魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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二十七話 異世界配信

 

「そういえば昨日変な奴が来たぞ」

 

 翌日の朝。雪華の館の食堂でレイは唐突に口を開いた。

 

「変な奴って?」

 

 朝食をとっていた黒風一行はレイに注目する。

 

「華伯メイ子という女が来てな。なんでも共にダンジョンアタックの配信をしたいらしい。この中で配信について知っている者はいるか?」

 

 レイがそう問いかけるとエルミナが手を上げた。

 レイは内心何でお前が知ってるねんと思いつつ問いかける。

 

「配信が何か教えてくれないか?」

「はい。配信とは特殊な魔法道具(マジックアイテム)や魔法を使った映像を遠くに飛ばす事です。聖王国では一般化出来る様魔法道具(マジックアイテム)の研究が盛んに行われていますが……この国ではあまり聞かない事ですね」

「映像を遠くに飛ばすか……映画見たいな感じか?」

 

 デヴォンがうーむと唸る。

 

「私は良いと思うな。誰かに私達の活動が見られるってことは有名になるチャンスだしね!」

 

 カレンはふふんと鼻を鳴らす。

 

「面白そうだし俺も賛成だ」

「では私も賛成、と言う事で」

 

 デヴォンとエルミナも賛成し残るはレイだけとなった。

 

「では余も賛成という事で……ギルドに行けば会えるだろう」

 

 食事を終えた一行はギルドへ行こうと雪華の館から出る。

 出た瞬間一行はメイ子と遭遇する。

 

 華伯メイ子は転生者である。

 子供がリムジンに引かれそうなところを庇って助けた結果神の目に留まって転生という機会を与えられた者である。

 この世界に来てまだ一ヵ月程度の新人冒険者であるがレベルは既に三十代と高い。

 

「ちーすレイさん! お返事聞きに来ました!」

 

 こいつ意外とアクティブだな、とレイは謎の関心をする。

 

「え~と、貴女が華伯さん?」

 

 カレンが一歩前に出て問いかける。

 

「そうっす! 華伯メイ子十六歳! 元女子高生の現ゆーちゅー……配信者っす!」

 

 きらっ☆とメイ子はピースをとる。

 

「そっかー。私はカレン。同じく十六歳です!」

「デヴォンだ。二十一」

「エルミナです。歳は六歳です」

「レイだ。三十六歳だ」

 

「ほへー……ってエルミナさん六歳?! とてもそうは見えないっすけど?!」

 

「エルミナは生まれたての天使でな。天使は生れた時から成体なんだ」

「天使! 初めて見たっす! 確かに翼と光輪ありますもんね!」

 

 すげー! とメイ子はカレンをじろじろと見る。

 それに流石のエルミナも少し照れる。じろじろと見られるのは余りない事なのだ。

 確かに天使は珍しい種族だが居ない事も無い。国に二、三人は居るだろう。

 

「と、本題っす。コラボ配信の方どうすか?」

「いいよ! やっちゃおう!」

「ありがとうございます! その代わり今日の昼飯はうちで用意させて頂きます!」

「いいの? ありがとうございます!」

 

 黒風一行のメンバー全員既に食事が要らないが食事はとっている。

 デヴォンは指輪の枠の一つを食事不要の指輪にしている。残りはまだ埋まっていない。

 エルミナは天使なので種族特性で飲食不要だ。

 その為昼食は持ち回りで用意している。<保存>(キープ)の魔法がかかった袋があれば出来立ての料理を保存できるので問題はない。

 

「じゃあ早速行きましょう!」

 

 という訳で一行はダンジョンに行くことになった。

 

「それでなんすけど、うちのレベルがまだ三十二なんすよ。なのでまだ第十五層は速いかなーて感じなんす」

 

 三十二レベルとなれば第五環魔法が使えるレベルだ。

 メイ子のランクも白金級もある。メイ子は何気この国に二チームしかいなかった白金級なのである。今はカレンたち黒風が居るので三チームいるが。

 

「じゃあ今日は第十一層あたりで狩りする?」

「ですね。それでお願いします!」

 

 等と話していると冒険者ギルドに辿り着く。

 

 ギルドに入り転移の鏡(ミラーオブゲート)を使ってダンジョン前のギルド支部まで転移。

 そして街の外に出れたので転移魔法を使ってダンジョン内に入る。

 街中での転移魔法の使用は基本禁じられている為このような手段を使わないといけないのだ。

 

 カレンのマーキングが残っているのでカレンの魔法で第十一層に転移する。

 

「んじゃ配信準備しますねー」

 

 メイ子はそういうとスマホを取り出し何かしらの操作をする。

 

 

 このスマホは神器だ。

 神器とはアイテムランクの伝説級の一段上だが、その能力は魔法道具(マジックアイテム)の領域を超えている。

 識環の呪文書(マジック・オブ・スペルブック)のような全ての魔法が記される効果や聖剣カラドボルグのような邪悪全てに特攻を持つ剣。

 魔王城が所持している全てを斬り裂く魔剣ノートゥングのような通常の魔法道具(マジックアイテム)の領域を超えたアイテムの事を差す。

 あるいは神々が所持しているようなアイテムの事でもある。

 

 メイ子が持つスマホには大それた名前はないが効果は幾つもある。

 一つがメイ子の元の世界、現代日本との通信だ。

 映像や文章の通信が可能で、SNSやインターネットを使う事が出来る。

 次に投げ銭機能によるネットバンク用の金銭会得だ。

 有名配信サイトには投げ銭という機能がありそれを使う事で配信者にお金を渡す事が出来る。

 メイ子はそれでお金を受け取るとネット通販で物を買う事が出来るのだ。

 といっても買えるのはネットで売っている物だけだが。

 他にも幾つか能力があるが今は置いておこう。

 

 メイ子がスマホを操作するとスマホは縦になって浮遊し始める。

 途端メイ子の横に配信のコメ欄が浮かぶ。半透明のホログラムのような物だ。

 

「何それすご!」

「これもスマホの能力っす!」

 

 驚くカレンに対しメイ子はえっへんとデカい胸を張る。

 

「お、配信開始っす……じゃーん! 華伯メイ子す! 今日はコラボ配信っすよー!」

 

【待ってた】

【コラボついにか】

【異世界配信キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!】

 

 コメントが続々と流れる。

 コメントも日本語の為普通にレイたちにも読める。

 

「この文章は何?」

 

 カレンがメイ子に問いかける。

 

「これはコメントっすね。画面の向こう……配信を見ている人が文字送ってるんす」

「へー、すごいね!」

 

【茶髪美少女だ】

【二人並ぶと絵になるのう】

 

(コメント多いな?)

 

 レイは優れた動体視力と速読能力でコメントを読む事が出来ているがコメントが多い。

 最低でも視聴者は百人を超えているだろう。

 

【ていうかこんな配信に協力してくれる奴なんていたんだ。異世界とかまだ信じてるの?】

【↑じゃあ召喚魔法とかの奴どう説明するんだ? 最低でも魔法が無きゃ説明つかないだろ】

【荒らしに反応するのも荒らしだから反応しないように】

【↑そういうオマエモナー】

 

「コメントで論争が起きそうなので話題ストップ! てなわけで今日は凍てつく王廟の第十一層攻略っす!」

 

【まだ十一層か】

【ボスは前行ったけど全然だったしな】

【数の暴力はキツイよなー】

【しばらくはレベリングするしかないべ】

 

「それじゃコラボ相手の紹介っす! 皆さん自己紹介をどうぞ!」

 

 バトンがカレンに渡る。

 メイ子はキラキラとした目でどう自己紹介するのかと目を輝かせている。

 気後れしながらも一行は自己紹介を始める、

 

「え~と、カレン・アーヴェルスです。白金級冒険者ですがレベルは四十を超えています。えっと、配信を見ている人、よろしくお願いします?」

 

【茶髪美人だ】

【年齢はメイ子ちゃんと同じぐらいかな?】

【軽戦士かな?】

 

「あ、魔法戦士です。第六環魔法まで使えます」

 

【第六! すげぇ!】

【ほとんどの人が使えない領域だったっけ】

【魔法が使えないこの身では何がどう凄いのかわからない】

 

「次は余か……レイ・アーヴェルスだ。カレンの父だ。モンクでレベルはまぁ五十ぐらいだ。以上」

 

 レイはここでレベル九十以上と真実を言う気はないので適当に嘘をつく。

 メイ子をそこまで信用してないし視聴者は更に信用できない。何かしらの手段でこの世界に干渉してくる可能性を考えたら真実は偽っておいた方が良い。

 

【レベル五十とかたっか!】

【一人称余とか草生える】

【お父さん! 娘さんを僕にください!】

 

「やらん帰れ」

 

 コメントに対しレイは冷静に言い返す。

 

「次は俺だな。デヴォンだ。種族はハーフフット。レベルは四十だ。盗賊とか最近は忍者のクラスの修行もしてる」

 

【忍者とな?】

【アイエエエNINJA?! NINJAナンデ?!】

【ハーフフットの忍者とかショタコン歓喜じゃん】

【よく見れば忍者っぽい格好してるしな】

 

「最後は私ですね。エルミナです。種族は天使。聖職者を収めていましてレベルは五十五です」

 

【エッッッッッ】

【天使だ!】

【まーた宗教関係で問題になりそうな事を……】

 

 華伯メイ子の配信は異世界、日本側でも話題になっている。

 観測不能の領域からの謎の配信にCG等の現代技術では表せないリアリティある魔法等の現象。

 モンスター退治等のスプラッタにも程がある配信をしても垢バンされない謎防壁。

 少なくとも現代技術では干渉できないナニカであるというのは各国上層部も認めざる負えない。

 

「じゃあ行きますよ!」

 

 全員「おー!」とやる気のある返答をする中レイだけはやる気のないオーを返した。

 

 

 ■

 

 

<怪物召喚5th>(サモンモンスター・フィフス)!」

 

 メイ子が召喚魔法を使用する。

 召喚するのはストリクスという下位の竜種のモンスターだ。

 

 竜には段階がある。下位、中位、上位の三段階だ。

 下位の竜には知性は薄く言語を解する事も無い。中位の竜からは魔法を使ったり何か話す事もある。

 上位の竜は神々の次ぐ力があるとされ、彼らは不死性を持つ。

 上位の竜以外は繁殖行為で増える為動物的存在だが上位の竜は天使や悪魔等の生物の枠組みから外れた存在に近い。

 召喚魔法で召喚できる位のは中位の竜までだ。

 

 ストリクスはワイバーン型の竜種だ。

 青白い鱗を持つ二百五十センチメートル程の蜥蜴である。

 前腕が被膜の付いた翼が着いた腕に変わっていて白い角を持つ。

 冷気に対して五十パーセントの耐性を持つモンスターであり冷気系の攻撃が多いこのダンジョンでは壁役として優秀だ。

 その代わり炎に対して脆弱性を持つ。

 特殊能力(スキル)はフロストブレスと<風刃翼(ふうじんよく)>という斬撃の風ダメージを発生させる能力の二つを持つ。

 

 

「んじゃうちは後衛で魔法ぶっぱしてます!」

 

 メイ子の戦闘スタイルは壁役のモンスターを召喚しての魔法攻撃役だ。

 カレンのような前線にもでるスタイルではなく完全な後衛スタイルである。

 

 十一層は神殿上の広間が続くエリアだ。広さは充分ある為二メートルを超えるストリクスが居ても広さは充分感じられる。

 

 モンスターがぽつぽつと出現し始める。

 

 出現するのは亡霊系モンスターで騎士系の氷霊騎士(アイスナイト)に第三環魔法まで使う冷気系呪文詠唱者(スペル・キャスター)氷亡霊(フロストゴースト)だ。

 ここには出てないが他にはデカい白クマの聖極熊(セイクリッド・ポーラー)に弓兵のバージョンの氷霊騎士(アイスナイト)も出現する。

 

 氷霊騎士(アイスナイト)六体に氷亡霊(フロストゴースト)が二体出現する。

 

「行きます! <魔法範囲強化・(マジックレンジエンハンスメント)火炎球>(ファイヤーボール)!」

 

 メイ子が魔法を放つ。

 右手から火球が放たれモンスター集団に直撃。爆炎を上げる。

 

【いつ見ても派手な魔法だ】

【スキルで魔法を強化してるしな】

【MP管理気を付けてけー】

 

「いっくよー!」

 

 続いてカレンが氷霊騎士(アイスナイト)に突撃する。

<魔力鋼刃>の特殊能力(スキル)を使い武器のリーチを伸ばし一掃する。

 元から<火炎球>(ファイヤーボール)でダメージが入っていたのに加えレベル差が二十もある為に簡単に倒された。

 

【カレンちゃんつよ】

【剣伸びたのはマジックアイテム? それともスキル?】

【この世界色々あり過ぎてわからん】

 

 コメントを呼んだカレンが返答する。

 

「県伸ばしたのは<魔力鋼刃>ていう特殊能力(スキル)だね! リーチを魔力消費で伸ばす事が出来るの!」

 

【すげー】

【MP消費か。純戦士にはキツイスキルだな】

【けどリーチが命の戦士職には強いスキルだ】

 

「んじゃこの調子でお願いしまーす!」

 

 その後も一行はモンスターを狩っては進んでいく。

 

 全員レベルは三十以上ある為この階層のモンスターでは話にならない。

 順調に進んでいきメイ子は何気にレベルを上げていく。二つ上がって三十四になった。

 

 

 

 ■

 

「あ、セーフエリアだ……そろそろ休憩する?」

「そうっすねー。配信も二時間超えたし丁度昼飯時だして丁度いいっすね」

 

 一行は第十四層まで降りてセーフエリアについていた。

 それまでにもモンスターを倒しまくり、視聴者がレイの強さに驚く等あったが問題なく進んでいた。

 

【気づけばもう十二時か】

【時計がスマホしかないからわかりにくいな】

【他の人たちはどうやって時間図ってるん?】

 

「実際どうなんすか?」

「ん-、普通に魔法道具(マジックアイテム)の腕時計とか懐中時計とかで時間図ってるよ。時間になったら音が鳴る奴とか上位のだと一定時間ごとに特定の魔法を発動する奴とかあるし」

「時計とかの技術うちの世界より上じゃないすかねこの世界」

「取り合えずお昼休憩にしよ! 期待してもいいかな?」

「勿論っス! 美味いもん用意しますよ!」

 

 一行はブルーシートを敷いて座って休憩する。レイは壁に背を預ける。

 

 メイ子はスマホを操作する。

 このスマホは注文と同時に商品が届く。更にはネット上で買える物は何でも買えるという特性を持つ。

 

「皆さんこの中から好きなの選んでください!」

 

 メイ子はそうスマホに乗るメニューを見せる。

 其処には某有名ファストフード店のメニュー表があった。

 

「ここから注文できるのか?」

 

 デヴォンがそう問いかける。

 

「そうっすよー。試しに……ほら」

 

 メイ子はダブルチーズバーガーを単品で注文する。

 するとその場にダブルチーズバーガーが出現する。

 

「すごい!」

 

 カレンが見た事の無い現象に驚きの声を上げる。

 

「便利だな」

 

 レイはほーと関心を示す。

 

「んじゃ注文しましょー」

 

 という訳で一行は注文をする。

 余談だがこの世界にもハンバーガーはある。これも三百年前の賢王が齎した物だ。

 

 カレンはてりやきバーガーにフライドポテトのMサイズとストロベリーシェイク。

 レイはでかいハンバーガー二つとフライポテト。飲み物はチョコシェイク。

 デヴォンはチキンフィレオにナゲット八ピース。飲み物はコーラ。

 エルミナは海老フィレオとサラダにアイスティーだ。

 

 メイ子は最初に頼んだダブルチーズバーガーとフィレオフィッシュとポテトSサイズにコーラである。

 

 いただきます、と一行は食事を始める。

 

(うわ~懐かしい……)

 

 レイは一口食った瞬間懐かしさで溢れた。

 地球の日本に居た頃は時折食べていた故郷の味。まさか異世界転生しても食えるとは思っても無かった。

 メイ子様様である、とレイはこっそり感謝しながら食べる。

 

「美味い……美味いには美味いが……なんだろう。この味。これまで食った事無い味だ」

「ジャンクな味わいって奴じゃない?」

「ジャンク……そうか。これがジャンクって奴か」

 

「これ美味しいですね。海産物をこの地で食べられるとは思ってもみませんでした」

 

 エルミナは海老フィレオを食べながらそう感想を呟く。

 今まで食べた事の無い味である。

 ハンバーガー自体はあるが海老フィレオは無い。海老をハンバーガーにするという発想が今のところ無いのだ。

 といっても海産物が主要のバルグラート帝国等に行けばあるかもしれないが。

 

【美少女の食事は絵になるのう】

【男連中にもコメントしてやれよ】

【ていうか男二人で残り三人女性とか裏山】

 

 等とコメントが流れながらも一行は食事を終え、配信も終わった。

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