ふー子のまったり天国ライフ   作:猫太鼓

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カワウソ係長、虹の橋の点検へ行く の巻

第4話 カワウソ係長、虹の橋の点検へ行く の巻

 

天国の朝。

虹の橋のそばに、小さな水音を立てながらちょこちょこ歩く影があった。

 

カワウソの…いや、天国管理局のカワウソ係長である。

「ふぅ〜……今日も点検ですぅ……。

生前は餌を配るだけで良かったのに、

どうして虹の橋の点検なんて任されてるんでしょう……?

いや、上の方々に逆らえないんですけどぉ……」

 

口では弱音を吐きつつも歩みのスピードはしっかりしている。

 

(…とはいえ、あの頃のみんなの分を公平に配ったあの日々に比べたら、

 まだまだ私にもできることはあるはずです……!)

 

自分を鼓舞しながら、カワウソ係長は虹の橋に到着した。

 

橋のたもとに、じっと下界を見つめている犬がいた。

 

中型犬のクロベエ。

 

「……おや、あなたはここで何を?」

 

係長が声をかけると、クロベエは少し驚いたように振り返った。

 

「あぁ、悪いな。

ちょっと……下を見てたんだ」

 

「何か、気になることでも?」

 

クロベエはすぐに答えられず、

視線をもう一度、下界へ落とす。

 

「……俺のじいさんとばあさんがな。

今日も散歩道を歩いてやがった。

俺がいないのが寂しい顔していてよ」

 

係長は静かに頷いた。

 

「あなた、生前に何かあったんですねぇ……?」

 

クロベエはぽつりぽつりと話し始めた。

 

「……じいさんが散歩中に……車にひかれそうになってな。

俺がかばった。

それで……ここに来たわけだが」

 

係長はしばらく口を閉じたまま、

クロベエの横に並んで下界を見た。

 

ふと、係長は自分の過去を重ねた。

 

「……私も下界にいた頃、

飼育員さんが、毎日えさをくれたんです。

でも、私だけがいっぱいもらうのは嫌で……

仲間に公平に分けていました」

 

クロベエ

「へぇ……お前、律儀だな」

 

係長はちょっと照れて、指先(ヒレ)をもじもじした。

 

「それがなぜか認められちゃって、

今は“係長”なんて呼ばれるようになりまして……

……でも、正直、虹の橋の点検は専門外なんですけどぉ……」

 

クロベエはフッと笑う。

 

「でもよ、ちゃんとやってんだろ。

それだけで十分じゃねぇか」

 

気づくと、係長は自然に口を開いていた。

 

「クロベエさん。

あなたは……後悔してるんですか?」

 

クロベエはしばらく沈黙し、静かに首を振った。

 

クロベエはしばらく黙ってから、静かに言った。

 

「……じいさんが助かったことには、満足してる。

あれでよかったんだって思ってる。

……でもよ。

たまに見える、あの寂しそうな顔は……やっぱり少し堪えるんだ」

 

係長はやわらかく目を細めた。

 

「……そうでしたかぁ」

 

係長

「なら……今そばにいられない分、

あなたの“想い”だけは届いていると思いますよぉ……」

 

クロベエ

「……そうだと、いいな」

 

風が虹の橋を渡り、クロベエの毛を揺らした。

 

係長は背伸びしながら言う。

 

「今日は橋の点検、無事に終わりそうですぅ。

もしよかったら、また話しましょうね。

……あなたみたいな人の話を聞くの、私……好きですから」

 

クロベエは照れたように鼻を鳴らす。

 

「ったく……変わったカワウソだな、お前は」

 

係長

「よく言われますぅ〜」

 

2匹はくすりと笑い合った。

 

下界への想いはまだ消えない。

でも――

少しだけ、風が優しく感じられた。

 

 

 

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