その後、三日ほどは何の問題も無く一行は進んだ。
途中からは可搬の館に他の者を泊めたりもしたり、晩飯を持ち寄って食べたりなど。
問題は四日目の昼に起こった。
「──何かが来る!」
一行は平原を進んでいた。地平線が見える様な平原で、遠くに山等も見えない平原だ。
最初に気づいたのは探知系に優れたジャロッドだ。
その言葉に馬車を止め、冒険者たちは馬から降りる。
「東の方角だ!」
その言葉に全員東を向く。
「確かに来るな」
人より優れた視力を持つレイは直ぐに見えた。
レイの視力は十二はある。<肉体操作>の
やって来るのは
ゴブリンは緑色の肌に人の子供程度の背丈を持つモンスターだ。
奥には一体鉄の武装を纏った
「あれだけの規模となると、まずいな……!」
マッシモが緊張の面持ちで呟いた。
まず間違いなく負ける戦力差だ。ゴブリンや
だが、とマッシモはカレンとレイを見る。
白金級冒険者のこの二人が居れば問題はない、とも思う。
「エイシャとジェイドは馬車に残って護衛! 残るメンバーと黒風の二人はモンスターたちを迎撃だ!」
了解! と全員の了承の言葉が放たれる。
「奴らが来る前に私がバフ魔法かけるわ!」
「お願いします!」
全員陣形を整えつカレンが魔法を唱える。
「
その他多数のバフ魔法をかける。
筋力値上昇にスピード上昇攻撃両上昇に全ダメージ耐性など盛れるだけ盛っておく。
これにより戦闘力は1.4倍になる。
バフを盛っているとモンスター集団は走ってこちらに寄って来る。
「行くわよ!
カレンの左手から火炎球が放たれる。
バスケットボール程の大きさの火炎球はモンスター集団の真ん中あたりに着弾し爆発する。
効果範囲は広い。
今のでゴブリン九体が死に
「突撃ぃ!」
マッシモがそう叫び剣を抜いて突撃する。
続いてカレンも突撃し、マッシモを追い抜く。
「せやぁぁあぁ!」
横なぎに振るう事でモンスター軍を一刀両断しようとし──途中でその刃は止められた。
「?!」
「良い剣だ!」
止めたのは武装した
鉄の鎧を纏い鉄の両刃斧を持つ
すぐさまカレンは後ろに飛び距離をとる。
「お前たち! 手を出すなよ、俺の獲物だ!」
ひときわ強い気配を放つ
(──強い)
すこし剣をぶつけただけだがそれでも相手の強さをカレンは実感する。
体感だが自分と同等か少し下程度だろう。レベルにして三十五は超えているに違いない。
これまでにない強敵を前にカレンは武者震いをする。
これまでは格下としか戦ってこなかったがここにきての同格クラスの敵だ。これぞ冒険者らしいと奮い立つのも仕方がないだろう。
「人間! 名乗れ! 俺はグアル!
名付けるならば
名乗りを返す必要はないがカレンも乗る。
「私はカレン! 白金級冒険者よ!」
「白金……確か冒険者で言う強さの順位か。それがどれだけすごいかは知らんが、俺に食われるだけの価値はあるだろう。お前を殺し、喰らい、その強さを得てやろう!」
「やってみなさい!」
そう言いながらカレンは
<肉体向上>に<肉体超向上>。これでカレンの身体能力は高まる。
「<超斬撃>」
「<受け流し>」
カレンの<超斬撃>の
カレンは果敢に攻め立てる。
<四連撃>の
流石にこれは防ぎきる事が出来ず、グアルは三撃受ける。
負けじとグアルも同じく<四連撃>の
戦斧の四連撃をカレンは剣を持って防ぐが、一撃腹に貰ってしまう。
「──殺す」
それを遠くから見ていたレイが殺意を持って一歩グアルに近づいた。
レイは
「お父さんは来ないで! 私が倒す!」
だが娘の強い言葉にレイは動きを止め、背後から
頭に受けたがレイの頑丈さによってノーダメージである。逆に
「…………」
レイは背後に腕を触手に変え攻撃し
もし娘が致命傷でも受けようものなら即座にグアルを殺しに行く為だ。
カレンは後ろにジャンプし距離をとる。
「
使うのは<空斬>の上位
最近覚えたばかりの
カレンの剣から飛ぶ斬撃が放たれる。
「むぅん!」
グアルは向かってくる飛ぶ斬撃に対し戦斧で迎撃する。
戦斧と<空裂斬>が衝突し跳ぶ斬撃は霧散した。
だがその程度カレンは予想の内だ。
「
使うのは同じく最近覚えた第六環の攻撃魔法
これは雷を対象一体に落とす魔法でありダメージ量も高い。
グアルに空から雷が直撃しグアルの体を焼き焦がす。
ダメージ量としては実際に雷の直撃を受けたのとそう変わりなく、普通の生命ならまず即死する。
だがここは超常渦巻く世界であり、雷の直撃を受けた程度ではカレンもレイも大したダメージを受けない。
そしてそれはカレンとほぼ同格のグアルも同じだ。
「くっ……」
そもそもカレンの魔法攻撃力は低い。
能力を戦士と魔法使いに別けているからだ。魔法戦士というのはどちらかが疎かになりがちなのである。
それでも魔法戦士の道を歩んだのは魔法を使えた方が便利だからだ。転移魔法や飛行魔法等使えたら便利な魔法が多い。
「<肉体向上><肉体超向上>!」
グアルは続けて
カレンとのレベル差とバフ魔法、
グアルは続いて<瞬歩>の
敵との距離を縮める
「<斬撃>!」
グアルはそのまま
カレンは咄嗟に横に避ける事で回避する。
「<超斬撃>からの<空斬>!」
カレンは同時に二つの
これにより<空斬>に<超斬撃>のダメージも乗る。
この剣をグアルの体にぶつけることで飛ぶ斬撃のダメージプラス直接斬った分のダメージがグアルに入る。
グアルの体が斬り裂かれ、血を流した。
「ぬぅぅぅうぅ……<狂戦士化>!」
グアルは続いて切り札を切った。
<狂戦士化>の
時間経過か一定量のダメージを受けることでのみ解除される
「オオオ!」
「ちょ、<八連撃>!」
グアルの猛攻に対しカレンは<八連撃>の
<八連撃>は名の通り同時に八回攻撃する
カレンはどうにか剣で弾いたり避ける事でグアルの猛攻を凌ぐ。
「……流石に……いや……」
苦戦する様を見てレイは手を出すべきか悩む。
グアル程度本気のレイならば即座に殺せる程度の敵だ。
だが、カレンの楽しそうな顔を見て動きが止まる。
カレンのこれまで見せた事の無い楽しそうな表情。猛攻を受けているというのに笑っている顔を前に娘の楽しみを奪うのはな……と止まるのだ。
「ちょっとレイさん! 観戦辞めて戦ってくれません?!」
そこにマッシモが抗議の声を上げた。
今は戦闘の真っ最中である。戦ってるのはカレンとグアルだけではないのだ。
「すまんな。今動く」
レイはちょっと本気になって動く。
両腕を触手に変えぶん回す。
これだけでレベル四十以下は死ぬ。実質即死攻撃だ。
更には攻撃範囲も最大五十メートルというクソでか範囲を持つ。
ダッシュで戦場を走りながら触手をぶん回す。それだけで戦場に残っていた少ない
「つえぇ……」
「これが白金級冒険者の力か……」
残るスティールリーフの面々がレイの強さを見て絶句する。
「これでいいだろう」
「いやいいが……強すぎないか、あんた」
「気のせいだ」
レイはそういうとカレンとグアルの戦いに目を向ける。
カレンは何とかグアルの猛攻を凌いでいた。
怒涛の連撃にカレンは攻撃の隙を見つけ出せないでいた。
カレンは後ろにジャンプする。
地面に着地、と同時に
<跳躍>は名の通り大ジャンプする
グアルの頭上を跳び、背後に着地する。
そのまま振り向きながら<魔力鋼刃>と<超斬撃>に<四連撃>の
伸びた刀身によってグアルの体が斬り刻まれた。
「かはっ……」
流石に大ダメージを受けた為狂戦士化が解け、グアルは倒れた。
倒れたグアルの首横にカレンは剣を向ける。
「終わりね」
「……あぁ。殺せ」
カレンは剣を振るい、グアルの首を跳ね飛ばした。
「……緊張したぁ」
はぁ、とカレンは溜息を吐いた。
これまでにない強敵だった。一歩間違えれば自分も危うかっただろう。
そこにレイが近づき、ぽんと頭に手を置く。
「よくやったな、カレン」
「……うん!」
にへら、とカレンは笑みを浮かべた。
「それじゃあ、この死体の山を何とかしないとね……」
カレンは
死体を放置する、というのは無い。放置すればアンデッドとなって蘇りまた被害を出すからだ。
「カレンさんは
「装備の剥ぎ取りはどうします?」
「あの頭だった
という訳でカレンはグアルの死体を漁る。
「
カレンの鑑定魔法によってグアルが身に着けていた装備品の内容が分かる。
鉄の鎧は棘の鎧という
変異種辺りは魔法をたまに使うが、それだって
となると何処かで奪ってきたアイテムという事になる。
「カレンさんが倒したし、そのままカレンさんの物ってことでいいですよ」
マッシモはそう言った。
こういった場合取り分でもめる物だがマッシモはそういうのはせず倒した者の物でいいと言う。
「わかりました、じゃあ私の物ってことにします」
カレンは
すると棘の鎧はしゅるしゅると人が着れる程度にまで小さくなる。
これは
小さくなった棘の鎧をカレンは腕輪に仕舞う。
そのままカレンとレイ、スティールリーフの面々は死体を一か所に集める。
「
そしてカレンが魔法を唱え、死体を焼くことで処理した。
その後問題なく一行は移動を再開した。