魔王様は義理の娘と冒険者になって旅に出ます   作:Revak

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第42話

 

「あれ? 何してんの?」

 

 階段から女が降りてきた。

 若い女だ。白い髪と赤い瞳をしている。

 特徴的なのは背中から生える竜の翼と尻から生えている竜の尾だ。

 どちらも白く美しい形をしている。

 

 この世界の上位の竜は人に化ける能力を持つ。

 これは竜という存在そのものが人に文明を与えるための上位者として創造されたからだ。

 

 その姿が示すようにこの女、名をマティルデは竜だ。

 だがただの竜ではない。竜でありながらナイトリッチとなったアンデッドの竜だ。

 レベルは高く七十五もある。といっても大半が種族レベルで埋まっているが。

 この世界にはレベルが二つある。種族のレベルと職業のレベルだ。

 種族レベルは主にステータスに影響し職業レベルは特殊能力(スキル)や技能に関わる。

 

「おお、マティルデか。みよ、天使が来てくれたぞ!」

 

 グレルカはそう天使の血を掲げながら叫んだ。

 

「天使か……ここ二百年で姿を現した種族だっけ。まだ研究もされてないもんなー」

 

 マティルデはそう顎に手を当てながら言う。

 

 天使自体は聖典などに存在を記されていたが実在するとは思われていなかった種族だ。

 二百年前の魔王との戦争時に姿を現した種族である。

 

「あら? お客さんが来てますね」

 

 更に上から女が降りてきた。

 茶髪に茶色い目をした女だ。歳は二十代ほどだろう。

 紫色のローブを着用している。特徴的なのはローブを押し上げる巨大な胸だ。

 己の顔よりも大きい爆乳サイズの胸を誇っている。

 レベル七十の氷系特化のエレメンタリストでもあるナイトリッチのイリス・フロスティアだ。

 

「おお、イリスも来たのか。どうだ、ともに天使を解明しようではないか」

 

 グレルカはそう声を上げる。

 

「私は天使の方に魔法的な興味はないので」

「僕も同上。天使なんて厄ネタに突っ込む気はないよ」

 

 うへーとマティルデは舌を出した。

 実際天使は厄ネタそのものだ。下手に関われば教会がうごき勇者が出現する事態になりかねない。

 アンデッドの人権は保障されているとは言えそれでも危険な橋を渡る必要はないと二人は考えた。

 

「あ、ただ私は天使の方々向けの商品とか気になりますね。美容用品とか需要があるのでしょうか?」

 

 イリスはそう手を叩いた。

 イリスはこの街では魔法道具(マジックアイテム)店を経営している。ただし売れていない。

 何故か仕入れるのがネタ魔法道具(マジックアイテム)ばかりで実用性の欠片もない物ばかりだ。

 

「うーん。天使は完成された存在なので美容品はあまり……ただ化粧品なら需要はあるかもですね」

「なるほど……アンデッドも不変の存在ですし、そういった方向けの道具もありですね」

 

 イリスはそう考えた。

 

「ていうか、血をとってどうするの? なんかの儀式に使うの?」

 

 カレンがグレルカに尋ねた。

 

「いや、DNAを見るのだ」

「でぃーえぬえー?」

「生物の設計図、らしい。最も生物ではない天使にそれがあるのかはわからんが……見るだけの価値はあるだろう」

 

 グレルカはそういうと血を持って上に上がっていった。

 奇声を上げながらのダッシュで全員引いた。

 

「あー、それで私たち……エルミナ、天使の研究の代わりに今この街を襲ってる堕天使について調査協力をしてもらうって話なんだけど」

「グレルカさんが決めたんですね……まぁ、こちらとしても気になってたのでいいですが……皆さんは堕天使についてどこまで知ってますか?」

 

 イリスがそう尋ねる。

 エルミナが手を挙げた。

 

「神に反逆した天使……存在としては悪魔に近くカルマ値もマイナス。ですが神聖存在ではあり対アンデッドや悪魔の能力を有している、としか」

「そうですね、基本はそれです。私は堕天使本人……まぁ、ルシフェルさんに昔聞いたことがって、本質的には天使とあまり変わらないらしいです。天使も倒されても一定時間で復活できます。堕天使も同じです。ただ堕天使はネームドしかいないらしく、名無しの堕天使というのはいないらしいです」

「なるほど……ではこの街を襲ってる堕天使も名前持ち、つまり強力な存在であると?」

「そこはわかりませんね。そもそも相手の目的が不明ですし……ただ、次の襲撃地点を予測することは出来ます」

「本当ですか?」

「はい。これを見てください<小空間>(ポケットスペース)

 

 イリスは魔法を唱え地図を取り出した。

 地図をテーブルの上に広げ、更に赤いコマを取り出す。

 地図はこのネクロポリスの物だ。地図上に円形上に等間隔にコマを置いて行く。

 

「これはこれまでに襲撃された地点を示したものです。これを見るに相手は次にここを襲う者だと思われます」

 

 イリスはそう指を差した。

 

「ここは……」

聞香(もんこう)店ですね」

「なにそれ?」

「アンデッドは基本食事ができませんが、香りを楽しむことは出来ます。そういった店の事を聞香店といいます」

「なるほど。相手はそれを狙っているわけ?」

「いえ。位置的にたまたま入ってただけでしょう……ここを事前に固めれば、相手は来ると思います」

 

 にやり、とイリスは笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 ■

 

 

 ネクロポリス郊外。荒野にて。

 一人の男と少女が居た。

 お互いに共通するのは背中から生えた黒い翼だ。

 

 男は普通の体系だ。百七十五センチと平均的な身長。黒髪黒目とありふれた容姿。

 上下黒いジャージ姿に背中からは黒い天使の翼が生えている。

 

「あのさー、親切心で言うけどやめたら?」

 

 そう話すのは紫色の髪をした少女だ。

 紫色の短髪と瞳。黒いコートをまとっている小柄、身長百五十二センチ程度の姿。

 顔つきは幼く十六歳程度に見える。見た目からは判断するなら女の子だろう。

 名はルシフェルという。

 

「そうは言うが、貴女はこう思わないのか? 今の地上は汚れていると!」

 

 男──名をウァサゴは声を荒げた。

 その声にルシフェルはうるさいな、と顔をしかめた。

 

「今の地上は汚れている! アンデッドが人々の日常を我が物顔で歩き、しまいには国さえ作る始末だ! これを嘆かないでどうするというのです!」

「んなもん数千年前から別大陸でアンデッドが国起こしてたから今更じゃない?」

「知っているでしょう、あの大陸は実験的な意味合いが強い……故にお目こぼしされてきた。だがこの大陸は違う。神々が正当に管理すべき聖なる地。それをアンデッドが蔓延るなど……!」

「めんどくさいね。君」

「貴女はいいのですか! かつて暁の子と呼ばれた貴女が、天界ではなく地上に追放されたままで!」

「別にいいかなー。たまに両親に会いたくなるけど、まぁそれぐらいだし……」

「……やはり私がどうにかするしかない!」

 

 ウォォォォォと叫びながらウァサゴは飛んで行った。

 

「……めんどくさい奴だなぁ」

 

 面倒だし昼寝しよ。ルシフェルは寝っ転がった。

 

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