転生者『虚飾の魔女』(なお中身) 作:白金の絹糸
後半は日常回です。
乱菊が限定解除の許可を取ってくれたおかげか、他のところでも大体は決着がついたようだった。残っているのは……ルキアと一護の二人。
手こずっているようだし、手伝いに行こうかな。今度はちゃんとやり過ぎないように注意して。
「どうやら、一筋縄ではいかない相手のようですね」
「あァ? なんだ、テメェは」
一護と戦っていたのは、青い髪でガラの悪そうな男破面。
「なるほど、卍解したあなたと拮抗する実力ですか。ようやくまともそうな相手が現れて安心しました」
「勝手に割り込んできて好き勝手言ってんじゃねぇぞ、死神」
「申し訳ありません。しかし、彼は調子が悪そうですから。あなたは万全の相手と戦う事を喜びとするタイプでしょう? よく似た知り合いがいるので分かります」
相手も傷を負っている事から良い勝負をしていたのだろうが、一護はバテているのか疲れているのか調子が悪そうだ。
まぁ、ともかくとして卍解した一護は白哉と同じぐらいの実力だったのだ。白哉は隊長を務めるぐらいの実力はあるので、それと同程度という事は敵の中でも主力だろう。
「おや? ルキアは……ああ、深手を負ってしまったのですね。桃か勇音に……」
「はいっ、隊長!」
「あぁ……良いところに来ましたね。ルキアの治療をお願いします」
「分かりました!」
びっっくりした!
いつの間にいたの? 霊圧感知ちゃんと働いて?
「選手交代といきましょう。あなたも構いませんね?」
「俺は……」
「無理はすべきではありませんよ。死ぬまで戦いたいと言うならば、止めるつもりはありませんが」
「……アンタに任せる」
最近は見かけたら声をかけながら近付いてくるから忘れていたが、そういえば桃は気配を消して近付く達人だった。
まぁ、それは良いとして。
「では、私がお相手をしましょう。ですがその前にいくつか……」
「テメェから殺してやるぜ!」
「その前にお話が出来れば嬉しいのですが」
うーん、ダメそう。不老不死なら戦う前の話ぐらい聞いてくれるのだが。
「シャリオ」
「ッ!!」
ひとまずはシャリオを一発。
「なるほど、
さっきの破面もただのシャリオなら耐えていたから大丈夫だとは思っていたが、この破面はただ耐えるのではなく虚閃で相殺するという器用な真似をしてみせた。
やっぱり実力もありそうだし、ヴァストローデかな? そうなると幹部とか?
『この程度ではなんとも言えないね』
それはそうだけども。
「素晴らしい技ですね。さぞ鍛練を重ね……一つ気になったのですが、虚も鍛練をするのでしょうか? それとも魂魄を取り込む事でのみ強くなるのでしょうか?」
今ふと思った。
虚って訓練みたいな概念あるのだろうか。普通の虚にはなさそうだが、破面になって知能が上がったりしたらもしかしたらするのかな、とか思ってみたり。
「余程死にてぇらしいな!」
今度は刀を抜いて向かってきた。
「エル・シャリオ」
仕方がないので、思い付きぶっつけ本番。
普段使っている人を一人呑み込むぐらいの範囲から、さらに範囲を絞って指一本分ぐらいの太さに。イメージとしてはジワルドが近い。ただし、威力は段違いだ。
ピュン、ピュンと。
圧縮された分、速度も上がった光は破面の身体を容易く貫いた。
「ぐォおああッ!!」
しかし、止まらない。虚なら再生能力があるし、この程度は効かないのだろうか。
『虚は破面になると特有の超速再生を失うという事が分かっているよ』
そうなの?
危ない、危ない。この細エル・シャリオ結構ファインプレーじゃん。
「エル・シャリオ」
「ああアアッ!!」
という事で追加で四条。今度は四肢を貫いた。
支えを失ったように、地面へ転がる破面。
これでちょっとぐらい大人しくなってくれるか、虚圏に帰ってくれると助かるのだが……。
「
倒れたまま腕を上げたかと思えば、さっきの虚閃とは比べ物にならないぐらいの威力の虚閃を放ってきた。
背後には桃やルキア、一護。そして周囲は民家などの建物多数。このままでは洒落にならないぐらいの被害が撒き散らされる。
ちょっとマズい。完全に相殺する威力の計算お願い。
『全く。この程度は自分で出来るようになってほしいものだけれど』
イマジナリーエキドナが翳した手に重ねるように、詠唱する。
「──エル・シャリオ」
街中で使うような威力・範囲ではない星の光と、破面の放ったエネルギーが衝突する。
軌道が変わって周囲へ被害を出すような事もなく、完全に正面衝突した二つの光は次第に収束していった。
あっぶなー……。
「このまま暴れられるのは、少し困りますね」
勢い余ってやってしまう可能性が少なくなったとはいえ、この感じで暴れられると周辺がめちゃくちゃになってしまう。大きな目で見たら魂魄バランスの方が大事かもしれないが、だからといって街を壊されるのを黙って見ている事も出来ないので。
「残念な事に話も通じない様子ですし」
「離しやがれッ!」
首根っこを掴んで上空に飛び上がる。
空なら多少暴発してもまだ大丈夫だし。
「虚圏に帰って頂けますか?」
「クソッ!! 殺すッ!!」
うーん、ダメそう。
「では、私の方で」
「殺すッ!!」
「『あなたがここにいるはずがない。あなたは不利を悟って虚圏に帰った』のですから」
「ころ──」
はい、完了。
権能使っちゃったけど、仕方ないよね。
エル・シャマクで意識奪って転移で虚圏に送り返すとかでも良かったが、それだとまたこっちに来そうだし。本人の意思で帰ったって事にする方が丸く収まるだろう。
勝てない相手からは逃げる方が虚として自然だし。事実、これまでのメノスとかもそんな感じばっかりだったから。
自然な方に戻しただけ、戻しただけ。
「アイツは……どうなったんだ?」
「彼は虚圏に帰りました。私には敵わないと悟ったのでしょう」
下で待っていた一護に事の顛末を報告。
「ルキアは大丈夫でしたか?」
「きっちり完璧に治しました!」
「ご心配をお掛けしました」
「それは良かったです」
ルキアも大丈夫そうだし、ひとまずは乗り切ったって事で良いかな。他のところも戦いは終わったっぽいし。
「虚飾隊長……破面は虚圏に帰ったんですか?」
「ええ。恋次、あなたも無事で良かったです」
「というか、何で寝間着なんスか……って、まさか義骸に入ったまま……?」
「ちょうど着替えたところでしたから。現世なのですから義骸に入っているのは当然でしょう?」
「っスか……」
という事で一件落着。
その後にネムや勇音とも合流して、破面は無事に撃退という事になった。
▼△▼△▼△
あの一件以降、襲撃は全くなかった。というか、破面の一体も見なかった。偵察ぐらいはしに来ているかと思ったが、それもなかったらしい。
「さあ、夏梨。行きましょう。今日は憎き中学生との勝負の日です」
「すぐ行く!」
インターホン越しに元気な声が返ってくる。
やる事もないし、せっかくだからサッカーに手を出してみた。手というか足だけど。
で、憎き中学生とは何かというと、少し前に夏梨が友達とサッカーをするためにグラウンドの予約をしていたらしいのだが、中学生のグループが不当に占拠してきたというのだ。私はその場にいなかったが、話を聞いたところ最終的にその中学生グループとはサッカーで勝負をつける事になったのだとか。
相手は中学生であるからして、小学生グループである夏梨たちだけでは厳しいという事で助っ人に名乗りを上げたのだ。ついでに桃も。
まぁ、ちゃんと手続きを踏んでいるのが夏梨側である以上、大人を通せば中学生側も引き下がるしかなくなるとは思うのだが、子供同士の戦いだ。そういう正論も野暮というものだろう。
『その戦いに大人が混じるのは野暮ではないのかな?』
だまらっしゃい。
「マネージャーの二人はおにぎりを用意してくれているようですよ」
「えー? そんなのいいのに」
「彼女たちも張り切っているのですよ」
ちなみに、マネージャーはネムと勇音の二人である。やる事もないからと私についてきたのだ。
そして、いざ勝負の時。
「ゴールは桃が守りますので、あなたたちは思う存分攻めてください」
「「「おー!!」」」
桃はゴールキーパー、私はディフェンダーだ。
さすがに私や桃がガツガツ攻めるのは違うという事で。まぁ、ドリブルスキルがないだけとも言うが。
グラウンドには、思ったよりも人が集まっていた。中学生ぐらいの男子がいっぱい。
中学生グループはユニフォームで格好を統一しているし、結構本格的なチームなのかもしれない。審判役の大人とかいるし。君たち、ちゃんと事情説明した?
そんな事を考えているうちに試合開始のホイッスル。
開始直後に相手チームが夏梨にスライディングでファール。夏梨は膝に怪我をした。
乱闘か? おい、乱闘か?
「褒められた行為ではありませんね。仮にも中学生と小学生。男子と女子という体格差があるのです。真剣勝負の場である以上、手加減をしろとは言いませんが、そういったラフプレーは控えるべきでしょう」
「なんだよ、負け惜しみか?」
「…………。審判、タイムを」
かなりカッチーンときたが、それよりも今は夏梨の怪我だ。
「どうですか、勇音?」
「すみません……回道は魂魄の治療は出来ても器子の肉体には……」
「そうですか。仕方ありませんね」
一応、四番隊の勇音に診てもらったものの、言われてみたらその通りだ。尸魂界と現世ではそもそも身体の構成自体が違うのだから、尸魂界の技術が現世にも適用出来るわけではない。
「痛いの痛いの飛んでいけー」
治癒魔法。
見た目は回道に似ているが、霊子ではなく器子でできた身体にも効果がある。というか、むしろそっちの方が本命だ。リゼロ世界は霊子か器子のどちらかでいえば、現世と同じ器子でできた世界だ。その世界の技術なのだから、当然といえば当然。
「すごい……傷が」
「痛みはありませんか?」
「うん……大丈夫」
「他の方たちには内緒ですよ」
驚いている夏梨の膝に手を置く。
魔法の光は手のひらで覆って見えないぐらいに抑えたが、このまま手を離すと中学生チームからすると傷が一瞬でなくなった怪奇現象だ。
「勇音。何か覆うものはありますか?」
「あっ、はい!」
さすがはマネージャー。用意されていたガーゼで傷があったところを覆って処置完了。
と、そういえば桃が大人し──。
「あたしにボールを回してください」
「え? でも雛森さんってキーパー……」
「回してください」
「あっ、ハイ」
あ、全然大人しくなさそう。
それはそうと夏梨の友達怖がらせるのやめてね?
そして試合再開。
ボールはゴールへと回され、桃はゴール前からロングシュートを決めた。
「態度」
あちゃー。
そこからは桃の蹂躙劇だった。
夏梨たちも実力はあるから、フィールドでは一見拮抗した試合が繰り広げられているが、一度シュートが打ち込まれれば、それをキャッチした桃からのロングシュート。点差はどんどん開いていった。
「お疲れ様です!」
「試合は記録しておきました」
マネージャーの二人が出迎えてくれるが、相手は0点なのに対して、こっちは10点以上。
なんか途中から可哀想になってきた。
「虚飾隊長、虚の反応です」
「シャリオ」
この場には相応しくないので、ネムが報告してくれた虚には早々に退場してもらって。
試合後にはネムと勇音が作ってくれたおにぎりをみんなで食べた。
楽しい一日だった。
○グリムジョー・ジャガージャック
パンドラ主がいたばっかりに、十刃初登場の場面にも関わらずボコボコにされてしまった。
虚圏に帰った後は大体原作通り東仙に腕を斬られ、十刃の地位も剥奪された。
○東仙要
命令違反であるし、連れ戻すべきではあるが、現世には現れなかった。というか、パンドラ主がいる状況では行けなかった。
○パンドラ主
当たり前のように夏梨とサッカーをしている。ドリブルスキルはないので反射神経ディフェンスで勝負。
襲撃があった後、一応元柳斎に報告したが、一護の戦闘能力にムラがあるせいで十刃の戦力は過大評価された状態で伝わっている。
○雛森桃
超次元ロングシューター兼キーパー。
その気になったら相手のシュートは必殺技『ムゲン・ザ・卍禁』で止め、ゴールからロングシュート『五龍転滅シュート』を放つ。