転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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滅却師の生き残り

 

 

 そこには、滅却師以外の霊圧も紛れていた。

 

「石田ァ……!」

「黒崎……!」

 

 片やどこか見覚えのありそうな白い衣装の黒髪、片や死覇装の橙髪。どちらもその顔には見覚えはない。死神がいるとは聞いていないが、そもそもどうでも良い。

 

「いたなァ……滅却師ィ……!!」

 

 地面を割ながら、着地する。

 同時に拳を引き、白い装束の男へと踏み込んだ。

 

「なっ!?」

「らァ……!!」

「──―ッ!!??」

 

 顔面に拳がめり込み、白装束は吹き飛んだ。

 

「あン……?」

 

 その、あまりに軽い手応え。

 確かに滅却師にも雑魚はいたが、これほどだっただろうか。今、こちらは限定霊印を施した上で義骸に入って、さらに素手だ。恐らく100分の1ぐらいしか本領は発揮出来ていないだろう。

 なのに、この手応えの無さ。

 

「勘違いだっつーのか……?」

 

 まさか霊圧を読み間違えたかと、昂ぶっていた脳に冷水をかけられたような気分になる。

 滅却師ではないなどという事は、さすがにない。確かに改めて思い返してみれば、それほど大きな霊圧は持っていなかった。だが、隠していると思っていたのだ。まさかこんなにも弱いとも思わなかった。

 

「お、大婆様!? な、な、なぜここに!?」

「あァ……?」

 

 と、拳を握ったり開いたりしていると、背後から聞き覚えのある声が。

 

「テメェ、ルキアか?」

「は、はい!」

「いねェと思ったらこんなところにいやがったのか。滅却師に襲われてやがったか?」

「い、いえ……襲われていたわけでは……」

 

 それは、今回の現世来訪の理由であったルキア。血は繋がっていないものの、朽木家の家族だった。

 養子に来た当初は暗くて見ていると鬱陶しかったため、少し揉んでやったのだ。その甲斐あってか明るくなった。不老不死の姿を見ると嬉しさのあまり大声を出すほどに。

 

「まァ良い。とりあえず帰るぞ。そこの滅却師を殺してからな」

 

 ともかくとして、今回の目的は達成したも同然。

 ルキアの襟を掴んで持ち上げ、気絶して倒れているであろう滅却師の元へと……。

 

「待てよ」

「ンだと……? 聞こえねェな」

「待てって言ってんだよ!」

 

 橙髪の死神が、立ち塞がった。

 

「テメェ、どこの隊の所属だ?」

「何の話だ」

「九番隊以外なら何でも良い。まァ、九番隊じゃねェわな。九番隊ならアイツが知らねェはずも…………いや、あるか。だが……」

 

 大した霊圧でもない。席官ですらあるかどうか怪しいところ。

 そんな雑魚が、邪魔をする? 

 

「まァ、最悪泣いて謝るフリすれば許してくれるだろ」

 

 最悪九番隊の隊士でも、パンドラに許してもらう謝り方を考えつつ、空いている方の拳を引く。

 

「お、お待ち下さい大婆様! 一護! 貴様も離れろ!」

「はぁ!? お前、どっちの味方だよ!?」

「たわけ!! 貴様のためを思って言っているのだ!」

 

 ルキアが何やら止めているが、関係ない。

 邪魔された。ムカついた。殴る理由など、それだけで十分過ぎる。

 

「あン……? テメェ……急に霊圧がデカくなりやがったな」

 

 振るった拳が、刃によって受け止められた。

 軽く小突いてやろうと手加減に手加減を重ねたような一撃で、踏み込みが浅かったとはいえ、だ。

 

「ハッ……面白ェ……!」

「莫迦者!! 殺されるぞ!!」

「殺すだなんだ言ってる奴を野放しに出来るかよ!」

「殺しゃしねェよ。死ぬまでの間はなァ……!!」

 

 ルキアの襟を離し、両手の拳を握る。

 そして、消化不良を解消するように、踏み込んだ。

 

 ▼△▼△▼△

 

 ▼△▼△▼△

 

 メノスの方へ飛んでいると、その進路上に不老不死の霊圧があった。なので、一度合流するかと下りてみた訳だったのだが。

 

「口先だけかァテメェ!! もっと気持ち良く殴らせろや、オイ!! 立てェ!!」

「お、おやめ……おやめ……ひぐっ……大婆様っ……」

 

 なんというか、大惨事。

 興奮した不老不死が、明らかに気を失っているオレンジ髪の死神の胸ぐらを掴んでめちゃくちゃに揺らしている。そのオレンジ髪の顔面は、かろうじて顔だと分かるレベルでボコボコに。死覇装の間から見える胸元は赤黒く変色していた。かわいそ。

 そして、そんな不老不死の足にしがみついているのは、なんと探していたルキア。どういう状況かは分からないが、ギャン泣きしている。かわいそう。

 

「どういう状況ですか?」

「あァ……コイツが喧嘩売ってきたからな。可愛がってやってただけだ。つか、コイツ九番隊か?」

「いえ、九番隊ではありませんが……」

 

 というか、オレンジ髪とか目立つし、どこの隊でもこんな人がいたら目につくとは思うのだが、見覚えがない。

 こんな死神いたっけ? 

 

『ボクが知る限りはいないね』

 

 そうだよね? 

 昔からいるなら合同訓練とか配達とかでも見る機会はあるはずだし、新人なら全員霊術院で見るはずだから、見逃す事もない。私が持っている霊術院の特別講義は6学年分、例外を除いて1人につき6回あるから、全部欠席なんて事もないだろうし。

 

「わ、私がわるいのです……人間に、霊力を…………ひぐっ、罰なら……私が……」

「人間だァ? どっからどう見ても魂魄だろうが」

「私の、霊力で……死神化を……」

 

 そんな事出来るんだ? 

 

『出来るけれど、禁じられているね。罰則の対象だ』

 

 あちゃー。

 

「困りましたね」

「虚飾、隊長……」

「どうしてそのような事を?」

「虚を相手に負傷して……緊急時ゆえに……」

「そうですか……」

 

 緊急避難的な状況だったのかなぁ。逃げる事すら出来なくて、みたいな感じだったとか。

 

「ともかく、今はメノスの方を片付けましょうか」

 

 とりあえずメノスの方が緊急性が高そうだし、まずはそっちを優先。とはいえ、倒せば良いという訳ではない。良い感じに痛めつけて帰ってもらわないといけない。

 あの距離ならここから届きそう。アシストお願い。

 

『まったく……』

「シャリオ」

 

 ここから少し離れた場所の、空に現れたひび割れのようなものから出てきたメノスへ、シャリオの光を叩き込む。とはいってもそんなに威力は出していないし、間違っても一撃で倒してしまうようなものではない。

 

「では、一度尸魂界に戻りましょうか」

 

 予想通りメノスはひびの向こうに帰ってくれた。多かった虚も、メノスの方に集まって捕食されて数を減らしていたからそろそろ終息するはずだし。

 

「既にしてしまった事は仕方がありません。戻ってから、考えるとしましょう」

 

 ルキアに手を差し出して、立ち上がらせる。

 元々ルキアを探すのが目的だったから、それは達成だ。とはいえ、現世の人間に霊力を渡してしまったというのは予想外だったが。

 

「罰なァ……処刑とか言わねェだろうな? あのクソ共なら言い出しても驚かねェぞ」

「ですね……一応掛け合ってはみますが」

 

 まぁ、中央四十六室とかいう節穴なら全然あり得る。なにしろ、当の私が冤罪を掛けられた事があるのだ。あの時は権能でどうにかなったが、それ以外の方法だと対応出来たか怪しい。

 

 ともあれ、倒れ伏すオレンジ髪を見る。

 元々一般人だった事を考えれば、色々と巻き込まれて可哀想に思える。というか、渡した霊力はそのままで良いのだろうか。ちょっとマズそうな気もする。

 何か良い方法ない? 

 

鎖結(さけつ)魄睡(はくすい)を破壊すれば霊力は残らないだろうね』

 

 ほうほう、鎖結に魄睡……それって急所じゃなかったっけ? 死なない? 

 

『範囲を絞れば大丈夫さ』

 

 うーん、じゃあガイドお願い。細めだから、ジワルドで。

 

「まて……」

「まだ意識があるとは。頑丈なのですね。──ジワルド」

「ぐぁっ……」

 

 オレンジ髪の背中に置くイマジナリーエキドナの指に重ねるように、指先から細く熱線を発射した。

 

「何やってんだ?」

「鎖結と魄睡を破壊しました。これで霊力も残らないでしょう」

「容赦ねェな」

「あなたにだけは言われたくありませんが?」

 

 そうして、私たちは尸魂界へと帰還した。

 

 ▼△▼△▼△

 

 ルキアの処遇は、極刑となった。

 下手に逃げるよりも自首した方が刑が軽くなったりしないかと、私の付き添いでルキアは自首したのだが、拘留後少ししてそれが通達された。

 刑が執行されるまでの間、ルキアは一番隊の牢屋に収監される。

 

「あれから少し調べてもらったのですが、霊力の無断貸与で極刑は前例からみても少し過剰な気がしますね」

「どーせウチに思うところがある野郎が糸引いてんだろ」

「一応、抗議はしてみましたが、意味はなさそうです」

「らしいが、オマエはどうするつもりだ? 白哉」

 

 場所は朽木邸。

 私たちは作戦会議というか、情報共有を行なっていた。

 

「それが決定ならば、従うだけだ」

 

 それだけ言って黙ったのは、ルキアの義兄である白哉。不老不死が引っ張ってきたのだが、全然発言をしない。わざわざ探して養子にした義妹の危機だというのに。

 

「言いてェ事はそれだけかテメェ」

「冷たいのですね」

「これ以上言う事はない。失礼する」

 

 しかも、黙るだけでなく勝手に部屋を出ていった。

 ルキアが見つかるまでは不老不死曰くうるさかったらしいが、今は全くそんな様子がない。

 

「……まァ、アイツは後でシメるとして、だ。どうする?」

「そうですね。私個人ではどうにもならなそうですし、元柳斎を焚き付けるぐらいでしょうか」

「頼りになるのか? あのハゲ」

「さあ……どうでしょうか」

 

 正直、権能なしの私だと出来る事はなさそう。何か言っても門前払いされるだけで。

 元柳斎が処刑反対派に回れば、まだ状況は変わるかもしれないが、そもそも元柳斎がそっちに回るかどうかと言われると厳しそうでもある。

 

「くだらねェ企みか、そもそも何も考えてねェか。どちらにしろ、ムカつきやがる」

「冤罪……とまでは言わないものの、気に入りませんね。何とか出来ないか、考えてみましょう」

 

 間違えるのはまだ仕方ないにしても、控訴みたいな制度もないし、勝手に決められたらこっちが何を言っても無駄。今の体制そのものも正直気に入らない。

 じゃあどうすれば良いというのは思い付かないのが情けないところではあるが。どさくさに紛れて何かする、ぐらいのフワッとしたプランしかない。

 

 不老不死は、権能の事を口に出さなかった。私が権能で上の冤罪をなかった事にした事を知っていても。権能を使えば、全て解決出来るという事を知っていても。

 それは、私たちだけの信頼の証。

 その信頼に応えられるように、何とかしたいものだ。

 

 

 





 ○朽木不老不死
 滅却師の気配にヒャッハーしていたが、思ったより弱かったので、その分の鬱憤を一護で晴らした。周囲に悟られないように霊圧を隠しているのかと思いきや、全然そんな事はなかった。
 石田雨竜の事は見逃した。そのうち増えてまた攻め込んで来ないかな、とか考えている。
 限定霊印やその他の状態のせいで本領の50分の1ぐらいまで戦闘能力が制限されていた。

 ○石田雨竜
 全治数ヶ月。かわいそう。
 恐らく倒れていたところをお父様が拾ってくれる。
 
 ○黒崎一護の中の人
 蛇口ダバーー。
 しかし敵わなかった。

 ○黒崎一護
 引くぐらいボコボコにされた。かわいそう。
 どさくさに紛れてパンドラ主に鎖結と魄睡を破壊された。

 ○朽木ルキア
 一護のあんまりな様子に泣いてしまった。
 大婆様怖い。
 
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