第12話 女子会・後篇 ”Mission complete”
新しい飲み物が運ばれてきた。
ミケミケとコロがグラスを受け取り、ふー子もそっと手を添える。
白雪は湯気の立つハーブティーを手に、
ふわりと微笑むと静かに語り始めた。
「…わたし、下界ではオコジョ一族の幼い“姫様”の
教育係と世話役をしていたのです」
ふー子とコロは「ほぇ〜」と同時に声をあげた。
白雪は続けた。
「オコジョ一族は数が少なく、
わたしも護衛や雑務など、いくつも兼任していました」
言葉の端に、懐かしさと少しの痛みが混ざる。
「ある日……姫様を狙う賊たちに襲われ、
わたしは姫様を守るために……命を落としました」
ふー子はぎゅっ、と耳を伏せた。
白雪は穏やかな表情のまま語る。
「死の間際、姫様に伝えたのです。
“やんちゃだと言われているけれど、
元気で優しい姫様が、わたしは大好きでした”と」
ミケミケもコロも、自然と背筋を伸ばして聞き入っていた。
「天国に来て…虹の橋から下界が見えると知り、
姫様の姿を時々見守りました。
わたしに恥じないように、とても一生懸命生きていて……
それを見て、本当に安心しました」
そこで白雪はミケミケに目を向けて微笑む。
「その頃にミケミケさんと出会って。
境遇が少し似ていたのか、すぐに仲良くなって……
気づけば、今のような関係に」
ミケミケは「やめてよ〜照れるじゃん」と尻尾をくるくる。
しんみりとした空気の中、ふー子はぽろっと涙をこぼし――
「う……うさみねーちゃぁぁん……!」
白雪・ミケミケ・コロ「……だれ?」
ふー子は涙で顔をくしゃくしゃにしながら説明した。
「うさみねーちゃんはにゃ…
ふー子が大好きなアニメに出てくるキャラでにゃ……!
村をヨロイ一族に襲われて……
にゃんたに助けを呼びに行くうさ吉のおねーちゃんにゃ!
うさ吉をかばって生死不明になって……
初回にしか出ないけど……でもめっちゃ人気でにゃ……!
優しくて、健気で……白雪がうさみねーちゃんに見えるにゃ……!」
白雪は目を丸くしたが、ふわっと優しく笑った。
「ふー子さん……
ヨロイが怖かったのに、わたしをそう見てくれたのですね」
ふー子はぶんぶん首を振った。
「ふー子、白雪にごめんなさいにゃ!
ヨロイが怖くて……でも白雪は全然ちがかったにゃ……!」
白雪は静かに頷き、そっとふー子の頭を撫でる。
「わたしも、気づかず不安にさせてしまってごめんなさい。
……仲良くしていただけると嬉しいです」
ふー子の耳がぱぁっと立つ。
ミケミケが肘でふー子をつついた。
「ねぇ白雪さんの話聞いてて思ったんだけど……
ふー子って、ちょっと姫様に似てない?」
「えっ!? にゃ、にゃにゃにゃ……!」
「ほら、やんちゃなところとか」
「にゃっ、やめるにゃーっ!」
ミケミケとふー子がいつものようにじゃれ合い、
コロが「わぁわぁ」とオロオロしている。
白雪はその光景を、まるで本当に姫様を見るような
優しい瞳で見守っていた。
するとふと、コロが思い出したように白雪へ質問した。
「そういえば白雪さん……
姫様の教育係って、どんなことを教えるんですか?」
白雪は丁寧に答える。
「礼儀作法、言葉遣い、舞踏、芸術……
あとは護身のための舞や……」
「ま、舞!? ダンス!?
白雪さんのダンス見たいです!!」
白雪はほんのり頬を染めた。
「わ、わたしのは……人前で見せるようなものでは……
でも、機会があれば……」
ふー子達は歓声をあげた。
が。
彼女らは知らない。
——オコジョが、見た目に反して意外と凶暴であることも。
——そして、獲物を狩るときの動きを
“一族に伝わる舞”と呼び、
「死のダンス」 と恐れられていることも。
ミケミケ「白雪さんのダンス楽しみだね〜」
ふー子「うんにゃ! 絶対かわいいやつにゃ!」
コロ「きっとフワフワしてるんだ……!」
白雪(……どうしましょう)
天国のカフェに、穏やかな笑い声が響いた。
エピローグ
女子会――いや、女子会(?)が終わった帰り道。
天国の小道には夕暮れの光が差し込み、
虹の橋がきらきらと輝いていた。
四人は並んで歩いていたが、
ふー子と白雪は自然と隣同士になっていた。
白雪はそっとふー子に微笑みかける。
「ふー子さん……今日は、本当にありがとうございました。
わたし、とても嬉しかったです」
ふー子は照れながらも、胸のあたりをぎゅっと握りしめて答えた。
「ふー子も……白雪とお話できて良かったにゃ。
その……ずっとぎこちなくて、ごめんにゃ。
でももう大丈夫にゃ!
白雪は……怖くないにゃ!
ふー子のお友達にゃ!」
白雪の表情がふわりとやわらかく緩む。
その後ろで、ミケミケがひそひそと笑う。
「ほら〜、やっぱふー子って姫様っぽいんだってば」
「えぇぇ〜!? にゃ、にゃにゃにゃにゃ……!」
ふー子が慌てて耳をバタバタさせ、
コロは安心のあまり尻尾をぶんぶん振り回す。
「うわぁぁ〜よかったですぅ〜!
ふー子先輩、白雪さんと仲良くなれて〜!」
ほんわりと暖かい空気が四人を包む。
ふー子は思い出したように白雪に向き直る。
「そういえば白雪……姫様にダンスも教えてたにゃ?
なんだか優雅そうで……ふー子、見てみたいにゃ!」
白雪は少し困ったように、それでも上品に微笑んだ。
「ふふ……機会があれば、いつか」
「楽しみにしてるにゃ〜!」
ふー子が無邪気に笑う。
白雪はその笑顔を見て、そっと頷いた。
四人の影は夕陽に伸び、
歩調はゆっくりとそろい、
今日までのぎこちなさはどこにも見当たらない。
そしてふー子の胸の中で――
白雪への“苦手”は、温かい気持ちへと変わっていった。
そんな、静かで優しい終わりの時間だった。
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あしたっていまさッ! エピローグは分けようとしたら短いって怒られました ⋯
ふー子は知りませんが、おおきなお友達がうさみねーちゃん本を作りました ⋯お色気シーンに必ずこちらを見つめる目つきの悪いうさみちゃんがいます(徐々にアップになる)