「第六階層攻略、行くわよー!」
第五階層のボス部屋後の階段前でカレンはそう生き込んだ。
翌日の朝。一行はダンジョン内に入って転移魔法で一気に第五階層まで転移して来ていた。
転移魔法はダンジョン内では変な挙動をする。ダンジョン内から外に出る分は普通に機能するがダンジョン外からダンジョン内に転移する事は出来ないのだ。
ただダンジョン内に入ってしまえばダンジョン内のマーキングした場所や視界内には転移出来るが。
今のところ最高位ダンジョン等では転移魔法そのものを阻害する結界が張られているところもあったりするので全部が全部そうではないが。
「行くわよー」
いつも通りカレンが先頭に立ち階段を下っていく。
長い階段を降りた先はまたも通路だ。だが一風変わっている。
「これは、迷宮か?」
レイがふむ、と顎に手を当て考える。
その作りは迷宮そのものだ。
石で出来た壁に床とビギナーズダンジョンと左程変わらない創りの迷宮である。
だが当然凍てつく王廟内部である為少し肌寒いのは変わらない。
広さは上の階層以上だ。横にも充分以上に広く縦は二十メートルはある。
発光している事は無いが灯りがぽつぽつと置かれているので灯りを用意する必要はなさそうだ。
「んじゃあ行くぜ」
歩きながらデヴォンが探知の
<罠感知>は名の通り罠を感知し<敵感知>も名の通り敵を感知する
使用者のレベルに応じて探知阻害の突破率が上がり感知範囲も広がるという
今のデヴォンのレベルは三十と同時に六つまで
そうして歩く事五分、デヴォンが敵を探知する。
「敵だ。数は三」
出てきたのは二メートル程の人型のモンスターだ。
氷で出来た人形だ。名を
ゴーレムとは魔法的手段をもって作り出せるモンスターだ。分類上は種族判定ではなく
ゴーレムにもレベルの概念がありレベル二十や三十のゴーレムも当然ある。
作るには第三環魔法の
ただ第五環魔法により上位のゴーレム作成の魔法がありそちらのが最低レベルと作れる上限レベルも高いが。勿論更に上の環位により上位のゴーレムを作る魔法もある。
自我無き人形であり創造主、または主の命令を忠実に熟す存在だ。
人形である為即死魔法が聞かず生命でもない為レイでは探知出来ない存在だったりする。
氷牙ゴーレムたちは武装していないが二メートルというガタイの良さによってカレンたちに襲い掛かる。
「
カレンは攻撃魔法を放つ。
火球が真っすぐと飛び横並びになっている氷牙ゴーレムに命中し爆炎を起こす。
その爆炎によって当たった一体のゴーレムは溶けて崩壊し壊れ、片方も溶けて動かなくなる。
最後の一体に向かってレイが<瞬歩>で接近。胸を殴って全損させ壊した。
「よし。このままいこう」
■
その後も黒風の一行はモンスターを倒しつつ進んでいった。
アイスミノタウロス。攻撃に冷気属性が乗る特殊なミノタウロス。
フロストハーピー。亜人種であり冷気属性の範囲攻撃を行うレベル二十のモンスター等、モンスターを倒しつつ先へと進む。
また<罠感知>で罠を探り解除しつつ進んだ。
この階層には氷の棘が飛び出してくる罠がある。魔法的効果を持っていないのでカレンとエルミナには効かない。
エルミナの種族である天使は魔法的効果を持たない攻撃の完全無効化を持つ。
だがレイとデヴォンには普通に効く為解除する必要がある。といってもレイは見てから回避余裕だし<肉体操作>で骨の盾を作って防ぐことも出来るが。
そしてデヴォンも疲労無効の指輪を買って装備した為疲労を考慮する必要が無くなった為順調に進み黒風の一行は第十階層、ボスが居る階層にまで進んでいた。
「さて、ここのボスだが……ちょっと特殊ってのは言っておいたよな」
「ああ。聞いている」
この第十層にボス部屋は無い。
普通のダンジョンならばボスはボス部屋という専用のルームにいるが、このダンジョンは別だ。
第十層のボスの名はブルガルムという氷の角を持つ巨人という異形種のモンスターだ。
巨人に寿命は無いとされている為異形種判定になっている。
名の通り巨人で十メートルの体躯に白い皮膚を持つモンスターであり武器は氷で出来た戦鎚。
レベルも高く三十二と非常に高い。
このボスの特徴としてダンジョンの壁を破壊しながら徘徊しているというのがある。
非常に厄介な特徴だ。壁向こうに敵がいると思ったら壁をぶち壊してやって来るのだ。警戒してもしようがない。
その為第十層は人気の無い階層だ。何時何処でボスに襲われるかわからないのだ。
一応この階層にもセーフエリアはあるしセーフエリアに自らボスが侵入してくることはないが、気休めのようなものだ。
「じゃあボス探しながら歩くわよ!」
だが今回の目的はボス討伐だ。
ボス部屋に存在しない為階段を探せば倒さずとも下の階層に行けるが、倒せる物なら倒しておきたいというのがカレンの考えだ。
このダンジョンを真に攻略するには全てのボスを倒す必要があるだろう、と考えているのだ。
そうして歩いているとデヴォンが敵を探知する。
「敵だ。感覚からして氷牙ゴーレム一体とアイスミノタウロス二体だな」
デヴォンは<敵探知>の
<敵探知>は敵の種族やレベルを探知する事が出来る
類似
「じゃあ開幕私が魔法ブッパするわね」
「待ってくれ。俺もレベルを上げたいから氷牙ゴーレムだけ倒してくれないか?」
「ん、わかったわ」
基本レベルが上がるのは直接戦った者だけだ。
パーティにいるからといって経験値が分配されるような仕様は無い。
奥の通路から氷で出来たゴーレムとアイスミノタウロスが歩いて来る。
アイスミノタウロスは皮膚が白いミノタウロスだ。
頭と足は牛。体と腕は人という異形種だ。
ミノタウロスはダンジョン外でも普通に異種族として暮らしている種族でもある。
「じゃあ
魔法の矢は氷牙ゴーレムにだけ命中し破壊する。
(ほう。隠密
レイは隠れて消えたデヴォンを内心称賛する。
<隠密>の
高レベルの者は自身の生命力すら隠しアンデッドや
レイも<生命感知>の
そして視界に入らないのはレイ以外の黒風の面々とアイスミノタウロスだ。カレンは第五環魔法で探知しようと思えば探知できるが使わない。エルミナは探知系の魔法を習得できないので探知出来ない。
「ブモォォォ!」
アイスミノタウロスは雄たけびを上げカレンに突撃しようとする。
だがその寸前。首筋に刃が当てられ首を斬られた。
<隠密>からの<奇襲>の
<奇襲>は<隠密>状態で見つかってない相手に対し攻撃すると攻撃力が使用者のレベルにも依存するが最大五十倍にまで増加する
デヴォンの短剣によってアイスミノタウロスは絶命した。
「うっし。じゃあいこ──」
その続きの言葉は轟音によって遮られた。
通路の少し奥の壁が壊されたのだ。
壁が瓦礫となって舞い、瓦礫の奥から異形が這い出る。
身長十メートルという圧倒的巨体。
シアン色の肌。頭からは氷で出来た角が一本伸びている。
その手に握るは壁を破壊した氷で出来た戦鎚。
第十層のボスモンスター、氷角大王ブルガルムだ。
余談だがボスモンスター等の名前は名付け好きな冒険者が付けている。玉に情報系魔法で名前が判明する事もあるが大半は勝手に名付けられた名前だ。
「嘘だろ、俺が探知出来なかった?!」
デヴォンはそう叫んだ。デヴォンのレベルは三十と非常に高い。カレンと同じ白金級はあるのだ。
そのレベルで探知出来ないとなると何か種がある。もしくはダンジョンその物のギミックかだ。
「私が前衛! デヴォンは隠れてスニークアタックを! エルミナは強化魔法を! 父さんはエルミナを守って!」
「わかった」
「わかりました!」
「了解!」
すぐさまカレンが指示を出し全員了解する。
「
エルミナは幾つかのバフ魔法をかける。
その間にレイはエルミナの前に立ち防御の構えをとる。変則的だがレイが防御役をするのだ。
カレンが
ブルガルムは戦鎚を構えカレンの剣と衝突させる。
カレンが斬りかかるのをブルガルムが戦鎚で弾く、というのが何度か続く。
それによって戦鎚も斬られるが修復機能が強いのか直っていく。
「オォォオォオ!」
ブルガルムは何かしらの
何かしらの連撃系の
カレンは余裕の表情で攻撃を捌いて見せる。
「
そこでエルミナが魔法を行使する。使ったのは天使を召喚する魔法だ。
といってもエルミナのようなネームドの天使を召喚する事は出来ない。
天使や悪魔はネームドという固有の存在が居る。アルト・アンティークのような固有の悪魔ではなく環魔法で召喚できる悪魔や天使は雑多な存在だ。
召喚するのは五十六レベルの天使
両手に盾を持つ天使であり顔は何処か機械的であり全体的に青い姿をしている。背中には勿論天使の翼があり頭上には天使の輪がある。
名の通り防御能力に長けた天使だ。その分攻撃性能は低いというかほぼ持っていない。
位置を瞬時に入れ替える
続いて
<鉄壁守>は自身の防御力上昇の
<不屈>はノックバッグ無効の
更に<挑発>の
<挑発>は対象一体に対し挑発しヘイトを集める
だが巨人であるブルガルムには通じ攻撃の矛先が
「オオォォオォ!」
ブルガルムは、<六連撃>の
(──貰った!)
その隙をついてデヴォンが背後から跳躍しブルガルムの首を裂こうと動く。
<隠密>からの<奇襲>だ。これで並大抵の相手は死ぬ。
「オオオ!」
だがブルガルムは振り返りデヴォンに気づいた。
それどころか<即応打撃>の
デヴォンは咄嗟に短剣を挟むことで防御出来たが短剣は折れ、吹き飛ばされてしまった。
「デヴォン!」
エルミナが悲鳴にも近い声を上げた。
「お父さんはデヴォンを回収!」
即座にカレンが作戦を指示した。
「了解」とレイは短く返し<瞬歩>の
レイは
赤色、体力や傷回復のポーションだ。ランクは中級。
込められた回復量は第五環魔法相応であり欠損すら治す事が出来る治癒効力を持つ。
これによりデヴォンの折れた肋骨も治る。
レイはポーションをデヴォンに振りかける。
ポーションは飲むかかけるかでも効果を発揮する為かけても問題ない。
「これでいいだろう」
「う……ありがとう。くそ、奴は探知系の
デヴォンが悪態をついた。
探知系の
「だろうな。恐らくは先読み系の
見れば、カレンが果敢に斬りかかっても全て戦鎚で防がれていた。
何かしらの高度な探知系
「恐らく使っているのは<先読み>だろうな」
<先読み>は相手の攻撃の一手先を読むことが出来る
攻撃予測系の
だがカレンは探知阻害系の装備品を持っていない。その為通じてしまっている。
相手の動きが分かるというのは強い。その為格下であるはずのブルガルムが優位に立てているのだ。
ブルガルムのレベルは三十二でカレンは今四十二。レベル十の差があるのに勝負が終わっていないのはこういった理由だ。
習得している
雑に考えれば自分の能力に合った装備品を纏えばレベルがプラス五から十五されると考えていい。レイは実質レベル百七分あるとも言えるのだ。
「と、余はもう戻る」
レイは<瞬歩>でエルミナの傍まで戻る。ヒーラーを一人置いておくわけにはいかない。
デヴォンの傷も治ったのでもういいと判断したのだ。
「……くそ、どうする……」
デヴォンは完全な隠密不意打ち特化のビルドをしている。その為相手の探知能力のが上の場合出来る事は少ないのだ。
デヴォンは歯ぎしりをする。この戦場で何も出来ない自分を恥じて。
「せやぁぁ!」
カレンは<魔力鋼刃>と<超斬撃>に<鬼断流>を使う。
更に自己バフ
<真・肉体抗上>はレベルをプラス三する
四十レベルになった事で同時に使える
<魔力鋼刃>で伸びた刃で
これが召喚モンスターの便利な所だ。魔力さえあれば幾らでも再召喚出来るので同士討ちを気にしないですむ。
胸が大きく斬り裂かれ、出血を起こす。
「グゥゥゥゥ……」
だがブルガルムは頑丈で倒れる様な事はない。
それどころか<自己再生>の
<自己再生>は簡単な出血や骨折程度なら治す事が出来る
再生系能力は種族特性や
使用回数制限だったり魔力やスタミナ消費等だ。
<自己再生>は魔力を消費する事で再生する
だがそれでも与えたダメージが治された、というのは痛い。
「オオオオオオ!」
ブルガルムは怒涛の攻撃を仕掛ける。
<十六連撃>の
「ヤバ!」
カレンは咄嗟に<後退>の
咄嗟に
戦鎚と盾がぶつかった轟音が響く。
流石は五十六レベルのモンスターと言ったところか。攻撃を受けても消える様な事はない。
ふらつく事も無く、攻撃を全て受けて耐えきって見せた。
「おんどりゃぁぁぁ!」
ブルガルムの攻撃が終わった隙をついてカレンが攻撃を仕掛ける。
<肉体向上>に<肉体超向上>、<真・肉体向上>からの<超斬撃>に<鬼断流>に<致命の斬撃>に<
自分が使える限界までの
<
<致命の斬撃>は確定でクリティカルダメージを出す
斬撃の嵐がブルガルムに襲い掛かる。
「オオォオォォオ?!」
ブルガルムは全身を斬られ、血を大量に流す。絶命一歩手前と言ったところだ。
だがまだ動く。ブルガルムは自分を斬ったカレンを叩き潰さんと戦鎚を振るう。
しかしそれよりもカレンの方が速い。
「オォォオォオ……」
そうしてブルガルムは絶命し──ドロップアイテムとなって消えた。