魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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十七話 ボス戦

 

「よし。じゃあ作戦会議といきましょう」

 

 四日後。昼頃に黒風の一行は第五階層のボス部屋前で休憩をとっていた。

 

「まずは私が攻撃魔法をぶち込んで突撃。その隙にエルミナがバフ魔法で支援。お父さんが攻撃してデヴォンがかく乱……でいいわよね」

「ああ。それで問題ないぜ」

「私も構いません」

「余も問題ない」

 

 一行は保存の袋(キープバッグ)から昼食を取り出し食べつつ話す。

 

「この階層のボス、シルメリアはレベル二十五のボス……気合入れていくわよ」

 

 レベル二十五となるとカレン一人でも余裕なぐらいには弱い。

 だがダンジョンのボスは時にダンジョンギミックを駆使しレベル以上の強さを発揮することがある。

 今のところシルメリアにそう言ったギミックがあるとは聞いてないが、それでも警戒するに越したことはない。

 理想は初手のカレンの突撃時に特殊能力(スキル)を使って即死させれればよし、無理ならレイが突っ込んでカレンがバフをかけつつ炎系魔法で攻撃、と言ったところだ。

 

 因みに昼食はサンドイッチである。

 レイは卵サンドが苦手なのでカツサンドを食っている。カレンは逆に卵サンドが好きだ。

 

 昼食を食べ終えると立ち上がりボス部屋の扉前に立つ。

 扉は大きい。三メートルはある。

 

「行くわよ……」

 

 カレンがドアに手をかけ開けていく。

 

 完全に扉が開くと全員中に入る。

 

 部屋は広い。体育館程の広さはあるだろう。

 当然壁も床も天井も氷で出来ている。

 部屋の中央には女が一人浮いている。

 

 白髪に銀色の瞳の女だ。

 白い浴衣を着ており、何処か浮世絵離れした雰囲気を持つ。

 体の周りには強い冷気があり凍えるような寒さがここからでも感じられそうだ。

 

「行くわよ!」

 

 カレンは特殊能力(スキル)<瞬歩>で女──シルメリアに接近する。

 同時に特殊能力(スキル)を幾つも行使する。

 斬撃ダメージ超増加の<超斬撃>に防御力貫通の<鬼断流>、確定クリティカルを与える<致命の斬撃>に相手の部位攻撃に特化し行動速度を命中すれば相手の攻撃速度を低下させる<鎖閃連理刃(させんれんりじん)>。

 同時の四つの特殊能力(スキル)行使だ。

 

 シルメリアに大ダメージが入る。

 

「オオオオォォオオ!」

 

 シルメリアは絶叫するが、何とか耐えたのかまだ実体を保っている。

 

「しぶといわね!」

 

 そう言いながらカレンは移動系特殊能力(スキル)の<後退>で距離をとる。

 

「死ぬが良い」

 

 そこに入れ替わる様にレイがシルメリアに立ちふさがる。

 何か攻撃しようとするシルメリアに対しレイは<四連連撃>の特殊能力(スキル)を使う。

 連撃系の特殊能力(スキル)は武器種に問わず使える。素手でも使えるのだ。

 名の通り連続四回攻撃する特殊能力(スキル)でありシルメリアをぼっこぼこに殴る。

 レイは常時発動型(パッシブ)特殊能力(スキル)で攻撃に魔法的効果が乗る。ダメージ量はでかい。

 その攻撃を受けたシルメリアは耐えきれず、ドロップアイテムとなった。

 

「勝利!」

「やったな!」

 

 カレンとデヴォンがいえーい! とハイタッチをする。

 

「私達もしますか?」

「……しなくてよい」

 

 エルミナがレイにそう提案するがレイは恥ずかしそうに拒否した。

 レイの歳で若者らしい行動は出来ないのである。世間はおっさんに厳しいのだ。

 

 余りにも呆気ない終わりだが、レベル差を考えれば当然の結果だ。

 レベル二十五のボスに対しレベル四十一に到達したカレンではステータスに差があり過ぎるのだ。

 

「取り合えずドロップアイテム鑑定しましょ」

 

 カレンはそういいドロップアイテムの結晶を拾う。

 ドロップアイテムは二つあり、両方に鑑定魔法をかける。

 

「あ、冷気耐性アップの指輪とネックレスだって。デヴォンにいいんじゃない?」

「確かに、俺はレベルが低いからなぁ」

 

 等と言いつ、デヴォンもレベルは上がっている。今は二十九だ。

 二レベルのアップである。

 

「んじゃあ指輪貰っとくわ。ネックレスの方は売却で」

「りょーかい」

 

 カレンは指輪の方をデヴォンに渡し、ネックレスの方を仕舞っておいた。

 

「じゃあ今日はもう帰ろうか」

「そうだね、今日はちょっと寄りたいところあるし」

「うし、じゃあ俺たちが案内してやるよ」

「ありがとう! じゃあこっちよって……<転移>(テレポーテーション)

 

 転移魔法で黒風の一行はダンジョンを出た。

 

 出た先はダンジョン前の冒険者ギルド支部だ。

 ギルド内に入りカレンはバッグに詰めたドロップアイテムを受付に持っていき売却する。

 

「はい。こちら換金量の十二万セラです」

 

 渡されたのは前の倍以上の金額だ。

 だがこれはここ数日で稼いでる平均値だ。

 なんならこのダンジョンに潜って長い者はこれ以上の金額を稼ぐ。

 

 五つに分けて一人当たり二万四千セラだ。

 稼ぐ量としてはルセクアで依頼を受けた時より多いだろう。一回の報酬は減ったが週五でこれなら上だ。

 

 カレンはレイたちの元に戻り報酬を分配する。

 

「んじゃあエルフェリア案内してやるぜ。何処行きたい?」

「教会に行こうかなって思ってるの。何気ここで祈っては無かったから」

「……そうですか。ふふ。いい事です」

 

 カレンの祈り、という言葉にエルミナがほほ笑んだ。

 エルミナは女神セラに仕える天使の一人だ。主を信仰する者は嬉しいのだろう。

 

 転移の鏡(ミラーオブゲート)で一行はエルフェリアのギルドに戻り、ギルドを歩いて出ていく。

 

「教会はこちらです」

 

 先頭にエルミナを置いて一行は教会まで歩く。

 道中レイは渋い顔をする。神と敵対する側の魔王である自分が教会に行くなんて……と思うのだ。

 

 そこから三十分程歩くことで目的地である教会に辿り着いた。

 

「でっか」

 

 思わずカレンがそう呟くぐらいにはデカかった。

 首都の教会ともなると権威の為に相応にデカくする必要があるのだろう。

 作りとしては洋風の物だ。塔が高くそびえたち、純金の鐘がある。

 

「どうぞ中に入りましょう」

 

 エルミナが上機嫌に中への扉を開く。両扉だ。

 

 中は広い。

 正方形型の部屋で奥には女神セラの石像が建っている。

 椅子などは多少置かれているが休憩用に置かれているだけでありメインではない。

 

「エルミナ様! もうお戻りになられたのですか?」

 

 入って早々男がそうエルミナに問いかけた。

 声をかけたのは黒髪黒目の眼鏡をかけた男だ。

 

「はい。仲間のカレンさんが教会に行きたいと……」

「なるほど! 今は冒険者をしていらっしゃるのでしたね。そちらの方々が仲間ですか?」

「はい。仲間にして黒風のリーダーのカレンさんとその父君です」

「よろしくお願いします」

「……よろしく」

 

 男は一瞬、すぅと目を細めた。

 余りにも一瞬の事で気づいたのはエルミナとレイだけだ。デヴォンとカレンは気づかなかった。

 

「そうですか。私はマーク。ようこそ当教会へ。風と空の女神セラの名において、歓迎しますよ」

 

 にっこりと男は笑みを浮かべた。

 

「女神さまに祈りたいんですけど、いいですか?」

「どうぞ。女神は祈る物を拒みなどしませんから」

「ありがとうございます!」

 

 カレンたちは女神セラの像にまで近づく。

 

 女神セラはエメラルド色の瞳と黒い髪を持つとされる女神だ。

 風のように靡く長い黒髪を持ち、その姿は風と同化するために衣服を余り纏わないとされている。

 この像も胸と股間だけ隠せばいいだろ見たいな形をしており青少年の教育に悪そうな形をしている。

 

 この世界では八大神信仰という多神教がある。

 

 風と空の女神セラ。

 竜神にして時と空間を司るドラヘル。

 武功と武具の男神(おがみ)ヴァッフェ。

 大地と自然の女神ネイカ。

 商売と政治の神ゼニス。

 魔法神ツァオバー。

 狩猟の神ヤクト。

 愛の女神ラマル。

 

 女神セラ以外の信仰はそこまで盛んではないが愛の女神ラマルは結婚式などで名が良く出てきたりする。

 

 カレンは像前でしゃがんで祈りのポーズをとる。続いてエルミナも同じポーズをとって祈りを捧げる。

 

(……女神、か)

 

 レイは個人的に存在を信じている神はいるが信仰をしている神はいない。

 神々の使いである天使は存在しているが神自体に会ったことはないからだ。

 一応自分が魔王として君臨した結果勇者というカウンターを派遣してきた為実在しているのだろうとは思っているが。

 

 カレンは二週間に一度ぐらいのペースで神殿によると女神セラに対し祈りを捧げる。

 これは昔からの習慣であり、幼い頃に神々の聖堂に行ってからの習慣になる。

 

 五分程二人は祈りを捧げると立ち上がる。

 

「お待たせ! もう行こっか」

 

 カレンはそう微笑んだ。

 

「ああ。行こうか」

 

 こうしてカレンとレイ、デヴォンは教会を出ていった。

 

 

 

 ■

 

 

「エルミナ様。あの者達と本当に凍てつく王廟を攻略するおつもりですか?」

 

 カレンたちが去った後。マークはエルミナにそう問いかけた。

 

「はい。私は彼女達こそが攻略に必須だと考えています」

 

 エルミナはそう微笑み返した。

 

「ですが貴女は天使です。もう少し、本気になっても……そう。白銀級冒険者に護衛依頼を出して攻略を共にしてもらう等はいけなかったのですか?」

「私の使命の達成方法は問わないはずでは?」

「ですが……貴女の力があれば救える命も多いのです」

 

 マークは少し諫める様な口調で話す。

 第八環魔法まで行使出来る聖職者は少ない。

 殆どの疾病を無くし、欠損すら治す事が出来るのが第八環魔法を行使できる信仰系呪文詠唱者(スペル・キャスター)だ。

 ダンジョン攻略などさっさと終わらせて、人々を救う巡礼の旅にでも出て欲しいというのが教会側の本音だ。

 

 だが教会の権力構造的には天使の存在の方が上だ。そもそも今の教会のトップ、頭事態大天使でもあるし。

 

「それはわかっています。ですが凍てつく王廟の攻略も些事ではありません」

 

 エルミナが凍てつく王廟の攻略をしているのは上からの命令がきっかけだ。

 上というのも教会ではない。更にその上──人々が信じる神女神セラからの指令である。

 それを元にエルミナは冒険者と成りデヴォンという仲間と出会い凍てつく王廟の攻略を進めていったのだ。

 

 エルミナに神々の考えはわからない。だがその使命を全うする事こそが本懐だと奉仕種族でもある天使のエルミナは考える。

 

「では、私達もそろそろ夕食をとりましょうか」

「……はい。エルミナ様」

 

 マークは何か言いたいのを我慢し、口を噤んだ。

 

 

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