魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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第二十六話 転生者華伯メイ子

 

「なんか大変なことになったね~」

 

 カレンたち黒風とメアリーを除いた赤焔の翼一行はリムジンに乗って帰路に着いていた。

 

「まったく。変な男のせいでせっかくのパーティが台無しになってしまったな……」

 

 レイがぶつくさと文句を言う。

 

「けど蘇生出来てよかったね。お父さん短杖(ワンド)なんて持ってたんだ」

 

 話題を変えようとカレンがレイに話しかける。

 

「まぁな。エリクサーや<大回復>(ヒール)巻物(スクロール)等は常備している。何があってもいいようにな……と言っても自分では使えないが」

「ですが備えあれば憂いなし、ですね」

 

 その後もいくらか雑談をしながら一行は雪華の館まで戻る。

 道中メアリーの屋敷で赤焔の翼一行を降ろしてそのままリムジンで移動して貰った。

 

 その後着替えてシャワーを浴びて就寝した。

 

 

 

 ■

 

 カレンたち黒風の一行は雪華の館の一階の食堂で食事をとっていた。

 恰好は冒険に行く訳でもないのでラフな格好である。

 この宿の食事はビッフェスタイルだ。

 オムレツやソーセージ、キュウリやレタスなどの野菜等多種多様な物がある。

 

「しかし、昨日の襲撃者の目的は何だったんだろうな」

 

 食事をしていると不意にデヴォンがそう口を開いた。

 

「何処かの組織に属している暗殺者か、悪いはあの王に恨みを持つ個人か……どちらだろうな」

 

 レイはフランスパンを頬張りながら口にする。

 

「けどパーティ会場でいきなり事に及ぶって大分大胆だよね。後先考えてないって言うか……」

「あるいは先が無かった、などか? 依頼主からせっつかれていたとか……」

「気にはなる所ですが……我々は所詮部外者ですからね。知る事も出来ないでしょう」

 

 等と話しながら朝食を食べ終え、片づける。

 

 今日は休日に設定している。曜日は日曜日だ。

 その為各々好きな事をしよう、と離れようとした時声をかける者が居た。

 

「皆様。少しよろしいでしょうか?」

 

 話しかけてきたのは執事だ。

 見た事のある顔であり、ションだ。

 

「何の用だ?」

 

 レイがずいっと前に出て問いかける。

 

「はい。実は公王陛下が皆様にお会いしたいとのことです。どうかお会いになってはくれないでしょうか?」

 

 ションは下手にでながら話す。

 

「どうする?」

 

 レイがカレンに問いかける。

 

「ん-、いいんじゃないかな。今日は特に予定も無かったし……」

「リーダーがそういうならいいぜ」

「私も構いません」

「ならばよいか」

 

 全員の了承を得たことで一行は行く、と返事をする。

 

「ありがとうございます。車を用意いたしました。どうぞこちらへ」

「この格好で会うのは不味いのでは?」

「いえ。早急にお会いしたいとの事。恰好は気にしないでください」

 

 ションのその言葉に従い全員ラフな格好のままで雪華の館の駐車場まで移動する。其処には昨日乗ったとの同じタイプの黒いリムジンがあった。

 リムジン一台でも約七千万セラする。持っているだけで一財産だ。

 レイは金はある所にはあるんだなと謎の納得をしながらリムジンに乗り込む。

 

 余談だがこの国に運転免許はまだない。だが作った方がいいのでは、という声が貴族達から上がっており数年もすれば作られるだろう。

 実際バルグラート帝国では既に免許のシステムが作られている。

 

 リムジンに乗って車道を走りクリスタリア城に行く。

 前と同じように駐車場に車を止めて降りて城の中へと進む。

 

 先頭はカレン。次にレイでデヴォンに最後にエルミナの順で進んでいく。

 

 案内役はションだ。

 道中騎士達に会いながらも城の中を歩いて行く。昨日のパーティ会場とは別の場所へ歩いている。

 

 そうして城を歩く事十分近く。目的地につきションが「どうぞこちらへ」と扉を開ける。

 

 カレンたちが中に入ると部屋は客室だ。

 二つあるソファと長机があるそこそこ広い部屋だ。

 

「どうぞおかけになってお待ちください」

 

 ションはそう言うと部屋から出ていった。

 

「これ座ってもいいのかな……」

 

 カレンはソファの綺麗さと質の良さに少し気後れしている。

 

「気にすることはないだろう」

 

 レイはそう言うと本当に一切気にせずソファに座る。

 そして机の上に置いてある茶菓子のクッキーをとって食べる。

 

 奔放なレイの姿を見て他の者達も気が緩んだのかソファに座る。

 だが王に呼ばれたという緊張な中々取れず無言でクッキーを食べる時間だけが過ぎていく。

 そうして待つ事十分。部屋にノックがかかる。

 

「失礼します」

 

 そう言って入って来たのはションだ。

 

「陛下が入室します」

 

 そして次に公王のヴァルターが入って来る。

 レイ以外の全員が立ち上がり姿勢を正す。レイは気にせずクッキーを食っていた。

 

「よい。気を楽にしてくれ」

 

 その言葉に王を前に気を楽に出来るかい、と全員思ったが取り合えず従ってソファに座る。

 ヴァルターも向かいのソファに座る。

 

「まずは余を蘇生してくれたことに深い感謝を」

 

 ヴァルターは小さく頭を下げた。

 王の地位に付く者が頭を下げる。その意味は非常に重い。そのことを知っているカレンたちは驚く。

 レイは一人(まぁ蘇生されたんだから当然だな)と最後のクッキーを食べた。

 

「それで、まずは感謝を金銭で示したいと思う」

 

 ヴァルターがそう言うとションが札束を四つ出す。

 

「黒風のパーティ皆に四百万セラの礼を」

「四百万……?!」

 

 カレンが渡された金額の大きさに驚愕し目を見開く。

 四百万など下手な一般人の年収にも匹敵しうる大金である。

 だが王の蘇生金と考えれば相応だろう。一般的に蘇生魔法の代金は五十万セラだ。

 その八倍の値段である。

 黒風が一日のダンジョンアタックで手に入る金額の数十倍である。

 

「あ、ありがたく受け取りたく思います」

 

 カレンはそう頭を下げながら四百万セラを受け取った。

 

「うむ。それと……何か他にも形に成る物でレイをしたく思う。例えば、そう……魔法道具(マジックアイテム)等だ」

 

 その言葉にエルミナとデヴォンが鋭い目をする。

 

「それは……期待してもよろしいのでしょうか?」

 

 デヴォンがそう問いかける。

 

「無論だ。其方たちに会った装備品を用意しよう」

 

 その言葉にデヴォンはいきり立ちそうな程の期待を胸にする。

 

「あー、私とカレンは要らない。今持っているのが最高品質の物だ。そちらがこれ以上の物を用意できるとは思えない」

 

 だがそこにレイが口を挟む。

 流石に一国の王が相手なので余という一人称は使わない。使ったら不敬罪判定になりそうなので。

 

「……ふむ。普段はどのランクの装備品を付けているのだ?」

「武器は伝説級。鎧は聖遺物です」

 

 レイがそう返答するとヴァルターは驚いた顔をする。

 伝説級など勇者の伝説の中でしか聞かないような一品であり、聖遺物は国宝クラスの一品だ。

 この国にも聖遺物の魔法道具(マジックアイテム)は二つしかないのである。

 

「それは……確かに、それ以上の物を用意するのは難しそうだ」

 

 ヴァルターはそう返答する。

 

「ならば其方ら二人には消耗品を用意しよう。上位魔法封じの結晶(スペリアマジック・クリスタル)やタリスマン等をな」

「それでお願いします」

 

 という訳で一行は新しい装備品を受け取ることになった。

 

「装備を用意するために幾つか相談したい事がある。よろしく頼むぞ」

 

 

 

 

 ■

 

 

「これが新しい装備か」

 

 デヴォンとエルミナは新しい装備を受け取った。

 

 デヴォンは黒い忍び装束を。エルミナは新しい司教杖を手に入れた。

 どちらも秘宝級の一品でありデヴォンのは隠密能力強化に<奇襲>のダメージ増加効果を持つ。

 司教杖は回復魔法の消費魔力軽減と効果増加が込められている。

 

 リムジンで雪華の館に戻った一行は取り合えず今日は解散して各々好きな事でもしよう、と解散する事になった。

 

 デヴォンは新しい装備の具合を確かめる為魔王城でフクスと訓練しに行き、エルミナとカレンはメアリーを誘ってのショッピング。

 レイは一人街中を散策する事にした。

 

「さて……」

 

 レイは目的も無くエルフェリアを歩く。

 道中何かしら買い食いしながらの散策である。

 余談だがレイは太るなどと言った事はない。<肉体操作>の固有(ユニーク)特殊能力(スキル)で太るのも痩せるのも自由自在だからだ。

 何なら容姿も変えれるし、今の姿は元の姿から変えた後の外見である。

 

 散歩しているとたまに視線を感じる。

 

 上半身裸という強気なファッションなのが注目されるのだ。

 これが女なら即通報物だが男なので問題ない。レイは女にも成れるがならない。

 

 レイはこうして歩いていると時代の流れを強く感じる。

 

 魔王軍全盛の時代はラジオなんてないし列車も無かった。

 ラジオは<念話>(テレパシー)の魔法が込められた魔法道具(マジックアイテム)を改造した物だし列車も魔法道具(マジックアイテム)だが。

 それでも二百年で文明は大いに進んだ。

 このまま順当に行けば現代、二千年代と変わらない文明にまでなるだろう。

 もしかしたらインターネットも直ぐに作られるかもしれない。と言ってもネット魔法なんて言う便利な物は今のところないが。

 

「あー!」

 

 そうして歩いると突然大声を出す者が居た。

 気になってレイがそちらに視線を向けると其処にはギャルが居た。

 

「は?」

 

 その姿を見てレイは固まった。

 

 そこに居たのはギャルである。まごう事無きギャルであった。ド派手な恰好の女である。

 金髪に茶色い目の美少女である。

 それだけならまだいいが、問題はその服だ。

 着ているのは何処をどう見ても現代日本の高校の制服であった。ちゃんと女子の制服である。ブレザーを着用している。

 短いスカートに生足を露出する服装。今は七月なのでいいが冬になると寒いだろう。

 更に特徴的なのはブレザーを押し上げる巨乳どころか爆乳の域にあるのではないかと思える巨乳だ。最低でも百センチは超えてるだろう。

 身長は百五十五センチ程度だろう。

 

 その女とレイは目が合う。すると女はスマホ片手にレイに近づく。

 そのスマホを見てレイはまた固まった。何でこの世界でスマホ持ってるねん、と。

 余談だがレイは転生者だ。現代日本から死んで転生してきた一般人である。その為現代日本についてはよく知っている。だからこそこの世界に似合わぬモノを持つ女に混乱した。

 

「え~と、黒風のレイさんですよね! 今ちょっといいですか!」

 

 女はそうレイに問いかける。

 

「……なんで余の名前を知っている?」

 

 レイはジロリと睨みながら問いかける。

 

「ギルドで滅茶苦茶話題になってますよ。凍てつく王廟の十五層突破した新星の冒険者チームだって! ていうかダンジョンボス倒した時の報告時にうちいましたし!」

「そうか……で、何用だ?」

「うちとコラボ配信しませんかっていうお誘いっす!」

 

 コラボ配信、という言葉を聞きレイは混乱したくなったというか混乱した。

 何故この世界で配信の概念があるねん、と。

 

「……どういう意味だ?」

 

 意味は知っているがこの世界の住人としては知っていると可笑しい概念の為聞いておく。

 

「あ~と、映画ってありますよね? それと同じようにダンジョンアタックの風景を不特定多数に生で見せるってことっす。このスマホ……神器で別世界に映せるんすよ」

 

 この世界にも映画は既にある。

 映像を記録する魔法が第二環にありその魔法で映像を録画した魔法道具(マジックアイテム)を使って映画を上映するのだ。

 ただ欠点として録画した映像を後から編集なんてことは出来ないので一発どりである。その為演技が雑になってしまった映像が入る事も多々ある。

 俳優などの職業も一般的である。何なら俳優のクラスとかもある。

 

「そうか……面白そうではあるが余一人では判断できん。パーティメンバーと相談しなければならん」

「あ~、そうっすよね。じゃあまた明日聞きに行っていいすか?」

「……構わんが、そもそも其方名乗ってすらないだろう。名乗れ」

「あ、そうでしたすんません……華伯メイ子っす。華伯が名字でメイ子が名前っす」

「……その名前からすると東雲皇国の出身か?」

 

 東雲皇国とは東の果てにある和風の、江戸時代の日本っぽい国である。

 魔王軍全盛の時代に一度侵略を行ったが当時の皇女相手に敗北した過去を持つ。

 当時攻めていたのは四天王の一人のギロニア&アロニスだが敗走を記した。

 

「ん~、そこら辺ちょっと違うんですがまぁ大体そんな感じです」

 

(やっぱこいつ転生者か転移者か?)

 

 要領を得ない回答にレイはそう考える。

 ほぼほぼ日本から来たものだと確信しているがどう対処したものかと悩む。

 暗殺は配下のフクスに頼めば出来るかもしれないがレベルが同格以上だと探知系特殊能力(スキル)を持っているだろうから効かない。

 なら直接戦闘となると自分が出るぐらいしかない。四天王二人を残して全滅しているし。残った二人も魔王軍を裏切っている。

 その為魔王城の戦力は心もとないのである。大半が非戦闘用に作ったホムンクルスしかいない。

 しかも今からホムンクルスの兵士を作るとしても最大レベル三十なので雑兵にしかならないのである。

 

「それじゃ配信の方お願いしますね~!」

 

 そういってメイ子は走り去っていった。

 

 なんだったんだあいつ、とレイは溜息を吐いた。

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