魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

19 / 43
第十九話 魔王城へ

 

「シャア!」

 

 カレンは勝利の雄たけびを上げた。

 これまでにない強敵だった。レベルの上では勝っていたが特殊能力(スキル)の差で負けていた。

 エルミナが居なければもっと苦戦していたか敗走していただろう。召喚魔法による壁役はありがたい。

 

「……やったな、カレン」

 

 デヴォンがそうカレンに話しかける。

 

「えぇ。仇をとってやったわよ」

 

 いえい、とカレンは笑みを浮かべる。

 

「ドロップアイテムを鑑定しましょう」

「そうね。中身を確認するのは大事ね」

 

 カレンは落ちたドロップアイテムを回収する。落ちたのは二つだ。

 両方に<上位道具鑑定>(スペリアアプレイザル・アイテム)をかける。

 

「地図と……不壊の氷戦鎚ていう上級の魔法道具(マジックアイテム)ね」

 

 地図は第十層から第二十層までの地図だ。

 ただそれだけであり便利ではあるが敵を探知したり壊れない特性とかも無い単なる地図である。

 

 不壊の氷戦鎚は自己修復機能を持つ氷の戦鎚だ。ブルガルムが使っていた武器である。

 相手に冷気属性のダメージを与えるのと強い自己修復の機能が付いているそこそこの強さの武器だ。ハンマー使いならば欲しがるだろう。

 

「取り合えず今日は戻ろっか」

「そうだな」

 

 一行はカレンの元に集まり転移魔法でダンジョンから脱出した。

 

 

 

 

 ■

 

 黒風は一応休日を決めている。

 毎日ダンジョンに潜っても魔法道具(マジックアイテム)の効果で肉体的疲労はしないが精神的疲労はする。

 信仰系魔法で回復する事は出来るが余り健全ではない為休日を設ける事にしたのだ。

 週五でダンジョンに潜り土日を休日にしている。

 休日は各々好きに過ごしている。カレンとエルミナはよく買い物に出かけている。

 

 レイは休日でも外に出る気がしなくて雪華の館の自室で本を読んでいた。

 

 読んでいるのは『辺境暮らしの平凡令嬢、気づけば王子の婚約者になってました?』というラノベ風の小説だ。

 架空の国の令嬢と王子の話である。何時の時代もこういった本は好まれるのだ。

 魔法道具(マジックアイテム)を使った印刷技術や魔法による製紙もある。

 第一環魔法に<紙作成>(クリエイト・ペーパー)という魔法がある。これは名の通り紙を作る魔法だ。

 他にも新香料を作る魔法等もあり、娯楽方面にも結構強いのだこの世界は。

 

 レイは雑食で何ならたまにならBL物も読むぐらいには読書も好きだ。

 

 そうして本を読んでいると部屋にノックがかかる。

 

「なんだ?」

「フロントの者ですが、デヴォンという方がレイ様にお会いしたいと……」

「そうか。入れてくれ」

「わかりました」

 

 レイは栞を挟んで本を置く。読書はまた今度だ。

 少し待つと部屋にノックが入りレイが許可を出すと部屋にデヴォンが入って来る。

 

「よう、レイ。邪魔するぜ」

「好きな所にかけるがいい……飲み物は何がいい?」

「じゃあコーヒーで頼むわ」

「わかった」

 

 レイはインスタントのコーヒーを用意し机に置く。

 お互いソファに向かい合うように座る。

 

「それで、何用だ?」

「──俺を強くしてほしい」

「……戦闘力は充分にあるはずだが?」

「昨日のボス戦で俺は役立たずだった。何も出来ないのは嫌なんだ」

 

 いうて何も出来てない訳ではないだろう、とレイは思うも口には出さないで置いた。

 こういうのは本人の気持ちが重要なのだ。

 

「……何でそれを余に?」

「レイが一番俺たちの中で強い。だから聞いたんだ」

「言っておくが余は才能があったから強くなれただけだ。強くなる方法など知らんぞ」

「だとしても、訓練とかで俺を強くしては貰えないか?」

「それなら召喚魔法が使えるエルミナが適任だろうに……だが、いいだろう」

「本当か!」

「だが一つ条件がある。余の正体を知っても口外しないのが約束だ。それを守るならば其方に適任の師を付けてやろう」

「……あんたらに何か裏があるのは薄々気づいてたさ。だってレイは尋常じゃなく強いからな」

「ああ。だが話すならばエルミナにもだ……少し待て」

 

 レイは無限収納の腕輪(インフィニティ・ボックスリング)から水晶型の魔法道具(マジックアイテム)を取り出す。

 形は占いに使うような水晶其の物だ。念話水晶(リンク・クリスタル)という魔法道具(マジックアイテム)であり一日に二十四回まで<念話>(テレパシー)の魔法が使えるという物だ。

 繋げる相手はカレンだ。

 

 即座に繋がりカレンから返答が来る。

 

『お父さん? どうしたの?』

 

 <念話>(テレパシー)は誰からかかったかわかる効果もある為カレンは即座に父からの<念話>(テレパシー)だと気づいた。

 

「エルミナとデヴォンに余たちの秘密を話す事にした。悪いが宿まで戻って来てくれ」

『それは……わかったわ。直ぐ戻るわ』

「頼んだ……さて、何から話したものか」

 

 それで念話水晶(リンク・クリスタル)による交信は止まる。

 レイは顎に手を当て考える。何から話せば信じて貰えるか、と。

 普通に考えて自分が魔王だという人間は狂人かキチガイだ。それを信じてもらうには相応の努力が居るだろう。

 だが魔王として分かりやすい証明という物が余りない。魔王城に行けばそれを証拠に出来るだろうが魔王城に行くのはカレンが戻って来てからと考えている為それは今は無理だ。

 そして特殊能力(スキル)の<念話>で部下に命令を下しておく。

 

「まぁぶっちゃけると、余は魔王だ」

 

 その言葉にデヴォンは驚いた顔をする。

 

「魔王って……悪魔の王の?」

「それではないな。悪魔王の奴は別人だ」

 

 レイは昔悪魔の王である悪魔王と会った事がある為悪魔の王は別に居ると告げる。

 

「悪魔の王が居るんだ……じゃなくて、二百年前に倒されたって言う魔王でいいのか?」

「その通りだ」

 

 その言葉にデヴォンは目をぱちぱちと瞬きをする。

 その顔は信じられない、といった顔である。

 

「えぇ……? 実は白銀級冒険者だとか、白銀級冒険者の弟子とかっていう方が信じられるんだが……いくら何でも魔王なんて……」

「だがこのような事が出来る人間がいるか?」

 

 レイは自分の右手を竜の顔の形に変える。

 

「……レイの固有(ユニーク)特殊能力(スキル)だろうとは思ってたけど、それ種族特殊能力(スキル)とかなのか?」

「いや固有(ユニーク)特殊能力(スキル)だ。詳細は言う気はないが」

固有(ユニーク)特殊能力(スキル)なんかい。えぇ? けど魔王って……なんか悪事を企んでいるのか?」

「昔は企んでいたが今は何も考えとらん。娘と平穏に暮らす事が望みだ」

「……そうか。けど何か……証明のような物はないか? 実は第十環魔法が使えるとか……」

 

 レイは右手を元に戻す。

 第十環魔法は大天使ファリエルが使えるとされる魔法だ。

 正しく奇跡と呼ぶに相応しい効果を持ち常人の想像の域を超えた魔法だ。

 

「余は呪文詠唱者(スペル・キャスター)でないのは戦いで知っているだろう。使えんぞ」

「そりゃそうだよな……」

 

 デヴォンはそう言われて納得する。

 そうこう話していると部屋の扉が開く。

 レイとデヴォンはそちらに視線を向けると其処にはカレンとエルミナが居た。

 カレンは普段の私服でありワンピースを着ている。エルミナは普段と変わらない聖職者の服を着ている。

 

「ただいまー。遂に秘密を話す日が来たんだね!」

 

 カレンは鼻を鳴らしそうな上機嫌である。

 カレンにとって仲間に秘密を隠したままというのはちょっとしたストレスだった。仲間というのは心の内全てを明かしてこそだと思っているのだ。

 だがレイが制止した事で魔王の娘であるという事は隠されていた。普通そんなことを言ったら信じられないし、信じられたら信じられたで世界の敵判定を喰らう。

 しかし遂にその秘密を開け明かす事が出来るのだと息巻いている。

 

「では行こうか──魔王城へ」

 

 レイは立ち上がり玄関へと向かう。デヴォンもそれについて行く。

 

 カレンとエルミナは玄関から出ておく。

 

 レイとデヴォンも玄関外に出てレイは無限収納の腕輪(インフィニティ・ボックスリング)から転移門の鍵(ゲートキー)を取り出す。

 そして使用。<転移門>(ゲート)が発動される。

 <転移門>(ゲート)は黒い靄が集まって出来た渦だ。これに入る事で転移が出来る。

 

「何だこの魔法……」

 

 デヴォンが初めて見る魔法に驚愕し口を開けて呆ける。

 

「行くぞ。着いてこい」

 

 レイはそう言い<転移門>(ゲート)を潜り続いてカレンも潜り遅れてエルミナとデヴォンも潜る。

 

「何これでっけぇ?!」

 

 <転移門>(ゲート)を潜ったデヴォンは開口一番にそう叫んだ。

 デヴォンの目に映ったのは巨大な城──魔王城である。

 全長六百メートルを超える高さを誇る城だ。現存する城でこの魔王城を超える城は現世には無い。

 横にも大きく塔が幾つも建っている様は壮観である。

 

「ようこそ! 魔王城へ!」

 

 カレンはそう微笑んだ。

 その姿に呆気にとられデヴォンとエルミナは呆けた返事をする。

 

「じゃあ行くぞ」

 

 レイが先頭に立ち魔王城の巨大な門へと進む。

 この門は異形種等の体が大きな種族の為の扉だ。

 

 門が一人でに開いて行く。まるでレイたちを歓迎するかの様だ。

 門をくぐった先は玄関ホールだ。奥には階段があり、階段前には転移の魔法陣がある。

 

「すげぇ……」

 

 デヴォンがきょろきょろと周囲を見ながらそう呟いた。

 

 レイは階段前の魔法陣で止まる。

 

「どうしたんだ? 登らないのか?」

「ああ。この魔法陣を使う」

 

 レイが足元の魔法陣を使う用意識すると魔法陣が発光する。

 この魔法陣は登録した者しか使えないようセキュリティがかかっている。といっても高位の魔法で阻害できる程度の物だが。

 魔法陣の力で一行は玉座の間前まで転移する。

 

「ここは……」

「玉座の間前だ」

 

 悪魔の門がまたも自動的に開いて行く。

 

 そしてエルミナとデヴォンは絶句した。

 門の向こうには異形達が居たのだ。

 

 山羊の頭に人の胴体。羊の脚を持つ三メートル程の巨体のデモンゴート。

 全身が岩で構成されたロックモルド。

 

 三メートル程の巨大な狼。二メートルはある蛙。

 全身が真っ黒のシャドウ。頭が二つある三メートルの巨体のシャムズ。

 そのほか多種多様な異形が控えていた。

 

 異形達はレイが入って来たのを見ると跪く。

 

 中央の道をレイとカレンは通り、遅れて恐る恐るエルミナとデヴォンも通っていく。

 奥の玉座前にはライカードが立って控えている。

 

 レイは護王の玉座に座り、肘をつく。

 

「余が魔王だ」

 

 その宣言にエルミナとデヴォンは圧倒される。

 

「で、私が魔王の娘のカレンでーす!」

 

 いえい、と緊張を感じてないかのようにカレンが両手にピースをした。

 

「これで信じたか?」

 

 レイはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

 

「……あぁ、信じるよ。こんなの見せられたら信じるほかないぜ……」

「それはよかった」

「では全員業務に戻らせますね」

 

 割り込むようにライカードが口をはさんだ。

 パン、とライカードが手を叩くと全員の視線がライカードに向く。

 

「では各員持ち場に戻って仕事に戻る様に。解散!」

 

 その言葉に異形達はやっと終わったか、と面倒な仕事が終わったサラリーマンのような雰囲気を出して玉座の間から出ていく。

 

「魔王様。威厳を見せつけたいのは分かりますが急に配下を集めろと言われても困りまず。次からは事前に連絡をください」

「……善処する」

「是非にお願いしますね」

 

 ライカードは少しキレた口調でそう言い放った。というか実際キレている。

 配下の者達も暇ではない。それぞれ業務があるのだ。

 そこでいきなり魔王権限で玉座の間に集めろと言う指令。仕事を放らせてどうするとライカードはキレた。

 

「魔王なのに威厳ないのか?」

 

 デヴォンがそう尋ねたがレイは視線をそらした。

 

「まぁいい。それでデヴォン、其方の師を呼んでおいた。フクス!」

「はい!」

 

 玉座の間から出ていなかった者が声を上げてデヴォンたちに駆け寄る。

 

 一見すると狐の獣人に見えるが実際は異形種の女だ。頭からは狐の耳が出て尻からは狐の尻尾が出ている。顔はきりっとした目つきの美人であり腰まで届く長い金髪に赤い瞳。

 胸は豊満で大きく、腰はすらっと細く。ケツはでかい。

 衣服はノースリーブにへそ出し。腰から前から垂らした布。身長は女性としては高く百七十五センチ。

 太ももの露出から見える網状のインナー。まごう事無きNINJAである。

 この世界には忍者のクラスがある。忍術を特殊能力(スキル)として使えるのだ。

 

 レベルは高く六十五はある。高位の忍術系特殊能力(スキル)も収めている優れた忍びだ。

 

「話は伺っています。私が師としてこの者を導けばよいのですね」

 

 既にレイは<念話>の特殊能力(スキル)でフクスに話を通していた。その為話の店舗は速い。

 

「師? ……より強くなりたいというのですね」

 

 話を聞いていなかったエルミナはフクスの台詞で凡そを察し、喜んだ。

 仲間が前へ前へと進んでいる。これ以上に嬉しいことはないのだ。

 

「うっ……まぁ、そうだけど……」

 

 デヴォンはフクスの顔を見る。

 フクスは何処か獲物を睨むような眼をしており、デヴォンにはそれが少し苦手だ。

 フクスはショタコン、というよりは幼い外見の者が好きである。デヴォンは好みドンピシャであった。

 

 その性癖はライカードしか知らずカレンたちは何も知らない。察したライカードはデヴォンに哀れな眼を見せた。

 

「という訳で魔王城(うち)を使って忍者としての訓練をすると良い」

「いいのか? 俺ばかり得をしている気が……」

「良いのだ。仲間が強くなればより凍てつく王廟の攻略も進む。それにカレンの身も守れるしな」

「もー、私は充分強いのに……お父さんったら」

 

 カレンは恥ずかしいような嬉しいような表情を見せる。父に心配されるのは嬉しいが未熟者として思われているようで嫌でもあるのだ。

 

「という訳でフクス。鍛錬頼んだぞ」

「お任せください、魔王様」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。