魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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二十五話 暗殺

 

「メアリー嬢。ご機嫌如何かな?」

 

 メアリーに話しかけたのは異形種の者だ。

 骸骨其の物であり、スーツを着用したスケルトンにしか見えない。

 だが実際は上位のアンデッドでありリッチという種族のアンデッドだ。

 リッチはスケルトン・呪文詠唱者(スペル・キャスター)の上位アンデッドだ。

 アンデッド全体から見ても上から数えた方が速いぐらいには強い。

 レベルも四十七と高く第六環魔法すら行使する強大なアンデッドである。

 

「これはこれは、ローデル・センティア・モーゼス卿。あなたがこの夜会に来るという事は……何かありまして?」

 

 メアリーは笑顔でそう返答をする。

 

「いや何。この国に用事があってね。そのついでで観光をしていたら公王に誘われたというだけさ」

 

 ローデルはこの国の貴族ではない。

 この国から見て北にあるバルグラート帝国の公爵である。

 バルグラート帝国は皇帝がアンデッドというのもあってアンデッドに寛容な国だ。実力さえあればアンデッドでも貴族に成れる。

 ローデルは力をもって成り上がったアンデッドの一人である。

 自我を持つアンデッドの大半はネクロポリスで暮らすというのにネクロポリスに行かずバルグラート帝国で暮らしているという変わり者だが。

 

「そうでしたか。お体に変わりはなく? ……といっても、アンデッドである貴方には関係の無い事でしたわね」

 

 アンデッドは毒や疾病に関して完全耐性を持つ。病とは無縁だ。

 

「私の体は問題ないが、最近ネクロポリスが少々きな臭い事になっているのは知っているかな?」

「それは……知りませんでしたわ。一体何がありまして?」

「なんでも何者かに襲撃を受けているという。更には……その襲撃犯は魔王軍の関係者だという噂だ」

「魔王軍? 二百年前に滅びたはずでは……まさか、邪竜がもう復活したと?」

「かもしれないな。連邦の方に行くならば気を付けた方が良い」

 

 等と、二人はそこそこ会話をする。

 その様は貴族同士の会話であり一見すると息が苦しそうで実際二人は息が苦しそうだった。

 かたや冒険者をしている放蕩娘。片方は力で成り上がったアンデッド。貴族社会に馴染めてないのである。

 

 

 

 

 ■

 

 

「諸君。楽しんでいるかな?」

 

 各々が会話をしている頃。パーティ会場に入って来る者が居た。

 美女を連れた男であり、護衛の騎士もいる。

 

 歳は四十代程だろう。金髪に白髪が混じっている。

 碧眼の持ち主で顔つきは悪くない。いい具合に歳を取っていると言えるだろう。

 この国の公王であるヴァルター・エルドリッジ・グラキエラ・レムナントだ。

 

 連れている女は赤髪赤目の美女だ。瞳と同じ色のドレスを着ている。

 

「今宵も参加してくれたことに感謝しよう。さて──」

 

 ヴァルターはつらつらとパーティに関して発言する。

 その台詞にレイは何時の時代も変わらないな、と眉を潜める。

 支配下の国等でパーティに呼ばれることはよくあった。その時でもだいたいこんな長台詞が入る。

 まぁレイの場合はそこに暗殺もセットだったが。

 

 夜会のパーティ会場の奥には壇上がある。

 其処には楽器を持った楽団が居る。

 

「では、ダンスを楽しもう」

 

 そう言うと曲が流れる。ワルツだ。

 

 レイは踊る気が無いので脇に避けようとすると一人の女が前に出る。

 黒い髪に鮮血のように赤い瞳。レイと同じく高身長、百九十二センチの女。

 胸がメロンか何かのようにデカく象徴しているドレスを纏った女、セレナ・ドレッドムーンだ。

 

 レイは一瞬怪訝な眼をするがセレナが何かを待つような瞳をした事でレイは内心でため息をついた。

 

 この国では女性が男性をダンスに誘うのは少しはしたない事とされている。まぁ冒険者であるセレナが気にする事ではないが。

 

 レイはセレナまで歩き片膝をつく。

 

「一曲お相手願えませんか? レディ」

 

 レイは片手を突き出し誘う。

 

「はい、喜んで」

 

 セレナはそう手を受け取るとダンスを踊る。

 

 セレナの踊りはたどたどしい所があるがレイはサポートするように踊る。

 魔王時代──今も魔王なので少し変だが──兎も角魔王軍全盛の時代支配下の国でパーティをしたときに女性を誘ってダンスをしたこと等何度もある。

 まぁだいたい、九割の女はハニトラか暗殺者だったが。

 

 レイは見事な踊りを披露する。ダンスの腕もいい。

 レイは高レベル特有の記憶能力でダンスの振り付けを完全に覚えているのだ。

 

 

 そのダンスを見る者達が居る。

 高位の貴族たちだ。彼らはこの夜会に相応しい物か値踏みしているのだ。

 

 そうして一曲踊り終えると二人は離れる。

 

 練習しているのがワルツだけなのでセレナは他の曲の踊りが踊れないのである。

 その為後は壁の花と成る予定だ。

 レイも当然壁の花になる予定でそそくさと離れる。

 

 

(さて、何事も無ければいいが──)

 

 

 ■

 

「私と踊っていただけませんか? レディ」

 

 カレンはそう貴族の男に誘いを受けていた。

 金髪碧眼の悪く言ってしまえば何処にでもいそうな容姿の男だ。

 

「えっと……喜んで」

 

 カレンはそうぎこちなく返答し手を取って踊る。

 ダンスはたどたどしい物だ。傍から見ていて足を踏みそうで不安になるレベルである。というか一回足ふんだ。

 だが男は気合で痛みに耐え絶叫しなかった。何気に勝算されるべき事だ。レベル四十越えの足ふみに堪えたのだから。地味に男の足の甲には罅が入っている。

 

 ワルツを踊り終えるとカレンは「足大丈夫ですか?」と小声で問いかける。

 だが男は精一杯の笑顔で「大丈夫」と答えた。強い男である。

 

「レディ。良ければもう一曲──」

「すみません……ダンスはワルツしか出来ないので、これで失礼します」

「そうでしたか、では私もこれで」

 

 

 カレンは離れ、ため息をつく。

 もう少し他の曲のダンスも練習しておいた方が良かっただろうか、と。

 だがメアリー曰く出来過ぎても問題だというのでワルツだけの練習に絞ったのだ。

 

 しかし思ったよりも話しかけられなかった、とカレンは思う。

 メアリーの話では公王が呼び出した者となれば相応の注目を浴びるはずだが他の者達は余り気にしていなかった。

 これは自分たちが注目されると増長していたのか、あるいは何かの思惑があって話しかけられなかったかのどちらだろうかと考える。

 

 正解は後者だ。

 貴族の夜会に現れた冒険者一行。顔を繋ぐにしてもちょっとリスクがあると思われたのだ。

 未だ注目の的ではあるがその実正体が分かり切ってない者たち。藪をつついて蛇を出してはたまらないと思われたのだ。

 その為誰もが内心「お前がいけ」「いやお前がいけ」と思って話しかけに来なかったのである。

 

 さてどうなるか──とカレンはワインを飲んだ。

 

 

 

 

 ■

 

 

(この国もだいぶ成長したな)

 

 レイは壁の花と成りつつダンスを見る。

 この国は魔王討伐後に発足した国だ。その為レイは何気この国の建国当時から知っている。

 二百年前はただの自由都市だったこの国も幾多の戦いを超えて国となったのだ。

 元はある国の公爵が自由を求めて反乱を起こした事から始まったこの国は強国の一つに数えられるようになった。

 

(さて……ん?)

 

 そこでレイは少し違和感を感じた。

 レイのレベルは最近上がって九十八になった。その為に新しい常時発動型(パッシブ)特殊能力(スキル)を習得した。

 それは探知系の特殊能力(スキル)であり高位の隠匿魔法や隠密特殊能力(スキル)を見破れるという物だ。

 これまでは奪った固有(ユニーク)特殊能力(スキル)の<五視の魔眼>頼りだった探知手段が増えたのである。

 

 それで感じたのはこの場に何か隠密魔法を受けた者が居る、という物。

 だが実際に何処にいるかまでは詳しくはわからない。見るには<五視の魔眼>を使う必要があるだろう。

 しかしそれをするのは面倒に思ったレイはこの気配を無視する事にした。国側が用意した隠密の可能性もあったので看破したところで、と思ったのだ。

 

 そして惨事が起こる。

 

 ダンスの曲が終わりレイの元に歩いて来る公王ヴァルター。それを見て面倒そうだと眉を潜めた瞬間。

 ヴァルターの首が何者かに斬られた。

 

「は?」

 

 この場での堂々な暗殺にさしものレイも驚愕した。

 それと同時にこの国の警護の薄さに舌打ちをする。こんな場所でカレンを一人にしていたと思えば己に怒りも沸く。

 

 攻撃をしたことで隠密の効果が解除され姿が露わになる。出てきたのは黒髪黒目のやせ細った男だ。ボロボロの服とローブを纏っている。

 

 レイはこの国の警護を心配したが実際はこの国の警備は厚い。

 

 入る者には固有(ユニーク)特殊技術(スキル)の魔眼持ちの者が確認し、探知魔法で会場に不審者がいないか探り、警備の騎士が巡回する。

 更には上級以上の魔法道具(マジックアイテム)で結界を張っている為特定の者以外は通さないようになっている。

 レベル三十や四十程度の隠密程度では突破出来ぬ警備があったのだ。

 

 それを突破出来たのは魔法道具(マジックアイテム)隠密者のマントに込められている<存在抹界>(エクリプス・エゴ)の効果があっての物だ。

 第九環魔法等白銀級冒険者しか使わない殆ど伝説級の代物だ。それを使う者を想定しろと言う方が無茶ぶりに近い。

 

「陛下!」

「馬鹿な、警備は何をしていた?!」

 

 警備の騎士たちが遅れてヴァルターに近づくがもう遅い。既に絶命している。

 

 痩せている男、ノクトは「ひゃはははははは!」と笑っている。

 すぐさま騎士達に剣を向けられるが<隠密>の特殊能力(スキル)を使ったのか気配が希薄になっていく。

 騎士達のレベルも十程度であり誰も隠密状態のノクトを感知出来ない。

 

(ここで逃がした方が面倒だな)

 

 はぁ、とレイは溜息をついて<五視の魔眼>を発動する。

 額から真っ黒な第三の目が出現する。

 

<五視の魔眼>は名の通り五つの能力を持つ魔眼の固有(ユニーク)特殊能力(スキル)だ。

 洞視、遠視、透視、未来視、幻視の五つの能力を持つ。

 使うのは透視の力だ。

 透視は壁や衣服を透かして見る能力の他に隠密や不可知化状態のモノを見る能力を持つ。

 この能力は第九環魔法の<完全看破>(パーフェクト・シースルー)と同等の物である。

 

 それを見れば隠密状態になってそそくさと逃げだそうとしているノクトの姿を見ることが出来る。

 

 レイは<瞬歩>でノクトの背後に移動する。

 そして<峰打ち>を込めたパンチを与える。

<峰打ち>は相手のHPを必ず一残す特殊技術(スキル)だ。峰打ちという名の癖に峰の無い武器どころか素手でも機能する特殊能力(スキル)である。

 

 攻撃を受けたことで<隠密>状態が解除されノクトが吹き飛び壁に衝突する。

 ノクトが手に持っていた黒い短剣も地面に転がる。

 

<隠密>や<不可視化>(インシビリティ)等の隠匿魔法等は攻撃をするか攻撃をされる等で解除される。

 その為ノクトが無様を晒しながら吹き飛ばされたという訳だ。

 レイはすかさずノクトに接近しそのボロのローブ──隠密者のマントをひっぺはがす。

 地味に特殊能力(スキル)<強奪>を使用している。強奪は相手のアイテムを盗む特殊能力(スキル)だ。

 

「賊だ!」

「捕らえろ!」

 

 遅れて騎士達がノクトに襲い掛かり捕縛する。

 

「陛下!」

「誰か聖職者を!」

 

 ヴァルターの方では聖職者を呼んで来いと騒いでいる。

 面倒ごとにならないようレイはヴァルターに近づく。

 

「私が治癒します!」

 

 そう言って駆け付けるのはミレイナだ。

 ミレイナは小走りでヴァルターの遺体まで近づきしゃがむ。

 

「これは……失礼ですが公王様のレベルは幾つですか?」

 

 ミレイナは隣にいる女性──ヴァルターがダンス相手に連れてきた女に問いかける。

 

「それは……まさか、ヴァルター様は……」

「…………はい。お亡くなりになられています」

 

 その言葉に全員が絶句する。

 この国に公式上は第五環魔法が使える聖職者はいない。

 死者蘇生は第五環魔法からある為第五環魔法が使える聖職者が居れば蘇生が出来るが、この国にはいない以上絶望的だ。

 他国に蘇生を頼むというのもあるがそれは国の弱みを見せる事になるうえ法外な値段を要求されるだろう。

 

「そんな……誰か、蘇生魔法を使える者は……」

「私が使えます。安心してください」」

 

 その言葉にこの場の全員が希望を持つ。

 

「であれば蘇生を! 後で報酬は幾らでも支払いましょう!」

「わかりました。レベルの方は大丈夫ですか?」

 

 蘇生魔法は相手のレベルを消費する。最大五レベルのダウンが行われるのだ。

 五レベル以下の場合は相手の遺体が灰になってしまう。流石に灰から復活させる魔法は無いとされている。無環魔法なら可能だが。

 

「はい。レベルは十一あります。蘇生は可能です!」

 

 この世界では貴族としてのレベルがある。

 正確には政治家としてのレベルかもしれないが、ともかく政治を行う者もレベルの概念が適応されるのだ。

 その為貴族達は何気にレベルが高かったりすることもある。といっても戦闘力には影響されない事が多いので冒険者としては無意味なレベルだが。

 

<蘇生>(リザレクション)!」

 

 ミレイナは仰向けに倒れたヴォルターに第七環魔法の<蘇生>(リザレクション)を発動する。

 ヴァルターの遺体に光が集い、そして──何も起こらない。

 

「そんな……馬鹿な!」

 

 ミレイナが思わず、と言った風に叫んだ。

 蘇生魔法が通じないなんてことはない。遺体が一定以上損傷したり時間が経過しすぎていると通じないが死んで直ぐだ。問題はないはず。

 だというのに通じない。

 

「ははっ! 通じる訳ないだろ! 俺が魂鎖(こんさ)の短刃で殺したんだ!」

 

(元気だなこいつ)

 

 レイは自分が殴ったというのに元気に叫ぶノクトを見て場違いな感想を抱く。

 

「魂鎖の短刃だと?! 既に製法は失われたはずだ!」

 

 魂鎖の短刀とは百年前にある呪文詠唱者(スペル・キャスター)が魔法を込めた事で作られた呪われた短剣だ。

 効果としては殺した相手に低位の蘇生魔法が通じなくするというものであり、非常に厄介だ。

 貴族達も真っ当に貴族として活動していればレベル五から六ぐらいにはなる。その為に貴族を暗殺しても後ほど蘇生魔法で蘇生される、というのがままある。

 その為殺した後遺体をボロボロにするか遺体を隠す必要がある。

 それを嫌った暗殺者や敵対貴族等が要らぬ叡智を込めて作ったのがこの魂鎖の短刀だ。

 第八環魔法までの蘇生を無効化する短刀だ。

 それこそ蘇生するならば聖王国にいる大聖女を呼ぶしかないだろう。

 

「そんな……」

 

 ミレイナは第八環魔法まで使えるが第八環魔法の蘇生魔法を習得していないし習得していたとしても無効化される。

 

 レイは一人(あれ? 俺たちが参加したパーティで国王が死ぬとか割と洒落にならないのでは?)

 と謎の危機感を抱いていた。

 

 仕方ないな、とレイは無限収納の腕輪(インフィニティ・ボックスリング)からある短杖(ワンド)を取り出す。

 

「ミレイナ、これを使え」

 

 レイはミレイナに短杖(ワンド)を渡す。

 天使の像が着いた短杖(ワンド)だ。何処か神聖な雰囲気を醸し出す杖である。

 

「……これは?」

「第十環魔法の<創命の理>(ジェネシス・コード)が込められた短杖(ワンド)だ」

 

 レイの第十環、という言葉に貴族や騎士達が騒ぎ出す。

 

「馬鹿な、それは伝説の領域だ!」

「大聖女しか使えぬという神秘ではないか!」

「偽物じゃないのか?!」

 

 等といった声が上がりレイは面倒になり強く睨む。

 レベル九十八の視線は物理的圧力を伴いそうでそれだけで貴族連中は黙った。

 

「それは……使ってもよろしいのですか?」

「構わん。アイテムを死蔵していても仕方ないしな」

 

 ラストエリクサー病でもあるまいし、とレイは小声でつぶやくがその意味が伝わる事はない。

 

「ありがとうございます。使わせて頂きます」

 

 短杖(ワンド)巻物(スクロール)はその魔法が行使できるモノでないと使用できない。

 信仰系の短杖(ワンド)巻物(スクロール)は信仰系呪文詠唱者(スペル・キャスター)にしか使えないのだ。その為使うのはミレイナだ。

 短杖(ワンド)とは魔法が込められた短杖の事だ。

 一定回数まで魔法が使えるアイテムだがその魔法が使える職業についてないと使えないというちょっと面倒なアイテムでもある。

 

<創命の理>(ジェネシス・コード)!」

 

 ミレイナはヴァルターの遺体に向かって<創命の理>(ジェネシス・コード)を唱える。

 

 <創命の理>(ジェネシス・コード)はデスペナルティ一切なしで蘇生する最上位の蘇生魔法だ。

 レベルダウンも無しに蘇生できる代わりに消費する魔力量も絶大だが短杖(ワンド)による使用の為魔力は消費しない。

 

 魔法が正常に作用する。

 

「うっ……俺は……いったい……」

 

 そう言って公王ヴァルターは起き上がった。

 

「陛下!」

「おお、生き返った!」

「天使の奇跡だ!」

 

 貴族達が口々にエルミナを称える。

 これで面倒事は解決しそうだ、とレイはそそくさと離れようとするがエルミナが手を掴んだ。

 なんだ、と言う前にエルミナが立ち上がって頭を下げた。

 

「貴方の短杖(ワンド)が無ければ蘇生できませんでした。誠にありがとうございます」

「……気にすることはない。死蔵するのももったいないと思っただけだ」

 

 実際はここで死なれると変な容疑がこっちに来そうだと思っただけだが。

 

「そうだ……この人が居なければ陛下は亡くなったままだった!」

「レイ・アーヴェルス殿! 感謝いたします!」

 

 そして貴族達は次にレイに感謝を述べていく。

 それにレイはむず痒いモノを感じる。憎悪と殺意を向けられる立場の魔王が感謝を向けられるのはそうそうない事だからだ。

 レイは微妙な表情を浮かべる。

 

「クソが! クソがクソがクソがクソが! なんでだ! なんでそいつは蘇れるんだよ!」

 

 そこでノクトが騒ぎ出す。

 近衛騎士に両手を抑えられ上からローブで縛られている途中であるというのに元気な事である。

 

「知るか。其方には運が無かっただけだ」

 

 レイは冷たく言い放つ。

 

「俺の時は! 誰も助けてくれなかったのに!」

「煩わしい──」

 

 国賊は生かして捕らえた方が良いだろうと思って<峰打ち>を使ったレイだが騒ぎ出すノクトを見て止めを刺そうかと人差し指を向ける。

 指から骨の弾丸を放てば人程度即死させれる。

 

「ふん!」

 

 そこでノクトを抑えていた騎士が何かの特殊能力(スキル)を使いノクトを気絶させた。

 

「この者をきつく縛って牢にいれておけ!」

 

 武装が他の騎士とは違い質の良い魔法道具(マジックアイテム)で身を包んだ騎士は他の騎士にそう言うとノクトを連れていかせた。

 

「レイ・アーヴェルス殿。この度は賊を捉える事に協力していただき感謝いたします」

「……この場で見逃す方が面倒なことになると判断したまでだ。気にするな」

「だとしても国の安全を預かる者として、礼を」

 

 騎士は深く礼をする。

 

「……ならば受け入れよう」

 

 レイは渋い顔をして受け入れた。

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