魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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第二十三話 王の招待

 

 アークレイを倒した夜。赤焔の翼と黒風一行はある酒場に来ていた。

 酒場と言っても高級酒場ではない。場待の酒場と言った雰囲気の酒場であり客層も冒険者等が多い。

 

「第十五層ボス討伐を祝して!」

 

 カレンがビールジョッキを持つ。

 

「カンパーイ!」

 

 カレンの言葉に合わせて他の者達も「カンパーイ!」と叫ぶ。勿論店に迷惑にならない声量でだ。

 

 テーブルは大きくテーブルの上には多数の料理がある。どれも酒に合う料理ばかりだ。

 

「いやー強かったねアークレイ!」

「ですね。モンスターを使役特化ではなくモンスター召喚も一能力に過ぎないという強力なボスでしたわ……」

 

 仲良くなりつつあるカレンとメアリーがそう話す。

 

「貴方の隠密特殊能力(スキル)、普通のとは違った。何?」

「ああ、あれは<忍>ていう忍者の特殊能力(スキル)で効果は──」

 

 デヴォンとティアラが隠密道士何か話す。

 そのほかメラニとエルミナが何か話す等、一行は会話を楽しむ。

 

「……娘さんは何故、冒険者に成ろうと言い出したのですか?」

 

 そこで。セレナがレイに話しかけた。

 セレナはビールを飲んでいる。

 基本アンデッドは飲食出来ないが吸血鬼は別だ。吸血鬼は血を嗜好品として飲める関係か飲む事だけは可能だ。

 と言っても種族特性で毒は無効化されるので酔う事は出来ないが。

 

「……一度、聞いてみた。そしたらカレンは『街に居る武装した冒険者をカッコいいと思ったから』だと。単純な理由よな……」

「……何事も物事は単純なのかもしれませんね」

 

 レイはビールは苦手だが味覚をカットする事でぐびぐびと飲む。

 こういった場で一人だけ違う酒を飲むというのはちょっと雰囲気的に問題があるのだ。ビールを一回飲んだ後なら別のを飲んでもいいが。

 

「あのトラップどう対処した?」

「私はティアラの<罠解除>の特殊能力(スキル)で解除して貰いましたわ~魔法的トラップはセレナの探知魔法で感知出来ますし~トラップ系統は正直問題ではないですわね~」

「となるとやっぱ問題はモンスターだよねぇ。次から次へと湧いてくるのは困るもんねぇ」

「第十一層からは広いのでいいですがそれ以前はちょっと狭いので困りものでしたわね~まぁ私のレッドティア・イクスギアの敵ではありませんでしたわ~!」

 

 一行は会話を楽しむ。

 その会話を聞き耳たてて聞こうとする者も一定数いる。同業の冒険者たちだ。

 彼ら彼女らは同業でも頭一つ抜き出ている白金級冒険者の話となるとそれだけで値千金だと聞き耳を立てるのだ。

 

 

「ところでカレンさんは既に四十レベルを超えていますが、黄金級への昇格試験は受けないのですか?」

「う~ん。受けようかなって思うけどまずは皆が四十レベルになってからかなぁ」

「俺がまだ三十七レベルだからな。後三レベル待ってくれ」

「第十六層を攻略していけば順当に行けそうですわね……我々も負けてはいられませんわ~」

 

 メアリーのレベルも上がって三十六になった。レベルの上ではカレンに負けている。

 だが才能では負けてないだろう。魔装に合わせたクラス構成をすればカレンにだって常に勝てるようになるかもしれない。

 

「私はライバルとして常に先を行きますわ~!」

 

 

 

 

 ■

 

 首都エルフェリアにはスラム街がある。

 首都に来れば何か仕事があるだろうと思った者や娼婦の子、捨てられた子等が集まって出来たスラム街だ。

 国側も何か対処しようとはしているが余り効果的な策は無く、時折教会が炊き出しをしている程度の物だ。

 

 そのスラム街に一風変わった女が歩いていた。

 

 ボブカットの金髪赤目の女であり、ボン! キュボンな女性的魅力にあふれている女だ。

 顔も美しく、猫を思わせる可愛らしい顔立ちをしている。

 

 魔王崇拝者(サタニスト)の十二過徒の一人、ミレイナ=アスモディアだ。

 

 女は夜のスラムを歩く。

 

 女が一人スラム何て歩こうものなら即座に襲われそうなものだが、ミレイナは襲われない。

 理由は単純でミレイナから発せられる強者のオーラに圧倒されているのだ。

 生物としての格の違いを感じさせる気配は脆弱なスラム住人たちを圧倒するに相応しく、手出しをさせない。

 

 ミレイナはスラムを歩き、ある朽ちた教会の前で止まった。

 

 教会は木造だが木自体が腐ってたり剥がれている等のボロボロな教会だ。

 教会には人が居らず無人である。

 

 半開きのドアを開けてミレイナは中に入る。

 

 中には朽ちた椅子とボロボロの講壇がある。

 ミレイナは真っすぐ歩き右奥へ歩く。

 

 奥に着くと床に足を込めて二度トントンと叩く。

 そうする事で隠し階段が開き地下への階段が開く。

 

 ミレイナは鼻歌を歌いながら階段を下っていく。

 

 階段を降りた先はやはりというか祭壇であり、広場だ。

 床にはルセクアのように魔法陣が敷かれている。

 

「やっはろー! ノクト君いるー?!」

 

 ミレイナが声を上げると奥からぬるりと男が出てくる。

 

「何の用だ、ミレイナ」

 

 出てきたのはがりがりに痩せた男だ。

 何かの疾患にかかっているのではないかと疑う程に痩せており、骨が薄っすら浮き出ている。

 黒髪黒目の男であり、顔つきは元は良いのだろうが痩せすぎていて少し不気味に見える。

 

「今日はねー、君にいいアイテム持ってきたんだ~」

 

 ミレイナはにっこりと人好きの良さそうな笑みを浮かべる。

 

「……一体何を持ってきたというんだ?」

 

 ノクトと呼ばれた男ははぁ、とため息をつきながら話をする。

 

 ノクト・ラグナスは隠密系に特化した人間だ。

<隠密>は勿論<無音化>に<無臭化>も習得している完全な隠密特化である。

 その分<罠感知>や<罠解除>は習得していないが隠密特化というだけで優れているだろう。

 ノクトにはこの国一番の隠密という自信があり事実それは正しい。

 まぁこの国内にある魔王城のフクスを除けば、というのが着くが。

 

「じゃじゃーん! これ、隠密者のマント!」

 

 ミレイナは無限収納の袋(インフィニティ・バッグ)から黒いボロのマントを取り出す。

 

「なんだそれは、ゴミか?」

 

 ノクトは出されたボロのローブを見て怪訝な眼をする。

 

「いやいや、これは隠密系能力を超上昇するアイテムさ!」

 

 ミレイナはえっへん、と大きい胸を張る。

 

「はぁ……ならいい。寄越せ」

「は~い」

 

 ミレイナはノクトに近づきアイテムを手渡す。

 ノクトは装備してみる。

 

「これは……」

 

 確かに隠密系の能力が上昇したことが分かる。

 魔法道具(マジックアイテム)は基本鑑定魔法を使わないと効果の全容がわからない。

 その為実際に装備して見ても隠された効果に気づかないなどがある。

 装備して分かるのは表面的な能力、ステータスの上昇などだけであり例えば魔法を発動できるアイテム等の場合はその魔法を発動できることに気づかないままなんてこともある。

 

「いいでしょー。更にそれ、第九環魔法の<存在抹界>(エクリプス・エゴ)を一日一回まで使えるんだ~」

「第九環魔法だと? ほぼ伝説級の魔法じゃないか……」

 

 <存在抹界>(エクリプス・エゴ)は自分を不可知化し不可視化する魔法だ。

 自分から発する音、臭いを消し気配も消し、足跡や髪の毛などの痕跡すら消す最上位の隠密魔法である。

 看破する手段は同じ第九環魔法の<完全看破>(パーフェクト・シースルー)や感知系の最上位特殊能力(スキル)ぐらいしかない。

 

「そうだよー、これだけいいのあげたんだからさ……」

 

 ミレイナは<魅了の魔眼>を行使する。

 

「その目は辞めろ。俺に精神操作は効かんぞ」

 

 だがノクトには通じなかった。

 ノクトは精神防御のタリスマンを所持しているので耐性があるのだ。

 と言っても完全無効化のような最上位のタリスマンではなく第五環魔法ぐらいまでしか無効化出来ない不完全な代物だがそれでもこの世界では上位に入る精神防御のアイテムである。

 

「あら残念。けど君にとっていい物であるのは確かでしょ?」

「……そうだが、お前、何を企んでいる?」

 

 ノクトは鋭い目でミレイナを睨む。

 

「企むって何を?」

「とぼけるな。この前ルセクアでカインに何かをしたのは知っている。それでカインが新星の白金級冒険者にやられた事もな」

「あちゃー、知ってたか~、けどね。私は何も企んでないよ。みんなの力に成りたい。ただそれだけ」

 

 ミレイナは真剣な表情でそう言い放つ。

 

「……まぁいい。とっとと出ていけ。俺はこれから忙しくなる」

「は~い。邪魔者は大人しく出ていきまぁ~す」

 

 ミレイナは猫なで声と共に階段を登って広間から出ていった。

 

「……さて……」

 

 

 ノクト・ラグナスには一つの野望がある。

 それはこの国の公王であるヴァルター・エルドリッジ・グラキエラ・レムナントを殺す事だ。

 ノクトの故郷である村はヴォルターに焼き払われたのだ。

 

 当然、それには理由がある。

 

 当時強い伝染病が流行っており聖職者による治癒魔法が間に合っていなかったのと、人だけでなく動物にも感染する為早期の対処が必要だった事。

 その為にヴォルターは幾つかの村を魔法で焼き払う必要があったのだ。正当性で言えばヴォルターの方にある。

 だが、それでも故郷の平和な村を焼き払われたというのは事実で恨みつらみは消えはしない。

 

 だからこそこれはチャンスだ。強力な隠匿魔法がかかったアイテムとなればそれだけで秘宝級、下手したら聖遺物級のアイテムである。

 それを使えば普段は警護の厚い城に居るヴォルターを殺せるかもしれない。

 

「……待て。まだだ、まだ早い……何かのチャンスが無ければ……」

 

 

 

 

 ■

 

 

 四日程が経った。

 その間黒風と赤焔の翼はレイドを解消しそれぞれで第十六層の攻略を進めて行った。

 強風吹く探索には向かない階層だが少しづつ攻略し出現するモンスターも狩っていっていた。

 

 出現するモンスターはフロストワイバーンという中位の竜に氷に覆われたトロールの亜種の氷岩トロール。

 ブリザードマンティスというでっかい氷で出来た蟷螂。氷で出来た蝙蝠等だ。

 基本氷岩トロール以外飛行能力を持つモンスターばかりである。

 そのくせモンスター側は何かしらのダンジョンギミックの影響か強風の影響を受けず普通に飛んで行動してくる。

 これは流石に不味いと今はカレンが第六環魔法の行動阻害対策の魔法を覚えようとしている最中だ。

 

『カレン、今少しいいか?』

 

 そうしたある日。カレンはエルミナとショッピングをしていた。

 買うのはぬいぐるみなどの小物である。

 首都エルフェリアともなると売っている店も多く品質もルセクアやネレヴィアとは比べ物にならない。

 

「セレナ? どうしたの?」

 

 かかってきたのは<念話>(テレパシー)の魔法だ。

 <念話>(テレパシー)の魔法は相手が誰かわかる効果がある為カレンは通話の相手がセレナだとわかった。

 

『実は少し話したいことがある。紅翼亭(こうよくてい)に来てくれないか?』

「紅翼亭ね。わかったわ。エルミナも連れて行っていい?」

『大丈夫だ……というか、出来れば黒風全員に来て欲しい』

「うち全員ね、わかったわ」

『頼んだ……少し面倒なことになるかもしれないから、覚悟しておいてくれ』

 

 そう言うとセレナは<念話>(テレパシー)を切った。

 

 面倒な事とはなんだろう、とカレンは疑問に思ったが深く考えずエルミナに話しかける。

 

「セレナから連絡があって、紅翼亭に来て欲しいって。だから買い物中断しちゃうけどいいかな?」

「それは……わかりました。ですがこれを買って来てもいいでしょうか?」

 

 エルミナは手のひらサイズの蝙蝠のぬいぐるみをもって言う。

 

「それぐらいの時間はあるよ。私は父さんとデヴォンに<念話>(テレパシー)送るね~」

 

 そう言ってカレンは父のレイに<念話>(テレパシー)を送る。

 

『どうした?』

 

 即座に返答が来る。

 

「実はセレナから<念話>(テレパシー)が着て、紅翼亭に来て欲しいって。だから今から行ってもらえないかな?」

『わかった。向かうとしよう……デヴォンは余が連れていくとしよう』

「わかった~お願い~」

 

 そこで<念話>(テレパシー)を切る。

 デヴォンは今日も今日とてフクスと忍者のクラス獲得と忍法系統の特殊能力(スキル)習得の為の特訓中であった。

 

「じゃいこっか」

 

 見ればエルミナはぬいぐるみを買って満足していた。

 早速店を出てカレンとエルミナは紅翼亭に向かう。

 

 急ぐわけでもないのでタクシーは使わない。

 

 歩く事二十分程で紅翼亭に着く。

 

「あ、お父さん」

 

 丁度タイミングも良く、父であるレイとデヴォンも来ていた。

 

「じゃあみんなではいろっか」

 

 という訳で自動ドアを潜って一行は中に入る。

 

 中の作りは雪華の館とあまり変わらない。

 高級宿らしくラウンジと受付とエレベーターがある。

 

 左手のラウンジには赤焔の翼一行が座っている。

 傍に立つ執事服を着た男も居り、カレンはあの人は何だろうかと疑問に思いつつ一行はそちらに足を向ける。

 

「カレンさ~ん! すみませんわ休日にお呼び立てしてしまい~」

「気にしないでメアリー。それで話って?」

 

「それは私がしましょう」

 

 そう言って執事服を着た男は話に割り込んできた。

 

「貴方は?」

 

 カレンは執事服を着ている、つまりお偉いさん、貴族などの使いかと思う。

 

「私は執事のションです。私は赤焔の翼と黒風の皆様に招待状を持ってきました」

 

 執事のションは懐から招待状を取り出す。

 

「招待状?! え、私に?」

「はい。我が主は是非ともあなた方に来て欲しいと」

「え~……私貴族の方と会うの……? ちょっと緊張するな……」

 

 一応前会ったリオナ・ストームも貴族の一人ではあるが頭に思い浮かんでいない。

 

 招待状を受けたカレンは招待状を開ける。

 封には蝋が使われているが簡単に開いた。

 

「えっと、カレン・アーヴェルス殿。あなた方黒風の皆様を当家主催の夜会パーティに招待したい……差出人は……ヴァルター・エルドリッジ・グラキエラ・レムナント……様……」

 

 カレンは要所だけを読み上げる。

 流石にその名はカレンも知っていて顔を青ざめた。

 ヴァルター・エルドリッジ・グラキエラ・レムナントはこの国の王──公国なので王ではないが──の名だ。

 流石にグラキエア公国に城を構えているので知っているのだ。

 

「公王様主催の夜会に参加?! 私が?! 恐れ多い! 無理です! お断りします!」

 

 魔王城で貴族のような暮らしをしていても貴族の教育を受けた訳ではないカレンは王相当の者に会う等恐れ多いと拒絶する。

 だがションの目が鋭くなった。それを見たメアリーが立ち上がりカレンの肩に手を置く。

 

「カレンさん。この場合は断る方が失礼にあたります。受けるしかないかと」

「いやけど私貴族の教育とか受けてないよ! 会っても失礼しちゃうよ!」

「大丈夫ですわ。この国の公王様は冒険者の方なら多少の無礼や失礼ぐらい許容致します……というか、国側もここで私たちに会わないという選択肢は無いのです」

「どうして?」

「私たちは凍てつく王廟の第十五層のボスを倒し第十六層に進みました。これはこの国が出来て二百年誰も達成しなかった事なのです。当然国側も相応の実力者であるカレンさんと相応のコネが得たいと考えているのです」

「あ、あ~、なるほど……」

 

 カレンたちの活躍は連日新聞やラジオで話題になるレベルの出来事だ。

 この国は魔王討伐後に出来た国で建国二百年程度の国だ。

 この国の宮廷魔術師も第四環魔法程度の使い手であり冒険者の使える環を超えられているという欠点がある。

 騎士団長もレベル四十前半程度の白金級冒険者チームと戦えば負けるかもしれない程度の弱い者。

 となれば急に湧いてきた実力者であるカレンたちを取り込みたいと考えるのも普通の話だ。

 

「けど私これまで貴族からそう言った話一切聞いたことないけど……」

 

 カレンは父レイの顔を見てレイがそっぽを向いたのを見て少し察した。

 つまり父の手で貴族からのそう言った話を拒絶していたのだ。

 

「も~……お父さん……」

「いや確かに余もギルド側に言ったがギルドも喜んでそう言った話を蹴っていたからな」

 

 冒険者ギルドももしかしたら新しい白銀級冒険者に成るかもしれない者に貴族や何だと言った者の政治的あれこれに関わらせたくなかった。

 それと娘を守りたいレイの思惑が重なりカレンはこれまでこういった話を聞いたことが無かったのだ。

 

「それで、如何致しますか?」

 

 ションは鋭い目でカレンに問いかける。

 

 その目に思わずカレンは後ずさりしそうになるが気合で堪える。

 

「私としては……少し微妙ですが、受けて頂きたいと思いますわ」

 

 メアリーは少しバツが悪そうにしながらもそう言う。

 

「……ん-、みんなはどう思う?」

 

 カレンはパーティメンバーに問いかける。

 招待状にはパーティメンバーを招待したいと書いてある。

 

「俺はいいぜ。面白そうだし、夜会ってなれば美味い飯食えそうだしな」

「私も参加したく思います。教会の天使として貴族の方々と面識を持つのは悪くありません」

「余は反対だ。カレンを策謀渦巻く夜会に等連れていけるか」

 

 レイの言葉にションが睨んでくるがレイは逆にションを睨み返す。

 レベルも上がって九十八になったレイの視線は物理的圧力を伴いそうだ。その視線にションも目線をずらした。

 

「お父さんの意見は無視するとして……みんな乗り気なのね、わかったわ、参加します!」

 

 その言葉にションは露骨に顔を明るくする。

 

「それはそれは、ありがとうございます。私は早速主にこのことを伝えに参ります。日時は後日雪華の館の者にお伝えすればよろしいですか?」

「そうですね、それでお願いします」

「わかりました。では私はこれで」

 

 そう言ってションは紅翼亭から出ていった。レイだけはジロリとずっと睨んでいた。

 

「カレンさん……申し訳ありません」

 

 ションが出ていった途端。メアリーがカレンに向かって頭を下げた。

 

「どうしたの? 急に! 顔上げて!」

 

 カレンは慌てて顔を上げる様告げるがメアリーは下げたままだ。

 

「今回この話が来たのは友人となった私経由でカレンさんを夜会に引っ張り出したいという思惑があったからですわ。つまり私のせいでカレンさんは背負わなくていい気苦労を負う事になってしまったという訳です……」

「気にしないで、何時かは来た話だと思うし……むしろ私こそメアリーにこんな役をやらせてごめん」

「カレンさん……」

「だから、気にしないで!」

 

 カレンは精一杯の笑顔を浮かべる。

 そこに曇りは一切なく、純粋無垢な笑顔があった。

 

「じゃあ早速夜会の為のレッスンしなきゃ!」

 

 カレンはそう笑顔で言う。

 

「いえカレンさん。冒険者が逆にレッスン等をしていれば何処でそれを覚えた、という話に成りそして出来が良ければ他の貴族達もこぞって貴女を招待しようとしてくるでしょう。必要最低限のマナーだけで充分です」

「そっか……」

「ですが……ダンスぐらいならば覚えておいた方がいいですわね」

「ダンス! なんか足ふみそうで怖い奴だ!」

「では……まずは当家で練習しましょうか! 練習相手は私たちがしますわよ!」

「やった! ありがとうメアリー!」

「このくらいお茶の子さいさいですわ~!」

 

 という訳で一行はダンスの練習をする事になった。デヴォンとエルミナは笑顔で受け入れたが一人レイは嫌な顔をした。

 

 

 

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