魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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第37話

 

「じゃあな、カレン」

 

 あれからいくらか話し合いをした。

 その結果レイはパーティを脱退するという事になった。

 何か大きな依頼があれば再度一時加入という事で黒風に再度入る事になるがそれ以外では基本レイはリュミナス聖王国で奉仕活動をする事になった。

 カレンとしても父と離れるいいきっかけになった、と今では受け入れている。

 それでもレイには魔王としての細々とした仕事があるので魔王城には定期的に帰るので問題ない。

 カレンも転移門の鍵(ゲートキー)を渡したので魔王城に何時でも転移で帰れるようになっている。

 

 大聖堂前でレイとカレンは別れていった。

 

 

 ■

 

 ルミナリアにはエルフェリアのようなダンジョンは無い。

 その為観光都市としての側面も強く幾つかの観光名所がある。

 

 地獄の門。地獄に通じるとされている石造りの門。悪魔の彫像がある。

 神話の時計塔。神話の時代からあるとされる時計塔。一時間ごとに周囲の人間に勇気を与えるバフ魔法が発動する。

 迷宮区の庭園。草で出来た迷宮。最奥にはその庭園の管理者の貴族と会える。迷宮を攻略した者には初回限定で魔法道具(マジックアイテム)が与えられる。迷宮内にモンスターは居ない。

 

 そのほか幾つか観光名所がある。

 

 カレンたちはレイを除いて観光名所を一週間かけて観光名所を巡っていた。

 尚その間レイは奉仕活動をしていた。

 

「村の訪問~?」

 

 レイは大聖堂内に与えられた自室で勇者リナと会話していた。

 今は与えられた昼休憩であり昼食をとって時間が余ったので本を読んでいたレイは唐突に部屋に入って来たリナ相手に顔を顰めていた。

 

「そうよ。勇者としての仕事でこの国の各地の村を周って問題ないか確認するの。といってもこの国以外に行く事もあるけど」

「面倒だな。何故それに余が同行せねばならん」

「貴方に人の心を知ってもらう為よ」

「……面倒だが、了承しよう」

 

 はぁ、とため息とともにレイは了承した。

 

(そもそも人の心とか言うが俺は人間なんだから人の心ぐらい持ってるつーの)

 

 レイは内心そう思う。

 本当に人の心がある奴は村を焼いて都市を滅ぼしたりはしない。

 

「じゃあ早速行くわよー」

「今日行くのか……」

 

 二人はレイの与えられた自室から出て大聖堂の外へと向かう。

 レイは光翼亭から出てこの大聖堂内で生活をしていた。

 奉仕活動として掃除したり他の者の食事を用意するなどしている。

 肉体的疲労とは無縁である為その程度レイにとっては苦でもない。

 

 大聖堂を出てタクシーに乗って駅まで向かう。

 タクシー内は無言で過ごす。お互い魔王と勇者という相反する関係なので話題に困るのだ。

 レイにとっては仲良くする気も無い相手なのでそれでもいいがリナにとっては少し違った。

 

 リナは少し仲良くなりたい、という魂胆があった。

 

 何故魔王として君臨したのかまだ気になるのだ。

 無論先日その場のノリと勢いでやったと聞いたがそれが全てではない事ぐらいわかっているし魔王として君臨し続けたのはどういう思いかと気になるのだ。

 

 はぁ、とリナは溜息をついた。

 

 

 ■

 

「のどかな村だな」

 

 駅から列車で二時間。目的地であるポッカ村に辿り着いた。

 平和な村だ。羊が主産の村である。人口も千人に満たない程度の村である。

 一応列車で来れる程度には発展しているが。

 

「ここで何をするんだ?」

「まずは学校に行って、そこでまぁ交流って感じね」

「学校か……」

 

 この世界にも学校はある。

 と言っても国が学校を作る事は殆ど無く、大体が街や村で用意した学校になる。

 そこでは基本的な事だけ教えている。文字の読み書きや簡単な算数だ。

 もっと詳しく勉強したければ個人で金を出して大学等に行かないといけないのである。

 まぁ無料で文字の読み書きと算数を教えてくれる分まだマシだが。

 

 因みにカレンはネレヴィアの学校に二年程通っていた。レイはこの世界の学校には行っていない。

 

 十分も歩くと目的地の学校に辿り着く。

 

 学校前には掃き掃除している老人が居た。

 

「初めましてー、勇者リナ・フェイルーンです。学校訪問に来ましたー」

 

 その言葉に老人はぱぁっと顔を明るくする。

 

「おお! あなたが勇者様ですか! どうぞこちらへ、歓迎いたします!」

 

 歓迎のされようを見てレイはこいつ本当に勇者なんだな、と感心する。

 その後軽く雑談を交わした後トークショーをするために教室まで向かう。

 

「おいこれ余いるか?」

「要らないけどいるわ。着いてきて」

 

 話す主体は勇者であるリナなのでレイはやる事が無い。面倒だし帰ろうとかと思ったが帰った方が面倒になると思いレイは黙ってついて行った。

 

 教室に行く。

 教室の作りは現代のそれと左程変わらない。

 

 レイとリナ二人が中に入ると生徒たちから視線が集まる。

 教室内には十人程の生徒の子供がいる。

 年齢は六歳から七歳程度の幼い者達だ。

 

 レイは入り口前で止まりリナは講壇につく。

 

「初めましてー、勇者リナ・フェイルーンです。今日はこの学校に訪問させて頂きました!」

 

 その言葉に子供たちが騒ぎ出す。

 

「すげー!」

「本物の勇者様だ!」

「サインください!」

 

(人気だな……)

 

 レイは流石は勇者と内心舌打ちをする。

 

「あとでサイン会するからねー。今日ここに来たのは──」

 

 

 その後色々とリナは話す。

 モンスターの脅威。亜人種や異形種との共存について。

 

(割と勇者として真っ当な事を言うな)

 

 聞いていてレイはほーんとそんなことを思う。

 かつてリナは勇者として前線で戦い続けたが今は戦線から引いている。

 その為こういった行為をしているのだ。

 退役軍人よりも扱いはいいだろう。まるでヒーローの様だ。

 

 そうして話していると質疑応答の時間になる。

 

「はい! 隣にいる男性は誰ですか!」

 

 元気よく女の子がそう問いかけた。

 

「付き人のレイさんです」

 

 リナはにっこりと笑顔で返答する。

 

「旦那さんとか彼氏とかじゃないんですか?!」

 

 女の子は更に元気よく訪ねた。

 その言葉にリナは気まずそうな顔をしながら返答する。

 

「違います。ただの付き人です……本当に」

 

 リナは困った顔をしながら返答する。

 

「実際何の関係もない一般人だ。サポートして来ただけの者に過ぎん」

 

 レイはそう台詞を発した。

 

 教室中から「えー」という落胆の声が出る。

 年頃の子供は恋愛ごとに興味津々なのである。

 

 その後も幾つか質疑応答をしてから解散した。

 

「いつもこのような事をしているのか?」

 

 学校から出たレイはリナにそう問いかけた。

 

「そうよ。まぁこうして村とか街を巡ってこの国には勇者が居るぞってアピールして回ってるわけ」

「面倒なものだな」

「そうでもないわよ。結構楽しい仕事よ」

「そういうものか……」

 

 二人は話しながら駅に戻り列車で聖都に戻って行った。

 

(さて、この勇者どうしたものか)

 

 一対一ならばレイが負ける道理はない。例え聖剣カラドボルグを持っていたとしても勝てるだけのレベル差がある。

 だが先日のように勇者一行をぶつけられれば負ける。あの後直ぐ解散したかのように見せかけたが当然嘘であろう。今も聖都内に潜伏しているに決まっている。

 となると手段は暗殺だがフクスのレベルでは探知されるだろう。

 

 そもそも殺す必要があるのか、とも考える。

 勇者と魔王は敵対するものだと考えて殺しにばかリ思考がいっていたが殺さずに和解する道もあるのではと冷静な自分が考えている。

 

 レイとリナは列車の席に二人並んで座っている。肘と肘がぶつかりそうだ。

 

「聞くが、余は何時までこういった活動をしなければならない?」

 

 レイはそう尋ねた。

 

「そうね……前貴方が言ったように百年かしら」

「長いな」

「けど魔王の寿命からしたら短くない?」

「まぁ、確かに余は永遠を生きることが出来るが……」

 

 レイは<肉体操作>の固有(ユニーク)特殊能力(スキル)で不老不死に限りなく近い。

 その為百年程度は短いとも言えるだろう。

 

「……ねぇ。なんで私が世界を救うために活動したか知ってる?」

「知らんな」

「私はかつて、神託を受けた子供だった。世界を救う勇者として使命を帯びた子……だけど魔王軍に支配された世界を見て思ったわ。意外と平和だ、と」

「占領地を混乱に陥れてどうする。支配を維持する為ならば平穏な手段も取るわ」

「そう。それは侵略者であって略奪者じゃない。世界征服を企む魔王軍は世界崩壊を企んでなかった……何故征服という手段をとったの?」

「前も言っただろう。出来そうだからやった、と」

「最初はそれだとしても、途中からは変わったはずよ。八大幹部に四天王。世界を征服する戦力を整える中で心変わりが無かったとは言わせない」

「……聞いてもつまらんぞ」

 

 レイはすごく嫌そうな顔をする。と言うか実際嫌だ。

 何が悲しくて自分の黒歴史を敵対者である勇者に言わねばならぬのか。

 

「聞かせて頂戴」

 

 リナはそう真っすぐな瞳で問いかけた。

 レイははぁ、と溜息をついた。

 

「……最初は本当に出来心だった。だが途中からは違う。アンデッドの迫害。異形種への差別。モンスターと亜人種の違い……そう言った諸々の問題を解決してやろうという気概があった」

「……そう言った事を考えていたのね」

「ああ、だが途中から気づいたよ。『これでは余が居る限り目的は達成できない』とな」

「それは……」

「何せ侵略してきた魔王軍事態亜人種と異形種の混成軍だ。亜人種や異形種に差別の目が行くのは当然の理だ。だから途中から魔王軍を解体させる方向へ動かした。勇者の存在は逆にありがたかったな」

「そうね……確かに私もアトラシアと協力したりしたわ。竜王イージュスールとも協力を取り付けたり」

 

 竜王イージュスール。

 レベル八十五の強大な竜の王だ。

 竜種はレベル以上の戦闘力を有している事も多い。実際リナが戦ってきた中では魔王の次に強いのが竜王と言えるだろう。

 アトラシアを含め勇者一行が死力を尽くす事で何とか倒した竜の王であった。

 

「そう。世間に魔王こそが邪悪と知らしめ、それを討つ勇者。そして勇者には種族の垣根を超えた友情を持つ多数の種族たち……というのは実に便利だったぞ」

「……まるで私たちの旅が操られた物のようね」

「まぁそう思われても仕方がないな。実際そうだったし」

「それで、その魔王様は今はどうするの?」

「前も言ったろう。役目を果たした魔王は倒された。ならば余は……いや、俺は平穏無事に暮らすだけだ。被害者には悪いがな」

「そう……」

 

 その後二人は無言でルミナリアの大聖堂まで戻っていた。

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