転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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 ついに原作に突入しました。




死神代行篇/尸魂界篇
平成


 

 

「あ・な・たはメロメ〜ロ、私に釘付け〜!」

 

 いつの間にか現世では年号が平成になっていて、ほとんど私が知っている風景になっていた。カラオケも私が知っているような形になってきている。

 

「恥ずかしげもなく、よく歌えんなァ……」

 

 エンタメ方面は、私が知っているものがそのままあるのもあれば、前世ではめちゃくちゃ有名だったのにこっちにはないというものもあった。どういう基準になっているかは分からないが、その分この世界では有名でも私は知らないというものもあるので、楽しめるものが増えたとポジティブに捉えている。

 

「さあ、あなたも曲を入れてください」

「ったく、しゃあねェな。貸せ。ロックを聞かせてやる」

 

 現世も色々と変わったが、不老不死も変わった。なんと、カラオケで歌ってくれるようになったのだ。たぶん私以外の誰かがいたら歌ってくれなくなると思うが、これはかなり大きい変化だ。やっぱりカラオケは自分一人だけ歌ってても、って感じだし。

 

「さすがです。もはやロックであなたに敵う者はいないでしょう」

「当然だろ。アタシに合ってるからな」

 

 上手いか下手かを聞かれると黙るしかないのだが、カラオケでは上手いだけが正義ではないのだ。

 

「そろそろ戻るか」

「ですね」

 

 束の間の休憩を終えて、私と不老不死はカラオケを後にする。

 そう、一応休日ではあるのだが、今回私たちが現世を訪れたのは遊ぶためではなかった。

 

 ▼△▼△▼△

 

 ルキアに危ない事をさせたくないと、九番隊に所属させてからもちょくちょく口を出してくる白哉に配慮して、ルキアにはあまり危なくなさそうな任務を回していた。彼女は最近始解が出来るようになったし、なんなら席官にしても良いぐらいの実力はあったのだが、席官になったら危ない任務に就く事もあるかもしれないので、昇進も保留にしていたのだ。

 が、普通とは方向が逆とはいえ、一人だけ特別扱いをしているようなものだ。昔の拳西や一番隊の長次郎のように副隊長から隊長への昇進を自ら拒むという事はあっても、一般隊士が席官への昇進を拒むという例は少なくとも私は見た事がない。

 つまり、他の者から見ても席官に値する実力があるのに一般隊士のままというのは、私が止めている以外にないという事になる。

 

 九番隊は私に全肯定な者ばかりとはいえ、まぁ、純粋な疑問ぐらいは出てくるもので。ちょうど良いところに現世の駐在任務の枠が空いたので、ルキアに紹介した。

 現世に出る虚と戦う事にはなるが、大体の虚はルキアの実力で十分に倒せる範囲だろうし、万が一何かあったら逃げる(情報を持ち帰る)のを第一にするようにも言っておいた。

 目を輝かせて現世へ向かったルキアを見送ったのがつい最近のこと。ルキアが消息を絶ったという報せが入ったのは、それから少ししての事だった。

 

「相変わらず、いやがらねェな」

「そうですね。こうして霊圧を垂れ流しているのですから、ルキアの方から来てくれても良いように思いますが」

 

 死んでしまった可能性もあるが、その場合は強い虚が出たという報告も同時に上がるはずだ。しかし、それはなかった。

 それでも死んでしまった可能性は排除出来ないが、生きている可能性も十分に考えられる。

 という事で不老不死と共に現世に探しにきた訳ではあるが、全くといって良いほど手がかりもなし。向こうから分かりやすいように霊圧もばら撒いているというのに。

 正直に言うと手詰まりであった。

 

「こりゃァまた帰ったら白哉の野郎がうるせェなァ……」

「あなたが及び腰になるとは、珍しいですね」

「アイツ、ネチネチと陰湿なんだよ。さも自分が全て正しいですってな。この前はそれでメシ抜きにしてきやがったからな……やりづれェ」

「なるほど、そう対応するのが正解な訳でしたか」

「アイツ、歴代最強の当主とか言って調子乗ってんだよ。今度久しぶりに鍛え直してやる(ボコす)

「あら……」

 

 白哉は朽木家の歴代で最強の当主と言われているが、不老不死は当主ではなかったので、それはイコール朽木家の中で最強という訳ではなかったりする。ただ、権限は当主である白哉が一番強いので、ご飯抜きみたいな嫌がらせは普通にされるらしい。かわいそ。

 

「つか、虚多くねェか?」

「そうですか?」

「多いだろ。いつまでも霊圧感知鍛えるのサボってるから分かんねェんだよ」

「人には得意と不得意がありますから」

「だったら何が得意か言ってみろや」

「…………」

 

 なんか、いつかエキドナに同じような事を言われたような気がする。そんなに私って得意な事なさそうに見える? 

 

『見えるというより事実だろう? かろうじて出来る瞬歩を得意と言えるかどうかは君が考えれば良い』

 

 まぁいいや。今さらだし。

 

「テキトーに数減らしとくか?」

「そうですね。一度二手に別れましょうか」

 

 本当なら駐在しているルキアの仕事なのだが、彼女がどうなっているか分からない今は虚と戦う者がいない。

 不老不死が瞬歩で離れていくのを見送り、私も逆の方へ向かう。死覇装ならともかく、今は義骸に入った上でワンピースを着ているので、ドタバタ瞬歩はもとより走るのもちょっと。

 義骸を脱ぎ捨てていくのもさすがにアレなので、人目を避けて飛行魔法で飛んで向かう事にした。

 

 何も気にせずに歩いていたら気付かなかったが、集中してみれば確かに虚が多い。ひとまず、一番近いところに向かっていると、突然大きな霊圧を感じた。

 それと同時に虚の霊圧が萎んでいく。

 

「遅れてしまったようですね」

 

 そこにいたのは、右腕を異形に変形させた浅黒い肌の男。現世の人間だとは思うが、彼が虚を倒したようだ。

 

「珍しい能力をお持ちで……」

「おっさん!」

「……!!」

 

 声をかけようと思った瞬間、後ろから聞こえてきた声色に全て吹っ飛んだ。

 

「大丈夫か、おっさん!」

 

 男に駆け寄るその黒髪の少女の声。その声は紛れもなく。

 

「あなたは、素晴らしい(さいのう)をお持ちですね」

「は、はぁ……?」

「よろしければ、この後共にカラオケにでも行きませんか?」

「意味分かんないんだけど……」

 

 その声はまごう事なきCV.釘○理恵。きっと原作のブリーチでも重要なキャラクターだったのだろう。とはいえそんな事はどうでも良い。貴重なくぎゅうボイスだ。同じ声を持つネムと同じように保護しなければ。

 

「お名前を聞いても構いませんか? 私はパンドラと申します」

「というか、あたしの事はどうでも良いだろ!? そんな事よりおっさんが!」

「確かに、病院に連れて行く方が良いかもしれませんね」

「ウチのヒゲ親父連れてきて治療させるから! あんたはおっさんが動かないように見てて!」

「それは構いませんが、先にお名前を伺っても?」

「黒崎夏梨!」

 

 そう言って、少女は駆けて行った。

 

 名前を聞けたのは良いが、軽々しくここで見ている事を了承してしまった。正直、虚に関しては不老不死に任せておいても大丈夫そうではあるが……。

 ここからって狙えるかな? 

 

『まったく……ボクにかかれば出来ない事もないさ。シャリオは追尾性能もある。照準は補助しよう』

 

 さっすが、エキドナ。頼りになる〜。

 

 書と一緒に空へ上がっていくイマジナリーエキドナを眺めながら、腕を空に向ける。

 

「シャリオ」

 

 真上へ、地面に垂直に上がった光はエキドナがいる辺りでぐにゃりと軌道を変えた。

 

『命中した』

 

 さすが。

 一応弱めにしておいたが、ちゃんと虚に当たったらしい。

 

「あんたは……」

「おや、気が付きましたか?」

「最初から気を失ってはいない」

「そうでしたか」

 

 倒れていたので気絶していたのかと思っていた男が話しかけてきた。そういえばくぎゅうボイスに気を取られて、最初はこっちに声をかけようとしていたのを忘れていた。

 

「あなたはどうやら珍しい力をお持ちのようですね」

「珍しい力……あんたはコレについて知っているのか?」

「いいえ。それは私も目の当たりにするのは初めてです。ですが、大きく括れば霊力と呼ばれる力です。持つ霊力が大きいほど虚……あなたが倒した化け物に狙われやすくなりますから、気を付けてください」

「あ、ああ……」

「ところで、先ほどの少女とあなたは知り合いでしょうか?」

「知り合いといえば知り合いだが」

「何か、彼女の好物などは知りませんか? ぜひとも仲良くなりたいのですが」

「いや、そこまでは知らん」

「そうですか……」

 

 何か仲良くなるために出来る事はないかと探ってみるが、手応えはなし。まぁ、年も離れているだろうしどういう関係性かも分からないし、仕方ない。

 たぶん少ししたら戻ってくるだろうし。

 

 エキドナのアシストに頼りながら何匹か遠隔で虚を倒しつつ、彼女が戻ってくるのを待つ。

 が、全然戻ってこない。もしかしてすっぽかされた? 

 

「何なんだよ、ヒゲ親父! 急に腹痛いとか言い出して!」

 

 と思ったら戻ってきた。どうやらヒゲ親父とやらを連れてくるはずが、失敗したらしい。

 

「ごめん、パンドラだっけ! ウチ病院だから、おっさん運ぶの手伝って!」

「ええ、構いませんよ」

 

 いつの間にかおっさんと呼ばれた男は気を失っているようだった。

 

「ねえ」

「はい?」

「その本みたいなやつ、何?」

 

 おおっぴらにムラクを使って浮かせるのもアレなので、小さい中でもまだ体格が大きい方の私が浅黒の男を背負う形で病院へ向かっていた。

 

「これが見えるのですか?」

「やっぱり霊的なやつなんだ」

「ええ。どうやら、あなたにも才能があるようですね」

 

 今の私は義骸に入っているため、普通の人間にも視認出来るが、斬魄刀である叡智の書は霊体のままだ。そのため、カラオケなんかに行く時でも後ろを浮いてついて来ているのだが、不老不死以外の誰にも見られる事はなかった。

 それが見えるという事は、それなりの霊力を持っているという事だ。

 

「彼にも言える事ですが、他人よりも大きな霊力を持っていると虚という化け物に襲われやすくなりますから、あなたも気を付けてください」

「霊力?」

「そのまま霊的な力という意味ですよ。霊力が強ければ、虚や(プラス)……幽霊が見えるのです。あなたにも覚えがあるのではありせんか?」

「あんた、何か知って……待って! 何か来てる!」

 

 虚の一体が近付いて来ていた。

 ただの虚。一般隊士でも相手に出来るものだが、現世の人間にとっては脅威そのものだ。

 

「少し下がってください。私が対応しましょう」

 

 安心させるように一歩、前に出る。

 

「シャリオ」

 

 弱めに手加減した星の光が虚を貫いた。

 

「なに、今の……霊能力者ってやつ?」

「似たようなものですよ」

「それって、あたしにも出来る?」

「難しいでしょうね。彼のような例があるので完全な否定はしませんが……アレらと戦おうとしてはいけませんよ。恐らくあなたは他の方よりも狙われやすいですから、自分の身を最優先にして逃げるのです。倒すのは、黒い着物のようなものを身に着けた者の役目ですから」

「黒い着物……? それって一兄の……」

 

 クロサキ医院の看板の文字が見えた。

 そして、それと同時に一際大きい霊圧。

 

大虚(メノスグランデ)ですか……少し厄介な事になりましたね。彼を任せても構いませんか?」

「あ、ちょっと!」

「また会いましょう、夏梨」

「待てよー! おい!」

 

 メノスなんて滅多に出ないのに、それに加えて何故か多い虚だ。戦力的には不老不死一人で全然問題ないが、ヴァストローデでもない下級のメノスだと勢い余ってやってしまう可能性もある。そういう意味でもちょっと怖い。

 男を夏梨に任せて、私は大きい霊圧を感じる方へ向かった。

 

 ▼△▼△▼△

 

 ▼△▼△▼△

 

 一方、パンドラと別れた朽木不老不死は白打で虚を倒して回っていたが、別の場所でも次々と虚の霊圧が消えていくのを感じていた。

 

「アイツのガバガバ霊圧感知には分からねェかもだが」

 

 そしてそれが死神が虚を倒す、つまり尸魂界に送った時とは違い、そのまま魂魄が消失したような消え方だという事も。

 

「いやがるな……滅却師(クインシー)ィ……!!」

 

 自然と口角が上がる。

 200年前の殲滅戦には参加出来なかった。勝手に参加しようかとも思ったが、隠れ蓑としてついて行こうとしたパンドラが留守番だったために断念した。

 

 不老不死にとって滅却師との戦いは1000年前。

 8割方をどこかの誰かが消してしまったが、それでも血沸き肉躍る闘争。その再現を。

 

 居合わせたのは偶然。

 だが、元死神として世界の調停を崩す存在を野放しにする事は出来ない。

 そう、野放しにしてはいけないのだ。

 

 仕方ない。

 ああ、仕方ないだろう。

 だって、この場には自分しかいないのだから。

 誰かがやらなければならないのだ。なら、自分がやったって良いじゃないか。

 

「こんな事なら斬魄刀持ってくるべきだったなァ……!!」

 

 その目には、懐かしい霊子の矢が映っていた。

 

 

 





 ○パンドラ主
 ルキアが行方をくらましたという報告を聞き、現世に遊びに来るついでにルキアを探していた。同じ声の人物を密かに自分の中で保護対象にしている。

 ○黒崎夏梨
 変なお姉さんに絡まれた。かと思えば知りたい事を聞く前に逃げられた。

 ○朽木不老不死
 パンドラ主と2人なら結構ノリノリで歌う。ロック魂。
 滅却師の気配を感じてハッスル。しかし、期待しているような相手ではないと思われる。

 
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