「せぇぇやぁぁあ!」
カレンは
この
それを思いっきり横に振るう。
それによって多数いたモンスターたちが薙ぎ払われ、死体となる。
「うぉぉぉぉ!」
「すげぇな嬢ちゃん!」
「嬢ちゃん鬼つええええ! このままモンスターたちを皆殺しにしようぜ!」
気づけばいた他の冒険者たちが口々にカレンを褒めたたえる。
だがその称賛に対しカレンともう一人──この街唯一の鋼級冒険者のセルファス・ルーヴェンが苦い顔をする。
──モンスターの数が減らない。
倒しても倒してもモンスターはダンジョンの入り口からわんさか湧いて出てくる。
何故これほどに湧いて来るのか。モンスターにだって限りはあるはずだ。なのに何故かモンスターが出てくる。
「──そこのお嬢さん。ちょっといいかな?」
「あなたは?」
「僕はセルファス・ルーヴェン。鋼級冒険者さ。ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな」
「……今は少し余裕があるからいいわ。何?」
「ちょっと僕と二人でダンジョンまで行かないか? 何かの元凶がこの奥にいるはずだ」
「……この戦場が私達不在で持つかしら?」
「そこは、彼らを信じるしかない。だがこのままここで戦っても何れ押しつぶされるだけだ」
「……わかったわ。けど、私が召喚したモンスターはそのままにしとくから、召喚魔法は使えないと思って」
「わかった。いこう」
セルファス・ルーヴェンは聖騎士のクラスに着いている冒険者だ。
信仰系
鎧は青で統一しその手に持つ剣と盾も
顔つきはイケメンと言えるだろう。顔以外は全身鎧を纏っている。
当然戦闘力も相応に高い。バフ魔法と
そもそも鋼級の時点で上澄みだ。大半の冒険者が鉄級で終わるのに対し鋼まで上り詰めた時点で強いのである。
だからこそ、カレンという冒険者の強さを身をもって分かった。
カレンは今も強くなっているのだ。
この世界で強くなる方法は単純で、敵を殺せば強くなれる。
より多くの、格上の敵を殺すか倒せばすればするほど強くなれる。
だからこそ、カレンは今この瞬間も強くなった。レベル三十だったのだ三十二レベルにまで上がっている。
たかが二レベル、と馬鹿にすることなかれ。一レベルの差が勝敗を分ける事だってあるのだ。
そしてレベルアップとは一ヵ月単位で行われる物だ。数度の戦いで上がるものではない。
だというのに見てわかるほどにレベルが上がっているカレンは類まれなる才能の持ち主なのだ。
だからこそ希望が持てる。この戦いを終わらせれる希望を抱けるのだ。
「
カレンの剣先からレーザー砲が放たれる。
第五環の魔法だ。白い魔力の光が光線となって一直線に進む。
極太の光線である。レーザーによって射線上に居たモンスターたちは蒸発し死骸も残らない。
「いくわよ!」
「おう!」
二人はダッシュする。
カレンはセルファスに合わせ速度を落とすがそれでも高速だ。
そも装備品のレベルが違うのだ。聖遺物級とは国宝クラスの一品で白銀級でも無ければ装備出来ない一品だ。
それを装備しているカレンは相応に肉体能力も向上している。
ダンジョンの入り口を潜り、ダンジョン内に入る。
石の通路。ほのかに通路自体が発光している為灯りには困らない。
カレンは
「
使われたのは第七環魔法だ。
効果は小さい妖精が出現し目的地まで最短経路で道案内してくれるという物。
ただし最短ではあるが道中の罠等は考慮してくれないので即死トラップがある通路も渡らせて来るため注意が必要だ。
一つ環位が上の
妖精に従い二人はダンジョン内を駆けていく。
道中矢の罠が発動するもカレンの
落とし穴の罠は
セルファスは全身鎧を纏っているとは思えない速度で走る。
これは元の身体能力が高いのと
全身鎧であってもほぼ皮鎧と変わらない重量にすることが出来る。
道中モンスターも出現する。というか大量に湧いている。
ゴブリンに始まりスケルトンにダンジョンバッドにボスモンスターであるはずの
出現するモンスターの最大レベルも十なのでレベル二十二あるセルファスにとってもレベル三十二もあるカレンにとっても雑魚でしかない。
そうして倒して一層二層と降りていき、ついに第四層に降りる。
そこで
ここが目的地、という事なのだろう。そして平原の中央に怪しげな儀式をしている集団がいる。
円を作って何かぶつぶつと呪文を唱えている。皆揃って黒いローブを深くかぶり顔をわからなくしている。
数は八人程であり、聞こえてくる声からして男しかいないだろう。
彼らは赤い魔法陣の上に円陣を組むように立っている。
そしてこれまで嫌と言う程にモンスターが居たのにこの階層に来てからは一切モンスターを見かけていない。
「まずは──」
まずは隠密して接近し情報を得よう。そう言おうとするセルファスに対しカレンは集団にダッシュで近づく。
「<空斬>!」
そして
「ちょ」
セルファスが制止する暇もない。斬撃は集団に襲い掛かり、二人を斬り裂いて殺した。
「何者だ!」
「冒険者か?」
「あの鎧……鋼級冒険者か!」
「んもー、統一して欲しいわね……そうよ、私は冒険者カレン! あんたら何してんの!」
「いやカレン嬢。そんな問いかけても答えが来るわけ……」
「愚かな冒険者め! 我々はこの都市を灰塵に帰するための儀式を行っている最中である! 邪魔をするならば容赦せん!」
「……えぇ」
普通に答えられた事にセルファスは驚愕の声を漏らす。
だが一瞬後に何かのブラフ、嘘である可能性を考え警戒を強める。
彼らは下にある魔法陣を使って儀式をしている。
この魔法陣は上級の
ダンジョン内で使えば効果は非常に高く、スタンビードクラスのモンスターを生成する事が出来るのだ。
普段は墓地などでアンデッドの発生率を上げるために使うようなアイテムである。
「我らの邪魔はさせん!
「召喚魔法か!」
セルファスは剣を抜き、盾を構え警戒する。
召喚魔法は原則術者より強いモンスターを召喚出来ない。といっても
その為これで召喚されるモンスター次第で相手の力量が分かる。
青い魔法陣からモンスターが飛び出してくる。
出てきたのは三メートル程の巨体を持つ猪だ。牙が突き出た凶暴な顔つきの猪である。
名をクレイジーボアといいい常に発狂状態で攻撃力が高いモンスターでありレベルは十八。
セルファスならば少し注意して戦わなければならない程度のモンスターだ。
だが数の上ではこちらが不利だ。強力な個は戦場をかき乱す。
構えるセルファスに対しカレンは果敢に攻めに行く。
「<肉体向上><肉体超向上><超斬撃>!」
<肉体向上>は自身の身体能力をプラスレベル一する
つまりこの
最後の使われた
高火力のダメージを叩き出す
真正面からクレイジーボアに斬撃を振り落とす。
それだけでクレイジーボアは真っ二つに斬られ、絶命し光の粒子となって消えた。
「馬鹿な……このモンスターが一撃で倒されるなど!」
召喚した術者の男は信じられない、と叫んだ。
実質倍のレベル差が生まれたのだ。一撃で倒されても相応だろう。
だがカレンが身に着けているプレートは銅級、つまりレベル十にも満たない冒険者の証でありそれが余計に混乱させた。
「ならば……我らの命を持って大義をなそう!」
「大儀なんて、テロリストのアンタラにある訳が──」
誰ともなく、ローブの男たち──カインの高弟たちはナイフを取り出し、己の喉を突き刺し自害する。
「んなっ」
その凶行にカレンは驚き動きが止まる。
「気を付けろ! 己の死をトリガーにした魔法儀式だ!」
邪神教団やネクロマンサーがよく使う手法である。
セルファスはそういった依頼を受けたことがある為直ぐそれに思い至った。
八人全員が死に、魔法陣に血が吸われ、ドロップアイテムになる。
そして魔法陣が赤い輝きを放つ。
その間にカレンはバフ魔法をありったけ自分とセルファスにかける。
そして魔法陣からモンスターが湧き上がって来る。
「んなっ……
それはカレンも良く知るモンスターだ。
アーリンドラを交えた実戦訓練で何度も戦った事のあるモンスターである。
オーガという亜人種に分類されるモンスターであり外見は異様な鬼だ。
三メートル程の人型の巨体に茶色い肌。顔は正しく鬼といったもので牙が突き出ている。角は無い。
魔獣の皮をなめした皮鎧を纏い、右手には両刃の戦斧を持っている。
レベルは二十八と高い。その上知性も高く、武器術に戦術を駆使してくる厄介なモンスターだ。
召喚されているので意味は無いが指揮下のモンスターの微妙な強化能力も持つ。召喚されたモンスターは原則召喚能力を持たない。
非常に厄介な敵である。カレンからしても本気で戦わなければならず、苦戦は間違いない。
だが、今は最高の装備を付けている。
普段、カレンは戦闘訓練の際動きやすいだけの只の服を着ている。魔法効果の付いていないただの服だ。
それと
その為疲労無効や疫病耐性や
これでレベル差は十あるが、それでも油断は禁物である。
「オオオオォ!」
戦斧を片手にカレン目掛け振り落とす。
だが瞬間セルファスが横入りし盾で戦斧の一撃を防ぐ。
「
<鉄壁守>は初期の防御
盾と戦斧が衝突し、戦斧が弾かれる。
「でかした!」
その隙をついてカレンは斬りかかる。
その剣を胸に受けた
咄嗟に
カレンの剣と
その隙をついてセルファスが
セルファスは
「ウガァ?!」
唐突に斬られた事に混乱しながら
そこを狙いカレンは喉元に剣を突き刺す。
「ガァァァッァァアアア!」
そこで
<狂戦士化>の
バーサーカー状態に入ると同時に周囲に範囲攻撃を放つ。
この
すかさず二人とも体制を直し、
セルファスがタンクの役割をし、同じように<肉体向上>の
隙をついてカレンが剣で攻撃を刻むもバーサーカー状態に入った
だが、耐えれない程ではない。カレンのがレベルが上なのと装備品が聖遺物級なのが幸いした。
そうして戦闘が五分程経過した頃。カレンが止めの一撃を見舞いする。
「<魔力鋼刃>からの<超斬撃>プラス<鬼断流>!」
今のレベルが三十二のカレンは同時に六つまで
<肉体向上>に<肉体超向上>を合わせれば五つも
最大六つまで使えると言っても当然肉体には相応の負荷がかかる。五つも使えば相当な負荷だ。
だがカレンは疲労無効の不息の指輪で負荷を多少軽減し行使する。
<鬼断流>は防御力貫通の
剣の刃が
光の粒子となって徐々に消えていき、
「……よし、勝利!」
「ああ、いやしかし、さすがに強いな、君は」
セルファスはカレンを称える。
自分より圧倒的に上の存在だとこの戦いでセルファスは思い知った。
銅級なんかに収めていていい強さじゃない。その強さは
世界でも上澄みの人間しかなれないランクの実力をカレンは持っているのだ。
「けどまだ油断は禁物だ。ダンジョンの外まで出よう。外にモンスターがいるなら倒さなければ」
「そうね、行きましょう!」
二人は来た時と同じように走り出した。