転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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 いよいよ尸魂界篇クライマックスです。




首謀者

 

 

 双極の丘に1人ポツンと残された私はぽっきり折れてしまった巨大な斬魄刀を眺める。

 今回は仕方ないかもしれないが、ちゃんと必要な時もあるだろうと考えたら、そのままにしておくのもちょっと……という気がしないでもない。

 

「なんか気になんのか?」

「いえ、直るのかと思いまして。普通の斬魄刀のような持ち主もいない事ですし」

 

 いつの間にか当たり前のように隣に立っている不老不死に答える。

 正直霊圧は全然感じなかったが、どこかで覗いているとは思っていた。

 

「ハッ、罪人を処刑したいなら代わりにアタシがやってやるよ」

「磔にした者を斬るのは楽しいのですか? てっきりあなたは戦う事が好きなものだと思っていましたが」

「たまには肉を斬らねェと勘が鈍るからな」

 

 おー、コワ。牛や豚の肉を切るのではダメなんだろうか。

 

「これぐらいなら権能で戻しても構いませんが……」

 

 生きている者相手に権能を使うのはちょっと精神的なリミッターがあるが、ただの物体相手ならそんなものも感じない。実際、割ってしまった花瓶を権能で割れなかった事にした事もあるし。

 

「彼はあなたの目から見てどうでしたか? 現世で見た時とは比べ物にならないほど力を付けた様子でしたが」

「まァ、悪くはねェ。実力って意味じゃまだまだだが、瀞霊廷に乗り込んできた根性は認めてやる」

 

 結構高評価。

 まぁ、不老不死は根性が据わっている者が好きなところがあるから当然といえば当然かもしれない。あんな少人数で瀞霊廷に乗り込んでくるぐらいだから、そりゃ根性だって据わっている。

 

「んで、これからどうすんだ? とりあえずは有耶無耶になったが」

「春水と十四郎に相談したいところですが……今は難しそうですね」

 

 ちょっと離れたところで元柳斎の流刃若火の炎が上がっている。その相手は春水と十四郎だ。さすがに一方的にはやられないと思いたいが、元柳斎を振り切ってこっちに来るのは難しそう。

 

「先に四十六室に殴り込むか?」

「最初からその方向でいくのですか? それならあの2人を待つ必要はありませんが」

 

 たぶんストレス発散も兼ねて言い表しにくい状態になってしまうと思うので、いっそのこと最初から権能前提で行った方が話も早いかもしれない。春水と十四郎の2人でいい感じに収めてくれたら楽なのだが、そうでないならこれが一番話が早い。

 

「おう、じゃ行くぞ」

 

 なんて話していたその時だ。

 

 突然、白い布か何かが渦を巻くように現れた。

 同時に、不老不死の腕を掴む。

 

 陰魔法で霊圧遮断。音と、出来れば姿も隠して。

 

『まったく、君はボクの事を便利に使い過ぎじゃないかい?』

「オイ、何だありゃ」

「分かりません。ただ──」

 

 白い布のような物の中から現れたのは、逃げたはずの恋次とルキア、行方が分からなかった要、ギン……そして、死んだはずの惣右介。

 

「何かが起こっているようですね」

「そりゃそうだろうがよ。馬鹿か? 馬鹿だったわ」

「失礼ではありませんか?」

 

 確実に何かが起こっている。それが何かは分からないが。

 あの惣右介は偽物だろうか。しかし、ギンが当たり前のように隣に立っているのが気になる。ギンは性格が悪いところがあるが、だからこそ偽物とかに騙されるようなイメージはあまり出来ない。要なら騙されているという事もありそうではあるが。

 

「ようこそ、阿散井くん。朽木ルキアを置いて退がり給え」

 

 少し、様子を見る事にした。

 

 ▼△▼△▼△

 

 要やギンは見ているだけだったが、本物か偽物かはともかく惣右介は一貫してルキアを寄こせというスタンス、対して恋次はノーの一点張り。

 そこだけを見れば忠実に処刑を執行しようとしていると捉えられなくもないが、なにやら恋次の言い分を聞くに、冬獅郎が惣右介に斬られたらしい。

 うーん、何が起こっているのやら。

 

 なんて考えていたら、そこに新たな乱入者が。

 

「急に隊長の霊圧が消えた…………お前か──ッ!!」

 

 桃だった。

 桃がものすごい形相で惣右介を睨みつけている。

 

「破道の九十一!! 千手皎天汰炮(せんじゅこうてんたいほう)ッ!!」

 

 無数の光の矢が惣右介へ向かった。

 

 いきなり殺意高くない? 

 角度的にルキアや恋次も巻き込まれそう。まぁ、桃なら大丈夫か。

 

「虚飾隊長をどこにやったッ!!」

 

 普通先にそれを聞かない? 惣右介からしたら冤罪ではあるけども。

 

「ひ、雛森か……?」

 

 土煙が晴れ、困惑しながらも無傷であった恋次。

 

「ねぇ、阿散井くん。さっきまでここに隊長がいたはずだよね。どこに行ったか知ってる? アイツがやったのかな。そうだよね。そうに違いないよね。隊長がやられるなんてあり得ないけど、もしかしたら騙し討ちされたのかも。きっとそうだよね。隊長が正面から負けるなんてあり得ないけど何か話があるとか言って近付いて罠に嵌めたんだ。そうだ、そうしかあり得ないよ。死体を偽装していたぐらいだもん。鏡花水月を使って騙し討ちしたんだよ。きっと事情があるとか言って。隊長はお優しいから……」

「お、おう……。ッ!? ルキア!?」

 

 しかし、先ほどまで恋次の腕の中にいたルキアの姿がない。

 

 ルキアは、少し離れた場所にこれまた無傷で立っていた惣右介の手に渡っていた。

 

「怖いなァ。当たり前のように九十番台の詠唱破棄してくるやん、雛森ちゃん」

「お前かッ!?」

「情緒滅茶苦茶やないの」

 

 確かに。心の中でギンに同意した。

 

「お前ッ!! 東仙要!! これまで散々隊長に目を掛けてもらったくせに信頼してもらってたくせに副隊長のくせにあたしが欲しいもの全部全部全部全部全部全部全部全部全部持全部全部全部全部全部全部全部全部全部持ってるくせに────殺すッ!!」

 

 あ、今度は要にターゲットが移った。なんか要にだけ殺意すごいね? 

 

「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」

「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」

「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」

「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」 

 

 わー、高速多重詠唱……。

 ちょっとマズい? さすがに。周りにルキアとかいるし。

 

 様子を探るために隠れたものの、これ以上はあんまり意味もなさそうだし、放っておくとマズそうなので陰魔法の霊圧やら諸々を遮断する結界を解いた。

 

「隊長っ!」

 

 途端にさっきまでの剣幕はどこへやら。ぴょんぴょんと飛び跳ねるように桃は駆け寄って来た。

 

「突然、死んだはずの惣右介が現れたものですから、隠れて様子を伺っていたのです。心配させてしまいましたね」

「い、いえ! 心配なんてそんな! 隊長がやられるはずないって、あたし信じてましたから!」

 

 さて、と意識を惣右介たちの方へ向ける。

 

 惣右介と、その手で首輪のような拘束具? を掴まれているルキア。そのすぐ隣にギン。一歩離れたところに要。

 

「隊長。藍染は中央四十六室を皆殺しにして成り代わっていました。鏡花水月の催眠能力を使って」

「鏡花水月の催眠能力?」

「先ほどの天挺空羅で聞いていなかったのかい? 鏡花水月の能力は完全催眠。五感全てを支配し、対象の姿・形・質量・感触・匂いに至るまで、全てを敵に誤認させる事が出来る」

『完全催眠か。興味深い』

「随分と詳しく教えていただけるのですね」

 

 惣右介の斬魄刀である鏡花水月について詳しい事は覚えていないが、そんな催眠能力があるなんて初耳だ。天挺空羅とか届いてないし。

 しかし、桃が言った四十六室に成り代わっていたというのが事実なら、ルキアに関して一連の流れが色々とおかしかったのも理解出来る。正常に運営がされていなかったのだから、そりゃ判決も正常なものは出ないだろう。

 

「発動する条件は、鏡花水月の解放の瞬間を敵に見せること。そして一度でも解放を目にした者はその瞬間から完全催眠に堕ち、以降僕が鏡花水月を解放する度に完全催眠の虜となる」

 

 めっちゃ喋るじゃん。普通そんなに手の内喋る? 今までずっと隠してたのに。

 

「だからテメェは合同訓練で事ある毎に解放して回ってた訳か」

「そうさ。初代護廷十三隊所属元六番隊隊長、朽木不老不死。君も既に完全催眠に堕ちている」

「催眠だか何だか知らねェが、そうやって斬魄刀の能力に頼り切りになってる奴は雑魚だと相場が決まってやがる。とりあえずテメェをブチのめせばいいって事だな」

「鏡花水月の完全催眠は蠅を竜に見せる事も、沼地を花畑に見せる事も可能だ。君が見ている僕は果たして本物だろうか。朽木ルキアをそう見せているかもしれない。あるいは別の隊士をそう見せているだけかもしれない」

「うだうだとウッセェな……ンなもんは斬ってから考えれば良い。殺さなけりゃ、卯ノ花が治すだろ」

「やり方が雑すぎるのでは?」

「それが一番手っ取り早いだろ」

 

 軽口は言ってみたものの、このまま暴れさせたら催眠に掛かった不老不死に私が攻撃されるみたいな事にもなりかねないような気がする。いや実際その完全催眠とやらがどんな事まで出来るのか知らないけども。

 解放の瞬間を見たらかかるみたいだけど、これってエキドナもかかってる感じ? 

 

『この条件ならボクも術中に嵌っていると考えた方が良いだろうね。ボクは君の知覚に相乗りする形で外界の情報を得ているんだ。君が解放の瞬間を見ている以上、ボクも見ている事になる』

 

 じゃあエキドナにおかしくなっていないか判定してもらうのは難しいか。

 

 というか、蠅を竜に見せるとか言ってたけど、そういう見間違えさせるのって、こっちの特権なんですけど。

 

「少し落ち着いてください。ここは私が」

「鏡花水月の完全催眠は完全無欠。たとえ虚飾隊長、君であったとしても逃れる事など出来はしない」

「確かにそうかもしれませんね。しかし、それは私が鏡花水月の解放の瞬間を見ていたら、の話でしょう?」

「何が言いたい?」

「簡単な話ですよ。『私は鏡花水月の解放の瞬間を見ていない』のですから、完全催眠にも堕ちていないという事です」

 

 ここまで言ってから、あんなあからさまに言うって事は発動条件はブラフなのかもという考えが浮かんだが、その時はその時。

 

「未だ状況がよく分かっていませんが、ひとまずはあなたを倒せば良いのでしょう?」

「…………。気にはならないかい?」

「一体何がでしょうか?」

「僕は完全催眠によって四十六室に成り代わり、朽木ルキアを双極によって処刑させようとした。それは一体何故か」

「確かに、気になりますね」

「死神の魂魄には限界強度というものが存在する。死神としてどれだけ斬・拳・走・鬼を鍛えようとも、いずれその壁に突き当り成長は止まる。ならばその限界を超えて全ての能力を強化する方法はないのか?」

「…………?」

 

 急になんの話……? 

 いきなり話飛んだくない? これ私が途中を聞き逃したとかじゃないよね? 

 

『まだ話の途中じゃないか。そうやってちゃんと最後まで話を聞かないのは良くないな』

 

 はい、ごめんなさい……。

 

「虚飾隊長、君は目にした事があるはずだ」

 

 知らないです……。

 

「──それは、死神の虚化だ」

「ああ…………なるほど。つまり、虚化の能力を持つ一護をおびき寄せるためにルキアの処刑を仕立てたという訳ですね?」

「いいや、違う」

「…………」

 

 どうしてかはおいといて、死神の虚化に興味を持ったみたいな話なら絶対一護に目を付けておびき寄せた感じになるくない? 

 

「グチグチグチグチと、何が言いてェのか分かんねェんだよ。教師みたく語りてェならもっと分かりやすく言いやがれや。テメェ、話し始めたら他の奴に嫌がられるタイプだろ」

 

 そーだ、そーだ。もっと言ってやれー。

 お下品な事は言えないので、うんうんと頷いておく。

 

「死神の虚化。それを可能にする、死神と虚の境界線を取り除く事が出来る物質がある。名を、『崩玉』という」

 

 あー、なるほど『崩玉』ね。

 知ってる知ってる。ついさっきも思い浮かべてたし。

 でもまた違うとか言われたら恥ずかしいから黙っとこ。

 

「そうか、覚えていないか。記憶に残っていないならば仕方がない。そう忘れるような出来事ではなかったとは思うが」

 

 コイツしばいて良いかな? 

 

 ▼△▼△▼△

 

 途中で一護が割り込んできたりとハプニングもありつつ、惣右介が語るには、喜助は自ら作った『崩玉』を危険なものだと判断したが、破壊する事が出来なかった。なので、次善策としてその『崩玉』を他人の魂魄の奥底に埋め込んで隠す事にした、と。そして埋め込まれたのがルキアという訳だ。

 ルキアは現世で喜助に義骸を借りたらしいが、その義骸は尸魂界から捕捉不可能なように設計されており、しかも中に入った死神は徐々に霊力を失っていき、いずれただの人間と変わらないような状態になってしまうとか。

 まぁ、結局のところはルキアに隠された『崩玉』を狙って暗躍していたらしい。100年ぐらい前の喜助の件は冤罪だったらしい。

 

「ハッ、つまりはアレか? テメェじゃ強くなれねェからその『崩玉』で強くなりたーいってか? つくづく雑魚が考えそうな事だぜ。よくもまァ、虚と混ざって強くなるなんざ気色悪ィ事を思い付くもんだ。外付けの道具すら他人頼りってところも救えねェ」

「何か勘違いをしているようだ。『崩玉』に目を付けたのは、あくまで研究材料の一つとして。ただの興味と言い換えても良い。浦原喜助が作った『崩玉』があろうとなかそうと、変わる事などありはしない」

「そーかよ、ただの興味にしては随分と熱心に動いてたみてェだがな。まァ、別に興味もねェが。つーか、ルキア。テメェ、いつまでされるがままやってんだ。囚われのお姫様気分か?」

「も、申し訳ありません、大婆様……」

 

 なんか色々と語ってくれたが、これ喜助が結構な戦犯では? 特別性の義骸とか、そりゃ見つからない訳だよ。しかも霊力を失っていくとか、やってる事ヤバくない? 聞いていたルキアの反応を見ると知らなかったっぽいし。

 そもそも隠したいなら不確定要素の強い他人じゃなくて自分の魂魄に隠した方が良くない? 100年ぐらい尸魂界に見つかってないって事は、わざわざそんな義骸使わなくても良い訳だし。

 

「オイ、パンドラ。もうアタシがやっていいな?」

「そうですね……『あなたも鏡花水月の解放の瞬間など見ていない』ですし、どうぞ」

 

 まぁ、何をしたとかなんでこんな事をしたとか語ってくれたし、あとは捕まえてからでも良いだろう。

 

「隊長、ここはあたしが」

「アタシがやるっつってるだろ。引っ込んでろや」

「いいえ。隊長を守るのがあたしの役目です。隊長のお友達である貴女も一緒に守って差し上げます」

「誰が、誰を、守るってェ……?」

「お前ら状況分かってんのか!? パンドラよりルキアだろ!?」

「喧嘩しないでもらえますか……?」

 

 いきなり桃と不老不死が喧嘩し始めた。と、そこへ一護も参戦しそうに。こんな場所でやめてね? 

 というかべつに私を守るみたいな話じゃないし。一護が言ってるみたいにどっちかと言うとルキアを守ってね? 

 

「……一度、仕切り直す事にしましょうか。惣右介は良いとして、要、ギン。あなたたちはどうしてそちら側に?」

「勝馬に乗るんは当然ですやろ?」

「あなたの目的は瀞霊廷に住んで贅沢をする事だったのでは? そちらについてしまってはその目的も果たせなくなるでしょう」

「あんなもんテキトー言うたに決まってるやん」

 

 勝馬とは言うが、たったの3人で護廷十三隊全員に勝てそう? 判断ミスじゃない? 

 まぁ、自分の意思であっちについたなら仕方ない。

 

「要、あなたは?」

「正義のために」

 

 うーん、今この状況は正義の真逆じゃないかと思うのだが。大丈夫? 騙されてない? 

 

「では、あなたたち3人をまとめて捕えれば良いのですね」

 

 まぁ、とりあえずとして。

 こっちはこっちで意見が纏まっていないから、もう代表して私がシャマクさんで捕まえる感じでいこうかな。

 

「エル──」

 

 と、その瞬間だ。

 

「動くな。筋一本でも動かせば──」

「──即座に首を刎ねる」

 

 2つの影が惣右介へと飛来した。

 夜一が惣右介の斬魄刀の柄を押さえて抜刀出来ないようにし、砕蜂がその首へと刃を当てた。

 息ぴったりだ。砕蜂は常々夜一への恨み節を呟いていたのだが、和解したのだろうか。

 

「オイ、テメェら何勝手に」

 

 ともかくとして、一応獲物が横取りされたような形になった不老不死が突っかかろうとして、またもや先の2人のように乱入者が現れる。

 

「動かないで」

「じっとしていてもらう」

 

 乱菊と修兵だ。

 乱菊がギンを、修兵が要を取り押さえた。

 

 さらに、元柳斎をはじめとする隊長副隊長たち。

 

「長々とお話をして頂きましたが、どうやら時間切れのようですね」

 

 私は話を聞く方だし、不老不死を含めてさっきまでは私が話を聞いていたら一緒に聞いてくれる者ばっかりだったからダラダラと喋っていても大丈夫だったが、特に元柳斎が来た以上無駄口を叩く暇はないだろう。

 

「ああ……そうだな」

 

 しかし、惣右介はなにやら余裕げだ。

 こんな状況で余裕ぶっこける事ある? 

 

「時間だ」

 

 と思ったら、天から光の柱が降ってきた。

 それは惣右介、要、ギンをそれぞれ包み込む。さらに天が割れ、そこから大量の大虚(メノスグランデ)が覗いていた。

 

「なるほど、そういう事でしたか」

 

 この光は反膜(ネガシオン)。メノスが同族を助ける時に使うもので、光の内と外は空間が断絶されるとかいう話だ。今まで何回か見た事がある。わざわざ虚圏に帰ろうとしているメノスに追い打ちをかける理由もないから、破ろうとした事はないが。

 

「オマエ、破れるか?」

「試した事がないのでなんとも……」

「なら、()()()?」

「ええ、もちろん」

 

 不老不死が消える。

 

「隊長、やっても良いですか?」

「少し待ってください」

 

 1つ困った事は惣右介がルキアを連れたまま光につつまれてしまったこと。

 

「ルキアッ!!」

「ルキアを返しやがれッ!!」

 

 一護と恋次が卍解。反膜へと攻撃。しかし、破れず。

 

「退がれ──」

 

 白哉が卍解。一護との戦いでの傷が癒えぬまま、終景・白帝剣を使うも破れず。

 

「斬魄刀保管庫の結界が破られました」

「さすが、早いですね」

 

 斬魄刀保管庫は元々ただの建物に鍵を掛ける形にしていたのだが、いちいち鍵を掛けるのも開ける時に鍵を取りにいくのも面倒だった。なので、鍵ではなく結界を張る形に変更したのだ。現在は桃がその結界を張っている。

 

 この場にいる隊長、副隊長たちが反膜へ攻撃を放つ。ある者は斬魄刀で、ある者は鬼道で。そうしないのは元柳斎と烈、長次郎ぐらい。

 少し前まで死刑囚という立場だったが、その判決が惣右介の仕組んだものだと分かった以上、今は護廷十三隊の仲間が拉致されかけているという現状。ボケっと棒立ちしているなどあり得ない。

 しかし、破れない。

 

 こうしている間にも惣右介は浮き上がっていき、手袋のような何か道具を使って腕をルキアの胸に突き刺し、身体の中から『崩玉』を引きずり出していた。

 その後すぐにルキアの胸の傷はなくなったが、そんな簡単に『崩玉』を取れるならこんな大層な事をする必要はなかったのではと思わなくもない。

 

 反膜は性質的には空間断層というか、創作物でよくある次元斬の防御バージョンみたいなイメージだ。そのため、通常の手段ではいくら威力があっても破る事は出来ない────とされている。

 たとえばアル・シャリオや元柳斎の卍解。そういう普通では考えられないぐらいの威力の攻撃をぶつけた時にどうなるのかは分からない。ただ、1つ確実にそれを破る方法はある。

 

(くびき)れ──常世丸(とこよまる)

 

 直後、上空。

 まるでバターでできているかというぐらいあっさりと、反膜が切り裂かれた。

 不老不死の斬魄刀、常世丸。簡単に言えば、何でも斬れる刀。空間を隔てていたところで意味はない。アレは1つ2つ上の次元からぶん殴る、次元斬の上位互換のようなもの。斬撃が飛んだりする訳ではないため持ち主に大きく左右されるが、逆に言えば持ち主の技量によってはかなり化ける斬魄刀だ。

 

 というか舌出てる、舌出てる。

 未だにあの癖直らないよね。

 

 まぁ、これでルキアは取り返せるワケだが。

 

「一体いつから騙されていたのかは分かりませんが」

 

 改めて考えてみると、100年前の虚化事件の時、惣右介が私を呼んだタイミングが向こうにとって良すぎる気がするし、確かその伝言を伝えてきたのは要だ。

 そうすると少なくとも100年前から騙されていた事になるし、私は100年も裏切り者を側近に置いていた事になるし、私は裏切り者の護廷十三隊入隊を促した事になるし。

 改めて考えると、これ。

 

「これは少し──」

 

 ちょっとふざけてるよね。

 

「──不快、ですね」

 

 あの時の不当裁判もアイツの仕業でしょ、コレ。

 ホント、ふざけてくれる。

 

『────ッ!!??』

「落とすなッ!!」

 

 みんな急に手を止めてどうしたのかな? 

 落とすなって何? 元柳斎には私が何か落とすように見えてる? ああ、アル・シャリオ? さすがにやらないよ。

 

「──破道の九十九!! 五龍転滅(ごりゅうてんめつ)!!」

 

 白い複数の竜が惣右介へ襲いかかる。

 桃もハッスルしている。紫の髪紐をほどき、私の霊圧に相乗りする形での最強の破道。騙されていた事にムカついたのだろう。

 

「シャリオ──」

 

 私も便乗するように、数十もの光を上空、曲射とでも言うのか、放射状に広がり弧を描くように惣右介へ放つ。

 

「──エル・シャリオ」

 

 すかさず、数十の範囲を絞り威力を最大まで上げた直線のエル・シャリオを放った。

 シャリオの追尾性能を利用した、直線上をエル・シャリオが、それを避けようとしてもその周囲をシャリオが襲う弾幕。

 

「……逃げられましたか」

 

 しかし、着弾の前に惣右介たち3人の姿は消えた。どうやら虚圏へ逃げたらしい。

 あーあ。

 

「珍しくキレてるじゃねェか。記念にコレやるよ」

 

 上空からルキア片手に降りてきた不老不死が、何か投げ渡してきた。

 と思ったら惣右介の腕だったので避けた。

 

「いりません。汚いです」

 

 ちょっと血も飛んできたし。

 

「まぁ、ルキアも取り返した事ですし、良しとしましょうか…………烈、彼女の治療をお願いします。傷は塞がっているようですが、気を失っているようですから」

「気絶してんのはオマエが景気よくぶっ放してきたからだろ。何発かこっち飛んできたからな」

「見えないところに傷があるかもしれませんから」

「聞かなかった事にすんなや、オイ」

 

 とりあえずは一息といったところだろうか。

 昔、エキドナが行きたいって言うからしかたなく虚圏に行った事があったので、転移ポイントはあるし今からでも追いかけようと思えば追いかけられるのだが。

 まぁ、それは後で良いだろう。

 

「帰りますよ、桃。一護、あなたたちもよろしければどうぞ」

「はいっ、隊長!」

 

 もうなんかやる気なくなったし。とりあえず明日考える。

 

 





 ○パンドラ主
 ずっと騙されていたらしくてイライラ。色々とめんどくさくなったので明日の自分に丸投げ。
 勇音が天挺空羅を使った時、ちょうど結界で霊圧を遮断していたので受信出来なかった。
 久しぶりに不快だったので、結構ガチの弾幕を放った。逃げられたが、代わりに遮魂膜にはボコボコに穴が空いた。

 ○虎徹勇音
 原作同様、卯ノ花に連れられて藍染の正体を知った。
 パンドラ主の霊圧を探知出来なかったため、天挺空羅の対象に雛森も入れ、藍染関連の原作同様の内容+最後に「虚飾隊長の霊圧が感知出来ませんでした。どなたか、虚飾隊長を見つけた方は同様の内容を伝達願います」と付け足した。有能。特に雛森を対象に入れた辺りが。

 ○雛森桃
「パンドラ様に危害を加えたので処します」
「パンドラ様を不快にさせたので処します」
 パンドラ主の事になるとイノシシになる暴走虚飾狂い。隣にパンドラ主がいれば冷静である事が多いが、近くにいないと暴走する可能性が高まる。
 パンドラ主が話していたら、その相手が裏切り者であろうとちゃんとステイする。
 鬼道は破道・縛道共に九十九まで習得済み。二重詠唱どころか高速多重詠唱という技術を開発している。早口言葉は得意。
 本来、五龍転滅は霊脈を利用するが、エキドナの助言を受けたパンドラ主の助言によって、パンドラ主が垂れ流した霊圧を利用した使い方が出来るようになっている。いつでもその使い方をして良いと言われており、また不快発言と同時に霊圧を解放してくれたので、撃つべきだと判断した。
 霊圧に負荷を掛ける『紫のリボン』を髪紐にしている。
 東仙は殺す。

 ○朽木不老不死
 斬魄刀:常世丸(とこよまる)
 解号:剄れ(くびきれ)
 一つか二つ上の次元から斬撃を放つ斬魄刀。1次元(直線)上で空間が断絶され(線が離れ)ていようと2次元(平面)上から見れば地続きの空間に過ぎないように、2次元(平面)上で空間が断絶され(平面同士が離れ)ていようと3次元(立体)上から見れば地続きの空間に過ぎないように、3次元で空間が隔てられていようと地続きの空間のように構わず斬る事が出来る。
 簡単に言えば、次元断層含めてあらゆる防御無効の刀。ただし、刀身に次元バリアのようなものを纏っている訳ではないため、側面から強力な攻撃を叩き込まれるなどしたら折れる事もある。また、たとえば強酸のような触れたらアウトの能力があれば、それに対しても相性は悪い。(ただし、霊圧によるゴリ押しを考慮しない場合)
 何者にも邪魔されず、ただ斬るためだけの刀。鞘伏と似ているとか言ってはいけない。

 斬撃が飛ぶ訳でもなく、射程は刀身が届く範囲でしかなく、通常刀身が相手に触れる時は始解せずとも斬れるので、今回のような場面以外ではあまり意味はないと本人は思っている。むしろ、鍔迫り合いが出来ないので邪魔とすら思っているかもしれない。
 ルキアを取り返す時に藍染の腕ごと千切って奪い返した。
 実はパンドラ主が帰った後に元柳斎に対して「随分と腑抜けたなァ、オイ」と喧嘩を売りにいって修羅場になりかけた。

 ○藍染惣右介
 警戒度は元柳斎≧パンドラ主≫卯ノ花≧不老不死>更木。パンドラ主より元柳斎の方が若干警戒度が高いのは強さというより話の聞かなさを考慮して。更木や他の者を差し置いて初代のメンツが上位を占めているのは、パンドラ主による初代のネガキャンを受けて。
 裏では大体原作通りに進んでいたが、雛森がいない影響でいくつか名言が不発。虚圏に逃げる際にもあまり余裕がなかったので、「私が天に立つ〜」も不発した。自身を兄のように慕っていた冬獅郎に向けて「憧れは〜」は言ったかもしれない。
 パンドラ主を前にしてかなり饒舌に喋っていた。途中、完全催眠が霊圧差でもなく謎に弾かれるという本来ならあり得ない事態が起こったが、今の段階で下手につつくべきではないと判断して自語りを続行した。
 最後はかなり危なかった。(隊長クラスが一発で戦闘不能になるレベルの攻撃✕数十)
 安いもんだ。腕の一本くらい……。

 ○東仙要
 パンドラ主が途中で出てきたり、藍染がヘイトタンクになってくれたので助かった人。
 出来るだけ話さないようにして気配を消していた。

 ○市丸ギン
 藍染がヘイトタンクになってくれたので助かった人その2。
 飄々としているが、当たり前のように九十番代を詠唱破棄してくるような奴は普通に怖い。話が通じなさそうな奴も怖い。
 
 ○狛村左陣
 原作とは違い、ルキア処刑の場に居合わせた。ルキアを連れて逃げた恋次を追いかけ、その後双極の丘に戻ってきた。反膜で3人が逃げようとした時、本当なら東仙に向けて色々と言いたかったが、それよりも攫われそうになっていたルキア優先だったので東仙は放置された。
 原作と少し流れが変わったので、鉄笠は被ったまま。ただし、どうせ空座決戦あたりで壊れるのでそれほど大きな意味はない。
 
 
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