まずは都市の地理を把握しよう、という事で黒風一行三人で街を歩いていた。
「この街、飲食店少ないな」
「まぁ、アンデッドの都市ですし……」
アンデッドは基本飲食不要どころかそもそもできない。
スケルトン型は言わずもがな、ゾンビは食事をしても舌が機能しておらず味が一切わからない。食感だけは味わえるが。
吸血鬼は飲むことだけは出来るが食べることはゾンビ同様出来ない。レイスなどは物理的に干渉がそもそもできない。
どこか暗い街を三人は進む。
歩ていると向こう側から一人のナイトリッチが歩いてくる。
リッチ、
スケルトン(あるいはゾンビ)・キャスター、デミリッチ、リッチ、ナイトリッチ、更に上のモルドレイス。
現状モルドレイスは発見されておらず、ナイトリッチの秘密結社がこのネクロポリスにあるだけだ。
「天使だ!」
歩いてきたナイトリッチ──骸骨の姿なのになぜか左目に眼帯をしている船長風の格好をしたグレルカは興奮しながらエルミナに近づいた。
グレルカは秘密結社骸冠議会の一員だ。
「な、なんですか!」
呼吸しないはずのアンデッドの癖にはぁはぁと息を荒げながら近づかれたことでエルミナはとっさにカレンの後ろに隠れた。
カレンも前にずいっと出て手で押さえた。
「ああ、すまない。天使を見るのは初めてでね。何せ私はアンデッド。天使とは相性が悪いからね」
そういうグレルカは若干エルミナの種族的
「天使という物を魔法的に解析したいんだ。どうか我が秘密結社
「お、お断りします。私にはやることがあるので」
「そこをどうか頼む! 報酬も支払うから!」
グレルカは両手を合わせお願いします! と頭を下げて頼み込んできた。
それに流石にエルミナも協力した方がいいのだろうか……なんて思えてくる。
「私たちはこの都市を襲う堕天使について調べに来たの。悪いけどあなた達に付き合うことは出来ないわ」
「な、なら骸冠議会の連中に堕天使調査に動くよう俺から言おう! それなら悪くないだろ?!」
頼むよ、とグレルカは頼み込む。ほっとけば土下座しそうな勢いだ。
「カレン、そこまで言うのなら……それに協力してくれるというのなら、無碍にするのも悪いですし」
「……まぁ、エルミナがそういうのなら……けど変な事したらぶっとばずからね」
「変なことなどしないとも! 教会と戦争など御免被るからな! さぁ行こうすぐ行こうちゃっちゃっか行こう!」
ついてきてくれ! とグレルカはステップしながら歩きだした。
変なアンデッドだなぁ、と三人は微妙な目でグレルカを見るのだった。
案内された先は塔だ。
黒い塔であり街の城壁よりも高くそびえたっている。
門を開けて中に入る。
「ひろっ」
中は広間になっていた。
机と椅子がそこそこおいてあるが、問題はそこではない。
明らかに外見よりも広すぎる。
というか広すぎて部屋の移動に苦労するレベルで広い。
奥には階段がある。階段も大きい。
「まぁまぁ適当なところに座ってくれ」
グレルカに言われるがまま一行は適当な席に座る。
「さてそれじゃあ早速鑑定魔法をかけたいんだがいいかね」
「は、はい。いいですよ」
エルミナは若干緊張しながら答えた。
「それじゃあ……
使用されたのは第八環の鑑定魔法だ。
「おぉ……素晴らしい!」
今グレルカの脳内には天使に関する詳しい情報が入ってきている。
「つ、次は血だ。血を採取させてくれ」
「……血、ですか」
「やましいことには使わないと誓う! だから少しだけでもいいんだ、なっ」
グレルカは必死に頼み込む。
「断ったら?」
その姿勢に何か変態じみたものを感じたカレンはそうエルミナに言った。
「いえ、ここまで熱心の頼む方のを断るのは心苦しいので……」
そうエルミナは手を差し出した。
「よし
グレルカが唱えたのは第三環魔法だ。
異空間に物資をしまえる魔法である。容量は術者の技量と魔力量に依存する。
グレルカは異空間から注射器を取り出した。
グレルカは「失礼」とエルミナの腕に注射針を刺そうとした。だが、刺さらなかった。
「な、なぜ?!」
グレルカは何度もエルミナの肌に誘うとするもすべて失敗する。
「……天使は魔法効果の無い攻撃を無効化する。それにひっかっかってるんじゃないか?」
デヴォンがそう言った。
「そ、そうか……失念していた!
グレルカは武器を一時的に魔法武器化する魔法を唱えた。これで注射器が魔法の武器と同じ判定になる。
「今度こそ失礼」
そう言ってグレルカはエルミナの腕に注射針を刺した。
そして血を一気に抜いた。
すぐさま引き抜くと天使の高い治癒能力で注射の後は綺麗になくなっていた。
「こ、これが天使の血……」
グレルカはエルミナの血を天に掲げた。中には赤い血液が入っている。
崇めるように血を掲げる姿は端的に言ってきもかった。