「よーし。いくぞー」
黒風一行は特にこれと言った問題なく第十五層のボス部屋前まで来ていた。
流石に全員レベル四十以上になれば大した問題も無いのである。トラップも最近レベル四十九になったデヴォンで探知出来ない物はないし。
ただ回復魔法が使えない、というのは結構な弱点で時間だけはかかった。今はもう夕方の四時である。
ボスを倒したら即座に帰らないと晩飯が危うくなる時間帯であった。
カレンがボス部屋の扉を開け、中に入る。
「先手必勝! <空裂斬><鬼断流><超斬撃>!」
<肉体向上><肉体超向上><真・肉体向上>を使った状態での飛ぶ斬撃である。
玉座に座るアークレイに直撃し大ダメージを与えた。
だが流石にレベル四十はある為アークレイは耐えた。
アークレイが玉座から立ち上がり左手を振るう。
それだけでレベル三十のアンデッド精鋭隊が出現する。数も三十と下手な都市ならこれだけで攻め落とせる兵力だ。
「
そこですかさずエルミナが退散の
自身のレベルより下のアンデッドを問答無用で退散させる
だがこの場に居るのはレベル三十程度のエルミナから見れば二十もレベルが下のアンデッドだけだ。
白い浄化の光がこのボス部屋全体を襲う。
結果
そしてアークレイにもダメージが入る。レベル差が十もあるので格下判定になったのだ。
だが一撃で消滅するような大ダメージは入らずそこそこ程度のダメージに収まった。
ダメージを受けたアークレイはよろめいた。
「おんどりゃぁぁぁ!」
すかさずその隙をついてカレンが<瞬歩>の
<
更に能力向上系を合わせた系七つの
怒涛の連撃がアークレイを襲う。
アークレイはダメージを受けつつも何とか防御の構えをとろとするがその動き出しを
結果アークレイは大ダメージを受け消滅一歩手前まで追い詰められた。
アークレイが配下を再度召喚しようとするがそれよりもエルミナの
再び部屋が白い光に覆わる。この光はアンデッドにしか効果を発揮しないので人間であるカレンたちの視界を阻害する事はない。
結果アークレイは浄化され、ドロップアイテムを落として消滅した。
「……勝利!」
■
翌日。一行は昇級試験を受けこれも問題なくクリアした。
道中要救助者が何処の階層にいるのかで手こずったぐらいで昼には問題なく達成できた。
結果黒風はこの国初の黄金級冒険者パーティとなった。
そして終わった一行は行きつけになりつつ酒場グリュムの飯と酒という店で宴会をしていた。
といっても黒風だけで行う規模は小さい宴会だ。流石に毎回赤焔の翼やメイ子を呼ぶわけにはいかない。
「しかしこれ、前回もエルミナ居たら俺たちだけでいけたんじゃないか?」
デヴォンがそう呟いた。
酒も進み飯も進んできた頃の発言だ。
「どうでしょう。前回はセレナさんが居たから
「そっかー。まぁ今は皆レベルもあがったしね!」
「余は余り上がってないがな」
レイはそう言うが実際はレベル九十九にまで上がっている。レベル百まであと少しであった。
レベル百など神々の領域である。人類が到達していい領域ではない。
そもそも最高レベルが勇者リナの九十とされているのでそれより九も高いレイは普通に人類卒業していると言っていいだろう。
「それじゃあ明日はドラゴン戦だね!」
「今度はバフ魔法も問題なく使えますからね。如何に相手のレベルが高かろうとパーティで挑めば問題ないはずです」
「そうなってくると二十五層のボスも気になるな。ドラゴンの次はなんだ?」
「亡霊に竜と来れば悪魔ではないか? 氷系統の悪魔も多いしな」
「悪魔ですか……苦手な相手ですね」
「まぁ悪魔系モンスターは絡めてが多いからな。もしそうならエルミナ、頼むぞ」
「お任せください。神に遣わされた天使として役目を果たして見せます」
等と一行は話し合った。
親交を深めていった。
■
翌日。一行は転移魔法で凍てつく王廟の第二十層のボス部屋前に直行していた。
「よし。開けるよ」
カレンがそういいボス部屋の扉を開ける。
ここは第二十層のボス部屋前。一行はバフ魔法を全てかけ扉を開けて中に入った。
「先手必勝! <空裂斬><鬼断流><超斬撃>!」
カレンはアークレイの時と同じように初手から全力の遠距離攻撃を放った。
飛ぶ斬撃が起きた直後のグレイスドラウに直撃し顔にダメージが入った。
「ぬぅ! 許さんぞ人間共!」
「喋った!」
竜が喋ったことに一行は驚くと同時にレイが舌打ちをする。
喋る事が出来るという事は知能が高いという事だ。相手も戦術やら戦略を使ってくるという事。
更に面倒なのは喋れるという事は魔法の行使さえしてくるという事だ。
これまでの情報が一切ない完全初見のボス相手に一行に緊張が走る。
「死に絶えろ」
そこにレイが突進する。
何の
それだけで全長二十メートルのグレイスドラウがのけぞった。
「このままいくよ! エルミナ! 天使召喚して!」
「わかりました!
エルミナがお馴染みになりつつある天使
顔を元に戻したグレイスドラウが怒りに任せレイに攻撃しようとするが
グレイスドラウの爪の斬撃が
<鉄壁守>等で防御力を上げていた
「<忍法・影分身の術>」
デヴォンが今の自分が出せる最大数の分身を生成する。
四体の分身が生み出され<投擲>という名の通り武器を投げる
デヴォンは投擲用のクナイを持っておりこのクナイは投擲すると時間経過で勝手に懐に戻って来る魔法効果がかかっている。
「むぅ! 虫けら共が!」
グレイスドラウは怒り範囲攻撃を行う。
尻尾を使った回転攻撃だ。何かしらの
デヴォンはタイミングを合わせ<回避>の
「
カレンがフロスト・ドラゴンの弱点である炎属性の攻撃魔法を放つ。
威力も充分高く城壁程度なら砕けるし、レベル三十程度なら即死する火力を持つ。
三つの
「
「げっ!」
せっかく
「
続いて第三環の炎耐性を得る魔法を唱える。
こちらは二十五パーセント炎に対し耐性を得る魔法だ。
こういった魔法は上位の魔法で下位の魔法が打ち消される、と言った仕様は無い。重複するのだ。
その為これでグレイスドラウは七十五パーセントの炎耐性を得たことになる。
ただ実際はマイナス百パーセントの耐性というか脆弱性を持っていたのでマイナス二十五パーセントになった程度であり、まだ炎に対し二十五パーセントの脆弱性を持つ。
「こんにゃろ!
マジックウェポン系魔法の上位版であり第六環魔法になる。
これによりカレンたち全員の攻撃に炎属性が付与される。
レイは素手なので本来付与されないはずだが素手に骨のグローブを作って装備する事で武器装備判定にして無理矢理炎属性を付与していた。
「お父さん! 会わせて! おんどりゃぁぁぁ!」
カレンが幾つかの
同時にレイも攻撃をする。左右からの挟み撃ちだ。
両者同時の攻撃に一瞬グレイスドラウは迷い、その判断が命取りとなる。
両腕に対し怒涛の連撃を叩きこむ。正しレイは
「ぬぅぅうん!」
その攻撃によってグレイスドラウの両腕がずたずたになる。もはや攻撃手段として使う事は叶わないだろう。
「舐めるな人間共!」
グレイスドラウが大口を開ける。ドラゴンブレスの構えだ。
「散開!」
カレンのその言葉によって各自散らばる。
移動速度が元から早いデヴォンとレイは遠くへ。カレンは地味に<挑発>の
エルミナは天使の翼で飛行していく。
どれに攻撃するかグレイスドラウは一瞬迷ったが支援魔法持ちが面倒だとエルミナを狙ってコールドブレスを吐く。
極寒の吐息だ。ドラゴンブレスは魔法ダメージではなく物理ダメージ判定となる。
極台のダメージを受けるはずのドラゴンブレスを受けたエルミナは果たして、無事だった。
「なんだと?!」
無事の訳は事前にかけた冷気耐性を得る魔法のおかげだ。
グレイスドラウが使った炎耐性を得る魔法の冷気バージョンを事前に使っていたのだ。その為に七十五パーセントも冷気ダメージを軽減した。
更に元から種族特性で物理ダメージを軽減できる天使なのもあって殆どダメージを受けなかったという訳だ。
グレイスドラウが驚く一瞬を狙いカレンが頭上に転移する。
そのまま<鬼断流>に<超斬撃><致命の斬撃><
頭に綺麗に直撃し頭から血を流させた。
「ぐぅ、人間風情が!」
頭から血を流しながらもグレイスドラウは悪態をつく。
「HPまだ七割あるぞ!」
デヴォンが<観察眼>でHPを確認しそう叫ぶ。
「死ね」
カレンが引きすかさずレイが変わりに出る。
胴体に向かって<十六連撃>の
拳上に鱗がへこみ軋み鱗が禿げる。
「ぬぅぅうお!」
またもグレイスドラウは何かしらの
レイは受けて吹っ飛ぶも吹っ飛んだだけでダメージは殆どない。
「
グレイスドラウは回復魔法さえ行使し歪んだ己の腕を癒す。
だが治るのは外見だけでその実HPは殆ど回復しない。第三環程度の魔法ではその程度だ。
しかし側だけでも治ったという事は腕による攻撃が可能になったという事だ。
グレイスドラウは二足歩行に変わりエルミナに攻撃する。
すかさず
だが流石に中位クラスの竜の攻撃だ。
数度グレイスドラウが殴るだけで
「
そこにカレンが雷の魔法を放つ。
だがグレイスドラウは余裕の表情で耐えて見せた。
「ぬるいぬるい! こんなものか、人間!」
グレイスドラウははっはっはっはと笑う。
「こんにゃろ!
カレンが最近覚えた第七環魔法の拘束魔法を唱える。
重力の力場が発生し対象を封じ込める魔法だ。この魔法によってグレイスドラウは地面に強く打ち付けられ拘束される。
「ぬぅ、動けん……!」
これは行動阻害に分類されるため対策されやすい魔法だが耐性や無効化を持っていない対象にはこれ以上無い程に通じる。
対策が必須になるのも自然と分かる魔法だ。
「全員攻めろ!」
カレンの指示によって全員攻撃に移る。
エルミナ以外各々
エルミナは数少ない信仰系の攻撃魔法
レイなんかにあたれば相応のダメージを受けるだろう。
そしてグレイスドラウもカルマ値は低い方だったらしくそこそこのダメージが入った。
胸に光の槍を受けたグレイスドラウは苦悶の声を上げた。
「なぁぁぁめぇぇぇえるなぁぁぁ!」
グレイスドラウは絶叫し大回転を見せる。
回転しながら移動しこの広いボス部屋をぐるりと回転しながら移動していく。
こりゃたまらんとカレンはデヴォンを抱えて
エルミナは天使なので素で飛び、レイは装備品の
回転が終わったグレイスドラウは発狂モード、ボス専用の
「しゃあ! このまま攻めるわよ!」
「いや一旦引くべきじゃないか?」
カレンに抱えられたままデヴォンがそう意見を出す。
「このままいけばごり押しで倒せる!」
「無茶苦茶だな!」
カレンがそう言いながら地面に降りデヴォンを降ろすと<瞬歩>でグレイスドラウの眼前まで移動する。
そしてグレイスドラウの爪と剣戟を行う。
「
エルミナが再び召喚魔法を唱え
カレンがグレイスドラウの背後に回り丁度後ろに来ていたレイと合流する。
「いっくよー!」
「任せろ」
カレンとレイは合わせて攻撃を行う。
攻撃に炎属性が乗っている今火力は高い。
カレンは幾つかの
グレイスドラウの背中が見るも無残に抉られていく。
「おぉぉぉぉおおおお?!」
グレイスドラウは絶叫する。余りの痛みに我を忘れる。
「止めだぁぁぁ!」
カレンは<鬼断流>に<超斬撃><蒼閃・縦雲>を使い首を斬り落とした。
絶命し、グレイスドラウは大量のドロップアイテムとなった。
「私たちの勝利だ!」
カレンが勝利の勝鬨を上げ全員が声を上げた。一人レイだけは恥ずかしそうに上げたが。
「このドロップアイテムすげぇな……」
「竜のドロップアイテムとくれば相応の値段になるでしょうね……全て売る予定ですか?」
カレンがそそくさとドロップアイテムを最近買ったドロップアイテムを入れる専用の袋に入れていく。
「いや。一部……ていうか肉だけは売らずにとっておこうかなって」
「というと?」
「魔王城の専属料理人によるドラゴン肉のステーキ……食べたくない?」
にやり、とカレンは笑みを浮かべた。
その言葉にデヴォンとエルミナはごくりと喉を鳴らした。
「竜の肉か……! 貴族様でも早々食べられない奴だ……」
「それを料理人のクラス持ちが調理する……なんて罪深い……! いえ食材に感謝を込めて頂くべき……!」
エルミナに至っては翼がぱたぱたと動き感情の動きがもろに見えている。
「まぁクブールに頼めば作ってくれるだろうな」
「よーし今日はドラゴン肉のパーティだ!」
「いよっしゃぁ!」
デヴォンは柄にもなく喜んだ。