宇宙人から好かれています 作:モブ地球人
「ん……んー」
窓から差し込む明るい日差しが朝であることを教えてくれる。体を起こして軽く伸びをする。良い朝だ。ベッドが狭いことを除けば。まぁ寝返りでメアがベッドから落ちなくてよかったよ。
「んん、ふわぁ……あ、ケイさん」
「おはよう、モモ」
「おはようございます」
「よく眠れた? 狭くなかった?」
「むしろケイさんと密着できて安心できました。できれば向かい合って寝たかったです」
「そう?」
「ほら、すぐ目の前に好きな人の寝顔があって、起きたらすぐに目が合って、微笑みながらおはようって言い合うのってすごく夫婦みたいじゃないですか」
「そ」
モモは寝起きがそれなりにいい様子。朝から立派な妄想力ですね。逆にメアは寝起きが悪くて、起きた直後はぼーっとしている。というかだんだん悪くなっていった。本人曰く平和ボケとのことだが、いろいろ壮絶な過去を過ごしてきた彼女なので、むしろもっと平和ボケしてほしいくらいだ。
「むにゃぁ……」
「うわ、よだれ」
少し前まではちょっとでも物音がしたら目覚めてたのに、今となってはすぐ隣で会話をしていても幸せそうにスヤスヤだ。やはり可愛い奴だ。でもよだれで服を汚してくるのは勘弁。
「まだ朝早いですし、少しだけ二度寝しちゃいますか?」
「いや、俺は家事とかやらないといけないから。モモは二度寝してていいぞ」
「それなら私もお手伝いしますよ」
「ありがとう、なら洗濯物干すの手伝ってもらおうかな」
「はい!」
メアを起こさないように気をつけながらベッドを降りる。今日は3人分洗濯物があるから大変なのです。俺とメアの分に加え、モモが俺の家に服を置いていくらしいのでその分だ。またお泊りしに来る気満々だ。メアがいる以上今更だから別にいいけど。
「よいしょ……モモはそっちの分をお願い」
「わかりました」
メアとモモの下着を入れた方をモモに任せる。2人とも信頼してくれているとはいえ、さすがにね。我が家に常設される時点で無意味な配慮かもしれないが。
「ふんふふーん♪」
やけに上機嫌だな。さっき夫婦だのなんだの言っていたので、多分それ関係で妄想しているのだろう。可愛いが、あまり突っ込まないのが吉だ。
「ふふっ……うふふふふ」
「こわ」
急に笑い出すのはもう恐怖でしかない。可愛さよりもギリ恐怖のが勝つ。しかし妄想しながらでも手際はよく、仕事は丁寧。器用ですね。
「……これでよし。ケイさん、こちらは終わりましたよ」
「くそ、負けた」
「別に競っていたわけでは……」
モモの言う通り競ってはいないが、妄想しながらのモモに負けてしまったのは若干悔しい。恋愛事での勝負であれば、攻められると弱いモモ相手なら100%勝てるのになぁ。興奮したら負けとかなら普通に負けます、さすがに。対戦ありがとうございました。
「まぁなんでもいいけど。手伝ってくれてありがとう」
「いえいえ、気にしないでください。むしろ泊めていただいたんですから、お手伝いするのは当然です」
「うーむ、モモの爪の垢を煎じてメアに飲ませたい」
メアはなーんにもお手伝いしてくれないもんなぁ。客人だしいいんだけどさ。作った飯を美味しそうに食べてくれるだけで十分かもしれない。包丁握らせたら大変なことになるし。
「さてと、朝飯にするか。そろそろメアも起きるだろうし。何食べたい?」
「ケイさんが作ってくれたものならなんでも♡」
「じゃあコンビニのおにぎりにするか」
「ケイさんが作ってくれたものって言いましたけど?」
「はいはい。どのみちトーストと目玉焼きくらいしか作れないけど。テレビでも見て待ってて」
「はーい」
トースターに食パンをセットし、フライパンで目玉を焼きながら、遠目でテレビを眺める。どうやらモモは朝のニュース番組を見ているようだ。……なんかうちの校長のパンツ一丁の姿が映ったような気がするが、さすがに気のせいだろう。炎に炙られ丸焦げになってた気がするが、これも気のせいだろう。だって丸焦げになったら人間死んじゃうし。それにパンツ一丁の人間が逮捕されてないのもおかしいし。
「モモー、できたぞー。醤油とソースと塩、どれがいい?」
「醤油でお願いします」
「ほいほーい」
モモも俺と同じく醤油はなようだ。やっぱり目玉焼きには醤油だよなぁ。
それはそれとして、今日はメアの目覚めが遅いな。出発までまだまだ時間があるからいいけど。飯食べ終わったら起こしに行くか。
「いただきます。はむっ……うーん、美味しいです」
所作が綺麗だからか、こんなものでもモモが食べると王家の食事っぽく見えるな。実際のところ王族ってどんな朝飯食べてるのだろうか。ステーキとか? さすがに毎朝食べてたら飽きそうだな。
「……なんだか幸せです。こうして好きな人と、まるで夫婦のような時間を過ごせて」
「君も隠さなくなったねぇ。それに大げさすぎる」
「だってメアさんがあんな感じですもん。恥ずかしがってたら負けちゃいます。それにケイさんは気持ちに気付いてますよね。なおさら隠す意味がないですよ」
「俺は結城先輩みたいな朴念仁とは違うから」
あの人信じられないくらい鈍感だからなぁ。その上モテまくりで、まるで創作の中の存在みたいな人だ。
「で、結城先輩の方はどうなの。ハーレム計画だっけ?」
「んー、リトさんがなかなか乗り気になってくれなくて……」
「自分の恋愛に他人の恋愛に、大変だねぇモモも」
「その”自分の恋愛”の当事者ですよ? なに他人事みたいに言ってるんですか」
こっちも大変なんですよ。2人とも本気でアピールしてくるから、ごくたまにマジで惚れそうになってしまう。
「うーん……おはよ……けいくん……ももちゃん……」
「おはよう。朝飯できてるぞ」
「んー……」
メアはふらふらとしながら、モモの隣の席に腰を下ろす。眠そうに目をこすりながらゆっくりとトーストを口に運ぶメアをモモは意外そうに見ている。普段があんな感じだからな、気持ちはわかる。
「ごちそーさま。先着替えてくる。食い終わったら適当に流しに置いといて。後で洗うから」
「では私が洗っておきますね」
「気が向いたらでいいよ」
2人とも俺の部屋で着替えるだろうから、タイミングが被らないように先に着替えることにする。俺が2人の着替えを覗くのはよくないし、2人に俺の着替えを覗かれるのもよくない。メアは絶対覗こうとしてくるだろうしな。
「よしっ、ケイくんもモモちゃんも忘れ物してないよね? それじゃあしゅっぱつしんこー!」
「なすのおしんこー」
今日はモモが一緒だからか、いつもよりもテンションが高い。元気なのは良いことだ。
「ねーねー、いつもみたいに恋人繋ぎしよー?」
「したことないよ、一度も」
「恋人繋ぎなら私もしたいです」
「だからしないって」
「ぶーぶー。デートなら恋人繋ぎは絶対に必要だよ」
「デートじゃありませーん」
「いいえ、一方通行だったとしても、恋愛感情をもっているならそれはデートなんです。だから恋人繋ぎしましょう」
どんだけ恋人繋ぎしたいんだ。別にいいだろ。メアだって普段はそんな要求してこないのに、なんで今日だけこんな求めてくるんだ。
「ケイくーん?」
「ケイさーん?」
「分かった分かった。1人ずつ、30分交代な。2人同時だと歩きづらくて仕方ない」
「やったー、じゃあわたしから……」
「いいえ、私からです。ねっ、ケイさん」
「じゃあ……この指とーまれ」
「はい! わたしの勝ち!」
「ちょっと! トランスはズルいわよ!」
「へっへーん、ズルくないよねーケイくん」
「ズルいけど、特に取り決めをしてなかったので今回は特例でよしとする。次からは反則とする」
「そんなぁ……」
そんなにがっかりしなくてもいいじゃないか。30分交代なんだし。
「メア、ほらっ」
「……ごくり」
緊張しているのか、恐る恐る手を伸ばしてくる。でも結局手を引いていて、なかなか繋いでくれそうにない。じれったい。少し強引だがメアの手を取り、ギュッと握る。
「あっ……男らしいケイくん、素敵ぃ……好き」
「いいから行くぞー」
「いいなぁ、私も……」
メアはべったりだし、モモは羨ましそうにこっちを見てくるし、道行くおば様たちはヒソヒソと噂話をしてくる。困ったなぁ。
「見つけた。ケイ……」