転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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双極の丘

 

 

 ルキアの処刑、その当日朝。

 

「昨日白哉が旅禍に会ったってよ。大した相手じゃなかったらしいが、どんな見た目か問い詰めたら志波のガキに似た橙色の髪の男らしいぜ。あとは失踪したっつう四楓院の娘もいたとかな」

 

 我が物顔で九番隊の隊舎、その隊首室にやってきたのは不老不死。その手には有名な高級菓子店の袋が握られている。

 

「志波の……ああ、海燕ですか。確かに面影は似ていたかもしれませんね。では旅禍の方々は? 白哉が相手となると、死んでしまいましたか?」

「いや、四楓院のに邪魔されて逃げられたんだとよ。アイツは詰めが甘ェんだよなァ」

 

 袋を開けてみると、その中身は抹茶カステラだった。分かってる選択だ。抹茶って聞くと渋く感じられがちだし、実際苦手な人もいるが、私は結構好き。

 

「そろそろ鍛え直して……オイ、聞いてんのか?」

「もちろん聞いていますよ。頂きますね」

「……まァ、良いけどよ。んで、どうすんだ?」

「ひとまずは春水と十四郎の2人に策があるようなので、様子を見ようと思います」

 

 抹茶カステラを口の中に放り込みつつ、不老不死に答えた。

 

「正直に言うと、私に出来る事はほとんどなさそうです。処刑を止める事自体は出来ますがその後にどうすれば良いか分かりませんし。その辺りは朽木家のあなたたちに任せたいところですが」

「双極、止められんのか?」

「ええ。それ自体は問題ないと思います」

「なら腹芸は貴族の役目……と、言いたいところだが。白哉が動かねェと話にならねェな」

 

 一つ、不老不死もカステラを口に放り込んだ。

 

「……白哉も動かねェが、ルキアも受け入れてやがる。アイツらがどう考えようが勝手だが、理屈に通らねェクソ共の決めた事を呑んでやるのは気に入らねェ」

 

 紫色のツインテールに眼帯という、出会った時からおよそ1000年間変わらないスタイルだが、考え方もそう大きくは変わらない。身内として可愛がってはいても、一番大事なのは自分。自分が気に入らない事は断固として拒否。

 それでこそ不老不死だという感じがある。

 

「本当にどうにもならないなら、四十六室にだけ権能を使う事も考慮に入れましょう」

「……オマエはそれで良いのかよ?」

「正直に言うと面倒になってきましたので。四十六室に命令を撤回させるだけなら手間もないでしょうし」

 

 ぶっちゃけるとマジで面倒くさくはなってきている。

 ポンポン権能を使うつもりもないが、今回の件に関しては今の状況が間違っていて、正しい方向に戻すだけだし、四十六室に命令を撤回させれば下の者は不審には思っても従うしかないだろう。現に今の状況がそうだし。

 ルキアの事は同情するが、不老不死がいるからここまで力を尽くしているという面も否定しない。他の誰かなら、そのまま見送っていたかもしれない。

 

「まァ、こっちも出来る事はやってみるわ。最悪の場合は頼む。悪ィな」

「随分としおらしいのですね」

 

 まぁ、なるようになるだろう。もしかしたら春水や十四郎が全部良い感じに収めてくれるかもしれないし。

 

「あァ、それと」

 

 立ち上がり、帰るのかと思えば振り向いた不老不死は捲くった腕からシュルシュルと『紫のリボン』を取った。

 

「そろそろ負荷が足りねェから新しいの頼むわ」

「またですか……? やり方を教えるので自分で作ってくれませんか?」

 

『青いリボン』は治癒魔法や回道の効力を高める効果があるが、『紫のリボン』はそれとは別物だ。これはいわば霊圧版のアンクルウェイトみたいなもので、身に着けている者の霊圧を抑えつけるのだ。

 正直それ以上強くなってどうするんだとも思うが、別にそれで困る訳でもない。ただ、そのリボンを作るのは面倒なのだ。エキドナの知識を利用して、術式を書き込む事で作っているのだが、それを描くのがもう手間も手間で。

 

「細けェ作業はアタシには向かねェんでな」

「私にも向きませんが?」

 

 それだけ言い残して不老不死は帰っていった。

 

 ▼△▼△▼△

 

 ▼△▼△▼△

 

「なァ、白哉」

 

 九番隊の隊舎から屋敷へ戻った不老不死は、双極へ向かおうとする白哉を呼び止めた。

 

「なんだ」

「その頑固頭を変えるつもりはねェんだな?」

「何度聞かれようと、変えるつもりはない」

 

 小さい頃は叩けば泣く、素直で可愛い少年だったのだが、今では頑固な面ばかり目立つようになった。

 

「腑抜けたな、朽木白哉」

「……何だと?」

 

 朽木当主として恥ずかしくないように、と言えば聞こえは良いが、不老不死からすれば掟という都合の良いものに盲目的に従っているだけだ。

 

「テメェは掟、掟と言うがな。ただただそれに従ってりゃ良いって考え方は腑抜け以外の何でもねェだろうがよ」

 

 別に、誰がどんな考え方で生きたって良い。ソイツの人生だ。好きにすれば良い。

 ただ、こちらがムカつくのも、それに対して文句を言うのも自由だという話。

 

「テメェがどう生きようがアタシには関係ねェ。知らねェところで何をしてようが興味もねェ。死ぬなら勝手に死んでこい。ただ最近はムカつくのが目につき過ぎる」

 

 頑固なだけなら、まだ良い。だが、最近は表面上取り繕ってはいるものの、ウジウジと迷っているのか悩んでいるのかよく分からない態度が透けて見えた。その事に、ムカついた。

 

「バカじゃねェんだ。今回の判決がまともかそうじゃねェかは考えれば分かる。違うか?」

「…………」

「まァ、まともな判決でもウジウジしたかもしれねェが、それは今はいい。つまりアタシが言いたいのはな。テメェは上が言った事なら何でも従うのかって事だ」

「それが務めだ」

「なら、上がテキトーな事吹かしてルキアも、この家のモンも、テメェの部下も全部死刑だ。その執行はテメェがしろ。アイツらがそう言い出しても従うんだな?」

「…………」

「極論か? それが通る道理はねェか? だが、それは今の状況と何が違う?」

 

 色々と円滑に回すために指揮系統はちゃんとしておいた方が良い。それぐらい、不老不死にだって分かっている。受け入れるかどうかは別として。

 だが、故意であろうとなかろうと、間違えた判断まで全て呑むのは愚か者のする事だ。

 

「秩序だなんだと言っておきながら、それを乱す連中の言い分に言いなりになってやがる。もうこれ以上は何も言わねェよ。あとはテメェの好きにしろ」

 

 ここまで高説を垂れてきたが、何を言ってもどうせ変わらないだろうなとも思っていた。言ってしまえばただの八つ当たりだ。まだ手を出さないだけ抑えている方であるが。

 

「精々ボケた生き方はしねェようにしろよ。こっちはこっちで好きにやるからよ」

「……何をするつもりだ」

「昔っから四十六室とかいう口だけ雑魚野郎共にはムカついてたからな。事あるごとにグチグチ言いやがって。なら今度はテメェらに焼きを入れる番だろ? アイツらの好きにはさせるつもりはねェし、あとで殴り込む」

 

 ひとまずは処刑の行方だ。

 他の隊長か、パンドラがどうにかするらしいが、まずはそれを見届けてから。大義名分を持って殴り込むのはそれからだ。

 

 ▼△▼△▼△

 

 ▼△▼△▼△

 

 双極の丘。

 

「あり得ないですよね。本当にあり得ないですよね。こんなに重要な事態だっていうのにまた何も言わずにいなくなるなんて。隊長の護衛をするのが副隊長の役目のはずなのに。その名誉ある役目に就いているくせに放棄していなくなるなんてあり得ないあり得ないあり得ない。やる気がないなら変わってくれれば良いのにあたしなら四六時中起きてから寝るまで寝てからも起きるまでも命をかけてお護りするのにあたしならあたしならあたしなら……」

 

 揃っている隊長の頭数は少ないが、来ている者はみんな副隊長を連れている。対して私は三席の桃を連れて来ている。

 別にそんな事は気にしないのだが、桃が延々と要への恨み節をブツブツ言っているので否が応でも意識せざるを得なかったりする。

 

「あまり集まりは良くありませんね。旅禍への対応を考えれば仕方のない事かもしれませんが。春水、十四郎はどうしたのですか?」

「どうやら手間取っているみたいでね。風邪かな?」

 

 マユリは技術開発局の力を使って旅禍の捜索とかをしているだろうから仕方ないし、惣右介は死んじゃってるからもちろん来れない。更木の剣八はまた一護たちを探しに行ってるのかな? この場にいるのは元柳斎と砕蜂、烈、左陣、春水とそれぞれの副隊長。

 他の隊長たちはまぁ良いにしても、春水と十四郎が揃っていないと話が違ってくる。普通、風邪に手間取るなんて表現は使わないから、たぶん双極を止めるための準備か何かだと思うが、これ間に合うか? 

 

「朽木ルキア。何か、言い遺しておく事はあるかの?」

 

 ほらもう始まりそう! 

 

『それにしても、双極か。斬魄刀百万本分とは言うが、果たしてそれだけの威力があるものだろうか?』

 

 それは確かに思ったけども。

 

 春水だけで出来るから良いが、十四郎がいないと無理だったら私が止めないとなんだから。

 

「一つだけ……瀞霊廷に侵入した黒崎一護とその仲間を……」

 

 ルキアは一護たちを逃がす事を最期の望みとして元柳斎に頼んでいた。

 私としても一護は夏梨のお兄ちゃんっぽいし、出来れば穏便に済ませたいが、たぶん元柳斎に頼んでも無理だろう。贔屓目抜きに見たら瀞霊廷へ侵攻してきたようなものだし、惣右介を殺した敵の事も分かっていない。

 

「良かろう。お主の望み通り、処刑が終わったあかつきには旅禍共を無傷で帰らせてやろう」

「あ……ありがとうございます」

 

 あ、コレいいよって言っておいて後で普通に殺すやつ……。

 

「双極を解放せよ」

 

 ルキアの身体が浮かび上がり、巨大な磔架(たっか)へと磔にされる。

 同時に、人の何倍の大きさがあるのか分からないぐらい巨大な斬魄刀が解放され、火の鳥へと形を変えた。

 

「朽木さん……」

 

 同じ隊の仲間だ。桃だって思うところはあるのだろう。

 

燬鷇王(きこうおう)……やはり斬魄刀百万本分というのは誇張だね。その性質から考えて、通常の斬魄刀よりも魂葬能力が高い可能性はあるけれど』

 

 さすがは強欲の魔女。ブレないね。

 

 止めてからの事とか考えてないが、ひとまず止めるしかないか。春水と十四郎が言い訳とかもしてくれるはずだったんだけど。もういいや。面倒くさ。あとで権能使おう。

 下手に壊したりしてもアレだし、とりあえずアル・シャマクで隔離するのが良いかな。

 

 照準を合わせやすいように、ルキアを貫こうとしている火の鳥へと手を向けた。

 

「アル────」

 

 しかし、その直前。

 1つの影がルキアと火の鳥の間に割り込み、それは止まった。

 

「隊長、アレを壊すつもりだったんですか?」

「止めるつもりではありました。しかし、必要はなかったようですね」

 

 オレンジ色の頭は、何日か前に見たものだ。

 

「まさか、ただの人間が短期間でこれほどまで力をつけてくるとは思いもしませんでしたが」

 

 黒崎一護。ルキアが現世で霊力を与えた元々はただの人間だった男。

 ルキアを見つけた時の、不老不死にボコボコにされていた印象が強いが、手加減していたとはいえ私から逃げた事や数々の死神が行く手を阻んだはずなのにここまでたどり着いた事を考えると、相当な実力をつけたのだろう。

 

 標的を貫けなかった火の鳥が、一度距離を取って再び突進する。

 しかし、それはまたもや邪魔される事になった。

 

「あれは……?」

「ほんの少し遅かったようですね。十四郎」

 

 綱のようなものが炎の身体に巻き付く。その根本には十四郎と二人の第三席。

 

「よう、この色男。随分と待たせてくれるじゃないの」

「すまん。解放に手間取った」

 

 何らかの武器? あるいはミーティア的なもの? 

 ともかく、そこに春水が加わる。

 

「止めろ! 奴ら双極を破壊する気だ!」

 

 さすがは隠密機動の総司令官も兼任する砕蜂だ。判断や命令までが早い。こういうのは元柳斎がするべきなのではと思ったりはするが。

 

「どうしましょう、隊長」

「ひとまず様子を見ましょうか」

 

 なんて言っているうちに火の鳥は霧散し、巨大な矛はポッキリと折れてしまった。

 さらに、一護は磔架をぶっ壊してしまった。

 

 ここまでたぶん10秒とちょっとぐらい。あっという間の出来事だった。

 

「隊長、阿散井くんが」

 

 そういえば白哉はいたが、副隊長の恋次はいなかった。しかし、遅れて参列しに来たという感じではない。現に、周囲を警備していた者をなぎ倒して来ている。

 きっと、ルキアを助けに来たのだろう。

 

 恋次はルキアと霊術院に入る前からの幼馴染だそうだが、同じ九番隊にいるというのにお互いに気まずい感じになっていて、それは恋次が十一番隊に移籍するまで変わらなかった。恋次はあの感じで奥手なところがあるし、ルキアも見たままネガティブなところがある。

 何かひと押しあれば変わったかもしれない。そのひと押しがこんな処刑騒動だというのは気の毒だが、一歩踏み出せたのなら、それは喜ぶべき事だ。

 

「恋次! 受け取れ!!」

 

 大声でそんな事を言いながら、一護はルキアをぶん投げた。

 

「馬鹿野郎────!!??」

 

 絶叫マシンに乗っているような悲鳴を発しながら落ちてくるルキアを、恋次がなんとか受け止めた。

 

「一護貴様ぁ!!」

「落としたらどうすんだこの野郎!!」

 

 ルキアはともかく、恋次もなにやら一護と親しげだ。恋次は旅禍にやられたと言われていたから、一護かその仲間にやられたと思っていたのだが、そういう感じには見えない。

 

「連れていけ! てめーの仕事だ! 死んでも離すなよ!!」

 

 ともかく、ルキアを受け取った恋次が全力で走る。

 

「何を呆けているのだうつけ共! 追え! 副隊長全員でだ!」

 

 やはり砕蜂の号令は早い。

 副隊長たちが恋次を追おうとするが、桃は動かない。まぁ、副隊長じゃないし妥当と言えば妥当。桃が行ったらめちゃめちゃになる可能性もあり得るから動かない方が良い。

 

「元は敵対していた者同士。しかし、仲間を救うために手を取り合う。これも1つの愛の形ですね。素晴らしい、そう思いませんか?」

「思いますっ!」

 

 なんて言っていると、恋次との間に割り込んだ一護が副隊長たちをワンパン。始解していたにも関わらず。

 その一護へ白哉が刀を抜く。

 

「儂が行こう」

 

 そして恋次の方へは左陣が。

 

「動くな」

 

 元柳斎が春水と十四郎を牽制、しかし逃げた二人を追って行った。

 

 セーフ! 

 二人が元柳斎を連れて行ってくれて助かった。まぁ、壊したのはあの二人だし。さすがの元柳斎でもまだ何もしていない私の方にとばっちりを向けてくるよりも、実際に破壊したあの二人を優先したらしい。

 

 目まぐるしく状況が変わるが、フリーの隊長は私と砕蜂だけになった。

 かと思えば、少し遅れて登場した人型状態の夜一が突進した勢いのまま砕蜂を双極の丘から飛び降りていった。

 

 そうして遂に唯一フリーとなった私の前に、2人の新たな人物が。

 

「なるほど。あなた方が私の相手をしてくれるのですか?」

 

 男と女の二人組。男の方は一度現世で会った事があった。

 

「黒崎くんの邪魔はさせません!」

「少し、付き合ってもらうぞ」

 

 ▼△▼△▼△

 

「一護の妹は、アンタを面白いお姉さんだと言っていたらしい」

「夏梨ちゃんはあんまり人を褒めないとも言ってました」

「それは嬉しいですね。今度、何かお土産を持っていきたいのですが、彼女の好物はご存知ですか?」

 

 茶渡泰虎と井上織姫。旅禍である2人とテーブルを囲んで私たちはお茶を飲みながらお話をしていた。

 

「好きな食べ物は分からないが、普段はよくサッカーをしているようだ」

「そうでしたか。私も隊士たちが蹴鞠をしているのを眺めていた事はあるのですが、それなら練習しておくとしましょう」

 

 テーブルと椅子を含めて諸々は桃が隊舎から持ってきてくれたものだ。

 

「それならあたしが付きっきりで練習に付き合います!」

「おや、桃も蹴鞠をするのですか?」

「普段はしないですけど、明日までに出来るようになっておきます!」

 

 すぐ近くで白哉と一護が戦っているが、桃が縛道で半透明の結界を張ってくれているので特に問題はない。

 

「さて」

 

 お茶を一度テーブルに置く。

 

 邪魔はさせないとか言うから戦うのかと思えば、その次の一言目が夏梨の事だったから話に付き合いはしたが。

 一応、最低限旅禍を足止めしたという事実はできるし。

 

「彼を助けにいきたいですか?」

 

 ちょうど白哉も一護も卍解して戦っているところだ。当たり前のように一護が卍解している事にはビックリだが、もうここまできたら天才だと納得するしかない。

 ただ、目の前の2人は夏梨の話をしながらも、意識は常に一護の方へ向いている。

 

「本当は今すぐにでも駆け付けたい……でも、黒崎くんはそんな事は望んでない」

「そして、俺たちの助けなどなくても一護は負けない」

「なるほど。良い仲間ですね」

 

 しかし、次第に一護が劣勢となり、白哉の千本桜で押し固められた刀がその身体を切り裂こうとする。

 

「黒崎くん!!」

「一護……!!」

 

 その瞬間だ。一護の身体に変化が起こった。

 

「あれは……」

 

 顔の半分を白い仮面が覆う。そして、白哉の『殲景』を素手で受け止めるほどの身体能力の上昇。

 私はこの現象を知っている。

 

 虚化だ。

 

『けれど、あの時と初動が違う。本質的には同じものに見えるが、仮面の現れ方も違えば、その仮面も顔全体を覆うのではなく中途半端なところで止まっている』

 

 確かに細かいところは違うかもしれないが、100年ぐらい前に見たのとほとんど同じだ。

 結局前のは喜助が姿を消したのと同時に拳西やひよ里もどこかに消えてしまったから、あの虚化がどういうものなのかは分からなかった。治す方法なんてもちろん分からないし、そもそも原理が分からない。『崩玉』とかいうのを使ったら出来るっぽいが、一目見ただけで分かるはずもなし。

 現物がない以上エキドナにも解明は出来なかった。いくつか予想は立てられたみたいではあるが。

 

「あら?」

 

 なんて考えていたら、一護は自ら仮面を引っぺがして元に戻った。

 自分で戻れるんだ? 虚化って。

 

『興味深い。この戦いが終わったら詳しく調べたいね』

 

 常識的な範囲でね? 

 

 ともかく。白哉と一護、2人はともに体力を消耗し、最後の一撃をぶつけ合った。

 

「そろそろ良いでしょう。桃」

「はい、隊長!」

 

 2つの力が衝突した衝撃波が通り過ぎ、桃は結界を解いた。

 

「……知りたがっていたな。私がルキアを殺す理由を」

 

 結界が音も遮断していたため、さっきまで2人がどんな話をしながら戦っていたかは分からなかったが。

 

「罪ある者は裁かねばならぬ。刑が決すれば処さねばならぬ。それが、掟だからだ」

「掟だから殺すのかよ……てめーの妹でも、不当な死刑でも……」

「……何だと?」

「聞いてんだよ。ルキアがやった事は、罪は罪でも死刑になるほどじゃねぇってな」

 

 どうやらどうしてルキアを殺す事を止めないのか、みたいな話をしていたらしい。まぁ、ルキアと白哉が義理とはいえ兄妹だと知っていたなら、余計に聞きたくなるのも分かる。

 実際、私もどうして止めようとしないのかは気になっていた。その辺りは不老不死が色々と話してはいたようだが。

 

「……掟に比すれば細事にすぎぬ。我が朽木家は四大貴族の一角。全ての死神の規範とならねばならぬ存在。我らが掟を守らずして、誰が掟を守るというのだ」

 

 確かに掟とかそういう事に厳しそうな貴族の中でもトップの存在がそれを破っていたら、下の存在も同じように破る事になるだろうっていうのは分かる。分かるだけで、同じような状況になったら私は普通に破るが。

 

「戦って分かった。たぶんあんたも迷ってたんだと思う。迷った上で決めたんだと思う。けど、俺が同じ立場だったら、やっぱり掟と戦うよ」

「そうか……兄も奴も、好き勝手に言ってくれるものだ。だが、私の刀は砕かれた。最早返す口もなし、ルキアも追わぬ」

 

 あんなに過保護にやってたんだから、助けたくない訳もないだろう。板挟みになっていたと考えれば同情もする。

 ただまぁ、負けたにしては爽やかそうな顔をしているし、上の命令にも従いつつルキアは一時的にとはいえ生かす方向になって、負けたから仕方ないという言い訳も用意出来たから結果的に良かったのかもしれない。

 

「黒崎一護。この戦い、兄の勝ちだ」

 

 それだけ言い残して、白哉は瞬歩でどこかへ消えていった。カッコつける余裕は残ってたらしい。

 

「さて。織姫、彼を治療してあげてください」

「え? あ、はい!」

 

 桃がテーブルとかを持ってくるまでの間にした自己紹介で、傷を治せるというので任せてみる。結構深い傷もありそうだから、難しそうから桃に手伝ってもらう。

 

「大丈夫そうですね。では桃。彼らを九番隊の隊舎へ案内してあげてください」

「牢ですか?」

「隊首室にでもいてくれればそれで構いませんよ。もし暴れても、あなたなら問題なく対応出来るでしょう?」

「はい! もちろんです!」

 

 ひとまず、一護たちには九番隊の隊舎に向かってもらう事にした。牢に入れて印象が悪くなっても嫌だから、とりあえずではあるがルキアの処刑に関しては一旦阻止出来たので、大人しくしていてくれると信じるしかない。

 最悪桃がなんとかしてくれる。周りの建物とかと引き換えに。

 

「お菓子も好きに食べて構いませんよ」

 

 ちょっと離れたところで元柳斎のものであろう炎が上がっているのを横目に、私は桃と旅禍御一行を見送った。

 

 

 

 





 ○黒崎一護
 概ね原作と同じような流れをたどって双極までたどり着いた。
 原作とは違い石田雨竜がいないためマユリがこちらに来たが、強さの前に危なそう・放っておくと厄介そうだったため夜一の騙し討ちアシスト+中の人による蛇口緩めアシストによってゴリ押した。疋殺地蔵(あしそぎじぞう)の毒は織姫が拒絶した。
 
 ○パンドラ主
 茶渡や織姫とお喋りしていただけ。

 ○山本元柳斎重國
 あと一瞬一護が遅れていたらパンドラ主とバトルになっていた。さすがに卍解まではしないが、周囲の被害がとんでもない事になっていた可能性がある。色んな意味で一護に助けられている。

 ○朽木不老不死
 ちょっと離れたところで一部始終を見ていた。

 ○茶渡泰虎&井上織姫
 ギリギリまで夜一に止められていたが、双極の丘でフリーな隊長かパンドラ主だけになったため、渋々ゴーサインを出された。とは言っても戦っても勝てないのは明白なので、一護の方に行かないようになんとかお喋りで足止めする事に。パンドラ主が何故か好意を寄せている黒崎夏梨の話で時間を稼ぐ事にした。

 ○日番谷冬獅郎
 雛森の行動が原作とは全く違うが、それはそれとして頼れるお兄ちゃんのような存在だった藍染の死に疑問を感じて裏では原作のように行動している。

 ○藍染惣右介
 一度パンドラ主を探る目的でファンを装って雛森に近付いたが、“ガチ”過ぎたので撤退した。東仙をスパイとして九番隊に置いているのでそれで妥協した。
 これまで冬獅郎の見ているところで散々ギンを怪しませる匂わせを行っていた。しかし、原作であった旅禍侵入時の匂わせはパンドラ主に出番を奪われて不発。冬獅郎に向けて原作で雛森へ遺したような内容の手紙を遺した。残念ながら原作雛森ほどは引っ掻き回してくれなかったが。
 

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