転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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 引き続き雛森視点です。
 前半怪文書注意。




Dedicate To My Dear

 

 

 パンドラ様パンドラ様パンドラ様。

 大好きですパンドラ様。

 頭の先から宝石のような髪、うなじ、首と肩の境界、小さな肩、何の穢れもない白くて綺麗な手、柔らかい肌、温かくて鼓動を聞かせてくれる胸、細い腰。全部、全部、大好きです。

 キラキラと光を反射する髪が好きです。朝、昼、夜、差す光でちょっとだけ色が変わって見えるその髪が好きです。乾いている時と湿っている時で表情を変えるその髪が好きです。起きたばかりで少しだけ寝癖が付いているその髪が好きです。それを指摘すると直してと触らせてくれるその髪の手触りが好きです。おんぶした時に首元に触れるその髪の肌触りが好きです。お風呂上がりの僅かに湿って良い匂いのするその髪が好きです。

 この世のどんな芸術作品よりも美しい顔立ちが好きです。

 目が好きです。じっと見つめたら吸い込まれてしまいそうなその目が好きです。どんな水晶よりも透き通ったその目が好きです。キラリと木漏れ日を反射する目を横から眺めるのが好きです。鼻先が触れ合うぐらい近くから、その瞳の奥を覗くのが好きです。くすりと笑った時に細くなった瞳が好きです。

 まつ毛が好きです。目を伏せた時に影を落とす白金のそのまつ毛が好きです。瞬きと一緒に動くそのまつ毛が好きです。眠っている時にピクピクと動くまぶたに合わせて小さく動くそのまつ毛が好きです。

 口が好きです。話すときの唇の動きが好きです。笑う前に少しだけ力が抜けるその口元が好きです。何も言わずに考え込んでいるとき、無意識に形が変わるところが好きです。

 全部、全部、大好きです。

 うなじが好きです。普段は隠れているのに、髪をかき上げた一瞬にあらわになるそのうなじが好きです。髪に櫛を通した時に、ほんの僅かな隙間から覗くそのうなじが好きです。髪を左右にかき分けた時に晒されるそのうなじが好きです。ほんの少し骨が主張する凹凸が好きです。

 肩が好きです。無防備に晒されるその肩が好きです。羽織の上からでも分かる小さなその肩が好きです。首元から肩へながれていくその曲線が好きです。つい触れてしまった時に手のひらに伝わってくるその温かい肩が好きです。

 二の腕が好きです。僅かに日の下に晒される細いその二の腕が好きです。ゴツゴツさなんて欠片もない、ぷにぷにのその二の腕が好きです。腕を広げた時に脇の下からほんの少しだけ向こう側が見えるのが好きです。

 手が好きです。傷はもちろんタコも何もない綺麗なその手が好きです。白くて細長いその指が好きです。手を合わせた時に絡ませてくれたその指が好きです。温かいその手が好きです。

 胸が好きです。鼓動を聞かせてくれるその胸が好きです。体温を感じさせてくれる温かいその胸が好きです。主張が強すぎないその胸が好きです。柔らかいその胸が好きです。

 背中が好きです。いつも後ろをついていく時に感じる大きなその背中が好きです。それでも触れてみたら思ったよりも小さかったその背中が好きです。背中をなぞったら僅かに感じる背骨の凹凸が好きです。

 腰が好きです。すらりと細いその腰が好きです。普段は羽織で分かりづらいのに腕を回すと感じられるそのくびれが好きです。

 頭の先から足の先まで、全部、全部、大好きです。地面に映る影まで全部大好きです。

 歩き方が好きです。起きたばかりで眠り眼をこすりながら肩を揺らす歩き方が好きです。横に並びながら時々微笑みかけてくれるその歩き方が好きです。お菓子屋さんに向かって心なしか肩を跳ねさせるその歩き方が好きです。一番隊の隊舎へ向かう途中の肩を落としながらの歩き方が好きです。

 何気ない仕草が好きです。ふとした瞬間に左右の手の指を絡ませて遊ばせているその仕草が好きです。微笑んだ時に僅かに傾くその首が好きです。良い事があった時に頬の横で両手を合わせて笑うその姿が好きです。戸惑った時に頬をかくその仕草が好きです。ぼーっとしている時にどこを見ているか分からないその表情が好きです。布団に入る時はピンと身体を伸ばしているのに少ししたら身体を丸めるその仕草が好きです。

 声が好きです。その鈴の音のような声が好きです。耳元で囁いてくれるその声が好きです。内緒話をする時の小さく抑えた声が好きです。お菓子を口に入れたままモゴモゴと話す時の声が好きです。たまに聞こえてくる寝言が好きです。

 パンドラ様パンドラ様パンドラ様。

 全部、全部、大好きですパンドラ様。

 パンドラ様パンドラ様パンドラ様パンドラ様パンドラ様パンドラ様──────

 

 ▼△▼△▼△

 

 雛森桃の卍解『大自在紅梅天女(だいじざいこうばいてんにょ)』は日番谷冬獅郎の卍解と同じく始解の能力が純粋に強化されるタイプの卍解だ。

 始解である『飛梅』は鬼道系・焱熱系の斬魄刀。炎を放って攻撃するシンプルなものだ。それを強化した『大自在紅梅天女』は純粋に強力な焱熱系の能力を持つ。

 

「──梅炎(ばいえん)

 

 七支刀のような形状へと変形した斬魄刀を横薙ぎに払う。その軌道に追随するように、炎が異形と化した東仙へと襲い掛かる。

 

「卍解如きが対抗出来ると思ったか」

 

 響転だろう。背後に回った東仙の異形の爪を刀で受ける。

 刀剣解放と共に東仙の斬魄刀は消え、直接攻撃手段は爪などを用いた体術。

 受け止めた方と逆、空いている爪が振るわれる。

 桃はそれを、素手で受け止めた。

 

「──!?」

紅炎(こうえん)──その程度の攻撃じゃ破られない」

 

 紅炎。身体に纏った羽衣のような炎は桃を守る鎧だ。

 梅炎とは違って攻撃力はない。黒爪はただ止まっただけであり、燃える事はない。

 

九相輪殺(ロス・ヌウェベ・アスペクトス)!!」

「梅炎」

 

 再び至近距離での衝撃波。

 この距離だ。たとえ詠唱破棄であろうとも鬼道は間に合わない。瞬歩でも照準を合わせられる可能性はある。

 だが、その間に刀を一振りするのは造作もない。

 

 炎と衝撃波が衝突する。

 その二つは、完全に相殺された。

 

 刀を一振りする。

 その軌道をなぞるように、紅炎が宙に残った。

 紅炎は桃の身体を守る鎧だが、その炎の形は操作する事が出来る。身体から少し離れてもその場に留める事も出来る。

 よく見ると、その紅炎は宙に文字列を形取る。

 

 ──“破道の四 白雷”

 

 一筋の雷が東仙へと放たれた。

 

「またか……!」

 

 再び、刀を横一閃。

 

 ──“破道の四 白雷” “破道の四 白雷” “破道の四 白雷” “破道の四 白雷”

 

 今度は四条。

 所詮は破道の四番。大した威力ではない。避けるまでもないと考えたのだろう。事実、東仙に命中はしても傷は与える事はなく霧散し、ただの霊圧の残滓となる。

 

 ──“君臨者よ 血肉の仮面•万象•羽搏き•ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ 破道の三十一 赤火砲”

 

 今度は詠唱も含めて宙に浮かぶ。

 赤い火の玉。これもやはり威力はない。梅炎の威力とは比べるまでもなく、霧散し霊圧の残滓だけが漂う。

 

 紅炎はこんな事も出来る。

 もちろん卍解の効果には鬼道など含まれていない。元々はただの鎧だが、霊圧を込めた文字ならば詠唱を代用出来るという性質上、こんな真似が許されるのだ。

 普通に文字を描くよりも短時間、それどころか一瞬で完全な詠唱も込みで発動出来る。もはや通常の詠唱破棄よりも早い。

 

「──梅炎」

「目眩ましか!」

 

 瞬歩で近付き、斬りつける。

 しかし、当たらない。瞬歩に加えて響転という手段があるのだ。逃げに徹されると攻撃を当てるのは困難だ。

 

 ──“破道の三十一 赤火砲” “破道の三十一 赤火砲” “破道の三十一 赤火砲” “破道の三十一 赤火砲” “破道の三十一 赤火砲”

 

 再び赤火砲をばら撒く。

 

「何の真似だ。その程度の目眩ましが効くと思ったか」

「そうですね」

 

 刀を一振り。

 

 ──“千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな 我が指を見よ 光弾•八身•九条•天経•疾宝•大輪•灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ 破道の九十一 千手皎天汰炮”

 ──“千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな 我が指を見よ 光弾•八身•九条•天経•疾宝•大輪•灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ 破道の九十一 千手皎天汰炮”

 ──“千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな 我が指を見よ 光弾•八身•九条•天経•疾宝•大輪•灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ 破道の九十一 千手皎天汰炮”

 

 完全詠唱の千手皎天汰炮を三つ。

 

「もはや九十番台の鬼道すら脅威ではない!」

 

 完全な詠唱がある分、今まで使っていたものよりも強力だ。

 しかし、炸裂した光弾の中、東仙は無傷で現れた。

 

 瞬歩で動き回りながら、あらゆる方向から梅炎を、鬼道を放つ。

 いずれも致命傷を与える訳ではなく、東仙からすれば無駄に消耗しているように見えるだろう。だからこそ、回避に専念しているのかもしれない。衝撃波はもちろん、虚閃すら放ってくる様子がない。

 

「不思議に思いませんか」

 

 そしてそれは、こちらの思い通りだった。

 

「どうしてわざわざ弱い鬼道まで使ったのか。効かないなら無駄に消耗するだけなのに」

「何?」

「『大自在紅梅天女』の能力が梅炎と紅炎だけだと思いましたか?」

 

『大自在紅梅天女』は『飛梅』を強化した卍解。『飛梅』の能力を知る者ならば疑問に思うはずだ。

『飛梅』の炎は飛ばす炎。大雑把に言えば、その攻撃は爆撃だ。山本元柳斎重國の『流刃若火』のような燃やす炎とは少し違う。つまり、鎧である紅炎はもちろん燃やす炎である梅炎もあくまでおまけに過ぎない。

 

「──梅鈴(ばいりん)

「──ッ!?」

 

 直後、とてつもない炎が圧縮された鞠大の鈴が宙に現れる。それも一つや二つではない。数十もの鈴が東仙を取り囲む。

 わざわざ効きもしない鬼道を連発していたのは、霊圧の残滓を散らす事でこの梅鈴を隠しているのが知られないようにするため。

 

 ──“縛道の二十六 曲光”

 

 紅炎で文字を作り、鬼道を発動する利点は早さだけではない。正面から、相手に知られないように鬼道を発動出来る点もある。

 ただでさえ見づらい紅炎の文字を更に崩したものを戦闘中に読み解く事は困難だ。長い詠唱文の中に紛れていればなおのこと。

 だからこそ、こうして梅鈴を隠すための縛道も知られないうちに発動出来たのだ。

 

「『飛梅』の本質は飛ばすこと」

 

 一斉に東仙へと襲い掛かる。

 その密度は瞬歩も、響転ですら逃さない。

 

 少し離れていた桃の髪先を焦がすほどの爆発と熱。

 塵だけでも残れば上出来だろう。

 

「裏切り者は処しました、パンドラ様」

 

 雛森桃にとっての、一の目的は今達成された。

 

 

 





 ○雛森桃
 戦闘は前回に引き続き地の文が三人称寄りだが、完全な一人称にすると怪文書一直線。前半の怪文書は東仙に裏切られた今この瞬間だから思っている事ではなく、そんなものは関係なく常に思っている事。ちなみにこれでもまだ抑えている方。

 斬魄刀:飛梅
 解号:弾け
 斬魄刀の形状は七支刀のように変化する。炎を飛ばし、爆撃のように攻撃する。
 
 卍解:大自在紅梅天女
 刀の形は始解時から変らないが、全身に半透明の羽衣を纏い、刀身も半透明の炎に覆われる。梅炎、紅炎、梅鈴の三つの能力を持つ。
 梅炎は一般的な火属性によくある燃やす炎であり、刀を振った直線上を広範囲に燃やす。威力で言えばジャブのようなもの。炎を飛ばすのではなく広範囲を焼いているという扱い。
 紅炎は半透明の羽衣のような炎の鎧であり、使用者の身を守る。炎ではあるが攻撃力はないため、相手が触れても燃やす事はない。基本的には羽衣の形をとっているが、使用者の意識で形を変える事ができ、身体から切り離す事も出来る。これを応用し、紅炎で文字を作る事で鬼道の詠唱を代替させる事が出来る。
 梅鈴は『大自在紅梅天女』における最高火力技であり、鞠ぐらいの大きさに炎を圧縮した鈴を相手に放つ。『飛梅』の本質は飛ばす事であり、鈴を飛ばすこの技の威力は梅炎とは比べ物にならない。

 同じ焱熱系の卍解として出力は『残火の太刀』の足元にも及ばないが、それはそれとしてやっている事は普通にインチキではある。

 ○東仙要
 原作のように正義を語ったりする事はなくやられてしまった。死神たちの世界を受け入れるという堕落からは原作よりも遠ざかっていたはずなので、本人からすればどちらの方が良かったのかは分からない。
 
 
 
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