黒風一行は順調に凍てつく王廟を攻略していった。
時折赤焔の翼と共同攻略したりメイ子とコラボ配信するなどにぎやかな生活を送って行った。
遂には二十五層のボスを倒し三十層にまで進んだ。
「うし、行くよ!」
カレンは三十層のボス部屋の扉前で気合を入れた。
既にバフ魔法はかけれるだけかけ終わった後だ。
全員レベルが上がっている。
カレンは己の才能限界値であるレベル五十五に。レイは限界レベルである百に。
デヴォンは五十二にエルミナは五十八レベルまで上がっている。
ドアを開けて中に入ると其処は玉座の間だ。
氷の結晶で出来た玉座に座るのはリッチの氷系統に特化した大魔術師。
骸骨の相貌に豪華なローブを纏った様は正に死の王と言えるだろう。
「
氷のリッチ、アークティスは第八環の魔法を唱える。
直径五メートルを超える極太の氷の槍が生成され黒風一行に襲い掛かる。
「ふん!」
すかさずレイが前に出て魔法を殴る。
<魔素干渉>は魔法に対し干渉できるようになる
レイの高ステータスをもってすれば大抵の魔法はこれで打ち消せる。
結果
「<鬼断流><超斬撃><空裂斬>!」
カレンが三つの
勿論<肉体向上><肉体超向上><真・肉体向上>を発動した状態の斬撃だ。
カレンの今のレベルは五十五であり同時に十一まで
飛ぶ斬撃はアークティスに飛んで行く。
「
飛ぶ斬撃が当たる寸前アークティスは魔法を唱えた。
一定値までのダメージの無効化ではなくダメージを一定値軽減するタイプの魔法だ。
軽減された斬撃はアークティスにそこそこのダメージを与えるだけに終わる。
「<忍法・影分身の術>」
そこでデヴォンが
この
合計六体のデヴォンが生み出され遠く名からクナイを投げる。
「
魔法陣から出現するのは
三メートルの巨体。左手には己の全身を隠す程のタワーシールドを持っている。
右手には長剣を持っている。
骸の相貌に棘の付いた全身鎧を纏う姿は死の騎士と言ったところだろう。
能力として巨大な盾に相応しく攻撃能力よりも防御に重きを置いた能力をしており特殊
レベルは六十一という上位のアンデッドモンスターだ。
「オオオオオオ!」
そんなの知るかとレイが突撃しアークティスを殴ろうとするが攻撃の矛先が強制的に
タンクが覚える
レイはパーティで戦う際攻撃系の
流石に敵感知などの
その為攻撃力は下がっている。具体的にはレベル七十代後半程度にまで下がっているのだ。
その為
「ちっ」
レイは舌打ちをした。
これの上位版のアンデッドもいるがそれではない為まだマシと言ったところだろう。単にアークティスが第十環魔法を使えなかったというだけだが。
「そいつは任せた!」
カレンがそう指示を出しアークティスに<瞬歩>で接近する。
アークティスは接触型の魔法の
カレンの斬撃がアークティスを襲う。
アークティスはその身で受けたり
アークティスのレベルは六十二。カレンより格上の相手だ。
アークティスは無詠唱化した
逃げるアークティスをカレンが斬るというのが続く。
「おらぁ!」
そこにアークティスの意識を反らさんと分身のデヴォンがクナイを投げる。
このクナイは
魔法的効果の無い攻撃の無効化を種族特性で持つリッチであってもダメージは入る。
だが隠密特化の不意打ちではない投擲だ。大したダメージには成らないだろう。
それどころか
しかし意識は反らせた。
「おんどりゃぁぁぁ!」
カレンが幾つかの
不意の攻撃だ。結界魔法で軽減できたがそれでも大ダメージには変わらない。
「
エルミナが天使を召喚する。
三メートル程の巨体の天使。機械的な体をしている。
両手に大剣を持っている二刀流の天使だ。
背中には四対の翼と頭上には光の輪。顔は兜で隠れており隙間からは青い炎が見える。
攻撃能力に特化している天使で防御性のは同レベル帯だと低い方になる。
レベルは五十四。
レイはそれを見て一発タワーシールドに蹴りと入れてから距離をとる。
その隙をついてすかさず
防御特化と攻撃特化。だがレベルの上では
だがそのわずかな時間があれば充分だ。カレンとレイのコンボアタックならばアークティスを消滅させれるだろう。
レイが<瞬歩>でアークティスに接近する。
「いっくよー!」
「任せろ!」
カレンの斬撃の隙間に合わせるようにレイが打撃を叩きこむ。
スケルトン系のアンデッドは刺突に対し完全耐性を持ち斬撃にも耐性を持つ。
その分打撃、殴打に対し脆弱性を持つ。火力ではレイのが上だ。
「
煩わしく思ったアークティスが自分を中心とした範囲攻撃の魔法を放つ。
氷の爆発が起こりカレンとレイは冷気に包まれる。
「なんのその!」
だがカレンとレイは耐えた。体に霜が出来ても耐えたのだ。
<不屈>の
だが冷気ダメージと凍らせる拘束はこの
冷気のダメージは普通に受け氷の拘束は二人とも行動阻害に対する完全耐性を得る指輪で無効化したのだ。
吹き飛ばなかったことにアークティスが驚き一手行動が止まる。
その隙を見逃すカレンとレイの二人ではない。怒涛の連撃でHPを削っていく。
アークティスが召喚したアンデッドの
防御特化対攻撃特化の戦いは泥沼となっていた。
そこにエルミナが温存していた
ならばとアークティスは右手を向け何かしらの魔法を唱えようとする。
その右手に向かって本体デヴォンがクナイを投げる。
魔法発動がキャンセルされた。
これは高位の忍者等が持つ
相手とのレベル差によって成功率が変わるが相手の魔法を発動させない事が出来る強力な
これを使われた場合魔法は発動していないのに魔力だけは消費するという嫌な仕様がある。
アークティスは内心舌打ちをしながら今度は
上位のリッチ系統しか習得出来ない
名の通り一定範囲の相手に即死を与える
ただ一日に一回しか使えない上そもそも即死は格下専用の技なので通じることは殆どない。
黒いオーラがアークティスから立ち上るがそのオーラに触れたカレンとレイの二人は何ともない。
レイもカレンもレベルによってレジストし無効化したのだ。
「
手での発動が阻害されるならばとアークティスは口から魔法を放った。
魔法判定ではなく物理判定の魔法であり魔法耐性だけが高くとも防げない魔法だ。
だが事前に冷気耐性を得る魔法を使っていた二人には大したダメージには成らない。
そのまま幾つか魔法を行使するも殆どが軽減されるか意味がないままになる。
そもそもこのダンジョン自体分かりやすすぎたのだ。あからさまに冷気を使うというダンジョン名にその名に恥じぬ構造。
となればそのボスもまぁ冷気を使うだろうと事前対策されて当然であり、対策れたボス側に出来ることは殆どない。
だがここでアークティスは賭けに出た。
「
その魔法と唱えた途端高速でアークティスが動く。
脅威の速度に一瞬驚きカレンはアークティスの打撃を剣で防ぐも吹き飛ばされた。
「ちっ」
使われた魔法を知っているレイは舌打ちをした。
だが欠点も多い。戦士としての
更にあくまで能力値が変わるだけで戦士としての技能が手に入る訳でもない。
こんな魔法を使うぐらいなら素直に最初から魔法戦士として成長していった方がいいのだ。
だがこれでアークティスは冷気系ボスではなく戦士系ボスとなった。
考えていた対アークティス戦の作戦が全て台無しになった。
「死ね。無駄に無様に屍晒せ」
娘が吹き飛ばされたことに怒ったレイが怒涛の攻撃を入れる。
アークティスのレベルは六十二。今のアークティスはレベル六十二の戦士となった。
素のステータスだけで言えば十レベル程度の差だ。
埋めがたい差である。このまま戦えば確実にレイの方が勝つと言えるぐらいには。
だがそれでも何とか攻防出来る程度にはステータスがある。アークティスは
「スイッチ!」
そこに吹き飛ばされたカレンが戻って来る。
レイはアークティスに蹴りを入れて距離をとる。
その間にカレンが入り<
戦士としての能力を得ても技能までは手に入らない。その為アークティスは碌に抵抗する事も出来ず斬撃を受けてしまう。
<超斬撃>や<鬼断流>込みの斬撃だ。大ダメージが入る。
反撃をしようとするがデヴォンがクナイを飛ばして行動を阻害し、エルミナが信仰系の浄化魔法でダメージを的確に入れる。
そしてついにカレンの<
<
「オォオォォォオオオ!」
アークティスは最後の絶叫を上げ消滅し、ドロップアイテムと一本の剣を残して消えた。
「なにこれ?」
ダンジョン内で死んだ者はドロップアイテムだけを残して消えるはずだ。だというのに氷の剣だけが綺麗に残っている。
美しい剣だ。実用性よりも美に重きを置いたような剣であり刀身から柄に至るまで全て氷で出来ている。
「……不味いな。まさかこんなところで目にするとは」
レイが一人嫌な顔をした。
「父さん、知ってるの?」
レイが嫌な顔をしながら答える。
「これは神器だ」
「「「神器?!」」」
レイの回答にレイ以外が驚愕の声を上げた。
「これが神器……目にするのは初めてです……」
神器とはこの世界に幾つか存在する超級の
それ一つで戦局をひっくり返し、大国一つ滅ぼすのも可能とされるアイテムだ。
中には世界そのものに影響を与えるとされるアイテムもあるという。
現状公表されている数は九個。
教会が保有している三つ。
ノルドレイン連邦の二つ。
クロックハンマー王国に一つ。
バルグラート帝国に二つ。
ロブルカス王国に一つ。
グラキエア公国に一つ。
公表しているのがこれだけなのでもしかしたら隠して持っていたり、あるいはメイ子のように個人が所有している事もある為その数は把握されていない。
魔王城も三つの神器を所有している。
レイが保有する
「取り合えず鑑定してみるね……
カレンが氷の剣に鑑定魔法をかける。
「……ほんとに神器だ。名前は
カレンが武器の性能の高さに逆に引く。
これは持ち主を堕落させる魔剣だ。どんな無能でもこの剣を手にするだけで剣豪になるだろう。
「ていうかダンジョンボスが神器落とすのか?」
デヴォンがそう疑問を口にした。
「落とすぞ。と言っても最奥のボスが最初に倒されたときだけに落とすが……まぁほとんどのダンジョンボスは落とさんからな。レア中のレアだ」
自分もそうしてダンジョン攻略で神器を手に入れてレイは経験と得た知識からそう答える。
そっか、と返したデヴォンは再び口を開く。
「……どうするよ、その剣」
神器となればうかつに売る訳にはいかない。というか持ってるのをバレる訳にもいかないだろう。
「魔王城の宝物庫に入れておくか?」
魔王城の宝物庫には既に
入れておけば存在がバレることなく、盗まれることも無いだろう。宝物庫の番人も居るのだから。
「いや……これ私が使っていいかな?」
カレンはそう提案した。
「余は別に構わんと思うが……性能で言えば
伝説級の武器と神器の武器では当然神器の方が上である。
「私もそれが良いかと思います。死蔵するだけではもったいないですし」
「俺もさんせー。ただ神器ってのは身内だけの秘密にしとくべきだな。赤焔の連中とか特にメイ子には言っちゃ駄目だな」
「よし! じゃあこれは私の物ってことで、今日はこれで終わり! 帰ったら宴だぁー!」
一同「おー!」と雄たけびを上げた。
これにて凍てつく王廟の攻略は終わった。