魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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来月開催のカクヨムのカクヨムコンテスト11に応募するための作品です。
この作品に集中するために他の作品の更新ストップしてます。申し訳ありません。

毎日投稿できるよう仕事しながらめっちゃ書いてます……

ハーメルンで先行公開している感じです。


魔王様、娘を拾う。

 

 かつて、この世界では魔王とそれに従う魔王軍による侵略があった。

 実に世界の八割が魔王の支配下に置かれ、人類は終わりを迎えたかと思われた。

 だが神の子である勇者がこの世界に生れ落ち、勇者は偉大なる仲間と共に魔王へと立ち向かった。

 

 ドワーフの戦士。天使の聖女。ハイエルフの魔法使い。

 

 彼ら三人と共に勇者リナは魔王を打ち倒した。

 

 結果世界は平和になった。

 

 魔族として支配下に入れられていた獣人にエルフ、吸血鬼や悪魔族は魔王亡き後平和に暮らしていた。

 

 これは魔王が打ち倒された二百年後の話。

 

 ──とはいっても視点は魔王だが。

 

 

 

 ■

 

 

 魔王が勇者に倒されてから二百年の時が過ぎた。

 といっても魔王は死の淵から蘇り、今も悠々と生きている。

 

 そんな魔王レイは己の城付近の森を散策していた。

 

 身長は百九十二センチ程。

 筋肉質ではあるがゴリゴリの体系ではない、細マッチョとでもいうべき体型。

 白い髪に赤い瞳。ワイルド系のイケメンと言える顔つき。

 魔王レイは意味もなく散歩をしていた。

 

 魔王城に居ても魔法の実験や読書ぐらいしかやる事が無いためレイは時折こうして散歩に出る。

 魔王城付近だったり支配下の町村だったりと出歩く先は様々だが、今日は魔王城付近の城を歩いていた。

 

 そうして歩く事十分。レイの耳に赤ん坊の声が入る。

 

 最初は聞き間違いかと思った。

 この森にはモンスターが住まう。といっても魔王の支配下にあるモンスターではない。

 ゴブリンやオーガ等の亜人種や森の大蚯蚓(フォレストワーム)吊るし蜘蛛(ハンキング・スパイダー)等の異形種のモンスターが住まう。

 

 その為人間の赤ん坊が居る訳が無い。

 

 だが、耳を澄まさなくとも聞こえてくる赤ん坊の泣き声。流石に興味がわいて音の元へレイは歩いて行く。

 五分も歩かず声の元に辿り着き、やはりというべきかそこには赤ん坊が捨てられていた。

 

 籠に入った茶髪の女の赤ん坊。それを前にレイは立ちすくむ。

 赤ん坊を目にするのは初めてではないが、こんなところに落ちているのを見るのは初めてである。

 

 さてどうするか。前までのレイならば邪魔だと殺していただろう。

 

「…………」

「おぎゃぁ! おぎゃぁ!」

 

 レイは無言で赤ん坊を見るも赤ん坊は泣くだけである。

 レイは赤ん坊を拾い、魔王城へと戻っていった。

 

 

 

「──魔王様。それはなんでしょうか?」

 

 魔王城に戻ったレイに執事長であるライカードが問いかけた。

 ライカードは身長百七十五センチの黒髪緑目の優男だ。執事なので当然執事服を纏い、魔王の護衛でもある為ミスリルの剣を帯剣している。

 ライカードは魔王が手に持つ赤ん坊に着いて尋ねる。

 

「拾った」

「……奪ってきたので?」

「だから拾ったと言ってるだろう。森に捨てられていた」

「……まさか食べるので?」

 

魔王は人間である為人を食う事はない。

 

「食う訳無いだろう。育てるぞ」

「……魔王様が、赤ん坊を育てるのですか?」

「まさか、世話はメイド共に任せる」

 

 レイはライカードに赤ん坊を渡す。

 そのまま魔法陣の方へ歩こうとしたレイをライカードは呼び止める。

 

「なんだ?」

「まずはこの赤子の名を付けてくださらなければ、世話のしようがありません」

「……名か」

 

 ふむ、とレイは立ち止まって考える。

 

「……カレン、でいいだろう」

「わかりました。ではそのように」

 

 ライカードはそういうと世話を任せる為メイド長の元へと歩いて行った。

 

「……どうなるかな」

 

 

 ■

 

 

 

 

 豪華絢爛な城の中を少女が鼻歌を歌いながら歩いていた。

 茶髪碧眼の人間のきりっとした目つきの少女だ。活発な格好をしており、その服に似合う美しい顔つきをしている。

 

 少女──魔王レイに拾われた子カレンは城の廊下を歩いて行く。

 そうして歩いていると目的地である玉座の間に辿り着く。

 

 玉座の間の前の門には悪魔を象った門がある。

 悪魔の門はカレンが近づくと自動的に開いて行く。

 

 そうしてカレンは玉座の間に入って行く。

 

 玉座の間は広い。長方形に広い空間だ。

 左右の壁には人の頭蓋骨を使った蝋燭が灯りとなり、天井からはガラスのシャンデリアがぶら下がっている。

 カレンは玉座に近づく。

 

 玉座は王の偉大さを知らしめるために豪華な物だ。

 巨大な結晶が玉座の形に変えた物であり、一見すると腰に悪そうに見える。

 だが実際は柔らかく、腰への負担など殆どない。

 また玉座には何かの太いケーブルが伸びており地面と繋がっている。

 

 玉座に座るのは三つの目を持つ男だ。

 

 身長は百九十二センチ。長くすらっとした手足を持つ男だ。

 白髪赤目のワイルド系のイケメンと言ったと男であり、できものやそばかすなど無い綺麗な肌をしている。髭は生えていない。

 上半身裸であり左胸には上下反対になった泣いている女の刺青が彫られている。

 

 男は普通の両目を閉じているが額にある第三の目がギョロギョロとせわしなく動いている。

 

「おとーさん!」

 

 カレンは玉座に座る男──人間であるレイに抱き着く。

 

 一瞬遅れてレイは目を開いた。

 

「む、カレンか。どうした?」

 

 レイは優しい声で返事をし、カレンを抱えた。

 

「私ね、ずっと考えてた事あるんだ!」

「ほう、なんだ、言って見ろ」

「私ね──冒険者に成りたいんだ!」

 

 その言葉にレイは口をつむぐ顔をする。

 

「……冒険者とは危険な仕事だ。その危険性をわかっているのか?」

「危険なのはさんざん聞いたからわかってる。けど、憧れは止められないの!」

 

 さて、どうしたものか──と魔王レイは考える。

 

 

 

 カレンはレイの実子ではない。

 

 魔王城近くに捨てられていた捨て子であり、レイが拾った子供だ。

 世話は配下のホムンクルス任せだったが、多少は父親っぽい事をしてきた。

 その為父親としての父性も持ち、娘に冒険者なんていう危険な仕事をさせられるか、という思いがある。

 そも冒険者はモンスターを倒す職業でありモンスターの王みたいな魔王である自分とは敵対するような職業である。

 

「ねぇ、いいでしょ?」

 

 こうしてカレンが冒険者に成りたいというのはこれで三度目だ。

 言い始めてから三日になる。

 初日と二日目は危険な仕事で危ないからという理由で遠ざけていたが、三日目となると同じ理由で断り続けるのにも無理が出てくるだろう。

 

「駄目だ、危険だ」

「けど私ももう十二歳だよ? そろそろお仕事探した方がいいんじゃない?」

 

 世間一般では十六歳が成人であり、独り立ちする年齢だ。

 それを考えれば後四年というのは長いようで短い年月である。

 

「それならば余の仕事を引き継げばいい」

「お父さんの仕事ってただ村とか見て回るだけじゃん。そんなのつまんないよ」

 

 レイの仕事は今だ支配下にある村や町に赴きそこで起きた問題を解決する事だ。

 食糧難だったり就職難だったり若者の仕事離れだったり。

 そういった支配下で起きた町村で起きた問題を解決するのが魔王の仕事だ。

 その対価として魔王は多少の金銭を得ている。

 

 だが、支配下にある町村は十個であり、大規模な街一つと村九個しかない。

 

 となれば大抵の問題は自力解決可能で魔王まで問題が届くことの方が少ない。

 そも魔王まで話が言ってもじゃあ配下を出すか、と命令を出すのが魔王の仕事だ。直接魔王が動く仕事の数なんてほとんどない。

 支配もいわば有名無実化しかけている。

 

 そも魔王はかつて勇者に打ち取られたとされており、今でも支配下にある町村がある時点で凄いのである。

 

「そうはいっても、重要な仕事だぞ?」

 

 一応魔王の支配下にあるんだぞ、というアピールで三か月に一度のペースでレイは街を見て回ったりする為仕事もあるにある。

 

「でも見て回るだけじゃん」

「……まぁそれはそうなんだが」

 

 それを言われると反論のしようがない。実際見て回るだけなのだから。

 

「その点冒険者なら依頼を受けて達成して人に感謝されお金も手に入る! いいことづくめだと思わない?」

 

 カレンはニコニコとした笑顔で話す。

 その笑顔にレイは毒気を抜かれる。

 そしてついに、折れる。

 

「……わかった。冒険者に成るというのを認めよう」

「やった!」

「ただし、うちで一人前と認められてからだ」

「え~」

 

 その言葉にカレンは露骨に嫌な顔をする。

 すぐさま冒険者として活動したかったのだろう。子供としてはすぐさま動きたいものだ。

 

「これだけは守ってもらうぞ。せめてレベル三十は超えてからだ」

「……は~い」

 

 レベルというのは強さの指針の一種だ。

 戦闘力以外に料理人や鍛冶師としてのレベルもある。

 戦闘職間でレベル差が十もある相手だと戦いが成立せず一方的に負けるとされている。

 基本的にレベル十までが常人が到達できる限界値とされており、大多数の人間は其処で止まる。

 そこから才あるものが二十まで行き、ごく一部の天才が三十に行く。

 四十にまで行くとそれは人外の領域であり、人類の到達点其の物だ。

 五十は世界全体で見て両手の指で数えられる程しかない超越者の証。国一つ滅ぼすのも夢ではない。

 

 その為レイが提案したレベル三十というのは遠回しな諦めろという言葉であった。

 

「わかった! レベル三十なんてすぐ超えて、レベル五十とか、いっそのこと百まで上がってやる!」

「その意気はよし」

 

 尚魔王レイのレベルは九十七。化け物の領域である。

 国どころか人類殲滅も夢ではない。

 

 

 

 

 ■

 

 

「という訳で特訓です、お嬢様」

 

 魔王城には中庭が二つある。

 庭園として使われている見た目に拘った場所と訓練所として使われているのの二つだ。

 今いるのは訓練所の方で大地は砂。奥には等身大の木人形や的が設置されている。

 

 レイとカレン、そしてライカードという執事とメイド長のヌルの四人はその中庭に集まっていた。

 

 ライカードは執事らしく執事服を着た男だ。

 身長は百七十五センチ。黒髪緑目の優男と言った雰囲気のホムンクルスの男である。

 手には木剣を持ち、堂々と佇む様は様になっている。

 

「ふふん。見てなさい。私がけちょんけちょんにやっつけてやるわ!」

 

 カレンはそう意気込む。

 カレンは動きやすい軽装服に着替えており、ライカードと同じく木剣を手にしている。

 

「どう見る?」

 

 レイは隣に立つホムンクルスのヌルに話しかける。

 レイはたちっぱで見るのもあれだから、と椅子とテーブルを持ってきている。

 黒曜石のような机と椅子だ。椅子に腰かけながらテーブル上のコーヒーを飲んでいる。

 

「そうですね。普通にお嬢様がコテンパンにやられると思います」

 

 ヌルは黒髪黒目の日本人のような容姿をした女だ。

 ゴシック系のメイド服を着ているがどちらかというと和服のが似合う美人である。

 

「辛口のコメントだな」

「私はただ事実を述べたまでです」

 

 そんな話をしているうちにカレンがライカードに向かって斬りかかる。

 走り方すらなっていない突撃だ。逆に避けない方が難しい。

 

 当然本職の戦士でもありレベルにして三十はあるライカードにとってみれば容易すぎる攻撃だ。

 ライカードは木剣でカレンの木剣を弾き、頭を木剣で叩いた。

 

「いたーい!」

 

 カレンは叩かれた事で痛くなった頭を抱えながら叫んだ。

 

「もっと優しくてもいいじゃない!」

 

 カレンはそう涙目で訴える。

 

「いえ。痛くしないと覚えないので」

 

 ライカードはにっこりとそう微笑む。

 

「冒険で死ぬのは余が困るからな。死なない程度にスパルタで頼むぞ」

「畏まりました。主様」

 

 ライカードはそう主であるレイに向かって一礼する。

 

「さてお嬢様。実戦方式です。痛くいきますよ」

「……やってやろうじゃない! 今日中に逆転してやるんだから!」

 

 カレンはそう意気込んだ。

 

 

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