだ。あの時の悪魔の犯行とはあまりにも様子が違います」

 

「つまり、兄上は……悪魔の犯行を模倣した何者か……おそらくは普通の人間の愉快犯か何かが、あの時の『ゲゲル』を装って殺人を行っている……と言いたいのですか?」

 

 ザナックのその問いに、バルブロは『そうだ』と、うなずいて言い切る。

 

「癪だが、悪魔は人間を恐れて逃げ隠れしたり、わざわざ弱い者を、1人しかいない時を狙って襲ったりはしない……あの時に嫌でもそう学ばされたからな。ゆえに今回の一件は、恐らくは模倣犯……もちろん不届き者には変わりないゆえ、早急に捕まえて厳罰に処すべきではあるが、必要以上に恐れてしり込みするべきではない……というのが私の推理です、父上」

 

 そう言って、一礼。

 常のバルブロにはないほどに、筋道の立った……ある程度本当に説得力がある説に、『おぉ……』と感心したような声があちこちから上がった。

 

 同時に、『なるほど、確かに……』『辻褄はあっておりますな……?』『これは本当に、小癪な何者かの卑劣な行いやも……』そんな会話が、あちこちでひそひそと交わされていた。

 

「ふむ……なるほど、お主の説にも一理あるな」

 

 豊かに生えた髭をなでながらうなずくランポッサ王。

 そして、未だ控えたままそこにいる、まとめ役の男に視線を移して、

 

「聞いておった通りだ。無論、そう決まったわけではないが……バルブロの言うことにも、一定の説得力はあった。油断はせず、しかし過度に恐れてしり込みすることもなく、事態の真相解明に全力を尽くせ」

 

「は……ははっ! かしこまりました!」

 

 バルブロの推理にあった説得力は、『悪魔かもしれない』と恐怖を感じていたその男にとっても、耳聞こえのいいものだったらしい。

 先程までよりも、声から感じ取れる不安や恐怖が薄れているのがわかった。事件の犯人が悪魔である可能性が薄くなったためだろうか。

 

 そのまま、今後の捜査方針など、必要なことを簡単に話し合って決め……連続殺人事件に関する話は終了となった。

 

『必ずや、早くに下手人を挙げてみせます!』と意気込んで退出していくまとめ役。

 それを見送りつつ、貴族達は『気にしすぎでしたかな』と、やや楽観的な、しかしほどよく弛緩した空気が戻りつつあった。

 もちろん、先ほど王が言ったように、油断は禁物だろうが。

 

 そんな空気の中……

 

「…………ん?」

 

 声の主は、ザナック。

 常と違って理知的な物言いを見せていたバルブロを、なんとなく気になって見ていた彼だったが……報告が終わり、まとめ役の男が退出していった時のことだ。

 

(……今、兄上が笑っていたような……)

 

 ほんの一瞬だったが、去っていく男を見て、にやりと……何やら怪しげな笑みを浮かべているように見えた。

 普段見慣れている、権力をかさに着て得意げになっていたり、自分に逆らえない部下に無理難題を言って悦に浸っている時のようなそれとは、明確に異なった……どこか薄気味悪い笑み。

 まるで、何か悪だくみをしているかのような……。

 

 しかし、ほんの瞬き1回ほどの間に、それは消えていて……そこにあったのは、面白くなさそうな仏頂面のバルブロだけだった。

 

(見間違いか……? いや、まあ、自分の言ったことが貴族達や父上を感心させていたことに気分を良くしただけかもしれんが……まあ、別に気にするほどのことでもない、か)

 

「ザナック殿下? どうかされましたかな?」

 

「! いや、何でもない……少し考え事をしていただけだ」

 

 近くにいた貴族に声をかけられてそう返したところで、玉座の間に、次の謁見に臨む者が入ってくる。

 ほんの小さな違和感は、ザナックの中で、すぐに消えて忘れられ、次の話題ないし報告にその関心は移っていったのだった。

 

 

 

 ……この時の違和感を、もっと心にとどめ、気にしておかなかったことを……数か月後、ザナックは深く後悔することになる。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 所変わって……ここは、『アゼルリシア山脈』の中腹にある、とある鉱山。

 既に鉱石が取りつくされており、この山に暮らす山小人(ドワーフ)土窟獣人(クアゴア)も見向きもしなくなり、放置されていた場所である。

 

 現在、このアゼルリシア山脈は、生態系の頂点だった『霜の竜(フロストドラゴン)』を含め、ナザリックが完全に制圧し、支配下に置いている。もちろん、この枯れた鉱山もまたナザリックの所有物である。

 

 そこに、アインズとラスト、そしてそれぞれの付き添いとして、アルベドとデミアが訪れていた。

 鉱山の洞窟の奥……といっても、入り口から少し歩いた程度の位置の、大きく開けた場所で立ち止まった。

 元々ここにいたクアゴア達が掘り進めて広げたその空間は、ドラゴンであっても悠々と通れそうなくらいに広く、天井も高い。

 

 その中で、ラストが1歩前に進み出る。

 

「それじゃあ……いきます」

 

 そう言ってラストは、アインズ達が見ている前で……魔法を発動する。

 彼女の周囲に……巨大な立体の魔法陣が浮かび上がり、次々とその形を変えていく。

 

 それはまさに、『超位魔法』の発動の前兆……かに思われたが、それを目にしたことがあるアインズやアルベドは、ラストのそれが、『超位魔法』の魔法陣とは微妙に異なるものだということに気づいていた。

 大きさや、魔法陣の形、挙動……そういったものが明らかに違う。

 

 しかも、超位魔法にしてはかなり早くその詠唱は終わり……と同時に、目を閉じて集中していたラストが、カッと目を見開いて、

 

 

始原の超位魔法(トランセンド・ワイルドマジック)……『天地修正(リ・クリエイション)』」

 

 

 その直後、ラストを中心にしてすさまじい光とエネルギーが迸り、洞窟を満たしていった。

 

『まぶしっ』とアインズが反射的に手でガードしつつ、光がやむのを待って……元通り洞窟内が暗くなったところで、あたりを見回す。

 すると、変化は……とても分かりやすい形で起こっていた。

 

 洞窟の闇の中に浮かび上がって見える、岩肌が……数十秒前までと、明らかに違う。

 

 ただの石や岩の壁でしかなかったそこが……不思議なきらめきを放つ、明らかに『鉱石』の壁になっているのだ。

 

 そして、アインズは……そしてラストも、その輝きに、見覚えがあった。

 この輝き……というか、この見た目をしている物質に、心当たりがあった。

 

 アインズは、収納(ストレージ)から採掘用のピッケルを取り出し、ガツンと壁を叩いて鉱石を掘り出す。

 地面に落ちたそれを手に取り、物品鑑定の魔法を使うと……

 

「『アダマンタイト鉱石』……ははっ、これはすごいな! この岩壁全てが『そう』なのか!」

 

「上手くいったようで何よりです。喜んでいただけましたか、アインズさん?」

 

「ああ、素晴らしいプレゼントだ……礼を言うぞ、ラストよ」

 

 

 

 ラストが使った魔法……『天地修正(リ・クリエイション)』。

 そして、その区分である、『始原の超位魔法(トランセンド・ワイルドマジック)』。

 

 言うまでもなく、いずれも、『ユグドラシル』はもちろん……この世界にも存在していなかった、全く新しい魔法である。

 つい最近、ラストとデミアが作り上げることに成功した、彼女達の長年の研究と研鑽の産物だ。

 

 

 簡単に言えば、『始原の超位魔法(トランセンド・ワイルドマジック)』は……読んで字のごとく、『超位魔法』と『始原の魔法』を融合させたもの。

 1日4回使える『超位魔法』の枠の1つと、『始原の魔法』に必要な『魂』を両方消費することで発動可能な、超強力な魔法である。もっとも、研究段階の魔法であるため、まだその種類自体はごくごく少ないが。

 

 そして、今回発動した『天地修正(リ・クリエイション)』は……似た名前の超位魔法『天地改変(ザ・クリエイション)』の強化版である。

 

天地改変(ザ・クリエイション)』は、フィールドの属性を書き換え、ダメージ地形などを無効化したり……この転移後の世界では、超広範囲の地形を作り変えたり、見渡す限りの湿地帯を一気に凍結させたりすることができた。

 

 対して、『天地修正(リ・クリエイション)』は……地形などを変えることはもちろん、それらを形作る構造物そのものの種類などを『変える』ことができる。

 今回は、洞窟の石壁をアダマンタイト鉱石に変えて、枯れた鉱山をアダマンタイト鉱山に変えたわけだが……その気になれば、他の物質に変えてしまうことももちろんできた。黄金やミスリル、オリハルコンにもできただろう。

 

 そしてもう1つ、大きな、重要な特徴がある。

天地修正(リ・クリエイション)』は、『始原の魔法』の類型であるため、その魔法でできることが、使い手の技量や熟練度に比例して変わるのだ。

 

 今のラストの熟練度では、物質の改編は、アダマンタイトがせいぜいである。それなりに希少な金属とはいえ、彼女達カンスト勢からすれば、品質的に物足りない物質である。

 しかし、この先魔法の熟練度を高めていけば……ゆくゆくはもっと希少な物質も作り出せるようになるかもしれない。ヒヒイロカネや、スターシルバーのような。

 

 それを話して聞かせ……さらに、この魔法が――難易度は高いだろうが――アインズにも習得が可能だと知った時の彼の反応は、最高の玩具を前にした子供のようだった。

 直後にはっとして『んんっ……』と咳ばらいをしてごまかしていたが、ラストとデミアは微笑ましいものを見るような目で見ていた。

 

 残るアルベドの目には、普段の『絶対的支配者』とは違った姿を見せてしまったわけだが……ぶっちゃけ彼女はアインズなら何でもアリなので、『アインズ様にこんなおちゃめな一面が!』という具合で好意的に受け止めていたため、問題はない。

 

「返す返すも素晴らしいな……この魔法は必ずや、我がナザリックや、ラストの空中庭園が、より大きな力を手にし、この地にこれからも君臨していくための大きな助けとなるだろう。だが……」

 

「ええ……この魔法、というよりも、私達が新たに作った『始原の超位魔法』自体……『彼ら』はその存在を許さないでしょう。自画自賛になりますが、明確に、彼らが使う魔法よりも優れているもので……世界の理を捻じ曲げ、彼らの既得権益を侵すものですから」

 

「だがそうは言ってもそれは、彼らが数百年もの長きにわたり、研鑽を怠り、自分達にできることの更改を行っていなかった結果。あるいは、ラストがそれを上回る研鑽の末に結果を出したというだけだ。現状に満足して歩みを止めた者が『覇者』を名乗り、世界の方が自分達に合わせることを望み、それがかなわなければ、癇癪を起こして壊そうとする、か……滑稽な上に迷惑な話だ。『始原の魔法』にかかる事情を斟酌してなお……やはり看過できんな」

 

「私も同意見です。ですので……いずれ彼らとは雌雄を決することになるでしょう。そして、その為の布石として……次なる計画があります」

 

「ああ、やはり必要だな……この世界に、『竜王』ではなく、我らナザリックと空中庭園の方を選ばせ、民意の下に我々が君臨するために。アルベド……準備はどの程度整っている?」

 

「はい、アインズ様。抜かりなく、万事進めております。ナザリックにおいて必要な物品や人員については既に手配は完了しております。後は、デミウルゴスの方で準備を進めている、王国のあの暗愚な王子の方が『出来上がれば』、いつでも決行可能になるかと」

 

「デミア、うちの方は?」

 

「こちらも順調です、ラスト様。影響下にある各国にも指示を出し、いつでも『シナリオ』を始められるよう、用意は整えました。こちらとしても後は、デミウルゴス殿の準備が整うのを待つのみとなっております」

 

「よろしい、では……」

 

 ちらり、とアインズに視線をやるラスト。

 アインズはそれを受けて、こくり、とうなずき、

 

「うむ……デミウルゴスの準備が整い次第、作戦を決行するものとする。これは、我らナザリックの覇権のためだけではない。この世界が、成長と発展を嫌悪し否定する、懐古主義の『竜王』から脱却できるか否かの選択を問う作戦である。各員、奮励努力せよ。作戦名は……」

 

 

 

『ドラゴンクエスト』だ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『名付けといてなんですけど……よかったんですかね? こんな作戦名で……』

 

『いいんじゃないですか? ラスボスがラスボスですし』

 

 

 

 

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