レイは護王の玉座に座り魔眼を行使する。
レイの額に三つ目の黒い目が現れぎょろぎょろと動く。
護王の玉座は巨大な黒い結晶が玉座の形に変えた物だ。
玉座には何かの太いケーブルが数本伸びており地面と繋がっている。
護王の玉座は魔王城が所持する神器の一つだ。
効果として設置した建造物をあらゆる攻撃から守るという物がある。
攻城兵器による破壊や情報系魔法による探知まで完全に防ぐ事が出来る。
その椅子に座りレイは奪った
千里眼は対情報系魔法に守られていない場所ならばどこでも見る事が出来る
更にはカウンター系の魔法に対して弱いというのもあるが魔王城は護王の玉座に守られているので魔王城内で千里眼を使うのは問題ない。
見る理由は特には無い。暇なときにこうして世界を見るのも趣味の一つとなりつつある。
「おとーさん!」
そうしていると玉座の間にいつぞやのようにカレンが入って来る。
レイは魔眼を閉じ顔を向ける。
「どうした?」
「えへへ、今日はおとーさんにプレゼント持ってきたんだ!」
その言葉にレイは驚く。
娘からの初めてのプレゼントに驚きを禁じ得ない。
「これ! 次元追跡無効のネックレス!」
カレンは無色透明の小結晶が着いた銀のネックレス、先日買ったネックレスをレイに手渡す。
レイは恐る恐る受け取る。
「……ありがとう。カレン。大切に使わせてもらおう」
「ん! そうしてね!」
レイはネックレスを首から下げる。
「さ! 今日も冒険者として仕事しよ!」
■
カレンとレイが冒険者として仕事をし始めて一ヵ月が経った。
その間既に白金級冒険者として幾つも依頼を受けて問題なく達成してきている。
カレンとレイは朝の八時ごろ、冒険者ギルドのクエストボード前である依頼を探す。
五分程探し、目当ての依頼を見つけ出す。
二人が受けたい依頼はストームという街までの護衛依頼だ。
ストームは首都エルフェリアまでの道中に必ず寄らなければならない街である。
森の中にある街であり領主が高位のスライムであることで有名な街だ。魔王討伐後に魔王の奴隷だったスライムが立ち上げた街である。
その為領主は魔王レイの顔を知っているがレイは覚えてないし、カレンはそのことを知らない。
二人が何故この依頼を受けようとしているのかというと、そろそろ初心者を脱却するからだ。
そも本当の初心者は登録時点でレベル三十も無いが。
兎も角冒険者として一ヵ月活動し、レベルも上がった。となればそろそろ次のフェーズに進むころだとカレンは思ったのだ。
首都にはこの国最難関のダンジョンがある。其処に行こうという訳だ。
「よし、じゃあ行こうか」
カレンは依頼書をとり、受付へと進む。
受付嬢に依頼書を渡し受注処理を済ませる。
「はい。護衛依頼ですね……はい。受注処理が終わりました。一時間以内に依頼主であるパオロさんの所に行ってくださいね」
「わかりましたー」
問題も無く二人はギルドから出る。
「初めての長期期間の依頼だから、まずは食料買わないとね! 干し肉とか!」
カレンはワクワクとした目でレイに話しかける。
「
「あっそっか……けど干し肉も食べたくない?」
「……カレンが食べたいというのなら買おうか」
この魔法をかけることで食料品は年単位で腐らずに保存できる。
この魔法がかかったバッグをレイは持っておりアイテム名を
その後二人は食料品店により、一週間分の食料とおやつを買ってから目的地である乗合馬車まで向かう。
街の門近くにその場所はある。
馬車が数台集まっている。馬車はどれも帆の付いた形の馬車だ。
馬車に乗る人間と護衛の鉄級冒険者達が集まっている。
がやがやとあるグロウムを前に何か話している。
「すいませーん! ギルドから依頼を受けた冒険者なんですけどー!」
カレンはグロウム──パオロに向かって話しかける。
その声に反応しグロウムは「おおっ!」と顔をこちらに向ける。
「まさか白金級冒険者のお二人が依頼を受けてくださるとは! お噂は聞いていますよ!」
グロウムの男であるパオロは笑みを浮かべる。
「それはどうも! ちゃんと護衛しますのでご安心ください!」
カレンはふふんと胸を張る。
カレンはこの一ヵ月でレベルアップを果たした。今のレベルは三十八だ。
もう少しで黄金級に手が届くレベルである。
「あんたが噂の黒風のお二人か? 親子で冒険者してるってのは本当なのか?」
カレンとレイを見たさに他の冒険者たちも寄って来る。
「そうですよー。といってもいつかは父から独り立ちして見せますからね!」
「白銀級に成るまでは認めんからな」
「……子供思いなんですね」
駆け寄って来た冒険者は精一杯言葉を選んで発言した。
「我々はスティールリーフ。見ての通り鉄級冒険者だ。俺はリーダーのマッシモだ」
マッシモは皮鎧に魔法効果の付いた鋼鉄の剣と普通の鋼鉄の盾を持つ冒険者だ。
「初めまして、白金級冒険者のカレンです。こっちは父のレイです」
「よろしく」
「ああ、よろしく頼む。二人はどちらが前衛だ?」
「一応余が前衛やっているな」
「じゃあ二人一緒か、分けるかどっちがいい? こちらとしては役割分担して貰った方がいいが……」
「私が後衛側行きますね、魔法も使えるので」
カレンはつい最近第六環魔法まで使えるようになっている。
といっても第六環魔法はまだ三つぐらいしか使えないが、それでも強力な切り札になるだろう。
「わかった。では行こうか」
という訳で一行は乗合馬車に乗った人を乗せて出発する。
カレンとレイ、スティールリーフは馬に乗って移動する。
乗馬の練習自体はしている為問題なく行える。また魔王城には飼っている魔獣の馬もいる為レイも問題なく乗る事が出来る。
冒険者たちは馬に乗って馬車を囲うように動く。
レイは馬車の前方に。カレンは後方に位置する。カレンと離れることにレイは口を尖らせたが諦めた。
そうして歩いていると暇でもある為冒険者が話しかけてくる。
馬に乗って横にやって来て話しかける。
「なぁ、なんで親子で冒険者なんてしてるんだ?」
話しかけてきたのはスティールリーフの槍使い、トリアだ。
青い髪に青い瞳をする好青年といった雰囲気の男だ。軽装鎧を身に纏っている。
「娘が冒険者に成りたいといいだしてな。娘一人、冒険者なんて危険な事をさせる訳にはいかないだろう」
「まぁ確かに冒険者は危険な職業だが……白金級もあるんだ、充分じゃないか?」
白金級とは国に二桁に届かない程度いる程度の冒険者だ。
グラキエラ公国には白金級冒険者パーティが二つある。
どちらも四人構成のパーティであり白金級冒険者の数は八人だった。これにカレンとレイが加わり十人になった。
他の国もだいたい同じ様なモノだ。
大半の冒険者は鉄級で止まる物だ。其処から一つランクが上がるだけでも大したものなのである。
鉄級から鋼級、更にその上の白金級ともなれば将来安泰、まず身に危険が及ぶようなことは殆どないと言ってもいいだろう。
だがダンジョンは別だが。ダンジョンは誰であっても危険だ。白銀級のような逸脱者は別だが。
「この世にはまだ危険がたくさんある。竜に襲われる可能性もあるからな」
「ドラゴンが襲撃するなんてまずないと思うが……魔王軍の時代は終わったんだぜ?」
二百年以上前、魔王だったレイは竜族を支配下に置いていた。
当時の竜王のレベルは八十五と高かったが装備と<五視の魔眼>に<肉体操作>の
その為竜王を力で支配下に置き竜種その物を支配下に置いていたのだ。
まぁ勇者によって簡単に竜種は裏切って来たが。
その支配下にある間、レイは支配下に無い国等に竜を使って軍や物資の輸送をする際ついでに襲わせるようにしていたのだ。
その為に二百年前は下手に外に出ようものなら竜に襲われるのが日常に成りかけていた。
「まぁな。だが、外は危険だ。こうして護衛を付けねば街から街への移動もままならん」
「ま、モンスター共の襲撃はよくある事だからな……」
とはいうが。モンスターたちも馬鹿ではない。
こうして武装した集団に守られている集団を態々襲おうとする者は稀だ。
モンスター、ゴブリンや
逆を言えば当然護衛を付けず外に出れば普通に襲われて食い殺されるが。
「ところであんたはモンクか? 結構強そうだよな」
モンクとは気を遣う拳闘士の事だ。
実際レイはモンクのクラスを持ち
「ああ。モンクとしても結構戦えるぞ。実戦の機会があれば見せてやろう」
レイはコミュ障という訳ではなく、結構普通に人と話せる。魔王として君臨していたのは伊達ではないのだ。
その後も他の冒険者を交えて雑談を交わす。
勿論警戒は怠らない。弓使いのジャロッドやシーフのシェイドが今も探知している。
が、道中無言というのも気まずいので一行はそれなりに会話しながら進んだ。
■
夜になって野営をする事になった。
7泊8日の道中である為泊まるのも承知でカレンとレイは依頼を受けている。
尚昼食は無い。あるとしても干し肉をそのままかじる等の簡単な物になる。
二人は飲食不要の指輪を付けている為問題はない。
「私たちは少し離れた所にテントを張ろうと思うんですけど、いいですか?」
「構いませんよ。
アラームとは第一環魔法の結界魔法の亜種だ。
指定した範囲内に生物非生物問わず何かが入ってきたらけたたましい音を鳴らす魔法だ。
「ありがとうございます。おとーさん!」
「ああ、いこう」
カレンはレイを連れて少し離れる。
そしてレイは
レイは可搬の館を地面に放り投げると家が出現する。
二階建ての木造の家だ。作りは頑丈そうである。
「これは、可搬の館?! たっかいもん持ってんねぇ!」
マッシモが驚きの声を上げた。
可搬の館は結構有名なアイテムだ。
王族が使うような
家は水道冷暖房完備で冷蔵庫型の
家の中にも物資を入れておくことが出来るという便利な
「じゃあ私たちはこっちで寝泊まりするんで!」
「お、おう……実は俺たちも入れてくれたりは……」
マッシモは一途の希望を胸に問いかける。
「私はいいけど……」
「……」
だがレイが露骨に嫌な顔をする。娘が泊まる家に余所者を入れてたまるか、という顔だ。
「いやすまん。大丈夫だ」
レイの顔を見たマッシモは大人しく引き下がった。白金級冒険者の不興を買いたくはないのだ。
二人はドアを開けて可搬の館の中に入る。入ってすぐは玄関だ。
二人は靴を脱いであがる。今更だがこの大陸の人間は家には靴を脱いで上がる。
二人はリビングに移動し、繋がっているキッチンにまで移動する。
「私も手伝うよ」
「そうか。じゃあ野菜を切ってくれ」
二人はそのまま野菜炒めを作る。
冷蔵庫は冷やす機能に加え
その後二人は晩飯を作り、普通に食べた後一泊した。