「ここが魔王城ね」
リナは魔王城の廊下でそう呟いた。
「見てても面白いものはないぞ」
そう返すのは魔王レイだ。
今レイとリナは魔王城に来ている。
目的は魔王城に保管されている宝物だ。
リュミナス聖王国に返品するための宝を探しに来たのだ。
「趣味の悪い城ね」
「作った奴の趣味が悪かったんだろ」
二人はそう会話しながら歩く。
廊下の壁には人の頭蓋を使った灯りがある。魔法の灯りであり
黒い壁に黒い床に赤いカーペット。恐怖を演出している。
「この城作ったの貴方じゃないの?」
「巨大な城を作るよう命令を出したが中身までは口を出してなかったからな。作ったダークドワーフの趣味だろうよ」
「ダークドワーフか……」
そうして会話していると目的地の宝物庫に着く。
「でかい扉ね」
扉は黄金で出来ていて五メートルもある。
右側は悪魔、左側は天使の像が彫られている。
レイが扉に触れると自動的に開いていく。
これは宝物庫のセキュリティだ。
登録した人間以外が触れても開かないしトラップが発動するようになっている。
「ああそうだ、お前毒は大丈夫か?」
「急に何? 装備で耐性は持ってるけど……」
「ならよかった。ここは猛毒で犯されてるからな。毒耐性無い奴は入ると死ぬ」
「それ先にいいなさいよ」
文句を言いながらレイとリナは中に入る。
中に入ると自動的に扉が閉まった。
「うわすっご」
リナは思わずといった風に声が漏れた。
リナに視界に入ったのは黄金の山田。
金のインゴットの山だ。三十メートルはあるだろう。
それが十個以上はある。
全てが純金の文字通りの金の山だ。一つの山売るだけで国が買えるだろう。
そして地面には多数の
宝箱も交じっており、一つでかい宝箱が開いた。
「うにゅ? 魔王様。何用ですか?」
宝箱から女の子が出てきた。
歳は十六ほど。腰まで届く薄いピンクの長髪。
だが衣服を一切来ておらず小さい胸があらわになっている。
「魔王……あんた部下に服を与えてないの?」
リナが性犯罪者を見る目でレイを見た。
レイは「違う!」と己の無実を証明するために叫んだ。
「こいつが服を着ないだけだ! うちは部下の自主性を重んじてるからな!」
「いや服は着させなさいよ。常識でしょ」
「うちは服なんて着たくないぞ。めんどくさい」
「本人もこういってるからな!」
「えぇ……ていうかその子何の種族?」
「うちはミミックだぞ」
「ああ、ミミックか」
ミミックは広義で言えばゴーレム種の一種だ。
長い時間をかけて無機物が生命を得たか
元が無機物であるために毒への完全耐性を持っているのでこの猛毒の中生きていられるのだ。
「それで、だ問題は例のアイテムだ……名はなんだったか」
「聖者の杯よ」
「ああ、それだ。あるか?」
「ん-少々お待ちをー」
そういうとミミックは金塊の山に突っ込んだ。
ガサゴソと音がした後金塊の山からアイテムを持って出てきた。
黄金で出来た杯だ。どこか神聖さを感じるデザインである。
「どうぞー」
「これが聖者の杯ね」
「ああ……これは余が持って行った方がいいのか?」
「いえ、私が……いえ私と魔王両者で私に行くべきね。いくわよ。ありがとう……ええっと、ミミックの人」
「おう。じゃあなー」
そういとミミックは金塊の山の向こうへ消えていった。
「……行きましょう」
リナはミミックはわからん、と宝物庫を出ていった。
■
「魔王様。これが半年分の税になります」
「うむ」
数日後の魔王城の玉座の間にて。レイはサキュバスから税を受け取っていた。
玉座に座るは当然魔王レイ。隣に立つのはライカードと勇者リナ。
サキュバスはサキュバスらしく露出の激しいというか全裸の方がまだましといえる服を着ている。
乳首と女性器が出ているオープンブラとオープンショーツを着ている。
もちろん身に着けているのはサキュバスであるエリシア・ヴァイスブラッドだ。
ライカードがエリシアから小さな箱を受け取る。
ライカードは玉座に近づき箱を開ける。
「うむ。確かに受け取った」
箱は
その中には大量の金貨が入っている。併せて十億セラはあるだろう。
「では下がってよい」
「はっ」
そういうとエリシアはライカードと共に部屋を出ていった。
「いつもこういうのしてるの?」
「ああ。領主としての仕事だ」
レイはくたびれたように返答した。
「魔王ってのも大変ね……けど十億も貰ってるんだ……」
「大半は民に還元するぞ。人類の生存圏の外だから武具も農具も医薬品も何もかもが足らんからな。購入費に充てられる」
「ああ、じゃあ贅沢できるってわけじゃないんだ……」
「いやまぁ、やろうと思えばこれまでに奪った材で散財ぐらいはできるが……」
「……へぇ」
リナはいいことを聞いた、と眼を輝かせた。
その輝きに背筋に悪寒が走るタイプの嫌なことを感じ取ったレイは身震いした。
──途端、玉座の間の扉がばーんと開かれた。
「久しいのぉ! 魔王様!」
大声で叫んだのは美少女だ。
金髪赤目の女だ。身長は百六十三センチ程。髪は肩までかかっている。
金色の貴族服を纏っている。容姿は優れており美しいと言える。
芸術的な美に近い容姿をしている。腰には赤い魔剣を下げている。
ずかずかと少女──アトラシアは魔王に近づく。
「あなた、アトラシア? なんで魔王城にいるの?」
「む? リナではないか、おぬしこそなんでいる?」
お互いに頭にはてなを浮かべる。
「アトラシア、何の用だ?」
「ああ、実は我が街ネクロポリスがある者の襲撃を受けてな……じゃなくて、なぜ勇者が居るのか説明が欲しいんじゃが」
「……リナ、説明してやれ」
「なんで私が……まぁいいけど」
リナはこれまでの事を話した。
「はー、ついに魔王様の隠居生活も終わりを迎えたという訳ですな。というか娘が出来たならわらわに教えてくれても良かったものを……」
「魔王軍を裏切った其方と関りを持ち続ければ問題が発生すると言っただろう」
「まぁそれはそうなんですが……」
「あなたたち、裏切ったものと裏切られたものにしては関係なんか緩くない?」
リナが当然の疑問を口にした。
「それはまぁ……」
レイが言いよどむ。
「まぁ、裏切りについては全て事前に話して裏切ったからのぉ。両者同意の裏切りじゃ」
「それ裏切りって言わないんじゃない?」
それは共謀という。
「ふむ。魔王様、言ってもよいかの?」
「……あぁ。リナはだいたいの事情を知っている。話しても良い」
「そうか……あの時の情勢からして魔王軍を倒しすべての種族が平穏に暮らせる世界を作るには異形種であるわらわの裏切りは必須だった。まぁ竜王の奴は何も知らないから奴は関係ないぞ」
「じゃあギロニア&アロニスとルシフェルは?」
両者四天王の名だ。
ギロニア&アロニスは頭が二つある種族のドゥルガンという種族であり頭が二つある分二つの名と人格を持つ。
ルシフェルは堕天使の事だ。女の小柄な堕天使である。
「あやつらは何も知らん。といってもルシフェルは後で知ったが」
「後で知ったって……ルシフェルは死んだはずじゃ」
「いいや、生きておるよ。そも元が天使のあ奴に死という概念は正しく適応されん。天使は死んでも時間経過で勝手に蘇るじゃろ? それと同じじゃ」
「そっか……じゃあ結構魔王軍四天王生き延びてるというか九割生存じゃない」
私が魔王軍を倒した意味とは……とリナは宇宙猫になりかける。
「で、じゃ。今話題になったルシフェルが問題なんじゃ」
「なんだ、あいつついにボケて暴れたか?」
ルシフェルは実年齢四千年を超える。神々の次に長命といっていいだろう。何せ堕天使なのだから。
「そうかもしれん」
レイの冗談にアトラシアは真剣な顔でそう返した。
「……何があった?」
「うむ。わらわのネクロポリスに襲撃者が来るようになった。その正体は……堕天使じゃ」
「……翼のある種族ではないのか?」
「アンデッドに対し特攻能力を持つ有翼種族などそうはおらん。それに奴の頭上には黒い輪があった」
「……黒い輪、ね。それはあの……百年前に話題になった……なんだっけ、ミなんとかじゃないの?」
「ミハカノシノツルギじゃな。あ奴ではないと本人に確認をとっている」
ミハカノシノツルギとは百年以上前に白銀級冒険者になった者の名で妖怪の王の妖王という種族の者だ。
今は冒険者は引退し領主としてしか活動していないが。
妖怪は異形種の寿命のない種族だ。彼女はノクスフォードという街の領主をしている。
ミハカノシノツルギの外見は背中に一メートルほどの黒い輪があり、彼女が作る眷属にも同じ特徴があるためそれではないかとリナは思ったのだ。
「ルシフェルだって出してないだけで黒い輪を出せるじゃろ? だから、ルシフェルかと思ったんだじゃが……」
「あやつがそんなことをする訳ないな。どうせ同じ堕天使の何かだろうよ」
レイはそう判断する。
「ま、じゃろうな」
「その解決を頼むために魔王城に来たの? 自分じゃ解決できないの?」
「うむ。実はわらわは直接相まみえたわけじゃないのじゃ。といって襲撃場所に行くころには飛んで行って逃げてしまうので顔すら見られてないのじゃ。そして……元魔王軍所属の者が何かしている、という可能性に思い至りまずは自力解決をと魔王城に来たわけじゃ」
「なるほどね。じゃあ私が解決しようか?」
「うぅむ。ネクロポリスは教会に対しよく思っている者がおらん。教会代表のような勇者が介入するのはちとまずい」
教会の過去の協議ではアンデッドは邪悪であるため即退散させるべきというのがあった。
過去では自我のあるアンデッドでもアンデッドであるという理由で即殺されていたのだ。アンデッドなので破壊されていたが正しいだろうか。
「なら他の白銀級にでも頼むか?」
「それだと結構高くつくので予算的にちとオーバーじゃ」
「為政者は大変ね……あ、それなら」
リナがぽん、と手を叩いた。
「魔王、あなたの娘に頼んだらいいんじゃない?」
「は?」
「彼女レベルも五十超えてて白銀級相応でしょ? 襲撃者が何者か把握するぐらいなら出来るんじゃない?」
「……レベル七十五のアトラシアが逃がす相手だぞ。危険だ」
「いや逃がすといってもわらわまで情報が行くころには逃げてるってだけでその背すら終えてないだけなんじゃが……」
「なら戦闘力的には問題ないんじゃない? 娘を独り立ちさせるためにってことでどう?」
「むぅ……」
レイは不服そうな顔をする。実際不服だ。
何が悲しくて娘に危険なことをさせねばならないのか。
だがそれと同時に娘を守り続けるにも無理がある。自己防衛能力を与えなければ、という思いがわいてくる。
「……本人が了承したら、な」
「わかった! じゃあ早速確認とりましょ!」
「おお、魔王様の娘に会えるのか、ワクワクするのぉ」
女性二人は年甲斐もなくワクワクしていた。
レイは一人はぁ、とため息を吐いた。