転生者『虚飾の魔女』(なお中身) 作:白金の絹糸
雛森視点です。
今さらですが、アンチ・ヘイトタグを追加しました。
雛森桃は鬼道の達人である。
これは自他ともに認めるところであり、護廷十三隊においては並ぶ者のいない鬼道の使い手である。その実力は隊長格を含めて誰もが認めるものであり、戦闘能力に限っては隊長クラスであると認識されていた。
ゆえに、雛森桃は空座町での決戦において、隊長不在の中副隊長のみでその場に立つ事を許された。
場所は空座町。
藍染惣右介一派を迎え撃つために展開された陣形の中、桃は一人九番隊隊長の名代として佇んでいた。
「飛び出すなよ、雛森」
「分かってる。あたしは隊長の代わりにここにいるんだから」
幼馴染の日番谷冬獅郎の軽口に返しながら、正面を見据える。
藍染一派が虚圏からこちらへ現れてすぐのこと。総隊長、山本元柳斎重國によって、藍染惣右介、市丸ギン、東仙要の三人は炎の檻に閉じ込められた。
桃にとって、一番の目的は東仙要を抹殺すること。
しかし、その東仙が炎に囚われてしまった以上、それは後回しとなった。
かくして、炎に囚われなかった藍染の部下、
桃の相手となったのは十刃の一人、金髪で褐色肌の女破面の従属官である三人。冬獅郎が十刃と戦い、そちらに加勢しようとしたが、従属官と戦っていた松本乱菊が不利であったため、その援護に向かったのだ。
「助かったわ、雛森」
「これぐらいお安い御用です」
三人の破面。
速度は追えないほど速い訳ではなく、霊圧でも負けていない。
負ける要素はなかった。
「縛道の六十一──
「縛道の六十一──六杖光牢」
「縛道の六十一──六杖光牢」
無駄撃ちを避けるために、まずは縛道で拘束する。
「ぐっ……」
「これは……っ」
「何だこりゃ……!!」
まだ先が控えているため、必要最小限の力で。
消費だけを考えるならば、縛道と破道をそれぞれ使うのと破道を二回使うのではそれほど大した違いはない。しかし、効率よく相手を倒すならば前者の方が有用だ。
ものにもよるが、縛道による拘束は相手を無防備にするものがほとんど。無防備、すなわち防御姿勢を取らせないという事だ。
「破道の十二──
「破道の十一──
「破道の六十三──
伏火で霊圧の網を相手の体にまとわりつかせ、物体を伝う性質の綴雷電と雷の砲撃である雷吼炮を練り合わせて攻撃する。
綴雷電によって限りなくロスがなくなった、いわばゼロ距離で撃つのとそう変らない威力の雷撃が直撃した。
「え、えげつないわね……」
「そうですか?」
黒焦げになって墜落していく三人の破面を見ながら、乱菊は呟いた。
「鬼道を組み合わせただけですよ」
「それが出来るのが一体どれだけいるか……」
「シロちゃんの方に加勢に行きましょう、乱菊さん」
「……ええ、そうね」
冬獅郎が戦っているのは十刃。従属官などよりもよほど強敵だろう。
しかし、共に鍛練した冬獅郎が負けるとは思っていない。ゆえに、桃がするのは援護。
「縛道の六十二──
「破道の十二──伏火」
「破道の九十一──千手皎天汰炮」
伏火は低位の鬼道でありながら、桃が愛用している破道の一つだ。低位であるため消耗が少なく、それでいて他の鬼道と練り合わせやすい。
百歩欄干は霊圧でできたいくつもの棒を放つ縛道。その棒に伏火の網を付ける事で、現世の漁で使われるような投げ大網に。さらにその網に千手皎天汰炮の光弾を練り込んだ。
「──!!」
「縛道の四──
さらに、百歩欄干の棒の一部を這縄による霊圧の縄で手元に繋ぎ、引く。
触れただけで炸裂する、逃げ場のない全方位攻撃。並の虚ならば哀れな魚のように絡め取られ、塵も残らない。
大網が敵を絡め取る、その寸前。破面を中心として、まるで津波のような大量の水が現れた。
直後に光が炸裂する。それは直接破面に触れたのではなく、水流の壁によって受け止められた。完全に威力を殺された訳ではない。しかし、倒しきれるほどの威力でもない。
それで良い。桃の役割は冬獅郎の援護。
全方位に意識を向けさせたこの瞬間、敵の守りは薄くなる。
隊長の下で共に訓練に励んだのだ。たとえ初めて見せる鬼道の組み合わせであろうと、タイミングは合わせられる。
冬獅郎の斬魄刀が金髪の破面を貫いた。
そして直後、その破面を巨大な氷が包み込んだ。
「さすがの連携ね」
「隊長のご厚意で訓練出来たんですから、これぐらい当然です」
「そ、そうね……」
まずは十刃の一つ。
だが、息をつく暇はない。
黒腔が開いた。
向こう側から現れたのは、二つの影。
白い長髪のせいで顔も見えない一人と、それに引っ張られる形で現れたもう一人短い金髪の破面。
そして、少し遅れてもう一つ、たった一つの目のような部位があるだけの巨大な虚。
その巨大な虚は藍染たちを取り囲んでいた炎の檻を吹き飛ばした。吹き飛ばしてくれた。
「やっと出てきた」
「雛森……?」
「やっとやっとやっと……!!」
「あ、ちょっと!」
瞬歩。
倒すべき相手、その目の前に。
「……雛森か」
「あのまま総隊長の炎で焼き尽くされちゃったらどうしようかと思いました」
一番に反応したのは東仙。
藍染と市丸は、その行方を眺める。
「良かった。本当に良かった。裏切り者を、この手で下す事が出来て」
「九番隊で長く過ごした。その中で最も目障りだったのがお前だ。雛森」
「そっくりそのまま返します」
合図など存在しない。既に戦いの火蓋は切られているのだから。
「破道の九十──黒棺」
「──!!」
超重力を発生させる黒い檻。
藍染と市丸も含め、三人を捕らえた檻は、しかし直後に内側からの力によって破壊される。
純粋な膂力か、あるいは跳ね返すように鬼道をぶつけたか。
「情けないですね。所詮は藍染の金魚の糞」
「雛森ィッ!!」
黒棺を跳ね除けたのは藍染。
藍染に守られた形となる東仙が斬魄刀を抜き、桃へと迫る。
「ずっとずっとずっと思ってました。なんであたしよりも弱い奴が副隊長なんだって」
戦いが始まってから今まで、桃は冷静だった。
東仙への怒りが消えた訳ではない。むしろ、あの裏切った瞬間から時を重ねれば重ねるほど膨れ上がる。
それでも冷静でいられたのは、敬愛する隊長が自分の代わりにとこの戦場に送ってくれたからか。
3対1では不利である事ぐらい、考えるまでもない事で、そしてそれを受け入れないほど子供でもない。
東仙が突進してきた事は桃にとっては好都合。やるなら一人ひとり確実に。
こちらも斬魄刀を抜いて受け、力はそのまま受け取るように後ろに押し出される事で藍染と市丸から距離をとった。
▼△▼△▼△
▼△▼△▼△
「東仙……!」
狛村左陣は東仙要の友である。どう思われていようと、その事を否定させるつもりはない。
この戦い、左陣は東仙の目を覚まさせる事を密かな目的として挑んでいた。
その東仙が炎の檻から解放され、雛森に襲い掛かった。故に、左陣は雛森へ加勢しようと急いだ。
「こちらに来たのかい、アールベルティ。仕方ない。こちらに彼女はいない。少し遊んでおいで」
しかし、左陣の行く手は阻まれた。
白い小さな影が目にも留まらぬ速度で迫っていた。
「…………」
「ぐっ……!?」
白い髪の向こう側に見えた感情を感じさせない紅い瞳が覗く。
直後、伸ばされた手のひらには信じられない程の力が込められていた。
遠ざかっていく東仙の姿を横目に、左陣は地面へと叩き付けられた。
▼△▼△▼△
▼△▼△▼△
「お前に時間をかけるつもりはない────卍解」
本来副隊長が卍解を扱える事は異例。
しかし、仮にも九番隊の副隊長をしていたのだ。その程度、出来なくては話にならない。
「──
直後、視界が完全に閉ざされる。
視界だけではない。霊圧知覚も完全に封じられてしまった。
どんな卍解かなど知りはしない。
だが、卍解した瞬間に相手に能力低下を付与した点から、恐らく冬獅郎のように純粋に攻撃力を強化するようなものではなく、出来る事が増える卍解なのだろう。
脅威ではある。そもそも脅威でない卍解は何かと聞かれても困るところではあるが、東仙の卍解もその例に漏れず脅威となる卍解である事に変わりはない。
視覚は五感の中で最も情報を取り入れる割合が高く、霊圧知覚は死神にとって基本の戦闘技術。それらを封じる効果は強力だ。
だが、甘い。
せっかくそれらを封じたのに、不意を突かれて動揺しているであろう相手に追撃を加えない。
「破道の九十──黒棺」
続いて聴覚も潰されている事に気付いたが、関係ない。
仮に五感も霊圧知覚も全て潰されたとしても、霊圧やその他の戦闘に使う能力を封じられた訳ではない。たとえば霊圧を封じるなんて事をされてしまえばなす術はなくなるが、そんな事にはなっていない。
見えないだけ。分からないだけ。
桃にとっての世界が変わっただけで、周囲の世界は何も変わっていないのだ。
出来るだけ範囲を広く、自分を中心にして黒棺を放つ。
自分も効果範囲に入っているため、桃も黒棺の超重力に晒されるが、回道によって受けるダメージを相殺する。
一秒、二秒、三秒、四秒。五秒。
卍解の効果が解除される気配はない。避けられたと考えるべきだろう。ならば、次の手だ。
「破道の九十一──千手皎天汰炮」
「破道の九十一──千手皎天汰炮」
「破道の九十一──千手皎天汰炮」
「破道の九十一──千手皎天汰炮」
「破道の九十一──千手皎天汰炮」
「破道の九十一──千手皎天汰炮」
上下左右前後、あらゆる方向に光弾を出現させ、しかしまだ放たず待機させる。
「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」
「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」
「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」
「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」
「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」
「“千手の涯、届かざる闇の御手──”」
後述詠唱。詠唱破棄によって発動した鬼道に後から詠唱を付け加える事で威力を強化する技術。
桃の身体の周囲を取り囲む光弾は待機中の砲弾でありながら、触れると炸裂する防壁でもある。予め炸裂の指向性も与えている。遠距離攻撃を仕掛けられたとしても自爆する事はなく、敵の位置を探るヒントになるだけだ。
高速多重詠唱によって本来の詠唱を進めていく。
その途中、左後方の光弾が炸裂した。鬼道によって作り出した千手皎天汰炮の光弾は桃と霊的に繋がっている。霊圧知覚を潰されていようとも、炸裂すれば分かる。
それによって東仙が手傷を負ったかは分からない。だが、卍解が解除されない以上は致命傷ではないのだろう。
詠唱の途中だが、桃は光弾を全方位に放った。東仙がいると思われる左後方には少し多めに、そしてその真反対の位置である右前方にも少し比重を高めて。
鬼道の詠唱は定型文だ。完全に詠唱した方が威力は出るが、同時に構えを取られてしまう。ならば、不意を突く意味でも、この瞬間を狙うのが最良。
暗闇は晴れた。
東仙は桃から見て右前方にいた。狙われる場所から最も離れた位置へ移動したのだろう。分かりやす過ぎる。
「もう終わりですか?」
「ぐっ……雛森ィ……!!」
「無様……無様すぎて腹が立つ。こんなのが副隊長をやっていたらパンドラ様の品格まで貶められる……! よくも今までッ!! よくもよくもよくもよくもよくもよくも──!!」
所有者が死に瀕した時、己の意思に関わらず卍解は解除される。
この場で東仙が卍解を解除する意味はなく、これはすなわち東仙が瀕死である事を意味する。
呆れる程に無様。
その様子が、桃の感情が逆撫でする。
「良いだろう、見せてやる……藍染様が与えて下さった力を……」
直後、東仙の姿が変わる。
顔は目や鼻もない、ただ白いだけの仮面に覆われていた。
「虚化」
「そうだ」
虚の仮面を付けた東仙が、先ほどとは比べ物にならない程の速度で接近し、桃を斬りつけた。
無防備に斬られるのではなく、それを斬魄刀で受けるが、その膂力は先ほどとは全く違う。桃の身体が吹き飛ばされ、墜落。地面を削りながら大きく土煙を上げる。
「破道の九十九!! 五龍転滅ッ!!」
ここは空座町のレプリカ。本来の空座町ほどの霊脈はない。
だが、重霊地とはいえ空座町の霊脈は空座町だけで成り立っている訳ではなく、周囲の町からも流れ込む霊脈によって成立している。今、空座町があった場所にはこのレプリカがある。
本物ではないため空座町ほどの重霊地にはならないし、藍染の目的を考えるとなってもらっては逆に困る。しかし、重霊地とは呼べないが、最低限の霊脈は流れ始めている。
地面を割りながら、複数の白い龍が東仙へと襲い掛かる。
周囲にある地面も建物もレプリカだ。壊れたところで何の問題もない。
飛び上がり、東仙の目の前へと戻る。
「……超速再生」
「お前の回道よりも余程優れた力だ」
五龍転滅によって負った傷は、既に再生していた。
「だったら……再生する暇もなく潰すッ!」
「お前のお陰だ、雛森。お前のお陰で私は目的を忘れずにいる事が出来た。あの女の下についたのも──」
「お前がパンドラ様の事を語るな──ッ!! 縛道の九十九──」
拘束して、再生出来ないほどの密度の攻撃を浴びせる。
そのための縛道を発動しようとした瞬間の事だ。
「お前だけは、私の手で殺そうと思っていた」
東仙の身体が、再び変化する。
「──
全身が黒い毛のようなものに覆われたナニカが、目の前に。
「──ッ!?」
「
視界が反転する。
気付いた時には身体は地面に投げ出され、空を見上げていた。
「げほっ……ぁあ……つ……」
衝撃波のようなものに全身を貫かれたのだと、遅れて理解した。突然の接近は、恐らく破面が使う
反射的に頭を守ったものの、意識が朦朧とする。
全身の骨も内臓もやられた。もはや痛くないところがない。血が身体の奥から上がってくる。
「ははははははは──!! 視える! 視えるぞ! これが空か!! これが世界か!! 雛森、お前の無様な姿もよく視える!!」
回道で身体を治癒し、同時に意識を回復させながら改めて見る。
全身が黒い毛のようなものでできた、細長い手足に虫のような巨大な羽を持った異形。虫のような、ではない。もはや虫そのものを巨大化させたような姿。
気持ち悪い。
嫌悪感。吐き気すら催してしまうほどの。
「終わりだ、雛森」
余裕を見せつけるかのように悠長に降りてきた巨大蠅が、地面に倒れたままの桃を見下す。
目と思われる部分に光が集まる。虚閃の前兆だった。
口は動かさず、地面に投げ出された腕、その指を僅かに動かす。
ここで詠唱すれば、すぐにでも虚閃を放ってくるだろう。だが、自分の優勢を疑っていない今、付け入る隙はある。
回道での治癒は続けているが、仮に全快してもこの状態から逆転するのは不可能だと東仙は考えるだろう。
いくら詠唱破棄であろうとも、既に構えている虚閃の方が発動は早い。斬術や白打で対抗しようにも、やはり虚閃の方が早い。瞬歩による離脱も地面に横たわっている体勢上、現実的ではない。
「ようやく終わる」
桃の指には、霊圧が練り込まれた血液。
ほんの少しだけ地面から指を浮かせ、細く、そして他人が見ても分からない程度に崩した文字を描く。
その文字は──。
──“破道の九十九 五龍転滅”
直後、地面が割れる。
「馬鹿な──」
東仙が離れ、出現した龍により不安定となった足場で桃はゆっくりと立ち上がった。
「詠唱破棄ですらなく鬼道を発動しただと……!?」
「油断した。虚化して虚の力を持ったって事は少し考えれば破面と同じ技を使ってくる可能性に気付けたはずなのに。あぁ、ポンコツ。本当にポンコツ。嫌になる」
一周回って、という感覚だった。
怒りが一周して、逆に冷静になったような。
「こんなのじゃ全然ダメ。パンドラ様の右腕がこんな無様を晒すなんて許されないんだから。取り返さないと」
「
瞬歩。二度目は喰らわない。
先ほどは至近距離まで接近してから放っていたというのに、今回は距離を保ったまま。躱してくれと言っているようなものだ。
どんな威力の攻撃も、当たらなければ意味はない。
動揺しているのかもしれないが、桃からすれば好都合だった。
だが、ソレを視界に入れる度に、精神がひどく逆撫でされる。
「こんなものがパンドラ様の近くにいたと考えるだけで反吐が出る」
「この
怒りが一周回って冷静になったはずだったが、さらにもっと回っていく。
限界だった。
「許せない事は三つ」
これ以上は、限界だった。
「一つ。あたしよりも弱いくせに副隊長の座に居座ったこと」
これまでは冷静でいられた。
「二つ。パンドラ様に尽くすつもりがないのに副隊長の座に居座ったこと」
敬愛する隊長に、私の代わりをお願いしますね、と頼まれたから。
「三つ。何よりパンドラ様を裏切ったこと」
隊長に恥をかかせてはいけないから。
「許さないから、何だ。お前に何が出来る!」
きっと隊長は言ってくれる。
あなたの思うままにすれば良いと。
膨れ上がり、溢れ出す感情を抑え付ける必要はないと。
「『飛梅』──」
「──!」
この戦場で、初めて斬魄刀を解放する。
解号は口にせず。この意味を、知らないはずもない。
「──いくよ」
──いつでも!
斬魄刀とお話しして仲良くなるのが良いと、そうアドバイスをもらってから、ずっと会話を重ねてきた。
刃禅なんて大したものではない。ほんの雑談、その日あったこと、今日やろうと思っていること。まるで友人のように。
「卍解────」
斬魄刀は自身の写し鏡だと言われている。
本当にその通りだ。
ずっと話しかけ続ければ心は通じ合う。そして友人のような関係になってから、力になり続けてくれた。落ち込んだ時も寄り添ってくれた。逆に、鬼道に比べて威力が低いと拗ねる飛梅を何とか宥めた事もある。
雛森桃は、斬魄刀の力を使う事が滅多にない。
そして、雛森桃は鬼道の達人である。
死神の基本である斬拳走鬼には得意不得意があり、斬術が苦手であろうとそれを拳走鬼で補えるならば死神としての業務に支障はない。
雛森桃の事をよく知らない者からすれば、鬼道が得意な代わりに斬術は苦手であるように見えるだろう。
だが、違う。
そもそも雛森桃は始解せずとも刀一振りで隊長クラスと打ち合える。
そして、始解を使わないのは、あくまで卍解が本命だから。『飛梅』と話した内容をより正確に言うならば、秘密兵器である卍解を華々しく魅せるための前座には鬼道で十分だから。
「────『
半透明の羽衣のような紅い炎を身に纏い、雛森桃は宣言する。
「絶対に許さない。絶対に殺す」
天女のような装いを身に纏いながら、ドス黒い感情を隠す事はせず。
尸魂界の敵だとか、そんなものは捨て置いて。
ただ、許せないから殺すのだ。
○雛森桃
卍解出来ないとは言ってない。これまではする必要がなかっただけ。シャウロンはドヤ顔で間違った事を言うので注意が必要である。
戦闘中、急に昂ったり落ち着いたりする。(本人は冷静に戦っているつもり)また、東仙が醜い姿を見せるほど、それを副隊長にしていたパンドラ主が穢されるという意味で精神ダメージを負っていった。
パンドラ主とエキドナほどではないが、全隊士の中でもトップクラスに斬魄刀と気軽にお喋りしている。実は飛梅と一緒にカッコいい卍解披露の方法とかも考えていたりする。
鬼道に思い入れはあるが、飛梅と共有した認識の中では鬼道はあくまで卍解の前座という事になっている。始解をほとんど使わなくても拗ねないように。
鬼道が便利すぎるのがいけない。正面突破から絡めてまで色々出来るし、火力も九十番台の方が高いため、わざわざ始解を使う理由がないとは言えない。斬術も始解しない方がやりやすい。冷静なら本当に色んな手段が取れる。
原作で黒縄天譴明王をワンパンしたような威力の技を喰らえばさすがにかなりのダメージを負うが、少しすれば回道で元通り。
戦闘を通して五龍転滅で地面をボコボコに壊しまくっている。他の者たちが比較的空中で戦っているのもあって、最も物的被害を出している。
限定霊印はつけていないし、『紫のリボン』も外してきているため最初から本気。髪は下ろしている。
地の文が三人称寄りだが、パンドラ主視点のように一人称にすると大惨事になる。
ブリーチ世界では斬魄刀の解号は言葉として発する以外に文字でも代用出来る。
本作の設定では鬼道の詠唱も文字で代用出来る事になっている。ただし、普通に詠唱するよりも制御が難しく手間も掛かるため、この方法を使う者はほとんどいない。
○東仙要
潜入した隊はパンドラ主ファンクラブで自分だけ空気が違うし、上司は自分でやりもしない仕事を取ってきてはめちゃくちゃ押し付けてくるし、三席はネチネチと常々絡んでくるしで恐らく相当ストレスが掛かっていたと思われる。しかもせっかく卍解を初披露したのに頭バンビエッタ過ぎる方法で破られた。
刀剣解放すれば雛森の五龍転滅を正面からやり過ごせるほどの力を発揮するが、まだ相手の切り札が残っている状態で切れる札を全て切ってしまったので、一瞬は優勢になったものの次回でひっくり返される事が確定してしまっている。
○狛村左陣
ことごとくうまくいかない男。双極の丘では東仙に問い正す暇がなく、今回は原作よりもちょっと早くワンダーワイスを連れて来たアールベルティとかいう謎の破面に邪魔されて東仙と戦えていない。
このままうまくいかないのが続けば、原作千年血戦篇での見せ場と見せ場へ続くルートも邪魔されて狼化?ルートを回避出来るかもしれない。
○アールベルティ・レオーニエ
対パンドラ主用に造られた二人目のオリジナル改造破面。
顔を覆い隠す程の白い長髪と、その奥の感情を感じさせない真紅の瞳が特徴。身長はワンダーワイスよりもちょっと低い。ワンダーワイスは通じるかはともかく声を発するが、こちらは声を発する事もしない。
また、ワンダーワイスのような雄叫びで敵の能力を解除したりするような技はないが、その分単純に腕力が強い。普段から力関係はワンダーワイス<アールベルティ。
今のところ藍染に懐いているので、パンドラ主がいるにも関わらず虚圏から現世に来た。