転生者『虚飾の魔女』(なお中身) 作:白金の絹糸
オリジナル破面注意です。
藍染惣右介が尸魂界と戦うために用意した戦力は大きく分けて三つ。
一つは、数を用意した汎用的な戦力群。
一つは、山本元柳斎重國の炎を封じるために用意した、特化型改造破面ワンダーワイス・マルジェラ。
そしてもう一つ。
「名を聞かせてくれるかい。新たな同胞よ」
尸魂界の想定よりも早く、完全に覚醒した『崩玉』によって新たな破面が産声を上げる。
「アール……ベルティ……」
顔すら隠れる純白の長髪、その奥から発せられたのはか細く高い少女の声。
「アールベルティ……レオーニエ……」
小柄な身体は床に座り込みながら、純白のベールの奥から僅かに見える隙間。真紅の瞳が覗いていた。
「歓迎しよう。アールベルティ・レオーニエ」
藍染惣右介が用意した戦力、最後の一つ。
虚飾パンドラの高エネルギー砲および隕石を封じるための特化型改造破面アールベルティ・レオーニエ。
尸魂界との全面戦争への準備は、着々と進んでいた。
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尸魂界との通信用大モニターがあるネムの宿に私たちは集合した。織姫に関わる事であったため、先遣隊のメンバーだけでなく一護も一緒に。
「あー……おう、2ヶ月振りぐらいか?」
そして、モニターに映ったのは元柳斎ではなく不老不死だった。
「大婆様!?」
「おや、どうしてあなたが?」
「いや、なんつーか……」
紫ツインテールに眼帯の相変わらずのスタイルだが、どことなくいつもの覇気がない。
「あン? 分かってるから黙っとけや、ハゲ!」
なんか奥から元柳斎の声が聞こえた。
「あー、まァ、アレだ。ルキアと井上織姫がこっちに来てただろ? 九番隊のとこで訓練してるっつーからちょっかい掛けてやってたんだがな。アイツが現世に戻るのを最後に見送ったのがアタシでな」
「井上が現世に……? どういう事だよ、ルキアの大婆ちゃん……!」
そっか、個人的な連絡はきたが、一護たちにはまだ知らされてなかったのか。
「護衛で付いていった奴が言うにはな、アイツは断界で破面に拉致されたか殺されたらしい」
「殺され……っ」
「お、大婆様! まだ殺されたと決まった訳ではないのは……」
「だから拉致されたか殺されたかって言ってるだろ。生きてるかどうかは知らねェよ」
「貴様はもう少し言い方というものを考えんか!」
「だったら最初からテメェが言えやボケが!!」
あ、元柳斎も出てきた。
「ともかくじゃ。断界で井上織姫は消えた。その事実を伝えるために繋いでもらった」
「いつもよりもしおらしいではありませんか、不老不死。あなたも何か思うところがあるのでは?」
「まァ、アタシが付いていってたらその破面もぶっ殺せたからな。たかだか最下級大虚の群れなんざどうでも良いと思っちまったのが失敗だったわ。結局のところは護衛の奴が雑魚だったのが悪ィんだが、コソコソしか出来ねェ野郎の策にしてやられたのもムカついてな。今すぐにでも殺しに行きてェところなんだが」
「ああ……不満を溜めていただけでしたか」
まぁ、確かに大した繋がりもない織姫がどうなろうと気にしなそうとは思ったが。普通にしてやられた事にムカついていただけらしい。
「……井上を殺すためだけにこんな大掛かりな事をする訳ねぇ。きっとわざわざこんな事をしたのは井上の力か何かに目を付けたからだ。そうだろ!?」
「確かに、儂らも拉致されたか殺されたか、可能性で言えば拉致された可能性が高いと睨んでおる」
「だったら、助けに……!」
「ならぬ」
「なっ!?」
「こうして事を起こした以上、藍染らは何らかの方法で既に戦闘準備が整っている可能性がある。これより始まる戦いにはお主らの力も必要じゃ。よって、勝手な行動も犬死にも許さぬ」
あらら。不老不死のリカバリーで出てきたのかと思えば、普通に元柳斎も険悪な雰囲気作ってるし。
一体何のために出てきたのやら。
「好きにさせてあげれば良いのでは?」
「なんじゃと?」
「確かに、死んでしまう可能性は十分にあり得ますが、それでも行きたいと言うならば行かせてあげるべきでしょう。彼は死神代行。私たちからすれば業務を代行してくれている訳ですから、これぐらいの融通は利かせても良いと思いますよ」
「パンドラ……」
一護が織姫をどう思っているのかは分からない。単純に友達なのか、あるいは好き同士なのか。
どういう関係にしろ、命を懸けて助けたいと思っているならば、それを止めるのは野暮というものだろう。
「ならぬと、言っておるじゃろう」
「老人は頑固で敵いませんね」
「貴様……」
「オイ、そのガキ行かせるならアタシを行かせろや」
「貴様は引っ込めと」
「ンだと!? テメェが来させたんだろうが!! ぶっ殺すぞ!!」
「儂が間違っておったようじゃな。貴様のようなたわけを連れてきたのは」
「はい殺す!! テメェこのハゲ表に──」
ブチッ。
あっ、切れた。
しーん。静寂。
「……どうするんスか、これ」
「そうですね。一護」
「あ、ああ」
「助けに行きたいというならば、助けに行っても良いのですよ。あなたがしたいように、自分の心に従ってください。後の事は適当に誤魔化しておきますので」
「悪い……ありがとう」
まぁ、どうなるかは分からないが、ここは行かせてあげるのが正解だろう。
「……虚圏への行き方を教えてくれねぇか?」
「確か、喜助に虚圏への道を作らせていると言っていましたね」
「分かった」
そうして一護を見送り。
そこからさらに少しして、一旦尸魂界に戻って来いという指令が下った。
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「虚圏へ行かせて下さい! お願いします!」
「お願いします!」
尸魂界に戻ってきてから少しして、ルキアと恋次の二人が突撃してきた。
「そう言われましても、私には虚圏への道を開く権限はありませんよ?」
「そ、そうではなく! これはなんというか……」
「筋を通さないと、みたいな話ッスよ」
「なるほど、筋……」
わー、真面目。
そういうのは普通黙って行かないかね。私だから良いものの、他の隊長とかに言ったら絶対止められるし。
「構いませんよ。しかし、九番隊のルキアはともかく恋次は六番隊の副隊長でしょう? 何か白哉を誤魔化す手段は考えているのですか?」
「朽木隊長には許可をもらってきました」
「そうでしたか。それは安心ですね」
白哉ってこういうの許可するんだ。ちょっとびっくり。
「ああ、交換条件と言ってはなのですが、彼女を一緒に連れて行ってもらっても構いませんか?」
「彼女?」
「ええ。そろそろ戻って来ると思いますよ」
「おう、斬魄刀取ってきたぞ」
と、戻ってきたのは鞘に収まった斬魄刀を肩に担いだ不老不死だ。
「お、大婆様!?」
「ルキアか。どうした?」
「あ、えっと、虚飾隊長に虚圏に行く許可を……」
「オマエも行くのか。奇遇じゃねェか」
モニター越しにも行かせろと言っていた通り、不老不死は虚圏に突撃するつもりなのだ。まぁ、事実はどうあれ本人はコケにされたと思っているので仕方なし。一応護廷十三隊とは関係ない立場だから自由に動けるし。
護廷十三隊時代に自由に動いていなかったかと聞かれたら普通に動いてはいたが。
「せっかくですから一緒に行ってきてはどうですか?」
「こ、心強いです……」
「ッス……」
なんか二人は乗り気ではなさそうだが、安全的にも不老不死と行った方が良いと思う。直接守ってくれるかはともかく、強い敵は担当してくれるだろうから。
「それでは、少しだけアドバイスを。あなたたちがどのような想いで彼らを助けたいと思っているか、私には分かりません。ただ、引き際は見誤らないように。命を懸けるにしても、時や相手を見誤らないように。気を付けてくださいね。応援しています」
「「はいッ!!」」
「それと不老不死、あなたは破面を殺さないように気を付けてください。恐らくヴァストローデもいますが、外見での判断は難しいですから」
「おー、気を付けるわ」
「本気で気を付けてください」
こんな感じで三人を見送って少し。一番隊隊舎で隊首会が開かれる事になった。
「行きましょうか、桃」
「はいっ! おぶります!」
副隊長も一緒にとの事だったので、桃と共に一番隊隊舎へ向かった。
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一番隊隊舎。
「浦原喜助により、虚圏への道は開かれた。これより幾名かを虚圏へと送る」
「それなら、わざわざ一護たちを突き放すような言い方をせずとも、共に虚圏に向かえば良かったのでは?」
「黒崎一護は鏡花水月の解放の瞬間を見ておらん。使うならば、本命じゃ」
「…………ああ、鏡花水月……」
そういえばあったね。鏡花水月の完全催眠。
普通に忘れてた。でも、それならそうと言ってあげれば良いと思うのだが。
「『転界結柱』により、
「転界結柱」
「お主はおらんかったな。後で誰ぞに……いや、お主にはこのまま虚圏に向かってもらう。全てが終わった後に涅辺りが教えてやっとくれ」
「私の扱いが雑過ぎるのでは」
「藍染が現れるとすれば、虚圏か空座町のどちらかじゃ。お主と儂で二手に分かれる事が何か不満かの?」
「何が不満か分からないほどボケましたか。そもそも戦力の分け方には何も言っていませんが?」
「早急に話を進めようとする儂の気遣いが分からんか」
コイツ、わざとやってるな。
まぁ、いいや。不老不死たちを送り出したばかりではあるが、どうせ行くなら早い方が良いだろうし。
というか、選択肢が虚圏と空座町の二つで、一護を虚圏に行かせずに本命に当てようとしたって事は、本命は空座町なのね。状況が変わったら虚圏から空座町に行けば良いだけだからべつに良いんだけど。
で、結局虚圏には私と烈、マユリ、剣八が行く事になった。
烈たちは副隊長も連れて行くらしいが、桃は空座町側に行かせる事にした。要と戦いたがっていたし、本命が空座町ならそっちに現れる可能性の方が高いだろうから。
一応みんなには改めて破面は殺さないように注意を促しておいた。十刃っていう幹部的なものがあるなら、それこそヴァストローデが十体ぐらいいる可能性がある。一体か二体ぐらいならまだセーフかもしれないが、さすがに十体も倒してしまったらヤバいだろうから。
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私たち四人の隊長はそれぞれ別の
桃とは別行動なので一人で行く事になるかと思ったが、一人同行者が増えた。
「よ、よろしくお願いします……」
「ええ。よろしくお願いしますね、花太郎」
山田花太郎。四番隊の七席だ。回道の腕は確かだと聞いている。
「あの、ぼく瞬歩は使えなくて……」
「大丈夫ですよ。私も瞬歩はそれほど得意ではありませんから」
「虚飾隊長が……?」
「ええ。人には得意不得意がありますから。得意なものを伸ばせば良いのですよ」
そんなこんなで花太郎と二人で虚圏へ到着。
やっぱり荒れ果てた世界だ。『王鍵』とか霊王宮とか色々と目的は持ってやっているのだろうが、この環境でよく生活出来るものだと思う。虚ならともかく、尸魂界での生活に慣れていたら、こんなこんな場所での生活とかやってられないと思うのだが、よくやるものだ。
「あっ、こっちの方に霊圧が……」
花太郎について行くと、ギョロ目の破面が倒れていた。
バッサリと身体の正面に切り傷があるが、まだかろうじて息はありそう。
「治療をお願いします」
「こ、これを!?」
「ええ。命が繋がればそれで構いません。意識は奪っておきますので────エル・シャマク」
あんまり他の傷はなさそう。
という事は不老不死かな。出会い頭に一撃みたいな感じで。
かろうじてではあるが、言いつけを守っているようで何より。
そうして花太郎の治療を待っていると。
『聞こえるかい。侵入者諸君』
「こ、これって……」
「天挺空羅ですね」
頭の中に声が響くような独特の感覚は縛道の七十七である天挺空羅によるものだ。
天挺空羅によって、惣右介の声が聞こえてくる。
『ここまで十刃を陥落させた君達に敬意を表し、先んじて伝えよう』
十刃を陥落? まだ一体も倒してないんですけど……。
『これより我々は現世へと侵攻を開始する』
やっぱり空座町が本命なのね。
まぁ、それは良いんだけど。他のみんなちゃんと分かってるよね? 大虚は倒しちゃダメってみんな分かってるよね?
ただの戦闘不能を陥落させたって表現してるなら良いのだが。心配になってきた。
私の心配を余所に、惣右介の放送は続く。
どうやら織姫の力がすごいもので、そのおかげで織姫が餌となって一護たちをおびき寄せたとかそういう話らしい。
たぶん織姫の能力とか関係なく一護たちは助けに行ったとは思うが。
『更にはそれに加勢した四人もの隊長を、この虚圏に幽閉する事にも成功した』
幽閉。
何か罠でも張っているのだろうか。黒腔に何か細工するとか。
まぁ、最悪転移があるからどうにでもなるとは思うけども。さすがに転移に対策してたりはしないだろうし。
『君達は全てが終わった後でゆっくりとお相手しよう』
尸魂界の戦力が半減したとか空座町を消し去るのが容易いとか色々と言っていたが、それ以降はうんともすんとも言わなくなった。
……とりあえず破面の無力化だけやっとくか。
○パンドラ主
気付いたら色々と場面が進んでいて、結構置いていかれている。
転界結柱などを話した隊首会は開催されていたが、その時には現世にいたため不参加だった。
ちなみに花太郎に治療させたのはゾマリ。
○雛森桃
本当はパンドラ主と一緒に虚圏に行きたかったが、それよりも東仙を殺す事を優先した。
○朽木不老不死
石田雨竜の代わりのような位置に収まった。
ザエルアポロ・グランツは半殺しにしたし、海燕殿回想バフのないルキアが負けそうだったので横取るようにアーロニーロ・アルルエリも倒したし、進行方向上にいたのでゾマリ・ルルーも轢き倒した。
ちゃんと殺さないように気を付けている。
○藍染惣右介
色々と準備している人。パンドラ主の認識改変?のような能力への対策も一応考えている。
パンドラ主と元柳斎を分断出来たので、ほとんど理想的に事が運んでいる。初代組三人を虚圏に幽閉成功。
○破面戦
不老不死が関わったところ以外は大体原作通り。