宇宙人から好かれています 作:モブ地球人
目の前に鎮座するモモはここに来てからずっとむすぅーとしている。しかし怒りながらも鍋は食べたいようで、鍋をつつく箸は止まらない。普段は大人ぶっているが、こういうところはやはりまだ子供っぽくて可愛い。
「ふぅ、ふぅ、はむ……ケイさん、元カノってどういうことですか? 私知りません」
「だって言ってないし、元カノいるかなんて聞かれたことないし」
「そういうのは女の子からは聞きづらいんだもーん。あっ、美柑ちゃんの作った唐揚げ美味しー」
モモが我が家でお世話になるからと、結城先輩の妹の美柑ちゃんがモモに唐揚げを持たせてくれたらしい。メアはそれを美味しそうに頬張っている。
美柑ちゃんは本当にできた子で、気遣いはできるし、料理は美味しいし、可愛いしで、将来良いお嫁さんになるだろう。兄妹揃って本当にいい人たちだ。
「うむ、美味しいな。さすが美柑ちゃん」
「……」
モモはどこか複雑そうな表情で、俺が唐揚げを口に運ぶ度チラチラとこちらを見てくる。ははーん。
「これモモが作った?」
「わ、分かるんですか!?」
「だって食べるたびこっち見てくんだもん。何かあるんだなーと思うでしょ」
「こういう時は『モモが作ってくれた料理だから愛情を感じた』みたいなこと言ってあげないと」
「そもそもモモの料理食べたことないし」
「……まぁケイくんにこういうこと求めてもダメか」
モモに招待されたりヤミに連行されたりで何度か美柑ちゃんの料理は食べたことあるが、モモの料理は一度もない。なぜなら結城家におじゃました時はいつもモモとゲームをやっているからだ。モモが料理をするタイミングなんてない。むしろヤミが料理していたりする。というかそもそも唐揚げなんてそこまで味の差は出ないだろう。……なんて言ったら料理バリバリできる人達から怒られたりするかな?
だがしかし、モモも料理自体はできるのだろう。今日持ってきてくれた唐揚げは本当に美味しい。ついつい箸が進んでしまう。やっぱりパーティーのお供は鍋よりも唐揚げですわ。
「ちょっとケイくん、わたしとモモちゃんの分なくなっちゃうよー」
「うふふ、まだまだたくさん作ってきてますから、ケイさんも遠慮なく食べてください」
モモは唐揚げの詰まったどでかいタッパーを取り出す。いや、さすがに作りすぎではないか? マジで唐揚げパーティーするつもりだったんか? 3人しかいないんだぞ。最近体重増えてきたしなぁ……とはいえモモの厚意を無下にはしたくない。
「……じゃあ遠慮なく」
「はい、たーんとお食べください」
はぁ、運動して体重落とすかぁ。というか体重が増える以前に、こんだけ食べたら油で胃がやられそう。
「……それで元カノってどういうことですか。ケイさんに元カノがいたなんて聞いたことありません」
「えー、まだ追及するのー……」
「当たり前です。そもそもメアさんは知ってて、私には教えてくれないのはズルいです」
「ズルいも何も……はいはい、分かりましたよ。モモ王女様の知りたいことにお答えしますよーだ」
モモもメアも、いくら意中の相手とはいえ、そんなに過去の恋人が気になるのだろうか。今がフリーならそれでいいじゃないか。
「えっと、それでは……初デート……初デートではどこに行きましたか?」
「どこだったかな……多分水族館。昔のことだからあんまり覚えてない」
「モモちゃん、明日水族館行く?」
「水族館に行くなら遠出になりますよ。映画館と両立は難しいかと……」
「あとでデートプラン相談しよ」
対抗意識からか水族館がお出かけプランとして挙がってきたようだ。水族館は好きなので、俺としては映画でも水族館でもどちらでも構わない。2人が決めてくれるらしいのでおまかせしよう。
「今も連絡取ってるの?」
「メアの質問に答えるとは言ってないぞ」
「いいじゃん。私達にとって重要なことだしー。それとも、私達に知られたくないようなやましいことでもあるの?」
「そういうこと言われると答えるしかないんだよな……取ってないよ。相手が県外に行ったから疎遠になったし、それに今はメアとモモがいるし」
「……そっか」
こういうことを言えば照れてくれるだろうという策略だ。狙い通り2人とも照れ照れになってくれた。恋心を弄んでいる感はあるが、2人がいるからよりを戻す気がないというのは事実なのでしょうがない。
「……何故別れたのですか?」
「振られた。感性がガキっぽくてついていけないってさ」
「えー、そこがケイくんのいいところなのに。その人ケイくんのよさをなんにもわかってないなー」
「そうです。そういう可愛らしいところがケイさんのチャームポイントなんです。この可愛らしさと時折見せる男らしさのギャップが素敵なんですよ」
「ねー」
「まあまあ、好みは人それぞれだし。褒めてくれるのは嬉しいけど」
メアとモモにとっては好みのタイプなのかもしれないが、あの子にとってはそうではなかったのだろう。じゃあなんで向こうから告白してきたんだって話にはなるのだが。
それはそれとして、2人にも感性がガキと思われているのは心外だ。男はいくつになってもビームも合体も変形も大好きだろ。
「……もう満足?」
「はい。元カノの方が見る目がなかったんだとわかりましたから」
「さいですか」
2人ともにっこにこだ。何にどう満足したのかまるで分からん。好いてくれているのは素直に嬉しいが、やはり乙女心はよく分からんな。
「どこ行くんですか?」
「野菜追加ー」
唐揚げばかりでしんどくなってきたので、少なくなってきた野菜の追加のためにキッチンに向かう。ついでにお餅なんかも入れちゃおうかな。
「ニンジン以外でお願いします」
「冷蔵庫でニンジン余ってるから入れちゃおっかなー」
モモはニンジンが苦手らしいので、ぶーぶーと文句を言ってくる。こういうところはやはり末っ子っぽい。まだまだ育ちざかりなお年頃なんだから好き嫌いせずに食べような。ということで遠慮なく鍋にニンジンをぶち込む。まぁどんな栄養が含まれてるかあんま知らないんだけど。美味しいから何でもいいや。
「ああー!」
「メアー、モモー、風呂の準備できたけど先入るー?」
声をかけに自室に戻ると、2人してわざわざ狭い俺のベッドの上で漫画を読んでいた。メアに至っては布団に包まっている。いつものことではあるがくつろぎすぎではないかね?
「うーん、ケイくん先に入っていいよ。モモちゃんもそれでいいよね?」
「はい。私達は後で一緒に入りますから」
「君達一緒に風呂入るほど仲良かったっけ? まぁなんでもいいけど。じゃあ先風呂もらうわ。……メア、毎回言ってるけど風呂には入ってくるなよ」
「分かってるよー」
怪しい、どころではない。常習犯のメアは絶対今日も風呂に乱入してくる。美少女のメアが素っ裸で好意を持って擦り寄ってくるのだ。マジでそのうち理性が焼き切れそう。今日にいたってはモモすら乱入してきそうである。毎日の楽しみであるお風呂で理性を頑張って抑え込むなんてしんどいことしたくない。だから風呂には乱入しないでほしいのだがなぁ。
明らかに何か企んでいる2人を背に脱衣所に向かう。どうやって乱入してくるつもりなのかしらないが、俺だって学習しているのだ。脱衣所に隠しておいた物干し竿を取り出し、風呂場の内から扉の取っ手に差し込む。これで物干し竿が引っかかって扉を開けられなくなる。我ながらパーペキなアイディアだ。
「はぁ~いい湯だ~」
やっぱり風呂はいいな。一日の疲れが癒されていく。できればもっと大きなお風呂に入りたい。温泉に行きたい。月末の三連休で遠くの温泉に行こっかなー。いっそのこと家に温泉が欲しい。
「――。――」
むっ、やはり来たか。脱衣所からヒソヒソ声が聞こえる。メアとモモだろう。まぁこの2人以外だったら怖いのでこの2人であってほしいのだが。
「あれ、開かない? ケイくん開けてー」
「いやでーす。ばーかばーか、そう簡単に入れさせないよー。俺だって学習するんだよーだ。俺が出るまで指咥えて待ってやがれ。……疲れた」
「なんでわざわざ変な煽りしたんですか……」
調子にのって煽ってみたが、慣れないことをやったので疲れてしまった。黙って湯船に使ってまったりしよう。またヒソヒソ声が聞こえるが、どうやっても入ることはできないため無視する。
それこそ扉を破壊してしまえば入れるし、メアならそれもできるだろう。だがそれをすると俺に怒られるからメアなら絶対しない。つまりは安泰。
「……あ」
「ケイくん甘いよ。こんな隙間、髪1本くらいならすり抜けちゃうもーん」
扉の隙間から侵入してきたメアの髪1本に触れられ、体をジャックされる。そのままメアに操られ、扉を塞いでいた物干し竿を取り除いてしまう。そうか、この手があったか……というかこれができるなら対策のしようがなくないか?
「ケイくんありがとー」
「お、お邪魔します」
2人が風呂場に入ってくると同時にジャックが解除される。メアはいつも通りだが、モモはさすがに恥ずかしいのかタオルで前を隠している。恥ずかしいなら入ってこなきゃいいのに。
「ケイくんも入ろうよ」
2人の間に座って湯船に浸かれと促される。体の自由が戻ったので出ようと思えば出られるのだが、その時はどうせまた体をジャックされるだろう。大人しく湯船に浸かる。3人も入ることを想定していないのでさすがに狭い。2人の柔らかな肌とどうしても密着してしまう。
「あ、ケイくんのケダモノー」
「……」
「見るな」
ニンジン美味しいですよね。モモちゃんはニンジンのこと嫌いでも、私は大好きです。