転生者『虚飾の魔女』(なお中身) 作:白金の絹糸
たくさんの感想・評価ありがとうございます。感想は楽しく読ませてもらってます。
それと、今さらではありますが重ねてキャラ崩壊注意です(雛森)
恋次が旅禍にやられたという報せが入った。
「事態は火急である!」
そして再びの緊急隊首会。
「遂に護廷十三隊の副官を欠く事態となった」
欠くとは言っても死んでしまった訳ではない。
ただ、副隊長は護廷十三隊全体で見れば上澄みも上澄みの戦力だ。それがやられるというのは、並大抵の事ではない。
「虚飾から逃げ延びた事もある。これより隊長格を含む全隊士の廷内における斬魄刀の常時携帯及び戦時の全面解放を許可する」
私は常時解放型とかテキトー言って常に始解状態でいるから忘れかけるが、本来なら隊長格が下手に斬魄刀の解放をすると怒られる。ちゃんと監視のある訓練なら問題ないが、そうポンポンして良い訳ではないのだ。
「諸君。全面戦争と、いこうじゃないかね」
「全面戦争ですか。1000年前を思い出しますね。みなさん、上手く逃げてくれると良いのですが」
「……一つ、注意しておくが。遮魂膜を破壊するような規模の攻撃は使うでないぞ」
「そんな事をするのはあなたぐらいでは?」
「貴様に言っておるのじゃ」
1000年前の戦いを思い出しはするが、瀞霊廷にアル・シャリオを落とす訳ないだろうに。私としては元柳斎がハッスルしてやらかす未来なら見えるのだが。
ひとまずより厳重体制となる事が決まって、解散となった。
▼△▼△▼△
それから特に何もなく、夜。
「あの、隊長……今日も一緒に寝ても良いですか……?」
「ええ。構いませんよ」
隊長として結構給料を貰っているので朽木邸の近くに家を持っているものの、帰るのが面倒になった時は隊首室に泊まる事も多い。たぶん普通の隊士とかだと上司がいてやりにくいという事もあるだろうけど、私は隊長という自分以上の地位の者がいない場所にいるので、職場であっても泊まったりする事に抵抗はない。
そんな隊首室を訪れたのは、頻繁に泊まりにくる桃だ。
「あたし、怖いです」
そんな事を言いながら、背中に覆いかぶさってくる桃。
「隊長……パンドラ様……あたし、戦いたくなんてないです」
こんな事を言っているが、ガチで暴れると割と洒落にならない事になるのが桃である。隊長のポストが空いたらいけるんじゃないかと思ってはいるが、本人は九番隊から異動するつもりはないらしい。
あと、戦いたくないとか言っているが、いざとなったら真っ先に突っ込むバーサーカーになったりもする。この子なりのかわいい子アピールだったりするのかな?
「すうぅぅぅぅ…………はあぁぁぁぁ…………」
なんか私の髪の毛に顔を埋めているが、いつも通りである。
「あぁ……パンドラ様……パンドラ様パンドラ様パンドラ様……」
釘○病に堕ちてしまったのだろう。仕方のない事だ。
「パンドラ様から逃げ延びたなんて嘘ですよね……? きっといつもの調子で情けをかけてあげたんですよね? パンドラ様を凌ぐ旅禍なんて考えられないですもの。お優しいから見逃してあげただけですもんね? あたし自分が嫌なんです。阿散井くんが旅禍にやられてもしかしたら本当にパンドラ様から逃げ切るぐらいの実力があるんじゃないかって頭に過ぎって。パンドラ様の事を疑うような事したくないのに。疑うなんてありえないのに。疑うなんて許されないのに。ちょっとでも頭を過ぎったこの頭が許せないんです。ポンコツ。ポンコツ。ポンコツ過ぎて嫌になります。いっぱい勉強してるはずなのにいざっていう時に役に立たなくて変な事ばっかり考えて。こんな様子じゃとても」
「彼らはルキアを救う事を目的としている様子でしたから。私とは目的が一致していました」
たまに、というか結構な頻度で早口オタクみたいな事になるが、仕方のない事だ。
背中から回された腕の力が結構強いので、適当に読んでいた隊長たちの原稿を置いて、いつでも寝られるように予め敷いておいた布団の方に移動する。
桃は私を抱き枕か何かだと思っている節がある。
私だってこの身体を抱き枕にしたいと思うから、羨ましい限りだ。
「パンドラ様パンドラ様パンドラ様パンドラ様……」
「元柳斎からは全隊士への斬魄刀携帯や解放の許可が出ていますが、無理に戦う必要はありません。むしろ、現時点では旅禍が何人いるかも分かっていませんから、情報を持ち帰るために、遭遇しても戦わずに戻ってきてくれた方が良いですね」
「分かりましたパンドラ様……すうぅぅぅぅ……はあぁぁぁぁ……」
「他の方たちにも伝えておいてくださいね」
何というか、もはや亀の甲羅なのではないかと思ったりもする。今なんて髪というか首元を吸われてるし。
「ふあぁぁ……」
ちょっと頭を撫でてみればこの反応。
可愛いから良いけど、この子他のところでやっていけるんだろうかとちょっと心配になる。席官レベルで本人の意思を無視して異動させられるような事は滅多にないから問題ないといえば問題ないが。
「そういえば、要を見ましたか? 今日一日姿が見えなかったのですが」
「副隊長は副隊長で集められてたみたいです。でも、パンドラ様に言わずに行くなんて、常識がないですよね。パンドラ様の撮影会の時もやる気が感じられないしお菓子会にも全然来ないしせっかく見えないからこそ感じられるものもあるってアドバイスを貰っているのにそれを活かす様子もないし。絶対あたしの方が強いし出来る事も多いのに……」
「要には要の考えがあるのでしょう。いつでも隊長に推薦しますが、隊長の枠もいつでも空いている訳ではありませんし」
まぁ、少し前に十番隊の隊長だった志波一心が失踪して隊長の枠が空いた時にどうかと提案したら九番隊に残りたいと拒否された訳ではあるが。
どの隊にいたいかなんてその人その人の自由だから何か言うような事もないが、確かに要は九番隊でもちょっと浮いている感はある。とは言っても悪い意味ではなく、他の隊士が私との距離が近くて、要だけ普通か一歩引いたぐらいの距離にいるからであるが。仕事自体はちゃんとやってくれるから私としては文句はないし。
桃は事あるごとに副隊長になりたいなりたいと言っているが、要がいる以上難しい。役職とかに関しては面倒くさいから誰かに肩入れするつもりはないが、かと言って桃に個人的に交渉させたら余計に面倒な事になるような気もするので、いつもなだめてお茶を濁すに留まっている。
「旅禍を捕まえたら……」
「私の言いつけを破るのですか?」
「ぁ……ごめんなさいパンドラ様」
「冗談です。気にしていませんから」
暴走しがちなところはあるが、ちゃんと言いつければ言う事は聞く。扱い方さえ間違えなければ桃ほど優秀な人材もそうそういない。
「そろそろ寝ましょうか」
「はい……パンドラ様」
寝ようと言ったらすぐに寝る。
私も寝るときはすぐに寝入るタイプだからやりやすい。
▼△▼△▼△
翌朝。
惣右介が殺されたという報せが入った。言伝に聞いただけだが、死体が高い場所に晒されていたらしい。
これ、もしかして一護たち以外にも別口の旅禍がいたりする?
『現状ではなんとも言えないけれど、可能性はあるだろうね。ただ、その場合誰にも知られずに瀞霊廷に侵入するだけの隠密能力に隊長を殺すという実力を持つという事になる。可能性としては、瀞霊廷内の者による犯行だという方が高いとは思うけどね』
瀞霊廷内ねぇ……。
惣右介は隊長をやっているだけあって実力は本物だし、それを倒せるって考えると隊長の誰かか、あるいは貴族系の実力者か。
捜索系は私の得意とするところじゃないし、とりあえずは情報待ちかな。
「今朝、五番隊の隊長である惣右介が何者かに殺されたという報せが入りました。これより通常業務は一時停止。九番隊は四番隊の護衛に向かいます。事態は深刻です。たとえ旅禍を見つけたとしても手は出さず、私に報告をお願いします」
どういう目的があるかは知らないが、戦いになったらヒーラーから潰せというのはゲームとかでもよくあるセオリーだから、九番隊は一部の席官を残して一旦四番隊と合流する事にした。
一応伝令神機で烈に確認は取ってから。
正直、仮にも隊長である惣右介を倒すレベルの相手に数でどうにかなるとは思えないが、何もしないよりは良いだろう。何かあった時に直通の連絡先が烈だけよりも、私も候補にいた方が良いかもしれないし。
守護陣形的には少し穴が出来る事にはなるが、それが逆に敵の動きを絞り込むための策にもなるらしい。エキドナ曰く。
「何か分かりましたか?」
そして私は、惣右介の死体の検分に立ち会っていた。
この場には烈と私の二人だけ。外では副隊長の要や虎徹がそれぞれ九番隊と四番隊を仕切ってくれている。
「いいえ。これといったものは特に」
「そうですか……犯人の手がかりでも分かれば、と思ったのですが」
「そう都合の良いものではありませんよ。この検死もどちらかと言えば、これは本当に藍染隊長なのか、何らかの偽装ではないか。それを確かめるためという意味合いが強い。死因などは少し見れば分かりますし」
「さすがですね。それでは、この死体は?」
「藍染隊長のもの……でしょうね」
「何か気になる点でもありましたか?」
「ええ、少し。私はもう少し検分を続けます。貴女はどうするのですか?」
「そうですね、一度隊舎に戻ろうと思います。九番隊の隊士たちはあなたに任せても構いませんか?」
「ええ。護衛、頼りにしていますよ」
ぶっちゃけて正直に言うと暇。なので検分に立ち会った訳ではあるが、特に収穫はなし。
もしかしたら配置の穴を突いて一護たちか、他の敵がやってくる可能性があるので、一度九番隊の隊舎の方に戻る事にした。
しかし、特に何も起こらなかった。
とりあえずルキアに面会しに行って、コソッと耳元で一護たちが来ている事だけ伝えておいた。
▼△▼△▼△
翌朝。
ルキアの処刑時間が変更された。明日になるらしい。
これまで何回か変更で早まっていっていたが、これが最終決定だとか。
「これはちょっと困ったねぇ……」
「何か案はありますか? 虚飾隊長」
「いいえ、特には」
春水と十四郎が2人してやってきた。この2人はルキアの処刑に反対派で、何か出来ないかと探ってくれていたらしい。
「まァ、しかし。罪に対して過剰とも言える刑罰に、この幾度もの執行までの猶予短縮。明らかに何らかの意思が介在しているね」
「ああ。このまま朽木をむざむざと処刑させる訳にはいかない」
2人は別の隊の隊長であるため、ルキアとそれほど深い関係がある訳ではないが、現在の護廷十三隊は私が主催している合同訓練のおかげもあって各隊同士の結び付きは強い。
とはいえ喧嘩する時は普通に喧嘩するし、四番隊は見下される事も多いから絶対ではないが。ただ、この2人は特に色んな隊の隊士と仲良くしていた。ルキアを助けようとしてくれるのも、そういう繋がりもあるはずだ。
合同訓練に不老不死が乱入して、それに巻き込まれるルキアが目立っていたというのもあるかもしれないが。
「双極を止める策はある。ただ、その後にどうするかが問題でして」
「そうだねぇ……他のみんなをどう説き伏せるか。特に山じいとか」
「確かに、元柳斎ならルキアごと燃やそうとしかねないかもしれませんね。双極を使うよりも、卍解を使った方が早いと考えるかもしれませんし」
「怖い事言ってくれるよ、ホント」
今でこそほとんどなくなったが、元柳斎は昔なら普通に流刃若火を向けてきていた。
「昔を思い出しますね……何度刃を向けられた事か。私も無抵抗でいる訳ではありませんが、昔の隊長は私に卍解を向けてくる事もありましたし。元柳斎はありませんでしたが、今回は私だけではありませんから。教え子に反旗を翻されたとなれば、勢い余って卍解をしてくるかもしれませんね」
洒落にならない事になるから、さすがにやらないとは思いたいが。
「もしそうなったら虚飾隊長がどうにかしてくれるって事で良いのかな?」
「あなたたちには荷が重いでしょうか?」
「そう言われるとちょっとアレだけどさ……流石にね?」
まぁ、元柳斎が卍解したのなんて一度しか見た事はないが、アレはまともに相手するようなものではない。たぶん、アル・シャマクで異界送りが一番安全な気がする。戻って来られたら困るから今後アル・シャマクを使えなくなるというデメリットはあるが。
「そうなったら、私が対処しましょう。しかし、始解程度ならあなたたちでも対応出来るでしょう?」
正直相手にするのは面倒なので、出来ればそっちでやってくれると助かる。
という事で、作戦なんてほとんどあってないようなものだが、結局当日は臨機応変にと結論づけて今日のところはお開きとなった。
○パンドラ主
権能を使う以外で丸く収められる方法が思い付かないので、京楽と浮竹が協力を持ちかけてくれたのは渡りに船だった。何かやらかしても責任が分散するので。
○雛森桃
もはや本人の前が一番取り繕えていない人。特に藍染との深い関係はないためバーサーカー化はしなかったが、仮にパンドラ主が藍染のような状態で発見されたら原作よりも数倍ヤバい状態でバーサーカーになる。下手に実力がある分、手が付けられなくなる。
パンドラ主信者であるが、元柳斎信者である狛村左陣と話が合うので結構仲が良い。こっちの方が、こっちの方が、となりそうであるが、狛村が人格者であるため言い合いになったりはしない。