第13話 おじさんが見たふー子達 の巻
その夜、おじさんは不思議な夢を見た。
* * *
そこは広くて明るい草原。
空には虹色の光がゆらゆら揺れている。
その真ん中で――
「にゃー! にゃにゃにゃー!」
元気よく駆けていくふー子。
その後ろで仔犬が情けない声で吠えながらついていく。
「きゅーん! くぅ〜ん!!」
ふー子は何度も振り返り、
鳴き声で仔犬を励ましていた。
「にゃっにゃー!」
あの日のような元気な鳴き声
それを三毛猫や
黒い犬が優しく見守る。
すると突然巨大なシロクマが現れた。
「がおぉぉぉん!!」
仔犬「きゃぅぅぅん!!」
ふー子「にゃー!!」
へっぴり腰で威嚇するふー子。
シロクマは「……ふん?」と首をかしげ、
照れくさそうに去っていった。
三毛猫「みゃ……」
黒犬「わふっ」
仔犬は尻尾を振る。
「きゅうん!」
ふー子は胸を張るように大きく鳴く。
「にゃにゃーん!」
草原で転がったり昼寝したり、
ふー子と仲間たちは天国での生活を
のびのび楽しんでいる。
やがて白いオコジョが現れ――
「すいっ」
ふー子は反射的に飛び上がる。
「にゃひぃ!?」
オコジョ「……す?」
仔犬「きゅ!?」
すぐにふー子は安心したように鳴きなおす。
「にゃにゃ! にゃ〜!」
オコジョは光の中で優しく微笑む。
三毛猫と談笑し、ふー子もその輪に加わり、
とても楽しそうだった。
おじさんはその光景を見つめながら、
胸がじんわり温かくなるのを感じた。
(ふー子……本当に楽しそうだな……)
* * *
――朝。
おじさんは静かに目を覚ました。
少し涙がにじんでいた。
(……いい夢だった)
朝の支度を終え、
ふー子の写真の前に座り、
いつものごはんを供える。
「ふー子……」
ふー子の笑った顔を見つめながら、
ぽつりと言葉をつむぐ。
「最初はな……心配だったんだぞ。
つらくしてないか、寒くないか、
誰かにいじめられてないかって……
ほんとに、毎日……」
写真のふー子は今日も変わらず笑っている。
「でも……大丈夫だな。
夢の中のお前、元気だった。
仲間もいっぱいいて……
なんだかんだで楽しそうにしてて……」
おじさんはほっと笑った。
「よかった……ほんとによかったよ、ふー子」
少し間をおいて、
仕事に行く準備をしながら声をかける。
「お父さんも、負けてられないな。
今日も頑張ってくるよ」
そう言って家を出ようとしたそのとき――
「にゃあぁぁん」
……と、聞き慣れた鳴き声が
風と一緒に耳に届いた。
おじさんは驚いて振り返り、
けれど、部屋には誰もいない。
「……ふー子か?」
答えはない。
それでもおじさんは微笑んだ。
胸の奥に、あの日のぬくもりが残っているようだった。
「……行ってきます」
扉を開け、
今日もまた新しい朝へ歩き出していく。
――ふー子の “いってらっしゃい” に
背中を押されながら。
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