第16話 ほっこり風の草原 の巻 前編
昼下がりの天国。
草原に広がるピクニックシートの上では、ふー子の友達たちがまったりと過ごしていた。
ミケミケが伸びをしながら言う。
「いい天気ねぇ。こういう日くらい、ゆっくりしなきゃ損よ」
白雪もその横で穏やかに微笑む。
「本当に。こうして皆さんと過ごせる時間、ありがたいですわ」
コロは持ってきたおやつを握りしめて震えている。
「ぼ、ぼく……た、楽しみにしてたんです……! 皆さんとのピクニック……!」
クロベエは草の上にドサッと座り、ため息をつく。
「おいおい、そんな震えてっと風で転がってっちまうぞ、コロ。
……ま、楽しみなのはわかるけどよ」
「ふ、ふぇぇ……す、すみませんクロベエさん……!」
白雪が優しくコロの頭を撫でた。
「大丈夫よ、コロさん。今日はのんびりするだけですもの。怖いことはありませんわ」
コロはほっとして尻尾をふる。
「はいっ……!」
ミケミケはふー子の横に転がりながら、にやっと笑った。
「で、ふー子。今日は何して遊ぶわけ? またシロクマ長老に突撃するとか言わないでよ?」
「言わないにゃ! 今日は遊ぶにゃー!」
クロベエが鼻を鳴らす。
「ふー子が遊ぶっつーと、ろくでもねぇ騒ぎになる気しかしねぇけどな……」
「なにをー! クロベエはまた変なこと言うにゃ!」
「変じゃねぇだろ。事実だっての」
ミケミケは笑いながらクロベエの肩を軽く叩いた。
「まぁまぁクロベエ。あんた、なんだかんだでふー子に甘いんだから」
「甘くねぇよ! ただ……子供に怪我なんざさせられねぇだけだっての」
ふー子がぴょんと跳ねた。
「じゃあクロベエ! 一緒に走るにゃ!」
「……ほら始まった。
ったく、仕方ねぇな。ほら、行くぞ」
ミケミケはそのやり取りを微笑ましそうに見ながら、白雪と話し始めた。
「白雪、クロベエってほんと世話焼きよねぇ」
「そうですねぇ……ふー子さんのこと、小さな子として見守ってる感じですわね」
「でしょ? あの感じ、ちょっと父親っぽいのよ。ねぇ、そう思わない?」
白雪は少し考え――小さく頷いた。
「……たしかに、そういうところありますわね。
不器用だけど優しい方ですもの」
コロはというと……
走り回るふー子とクロベエを見て、慌てて追いかけていく。
「ふ、ふー子先輩ーっ! ま、待ってくださいーっ!」
ミケミケが笑い転げた。
「こらこらコロ、転ばないでよ!」
ふー子は走りながらくるっと振り返り、
「にゃはは! こっちにゃー!」
クロベエは息をつきながらも、しっかりふー子の方向を見守る。
「前見て走れっての……ま、楽しそうだからいいけどよ」
そんなふうに、
まったくもって平和で、のんびりしていて、
どこかくすぐったいほど優しい時間が流れていった。
天国の草原に風が吹き、
友達たちの笑い声がふわりと広がる。
今日も、穏やかな一日だ。