転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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初代護廷十三隊

 

 

 戦火が上がっている。

 場所は、流魂街(るこんがい)尸魂界(ソウル・ソサエティ)へと侵攻してきた滅却師(クインシー)の軍隊に相対するのは、死神──護廷十三隊。

 

 滅却師の首領ユーハバッハ。対する護廷十三隊、その矢面に立つのは──なぜか私。

 

「無益な犠牲は望むところではありませんが」

 

 両軍の距離、およそ数キロメートル。

 

「ええ、そうですね。事ここに至っては、そうも言っていられないのも事実」

 

 敵味方が入り乱れてしまえば、私の最高火力は発揮出来ない。ゆえに、開戦の一撃を。

 既に戦火が上がっている現状、開戦というには遅れてしまった感があるが、仕方ない。

 

「──アル・シャリオ」

 

 天より現れたのは、星そのもの。

 単純明快、極大の質量攻撃。それはただの隕石などではなく、着弾と同時に星の終わりのエネルギーを発散する。

 

 世界の終わりを錯覚させる爆発、爆風、爆振。

 私の小さな身体など簡単に吹き飛んでしまうほどの衝撃に耐えられたのは、それでも重力軽減の魔法ムラクによって威力を低減していたからか。

 

 私の一撃の後に突撃しようとしていた、他の隊長たちの息を呑む気配がした。

 この様子だと、敵の頭ぐらいしか残らなかったんじゃないだろうか。

 

 というか本当に、どうしてこうなった……? 

 

 ▼△▼△▼△

 

 あの誘拐現場から抜け出した後、まずは衣服をと思ったものの、服屋さんなんて全然見当たらないし、そもそも服屋さんがあったとしてもお金持ってないしで途方に暮れる事になった。

 

『まったく、君は考え無しだね。そんなに服がほしいなら、さっきの場所を漁ればよかっただろうに』

「それをさっき言ってくれないかなぁ……」

 

 と、ここに来てそんな事を言い出すエキドナ。絶対に分かってて言ってる。

 どうせすぐにバテるくせに。私の後ろに黙って付き従ってくる叡智の書を見習ってほしい。

 

『それとも、その辺りを歩いている人間から奪うかい? それも良いだろうね。どうやら、ここは奪い奪われが慣習となっているようだし』

「う〜ん……」

 

 まぁ確かに、この世界全体かこの周辺限定なのかは分からないが、とにかく治安が悪い。逃げ出してからここに来るまでも何度か襲われそうになった。

 さすがにシャリオはオーバーキルすぎるので、風魔法のフーラでふっ飛ばすぐらいに留めてはいるが、とにかく治安が悪い。大事な事なので二回言った。

 

『ボクは君の事を想って言っているんだよ?』

「う〜ん……」

 

 向こうが略奪上等な感じなのだから、べつにやり返してもいいかという感じではあるが、何というか罪悪感がゼロではない。

 その辺に落ちてないかなー、などと期待しながら歩く。

 

 そうして歩く事数十分、あるいは数時間。

 顔の部分を白い仮面みたいなもので覆われた化け物に遭遇した。

 

「ひーん……! なにアレなにアレなにアレ……!!」

『この世界の魔獣のようなものだろうか。興味深い』

「呑気すぎ……!」

 

 全力で走って逃げる。

 たぶん5メートルはある、あの化け物。ブリーチってそういう感じの世界観!? 

 

 絶対こういう時は置き去りになるはずのエキドナの声が真横から聞こえる。思わずそっちを見ると、普通に浮いていた。ズルい……! 

 

『そもそも、そうして逃げなくても倒せばいいだろう?』

「どうやって……!?」

『本当に君は馬鹿だねえ……ついさっきどうやってあの場所を抜け出したのか忘れたのかい?』 

「ぜったい、外す……!」

 

 狙って狙っての状況ならともかく、こんな切迫した状況で真っ直ぐ狙いを定める事なんて出来るはずもない。

 

『そもそもシャリオには追尾があるのだけれどね。まぁ、照準ぐらいはボクが補助しよう。撃ってみるといい』

「もう、どうにでもなれ……! シャリオ!」

 

 破れかぶれに放った白光は、化け物の上半分を消し飛ばした。

 

「はぁ……助かった…………って、まだいるし……!」

 

 しかし、近くに他の化け物が。それもいっぱい。

 魔獣を引き寄せる体質なんてパンドラ様にはないんですけど! たぶんだけど! 明らかになってない事が多くて分からないけど! 

 

『面倒だ。まとめて薙ぎ払おう』

「っ……──エル・シャリオ!」

 

 前方を放射状に消し飛ばす、シャリオの1段階上の魔法エル・シャリオ。

 ちょっとやり過ぎてしまった感があるが、仕方ない。仕方ないったら仕方ないのだ。

 

「ふう……これで安心──」

「おーおー、こりゃすげぇ。とんでもねぇ霊圧だ」

 

 ひぃん!? 

 ツインテール!? 眼帯!? 刀!? ガラ悪い!? 

 

 助けてエキドナ──!! 

 

 ▼△▼△▼△

 

 紫ツインテール眼帯刀持ち不良少女こと齋藤(さいとう)不老不死(ふろうふし)に連行されるようにして歩く。

 言われたのは、名前の自己紹介とついて来いの一言。

 怖いよぉ……。不老不死ってなにぃ……? 

 

『彼女が持っている刀は、どうやらボクと同じ斬魄刀のようだ』

 

 しっ! 変に喋って刺激したらどうするの! 

 

『安心するといい。ボクの姿は君にしか見えないさ。もちろんボクの声も君にしか聞こえていない』

 

 なら良いけど……とはならないんだよなぁ。

 というか、今ナチュラルに心読んだ? 

 

『細かい事はいいじゃないか』

 

 良くなくない? 

 

 そうして結構歩き、途中で洒落せぇと米俵のように抱えられ、目の回るような高速移動の末にたどり着いたのは、立派な和風の建物だった。

 

「連れてきたぞ」

「ほう、お主が」

 

 借りてきた猫のように差し出されて、目の前にはハゲ・ヒゲ・額に傷。

 怖いよぉ……。

 

「あの、この方は……?」

「山本……山本…………。ハゲ」

「誰がハゲか貴様!!」

「テメェ以外のどこにハゲがいんだ、ああン!?」

 

 怖いよぉ……。

 どうしてそんな喧嘩腰なの、不老不死? 不老不死だから? 死なないから喧嘩売っても大丈夫なの? 

 

「……ともかく。お主は使えそうだ。ついて来い」

 

 怖いよぉ……。

 使えそうってなに……? どこに連れて行くつもりなの、山本ハゲ? 

 

 で、連れて行かれたのは、周りに何もない荒野。

 

「既に始解は済ませておるな。お主の全力の一撃を叩き込んでこい」

「そんな事をしたら、あなたが死んでしまうと思いますが……」

「ほう? ならば──万象一切灰燼と為せ『流刃若火』」

 

 炎が上がった。熱い。とても熱い。

 精一杯の虚勢を張って宥めようとしているのに、どうしてこうなった? 

 

「来ないならば、儂の方から往くぞ」

 

 ブオンと効果音が鳴りそうというか、実際にヤバそうな音を鳴らしながら山本ハゲが燃える刀をブンブン振っている。

 刀を抜く前に名前ぐらい教えてくれませんかね。

 

「シャリオ」

 

 もうどうにでもなーれ、とシャリオを放ってみる。だって、何もしなかったら斬り殺されそうだもの。正当防衛、正当防衛。一応射線を真正面からちょっとだけズラしてはみた。

 そういえば追尾性能があると、放ってから思い出した。

 

「かァッ!!」

 

 ハゲが一閃。シャリオの白光が真っ二つに切り裂かれた。

 

 ウッソでしょ……。

 

「それで終いか?」

 

 ひぃん!? 化け物──!? 

 

 シャリオ、シャリオ、シャリオ、シャリオ──!! 

 

「効かぬわァッ!!」

『向こうから仕掛けてきたくせに、何を言っているんだろうね?』

 

 本当だよ! 

 

「──エル・シャリオ!!」

 

 これで痛い目見ろ、このハゲ──! 

 

「今のは、少し効いたぞ」

 

 ぎゃあ──!! 

 助けて不老不死──!! 

 

 ▼△▼△▼△

 

 あの爆熱ハゲこと山本元柳斎(げんりゅうさい)重國(しげくに)にほとんど強制的に入るように言われたのは、護廷十三隊という組織。何をするのかはよく分からないが、不老不死曰く、敵をぶっ殺す組織らしい。

 物騒すぎる……。というか、敵ってなに……? 

 

 いきなり隊長になれとか言われたけど、意味が分からなすぎて困る。逃げていいのかな? 

 

「君が九番隊隊長の枠を埋めるって話の? 最有力候補だった奴が死んじゃって何人か候補出てたと思うんだけど、見ない顔だね? その霊圧を見れば納得だけど」

 

 で、元柳斎に好きに使っていいと言われた部屋の周りをうろついていると、猫背の変な男と遭遇。

 九番なのかは知らないけど、たぶんそうだと頷こうとした瞬間の事だ。

 

「それじゃあ一先ず──」

 

 男が刀を振るった。真っ直ぐ、斬り上げるように。

 半ば無意識にとっさに後ろに下がろうとして、視界の端で赤色が噴き出す。

 

「──ッ!!」

 

 何が起きたのか、一歩遅れて理解する。

 

「ぁ……ぎぃ……!!」

 

 痛い痛い痛い痛い──!! 

 胸から鎖骨の辺りを斬られた斬られた斬られた!! 

 

『落ち着くんだ。傷は『虚飾の権能』でなかった事に出来る』

 

 見間違い見間違い見間違い──!! 

 斬られたのなんて見間違い!! 

 

「フーッ……フーッ……」

 

 何とか傷をなかった事に出来た。

 

「傷が、なくなった?」

 

 こいつ……! 

 痛みがなくなって、冷静に考える余裕が生まれる。そうだ、なんだコイツは。

 通り魔。殺人鬼。色々と言葉は浮かぶが。

 

「エル・シャリオ──!!」

 

 いきなり斬りかかって来るなんて危険人物、野放しにしていいはずがない。正当防衛! 

 

 護廷十三隊の寮か何かと言われていた建物があった場所は更地になった。

 

 ▼△▼△▼△

 

 元柳斎に問い正され、正直に話してみればあの不審者は護廷十三隊の隊長だという。こんなのがいるなんて聞いてない。やってられるか! 

 

 不老不死曰く、隊長たちは鍛錬の名目で日常的に斬り合いをしてるらしい。

 ますますやってられるか!! 

 

『物騒な話だね。いっその事、あの元柳斎とかいう男を倒して頭に成り代わればいんじゃないかい?』

 

 それで健全な組織にしろって? エル・シャリオ受けてもピンピンしてたのに、どうやって倒せと? 

 

『知っているだろう? シャリオにはまだ上がある。アル・シャリオという最強の威力を誇る魔法がね』

 

 そんな事したら元柳斎どころか辺り一体更地でしょうが! 辺り一体というか国が滅びるでしょうが! 

 

 もー! どうしろっていうワケ!? 

 

 

 後々他の隊長たちの顔を見に行ってみれば、同じ女の子の隊長とは仲良くなれそうだったので、まだギリギリ耐えた。襲撃してきた他の隊長から守ってくれたし、一緒にお茶飲んだし。

 





○初代護廷十三隊
 名前とビジュアル、ちょっとした戦い方以外は全然情報がない。そのため、拙作では口調やキャラはそれっぽく捏造。
 
 ○パンドラ主
 元柳斎に「強い奴を探して来い(意訳)」と言われていたみんな大好き齋藤不老不死ちゃんに捕まり、なんか護廷十三隊の隊長を務める事になってしまった。霊圧がすごいらしい。
 隊長女の子組とは仲良くなれそうだと思っている。なお……。
 齋藤不老不死「パンドラ主をエサにして寄ってくる他隊長と斬り合うの図その1」
 卯ノ花八千流「その2」
 鹿取抜雲斎「お茶を飲みながらそろそろ参加しようかと考えているの図」

 ちなみに九番隊の予定です。久面井煙鉄ファンの方はごめんなさい。
 元々九番隊の隊長になる予定だった者が就任前に死んで、代わりに本当は久面井煙鉄が入るはずが、パンドラ主が割り込んだ形です。

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