第17話 ほっこり風の草原 の巻 後編
ふー子たちがひとしきり走り回った頃、
草原の風はすっかり穏やかになり、
日差しもやわらかい金色に変わっていた。
ミケミケが持ってきた水筒をふりながら言う。
「そろそろ休憩にしましょ。ふー子もクロベエも、汗だくよ?」
ふー子はその場にダイブ。
「にゃ~~……いっぱい走ったにゃ……!」
クロベエもドサっと座り込み、額をぬぐう。
「はぁー……おまえ元気すぎんだよ。
……でもよ、楽しかったじゃねぇか」
ふー子はむくっと顔を上げた。
「そうにゃ! クロベエも楽しそうだったにゃ!」
「た、楽し……いや、まぁ……走るのも悪くねぇよ」
ミケミケはニヤリ。
「ほらね。あんた、やっぱ甘いのよ」
「うるせぇ! 俺はただ見張ってただけだっての!」
白雪は柔らかく笑いながら、おやつを配る。
「はい、皆さんどうぞ。ちょっとしたおやつですわ。草原で食べると美味しいのです」
コロが目を輝かせた。
「わぁ……白雪さん、ありがとうございますっ……!
こ、こんな美味しそうなの、た、食べていいんですか……!」
「もちろんよ、コロさん。いっぱい走りましたものね」
「はいぃ……!」
ふー子がもぐもぐ食べながら言う。
「白雪のおやつは美味しいにゃー!」
「ふふ……よかったです」
ミケミケは草をむしりながら、遠くを見た。
「しかし、こんなのんびりも悪くないわねぇ。
みんなで集まるの、やっぱり好きだわ」
クロベエも空を眺める。
「……ああ。たまにはこういうのもいいな。
なんつーか、落ち着くっていうかよ」
ふー子は両手をひろげてゴロンと寝転がる。
「天国は広いにゃー……風が気持ちいいにゃー……!」
コロが真似して寝転ぶ。
「ふわぁ……き、気持ちいい……ふー子先輩、これいいです……!」
白雪はその姿を見守りながら、小さくつぶやいた。
「皆さん、本当に仲が良いのね……こんな時間がずっと続けばいいのに」
ミケミケが肩をすくめる。
「続くわよ。天国だもの。
そりゃ細かいことは色々あるけど……でも、こうして笑う時間はいくらでもあるわ」
クロベエがふと、小さく鼻で笑った。
「そうだな。
……ま、俺がついてりゃ心配ねぇよ。コロもふー子も、そこの猫も白雪も」
ミケミケがジト目。
「“そこの猫”って何よ。名前呼びなさいよ」
「へいへい……ミケミケ」
「よろしい」
ふー子はゆらゆら尻尾を揺らしながら、ぽつり。
「仲間っていいにゃ……おじさんもにこにこして見てそうにゃ」
白雪が優しく頷いた。
「ええ、きっと笑ってますわ。
あなたが今日も元気に遊んでいたこと……絶対にね」
ふー子は照れながら顔を埋める。
「……にゃふ」
* * *
夕方。
空が少しだけ桃色になった頃、
みんなでお弁当の片づけをして帰り支度をする。
クロベエが最後の荷物を持ち上げながら言った。
「よし、帰るか。今日はゆっくり寝られそうだ」
ミケミケも頷く。
「明日も晴れるといいわねぇ」
白雪はふー子の頭をそっと撫でた。
「楽しかったですね、ふー子さん」
「うんにゃ! また行きたいにゃ!」
コロはニコニコしながら尻尾を振る。
「ぼ、ぼくも……ま、また皆さんと……!」
クロベエがふー子の前に立つ。
「おい。帰り道で走り出すなよ?
疲れてんだから、ゆっくり行くぞ」
「わかってるにゃ! ……たぶん」
「“たぶん”じゃねぇっ!」
そのやり取りに、みんながクスッと笑った。
天国の夕暮れの草原を、
ふー子たちは並んで歩き始める。
今日も、優しい一日だった。