魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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第二十一話 お茶会

 

「それでカレンさん。実は私は貴女とライバルに成る為だけに来た訳ではないのです」

 

 冒険者ギルドの中に戻りテーブルに座ったメアリーはそう言い放った。

 席には黒風の一行とメアリーとメラニが座っている。

 席とテーブルが足りないので他のテーブルをくっ付けている。

 

「というと?」

 

 カレンが首を傾げながら問いかけた。

 

「私達赤焔(せきえん)の翼とあなたたち黒風でレイドを組みません?」

 

 レイドというのは複数パーティが集まった集団の事だ。

 

「それは……やっぱり第十五層のボス討伐の為?」

「はい。悔しいですが私達ではあのボスに勝てません……単体ならどうにかなるのですが」

 

 凍てつく王廟の第十五層ボス、氷霊騎士団長アークレイは強い。レベルにして四十はある。

 だがそれぐらいならば白金級パーティだけで討伐可能と言えるだろう。無論苦戦は必須だが。

 しかし問題はアークレイの持つ特殊能力(スキル)による配下召喚だ。

 これにより呼び出される配下の亡霊は三十体と多いうえその全てが最低でもレベル三十あるのだ。

 つまり白金級相当の敵が大量にいるのだ。勝てる訳が無い。

 

「ん-、みんなはどう思う?」

 

 カレンは仲間たちに問いかける。

 

「いいんじゃないか? 俺たちだけで挑んでも負ける可能性が高いしな」

「私も良いかと思います」

 

 デヴォンとエルミナの二人は賛同する。

 

「余は反対だ」

 

 だが一人レイだけは反対する。

 

「なんで?」

 

 カレンは父に問いかける。

 

「…………数の暴力で倒すとなると、カレンの成長に繋がらん」

「パーティ組んでるから今更じゃない?」

「だとしても、数の暴力で格上を倒したとしてもそれが通じるのはほんの少しの間だ。本当に上の相手には通じん。カレンにはそんな妙な学習をしてほしくない」

 

 アークレイだってレイが本気になれば蹴散らせる程度の敵だ。

 レイは父としてカレンを心配しているのだ。

 下手に格上にも数で挑めば勝てると錯覚して本当の格上、レベル八十等の圧倒的存在に挑んで負けて死ぬようなことにはなってほしくないと思っているのだ。

 八十レベルとなると精霊王や竜王クラスになって来るのでまず会う事すら出来ないが。

 

「え~」

 

 カレンは口を尖らせ不満をあらわにする。ついでにメアリーも。

 

「すまない、待たせたか?」

 

 そこに新しい者達がやって来る。二人だ。

 

(うわでっか)

 

 カレンとレイの思考が重なった。

 

 そこに居たのは大きい女だった。

 黒いボディスーツに身を包んだ女であり顔は仮面で隠している。仮面は黒いT字の線が入っている。

 髪は黒く肩までかかっている。そして身長は非常に高く百九十二センチとレイと同程度ある。

 胸も非常に大きくスイカサイズとは正にこのことだろう。スーツの上からでも胸が強調されている。

 腰は細く。尻は大きいとムチムチな体をしている。

 胸には白金級冒険者プレートを付けている。

 

 もう一人は対照的に小さい女だ。身長は百五十五センチ程。

 金髪碧眼の女であり容姿も優れている。髪は短くボブカットにしている。

 ハーフフット、という程小さくはない。単に小柄な人間と言ったところだろう。

 

「あの、なんで仮面で顔を隠しているんですか?」

 

 カレンがそう問いかけた。

 

 女は仮面を少し外し顔を見せた。

 赤い瞳に牙の付いた口。吸血鬼の特徴だ。

 顔つきは釣り目の美人と言ったところで優れている。

 

「あ、吸血鬼の方でしたか、すみません」

 

 カレンは少し謝罪した。

 

「いえ。気にしないでください」

 

 女は直ぐ仮面をつけ直す。

 

「アンデッドを隠す必要はないと思うのに……」

 

 カレンはそう思い呟く。

 この世界ではアンデッドにも人権が認められている。それどころかバルグラート帝国の皇帝はアンデッドという事で有名だ。二百年も統治している。

 

「まぁ、いろいろと事情がありますのよ……それで、レイさん。まだ反対ですか?」

「…………」

 

 レイはすごく嫌そうな顔を見せる。

 レイが仮面の女に視線を向けたら女はぷいっと顔を反らした。

 

「目を合わせろ、セレナ」

 

 レイは女の名前を言った。

 

「え? お父さんこの人と知り合いなの?」

 

 カレンはそう問いかけた。

 

「あら。セレナ、レイさんと知り合いでしたの?」

 

 メアリーも知らなかったのか驚いた声を上げる。

 

「……」

 

 セレナは指をちょいちょいと手招きしレイに立つように促す。

 はぁ、とレイは溜息と共に立ち上がりセレナの元まで歩く。

 セレナは席から少し離れた所に立つ。

 

<無音空間>(サイレントルーム)

 

 セレナは魔法を行使する。

 この魔法は一定範囲に結界を張り結界内の音が外に出ないようにする魔法だ。

 内緒話をするのに向いている魔法である。

 

「あの、なんで冒険者してるんですか、魔王様」

 

 セレナはそう問いかけた。

 

 セレナは吸血鬼である。吸血鬼と言っても単なる吸血鬼ではない。

 元魔王軍四天王である真祖の吸血鬼アトラシア・ドレッドムーンに拾われた特殊な吸血鬼だ。

 産まれて右も左もわからない時にアトラシアに拾われ、実子のように育てられたのだ。

 約五十年前に魔王城にアトラシアが来た時に自身の娘だと紹介を受けたので魔王であるレイも知っているのだ。

 

「あぁ。娘が冒険者に成りたいと言い出したのでな。それに同行している」

「娘が居たんですか……ていうか、娘と冒険者してるんですか……」

 

 これは俗に言う親バカという奴では? とセレナは疑うも口にはしない。

 

「それで、何故其方は冒険者をしている?」

「まぁ、独り立ちしようと思いまして……」

「それならネクロポリスで暮らせばいいだろう」

「……親元を離れて暮らしてみたかった、というのあります」

 

 ネクロポリスの支配者はアトラシアだ。

 アトラシアは白銀級冒険者と領主を兼任しているのだ。

 と言っても冒険者として動くことは殆どない。大半が領地に出たモンスター退治に自分が行く程度の物だ。

 

「そうか。ま、好きにすると言い。余とアトラシアはもうあまり関係ないのだからな」

 

 レイはそう言って席に戻る。

 セレナも魔法を解除し席に戻った。

 

「内緒話は終わりましたか?」

 

 メアリーがそう話しかける。

 

「ああ。話を遮ってしまったな、すまない」

「いえ。お気になさらず……それで、まだ私達と組むのは反対ですか?」

 

 レイは顎に手を当て考える。

 冒険者パーティは基本四人から六人が最適とされている。

 これは呪文詠唱者(スペル・キャスター)やシーフ等の斥候、戦士等の前衛を考えた場合の最適人数だ。

 後報酬とか各々の性格等を考えた場合揉めない人数がだいたい六人までとされているのだ。やはり人格も冒険者には必須なのである。

 その人数を超えて行動するというのはレイにとっては不服だ。

 

 だが、娘の友人との共闘を親の意地で拒否するのもな、とレイは少し考えた。

 

「……いいぞ。だが出来れば今回だけにしてほしいが」

「ありがとうございます! ですがご安心を。あのようなボス出ない限りレイドを組むことは基本しませんとも。パーティの垣根を超えた友情というのもいいですが、だからと言って共闘ばかりしていてはお互いの成長になりませんから」

 

 メアリーはそう微笑んだ。

 

「では自己紹介をしましょう。私は名乗ったので……メラニから」

 

 どうぞ、とメアリーはメラニに手を向ける。

 

「俺からか。俺はメラニ。アマゾネスの戦士だ。武器は大剣だ」

 

 メラニは背中にファルシオンという大剣を背負っている。ファルシオンは武器の種類の名前であり武器名はラーヴァスパインという。

 片刃の大剣であり少し曲がっている。曲刀の亜種と言ったところだろう。

 アマゾネスというのは人間種の一つだ。

 南東のとある島に暮らしている種族であり美人の褐色の女しか生まれない種族である。

 異種交配が可能な特殊な種族で人間種と亜人種なら交配出来る。

 だが産まれるのは全てアマゾネスの女だけという少々厄介な種族でもある。

 

「セレナ・ドレッドムーンだ。風系統に特化したエレメンタリストの呪文詠唱者(スペル・キャスター)で第五環魔法まで使える。よろしく頼む」

 

 セレナの手に杖等は無いが手の指をよく見ると全ての指に指輪を付けている。

 

「最後は私。ティアラ。シーフやレンジャーを収めている。しくよろ」

 

 ティアラは探知系に特化したシーフだ。

 罠や敵の発見、罠の解除能力はデヴォン以上はある。その分隠密性能では一歩デヴォンに劣るが。

 

「次は私たちの番ね! 私はカレン・アーヴェルス。魔法戦士で第六環魔法まで使えます!」

「レイ・アーヴェルスだ。カレンの父でモンクとグラップラーのクラスを収めている」

「俺はデヴォン。シーフで最近は忍のクラスの修行もしているからちょっとした忍法なら使える」

「エルミナです。信仰系呪文詠唱者(スペル・キャスター)で第八環までの魔法が使えます」

 

「よろしくお願いしますね、皆さん。では早速仲を深めるために……パーティと行きましょう!」

 

 メアリーはぱんと手を叩く。

 

「パーティ?」

 

 カレンが首を傾げる。

 

「えぇ。(わたくし)いいお店を知っていますの。そこでパーティをしませんか?」

「いいね! みんなもいい?」

 

 カレンは黒風の仲間達を見る。

 全員からいい、という返事が来る。

 

「では早速向かいましょう!」

 

 全員立ち上がって店へと向かう。

 

 転移魔法で即行けそうな物だが街中への転移魔法は基本禁じられている。

 城などには転移阻害の結界が張られているのも普通だ。

 基本転移は緊急時ぐらいしか認められておらず、街の外までの転移が許されている。

 

 その為一行はギルドを出て街中を歩く。

 当然、注目を集める。

 そもそも背が高いレイとセレナが居るのと全員胸に白金級冒険者のプレートを下げているからだ。

 デヴォンとエルミナも何気第十層のボス討伐で白金級に上がっている。

 

 ギルドを出て少し歩くとメアリーが手を上げタクシーを止める。

 

「ここはタクシーを使いましょう。大丈夫。私お嬢様ですのでお金はありますわ!」

「ありがとう! けどいいの? 自分の分を払うぐらいは出来るけど……」

「お友達に奢らせて頂かせてくださいまし~」

 

 という訳で料金はメアリー持ちとなった。

 

 タクシーを二台止め一行はタクシーに乗り込む。

 

 カレンとメアリー、デヴォンとセレナ。

 レイとメラニ、エルミナ、ティアラで別れてタクシーに乗り込む。

 

「運転手様~雪花喫茶までお願いしますわ~」

「わかりました~」

 

 運転手は了承し目的地に向かって走り出す。

 

 雪花喫茶は貴族街──貴族の邸宅が多い地区──にほど近い位置にある喫茶店だ。

 所謂富裕層向けの喫茶店であり貴族等が良く通う喫茶店である。

 

 タクシーが走る事二十分程で目的地につく。

 

 道中一行はそれなりに会話をしていた。

 

 タクシーから降りてメアリーが料金を払う。合わせて六千セラだった。

 

 店の作りは白い壁で囲われ、テラス席もある。

 気泡の入ってない魔法性のガラスが使われており建築に使われている物の質も良い。

 

 一行は店内に入る。

 

「いらっしゃいませ~何名様ですか?」

「八名ですわ~」

「でしたらテーブル席へどうぞ~」

 

 一行は壁側のテーブル席に座る。壁際にソファが設置されているタイプの席だ。

 テーブルを二つくっ付けて一つのテーブルにし椅子もずらして四人ずつ座る。

 それぞれ入り乱れる形で席に座った。

 

「ここも私が払うのでお好きなのをお頼みくださいませ~」

「じゃあお言葉に甘えて……」

 

 一行はメニュー表を見る。

 

(高いな)

 

 レイ一人はメニューの値段の高さに驚くがカレンたちは貴族向けならこれくらいだろ、と気にはしない。

 レイは転生しても性根が一般人なのである。

 

 メニュー表にはサンドウィッチ等の軽食やコーヒーにココアもある。

 

「皆さん決めましたか?」

 

 メアリーそう尋ねると全員決めたと返事が来る。

 

「店員さーん! ご注文の方よろしくて~?」

「はーい! 大丈夫でーす」

 

 メアリーが店員を呼び注文を始める。

 

「私はコーヒーとトーストでお願いしますわ~」

「俺はココアとトーストで」

「私はコーヒーだけで」

「私はココアとチョコケーキで」

 

 赤焔の翼一行は注文を決め済ませる。

 続いて黒風の番だ。

 

「私はコーヒーとこの苺ケーキで」

「余はココアとチョコケーキで」

「俺はコーヒーだけでいいや」

「私は紅茶とレアチーズケーキで」

 

「わかりました~少々お待ちくださいね~」

 

 店員は厨房に戻っていく。

 

「それで……まずは何から話しましょうか。そうですね、私たちが冒険者になった経緯等どうでしょうか?」

 

 メアリーはそう提案する。

 

「いいね! お友達のそう言った話も聞きたい!」

「ふふ、では~」

 

 

 その後一行は楽しい楽しい話し合いをして一日を消費した。

 

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