転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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発足・女性死神協会

 

 

「ドラドラ、理事長ね〜〜!」

 

 開口一番にそれだけ言って、ドタバタと去っていった幼い声。

 最近十一番隊の隊長は何度か変わっていたが、今の隊長になってからは随分と賑やかになった。その影響は九番隊にも。

 草鹿やちる。今の剣八が隊長になるのと同時に副隊長になった、ピンク色の髪が特徴的な少女というか幼女だ。

 

「勝手に入らせて良いのですか?」

「構いませんよ。子供のする事ですから」

「副隊長なのですが……」

 

 開けっ放しになった隊首室の向こうから声を掛けてきたのは、席官がたくさん殉職してしまった影響で副隊長に繰り上げになった要だ。

 

「ところで要、今月の原稿は集まりましたか?」

「はい、あとは虚飾隊長のものだけです」

「そうでしたか。では、私は少し外に出てきます」

「隊長?」

 

 九番隊は毎月瀞霊廷通信というものを発行している。例によって押し受けられて。まぁ、それは予算も増えたし、人員の枠も増やしてもらえたから良いけども。

 困っているのは、発行作業そのものよりも、私に与えられている連載枠をどうするかという問題だ。作業とかは頼めばみんながやってくれるから良いにしても、さすがに代筆はちょっとアレだし。

 

「そういえば、カメラがありましたね。いっその事、表紙と数頁を私の写真で埋めるというのはどうでしょうか。それを連載とするというのは」

「隊長……?」

 

 言ってみて、これは名案なのではないかと思う。目新しいし、毎月この美しい身体の写真を拝めると考えれば、読者的にも良い事尽くめ。たぶん私の拙い文章の連載とか誰も待ってないだろうし。

 

『自己陶酔もほどほどにした方が良いんじゃないかな』

 

 だまらっしゃい。そもそもこの身体が美しいのは自己陶酔じゃなくて事実だし。

 

 ▼△▼△▼△

 

 十一番隊の隊舎を覗いてもやちるはいなかったので、色々な隊士から目撃情報を集めていたら、朽木家の屋敷にたどり着いた。うん、なんで……? 

 

「オマエ今日休みだったか?」

「いえ、一応仕事中ではあるのですが、人探しをしていまして。やちるを見ませんでしたか? 草鹿の方の」

 

 たぶん朽木家の者以外では一番出入りしている自信があるので、普通に顔パスで入って、そして門を越えて少ししたところで不老不死に遭遇した。

 

「あァ、あのガキなら来てるぞ」

「やはり来ていましたか。ちなみに何の用でしたか?」

「なんつったか、確か女性死神協会を作るとか言ってたな。オマエ、理事長かなんかやるんだろ?」

「なるほど、そういう事でしたか」

 

 朽木邸にいる理由は分かっていないが、いきなり言われた理事長が何の理事長なのかは分かった。例のごとく役職を押し付けられた感はあるが、まぁ、それは良いとして。

 

「懐かしいですね。私たちも昔は隊長女子連盟として仲良く……」

「それ言ってたのオマエだけだろ」

「…………」

 

 抜雲斎も八千流もノリ悪かったもん。

 

「ふしりーん! お菓子どこにあるのー? あ、ドラドラ! 来てくれたんだ!」

 

 と、そこへやちるの登場。普通に我が物顔で屋敷の中を歩き回っていた様子だ。

 が、一旦おいといて。ふしりん? もしかして不老不死の不死でふしりん? 恐れを知らな過ぎない? 

 

「菓子ならテキトーに誰か家の奴に言えば持ってくるだろ」

「ここをね、女性死神協会の会議室にするの!」

「聞けや、オイ」

 

 これ、子供だから許されてるだけっぽい。たぶん六番隊隊長時代の部下とかがこんな事してたら普通に半殺しにされてると思う。

 

「あたしが会長で、ふしりんは特別顧問!」

「そうでしたか。それなら、烈も呼びましょうか」

「卯ノ花さんは理事だよ!」

「既に誘っていましたか。さすがですね」

 

 さすがの行動力だ。というか、私はともかく不老不死にまであだ名を付けているのに、烈のことは卯ノ花さん呼びらしい。やっぱり怖かったりするのだろうか。

 

「今から会議始めるから待っててね!」

 

 ダダダッとそんな事を言い残してやちるは門の外へ走っていった。

 

「ったく、騷しいったらねェな」

「ですね。お茶でも飲んで待ちましょうか」

 

 ▼△▼△▼△

 

 少しして戻ってきたやちるは、烈と八番隊の副隊長である伊勢七緒、二番隊の隊長である砕蜂(ソイフォン)を連れていた。それぞれ理事、副会長、理事としての採用らしい。

 

「それじゃあ、会議をはじめます!」

 

 女性死神協会の会議室とされた部屋で、やちるが張り切って宣言した。それに対して拍手は七緒の一人だけ。可哀想なので、私もぱちぱちと拍手をしておいた。

 

「テメェがこういう集まりに参加するなんざ、あの時には想像も出来なかったな」

「貴女も、家庭に入って引退するだなんて、考えもしませんでしたよ。まさか、あの中で一番早く引退するとも」

「こうして三人が一度に集まるのも何百年振りでしょうか。懐かしいですね」

「つーか変わったな、オマエ。色々と」

「そういう貴女も。姿は恐ろしいほどに変わりませんが」

「…………」

 

 私はどちらとも会っていたが、二人がお互いに顔を合わせていたのはまだ不老不死が護廷十三隊に所属していた時。それ以降はたぶん会う機会もなかっただろう。積極的に会おうともしていないだろうが。

 そう考えれば積もる話もあるだろうし、ちょっとぐらい放っておかれても悲しくなんてない。

 

「何か話題がある人!」

「会長、何の会議をするかは決まっていなかったんですか?」

「うん! とりあえず役が決まったら会議かなって!」

 

 ちらりと目線を移してみると、どうやら会議をするとは言ったものの、議題は決まっていなかったらしい。これには副会長に抜擢された七緒も呆れ顔。

 仕方ないので、手を挙げた。

 

「それでは私から一つ。私が理事長のようですが、その抜擢理由を伺っても構いませんか?」

「卯ノ花さんがね、ドラドラに任せたら良いって言ってたから!」

「なるほど……」

「…………」

「…………」

「それだけだよ?」

 

 しーん。

 以上。この議題終了。

 べつに良いんだけど、私が理事長になったのは烈の推薦らしい。烈はちゃっかり面倒事を擦り付けてきたりするから油断ならない。

 

「んー、話すことなくなっちゃった! 今日はもう解散ー!」

 

 ダダダッと走り去るやちる。うーん、自由人。

 

「せっかく集まったのですから、お菓子でも食べますか?」

「お菓子たべるー!」

 

 このまま放置されるのは残ったみんなが可哀想なので提案したら、やちるが即座に戻ってきた。可愛い。

 

 ▼△▼△▼△

 

 女性死神協会を作ったは良いものの、活動するための予算がない。あれから少ししてまたまた突然開催された第二回目の会議で、副会長の七緒からそんな提言があった。

 まぁ、集まってお茶するぐらいなら予算なんてほとんどいらないのだが、本格的に組織として何らかの活動をするなら必要になるかもしれない。という事で、じゃあどうやって予算を集めるかという話になった。

 

「いいよ〜、ドラドラ! こっち向いて〜!」

「理事長、もう少しこう、上目遣いの感じでお願いします」

 

 実績があれば予算を引っ張ってこれるかもしれないが、今はまだ何も実績はない。そんな状況で、元手となる資金も各々のポケットマネーぐらいしかない現状、どうやって最初の予算を稼ぐか。

 色々と意見を出し合ったものの、まともなものがなかったので、最終的に私の写真集を売る事になった。私の提案で。

 これなら編集部の九番隊の予算も使えるし、売上を九番隊と協会で分ける形にすれば良い。

 

「次はこっちに着替えてね!」

 

 三脚で立てた箱みたいな昔のタイプのカメラでパシャパシャとシャッターを切るのは、意外にも一番真面目っぽい七緒。やれやれみたいな態度でいる事が多いものの、やちるに次いでやる気がある。

 最初はいつもの死覇装や羽織を着た仕事中の格好で、その後はやちるがどこからか持ってきた服に着替えての撮影会。薄っぺらい着物や現世から仕入れてきたというワンピース、最終的にはカーテンみたいなでかい布一枚渡されて、それで身体を隠して撮ったりもした。

 

 ちなみにだが、一応女性死神協会としての活動のはずなのに、やちると七緒しかいない。せっかく私の撮影会に参加出来るというのに、勿体ない。

 

 撮影会が終わると、二人はさっさと帰ってしまった。

 

「要、こちらの写真を。これで写真集を出そうと思います」

「……本気ですか?」

「ええ。これで反響があれば瀞霊廷通信にも載せる事にしましょう。心配せずとも、あるとは思いますが」

 

 本にするのは部下の人たちの仕事だ。一応編集長という事にはなっているものの、ほとんど編集の仕事は要たちに任せている。まぁ、私は配達の方でちゃんと仕事してるし。

 

「た、隊長!? なんて格好してるんですか!?」

 

 と、一人黙々と仕事をしている要に写真を渡して隊舎の廊下を歩いていると、女子隊士に呼び止められた。

 

「はい?」

「”はい? ”じゃないですよ! そんな布一枚で歩き回って!」

 

 そこまで言われて、そういえば撮影会が終わってそのままの格好だった事に気が付いた。要は何も言わなかったのに。って、そういえば要は目が見えないんだった。当たり前のように生活しているから忘れていた。

 

「こっち来てください! 早く!」

 

 気付いてたなら言ってね? 

 

『だって、放っておく方が面白いだろう?』

 

 性格ワルー。さすが強欲の魔女。

 

「午後から原稿を回収しにいくのですが、一緒に行きますか?」

「行きます!」

 

 そうそう、配達だけじゃなくて原稿を貰いに行くのだってやっているのだ。場合によっては急かす必要もある。隊長も結構連載を持っているため、原稿の取り立てにはちゃんと頼りにされているのである。

 

 ▼△▼△▼△

 

 後日、写真集はめちゃくちゃ売れた。数日で重版が決定するほど売れた。

 これによって九番隊はもちろん儲かったが、その分け前として女性死神協会もたいへん潤った。次の活動として、また写真集を出すらしい。最初はやちると七緒の二人を撮る予定だったのだが、やちるが際どい衣装を持って迫ったせいで、やちる一人の写真集になった。

 

 さらにその後日談だが、売れてはいたものの二冊目の写真集がやちるの想定ほどは売れなかったため、三冊目の計画はなくなった。まぁ、あれは私の写真集が売れ過ぎただけだと思うが。

 今度、写真集の売上で旅行に行くらしい。大丈夫かな、この集まり。全然旅行は行くけど。

 





 ○女性死神協会
 初代の隊長3人が関わっているので、原作以上に発言力や影響力があると思われる。やちるの後ろで初代3人が睨みを効かせている(気のせい)ので、原作以上に幅を効かせるようになるかもしれない。
 
 ○パンドラ主
 今の自分の身体はもはや美術品だと考えているので、見られて恥ずかしいところはないし、むしろ見てほしいとすら思っている。そのため、露出に対する抵抗感はないし、その辺りが色々と緩い。
 押し付けられた仕事をそのまま部下にパスするが、部下は部下で頼られる事に喜びを感じるような者が多いので問題にはなっていない。

 ○九番隊
 パンドラ主が色々と仕事を押し付けられてくるので、他の隊に比べて業務が多い。ただ、その分他の隊よりも人員は多く、給料も少し高い。ほとんどの隊士はパンドラ主のファンであるが、席官クラスになると大体が「隊長には自分がついていないと」と考えている。

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