魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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十四話 交流

 

 カレンは上機嫌でストームの街を歩く。

 向かう先はルセクアやネレヴィアには無かった劇場だ。

 娘の機嫌がいいと父であるレイの機嫌も良くなる。

 

 何気カレンが行った事ある街はネレヴィアとルセクアだけだったのでこういった大きい街に行くのは初めてなのだ。

 劇場というのは大きな街にしかない物である。

 

 そうして二人でどんな劇をやるのだろうかと話していると劇場に着く。

 

 劇場は広く、大きい。

 受付にチケットを見せる。

 

「プレミアムチケットですね。特別席に案内します」

 

(なんだ、プレミアムだったのか。リオナも気が利くじゃないか)

 

「プレミアムだって! 凄い!」

 

 カレンは更に機嫌を抑止受付の男に案内されるがまま劇場内を進む。

 案内された席は二階の特等席であり劇が最も見やすい席だ。

 

 二人は座って劇が始まるのを待つ。

 

 十分程待てば劇が始まる。

 

「勇者リナ・フェイルーンはある農村に舞い降りた──」

 

 そこから始まったのは勇者リナが魔王を打ち倒すまでの話だ。

 自分の事でレイは面食らい固まり、カレンは父が倒されるまでの話とは思わず固まった。

 

 だが劇は劇だ。取りあえず楽しもうかと見守る。

 

 

 

 

 ■

 

「え~と……面白かったね?」

 

 カレンは父の顔を恐る恐る見ながら感想を言う。

 

 二時間弱の劇が終わり二人は劇場の外に居た。

 

「まぁ、うん。面白かったな。勇者の奴の誕生経緯等知る気も無かったが、まぁ知れてよかったというか……」

 

 レイにとっては自分が倒されるまでの話等聞いてどうすんだ、と頭を悩ませる二時間だったが劇の質はよく、面白いと素直に感じる事が出来た。

 

 時刻は夕方に成りかけてであり夕陽が顔を出している。

 

 二人は領主の屋敷に向かって歩く。

 

「おひさー」

 

 瞬間、レイの肩に手が置かれる。

 

 レイは瞬時にを振るい肩に手を置いた者の頭をぶん殴る。

 しまった、と思った時にはもう遅い。相手の頭ははじけ飛んでいた。

 

「お父さん?!」

 

 街中で何するの、とカレンが悲鳴を上げる。

 だがその悲鳴よりレイは肩に手を置いた者について考えていた。

 

(俺の探知をすり抜けて来た?)

 

 レイは常時発動型(パッシブ)特殊能力(スキル)として生命の探知能力を持つ。モンクの特殊能力(スキル)の一つだ。

 その能力でも肩に手を置かれるまで気づけなかったのだ。

 可能性は三つ。一つはそもそも生命ではないアンデッドやゴーレム等の種族。もう一つは高位の探知阻害の装備品を持っているか。最後の一つは肩に手を置く瞬間まで存在しなかったかだ。

 

「酷いじゃないですか。久しぶりの再開だというのに」

 

 肩に手を置いた者は顔を再生させながらそう発言した。

 

「……アルトか。なんだ、其方ここに居たのか」

 

 その顔を見て納得した、とレイは呟いた。

 

「お、お父さん大丈夫? 捕まらない?」

「生きてるから捕まらんだろ」

 

 レイは雑な発言をする。生きてりゃノーカンである。

 

 肩に手を置いた女──アルト・アンティークは優雅に一礼した。

 

「初めまして、レイの娘であるカレンさん。私はアルト・アンティーク。しがない悪魔でございます」

 

 悪魔は本来召喚魔法を使われない限り現世に存在できない。

 だが例外というのはいつの世もあり、その例外の一人がアルトだ。アルト以外にも例外はいるが。ネレヴィアの領主等。

 

 アルトは容姿端麗な美女だ。

 身長は百七十五センチ。胸はそこそこある方。

 黒い服に黒いコートを着ており、外見は黒ばっかりだ。

 肩まで伸びている髪は黒であり着やめている。目は赤。左目には骨で出来た仮面を付けている。

 微笑む様は美しく、少年少女は魅了されるだろう。

 

「悪魔……」

 

 カレンは初めて会った悪魔という存在を前にどう対応したものか悩む。

 

「それで? 余の魔王軍をさんざん削ってくれた其方が何用だ?」

「いやー、今の私ってリオナ様に仕えてるんですよね。なのでまぁ客人である貴方たちの護衛って訳です」

「余に護衛が要らない事など承知だろうに……いや。それも領主の役目か」

「お父さん、魔王軍を削ったって……」

「ああ、私傭兵でして。魔王軍全盛の時代は魔王軍側についてたんですが竜王が倒されるとそっこーで裏切って魔王軍虐殺しまくりましてね」

 

 アルトはいえーいとピースをする。

 

「まぁそう言う契約を結んでたのだから別に気にはせん。いこうか」

 

 レイは微塵も気にせず屋敷へ行こうと歩き出す。

 

 レイは魔王軍が倒されたのは当然であり、そもそも打倒される前提で魔王軍を運営していた。

 最初こそノリと勢いで作り上げた魔王軍だが、最終的には人間に打ち倒される前提で動き続けていたのだ。

 アルトの顔を見たことで懐かしく思いながらレイは歩く。

 

「ねぇ、昔のお父さんってどうだったの?」

 

 カレンは興味が尽きないと言った様子でアルトに話しかける。

 

「それはもう凄かったですよ。街に行けば配下を生み出し蹂躙し、女子供を殺し尽くし……」

「娘の教育に悪いことを言うな」

「けど事実じゃないですかー。ていうか娘さん見た所十六超えてるんじゃないですか? 独り立ちさせましょうよ」

「白銀級に成らん限り独り立ちはまだ先だ」

「それ随分遠い事言ってますね……」

 

 等と三人は話し合う。

 

「ねぇ、アルトさんはどんな仕事してたの?」

 

 道中カレンが問いかけた。

 

「私は自分配下のモンスターを使って街やら人間の軍やらと戦っていましたねぇ。私大軍操作型なので」

「指揮官系ってことなんだ。へぇー」

 

 この世界で指揮官に着く者は特殊な特殊能力(スキル)等を会得する事が多い。

 レイも持つ<念話>の特殊能力(スキル)だったり配下の強化能力だったり、配下との視界共有等だ。

 極まった者は自分の配下を文字通り手足のように扱う事さえ可能とする。

 

「レイさん直属の部下、見たいな扱いであれこれやらされてましたねぇ。懐かしい」

「それを望んだのは其方だろうに」

「えぇ。誰かの元で働く事こそ生きがいですから」

「……変わってるんだね」

「悪魔ですから」

「ところで、頭殴られたの治ったけど、魔法道具(マジックアイテム)?」

 

 話題はアルトの再生能力に移る。

 カレンは気になっていたのだ。父に頭を弾け飛ばされたというのに何事も無かったかのように振る舞うアルトが。

 

「ああ。私の固有(ユニーク)特殊能力(スキル)ですよ。<万軍操者>ていう特殊能力(スキル)でして、この特殊能力(スキル)で生き返りました」

「生き返った? 死んでたの?」

「えぇ。私程度ではレイさんの攻撃に耐えれませんから」

「それもそっか……凄い特殊能力(スキル)なんですね」

「えぇ。この特殊能力(スキル)のおかげで傭兵やれています」

 

 アルトの<万軍操者>は強力な固有(ユニーク)特殊能力(スキル)だ。レア度で言えばレイの固有(ユニーク)特殊能力(スキル)に匹敵する。

 この特殊能力(スキル)は対象を殺害すると対象を自分の支配下に置くことが出来るという物だ。

 また自分の支配下にある者が殺した者も自分の支配下に出来るという鼠算式に配下を増産出来る特殊能力(スキル)でもある。

 この特殊能力(スキル)の能力の一つに残機復活がある。

 自分の配下を消費する事で死を回避する事が出来るのだ。先程殺されたがこの能力で即座に復活した、という訳である。

 アルトの支配下にある者は実に億に届く。億回アルトを殺さねば殺されないのだ。

 更には配下にした者は自分の体内に格納出来るためその場でモンスターを解放する、と言った事も可能だ。

 アルト自身の戦闘力はレベル二十程度しかないが配下に居るモンスターはレベル八十や九十もいる。戦闘能力では勇者にも劣らないだろう。

 

 そうこう話していると屋敷に着く。

 

 堂々と門をくぐり屋敷の庭を通って中に入る。

 

「ただいま戻りましたー」

 

 アルトはそう声を出す。

 声を聞いて屋敷の者が出てくる。ダリアだ。

 

「お帰りなさいませ。夕食の準備が出来ています」

 

「そうか。ご相伴にあずかろうか」

「はーい」

 

 三人は靴を脱いでスリッパに履き替え屋敷の廊下をダリア案内の元歩く。

 

「つきました」

「……和室か」

 

 案内された先は和室だ。

 引き戸を開け中にスリッパを脱いで上がる。

 カレンはレイが脱いだのを真似て脱いで上がる。

 

 和室は広く、十六畳以上はあるだろう。

 部屋にはお膳が五つ置いてある。

 お膳には和食が置いてあり、出来立てで実に旨そうである。刺身定食だ。

 

 部屋には既にリオナが居り、カレンを見てほほ笑んだ。

 

 この国、というかこの大陸には和食の概念がある。

 三百年前の賢王が齎した知識の一つだ。

 この国は海と隣接していないが隣国のリュミナス聖王国から基本輸入している。

 冷蔵の魔法道具(マジックアイテム)を使って冷やし、<保存>(キープ)の効果を持つ魔法道具(マジックアイテム)で輸送されてくる。

 リュミナス聖王国とは列車も繋がっている為輸送もしやすいのだ。

 

 四人はお膳前に座る。

 

「んじゃあ揃った事で、いただきます!」

「「「いただきます」」」

 

 いただきます、の概念もこの国にはある。特に賢王の影響が強いのがこのグラキエラ公国だ。

 

「おいしい……」

 

 カレンは刺身を食べ、その美味しさに驚いた。

 何気初の刺身でもある。魔王城では基本洋食しか出ない。

 

「だろ? この魚はうちで養殖してるんだ」

 

 本来ならば出来ない事である。だが魔法道具(マジックアイテム)でそう言った問題を解決していた。

 刺身で食えるのは海水魚だけだが湖の一部を魔法道具(マジックアイテム)で海と同じ環境にし転移魔法で魚を生きたまま輸送し湖で養殖をしているのだ。

 ここまでした訳はリオナが刺身や寿司食べたかったからである。

 

「うち自慢の魚だ。堪能してくれ」

「はい!」

 

 そうして一行は楽しい食事を堪能した。

 

「しかし懐かしいな。こうして顔を合わせるのは実に二百年ぶりか」

 

 食事を終えたレイが唐突に口を開いた。

 

「そうですねぇ。もう会う事はないと思ってたんですが……」

 

 じみじみとアルトは酒を飲む。

 

「そう言えば、何故其方はここで領主をしているんだ?」

「あ、それについては──」

 

 

 そうして三人は過去話をしてしまった。

 カレンは話についていけないので一人離れる。

 それを察したダリアがカレンに近づく。

 

「馴染めないですか?」

「ダリアさん……はい。見た事無い父の顔を見ると、ちょっと……」

 

 カレンは父レイの顔を見る。

 其処には確かな笑みがあった。これまで見た事の無い顔だ。

 旧友──というには上下関係があるが兎も角古い知り合いと会ったことでレイも心が躍っているのだろう。

 

「では我々も行きましょうか!」

「え、でも……邪魔するのは悪いんじゃ……」

「いーえ! のけ者にする方が悪いんです! さ、行きましょ!」

 

 ダリアはカレンの手を引いてリオナの元まで行く。

 ダリアは背後からリオナに抱き着き、その豊満な胸をリオナに押しつける。

 

「リオナ様、私達の事もちゃんと見てください!」

「……ああ、悪いな。けど……」

「別に話しても良かろう。誰かに言いふらす様な者を部下にはしてないだろう?」

「……そうだな。俺が魔王軍に所属してたってのは昔話したよな。んでこのレイさんはその魔王なんだ」

「紹介された魔王だ、よろしく」

 

 レイは酒を飲む。

 飲むのは日本酒だ。

 レイはウィスキーも飲むし日本酒も飲む。芋焼酎も飲む。

 だがビールやワインは飲まない。口に合わないのだ。あとビールは炭酸が苦手なので飲まない。

 

「魔王! 二百年前に勇者に倒されたという……案外普通の男性なのですね」

「……物語でどれだけ脚色されてるか気になってくるな。まぁそれはいいとして──」

 

 その後五人は色々と話した。魔王軍時代の事や、今までの事、これからの事について──

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