転生者『虚飾の魔女』(なお中身) 作:白金の絹糸
ところ変わってパンドラ主視点に戻ります。
破面の無力化でもしようかと思ったが、そもそも残っているのかという問題に直面した。天挺空羅で十刃が陥落したみたいな事を言っていたし、もう全部倒されている可能性もある。不老不死もいるし。
「ひとまずは第五の塔という場所を目指しましょうか。そこに織姫がいるようですし」
「そ、そんなに落ち着いていて大丈夫なんですか!? 現世に侵攻するって……」
「現世には他の隊長たちがいます。元柳斎もいますから、こんな事をしている間に全て終わっていてもおかしくはありませんよ」
「隊長たちが……」
花太郎が治療を終えたようなので、場所を移す。
とりあえず織姫を置いてきたと言われた第五の塔とやらに。どこにあるかは知らないが。
頑張って集中して霊圧を探ってみると、ある一箇所でドンパチをやってそうな感じがあった。
「他の方たちと合流しましょうか。何か情報を知っているかもしれません」
「そ、そうですね……」
「歩いて行くには時間がかかりますね。さあ、手を」
「手を!?」
色々と乗り遅れてる感はあるし、このまま歩いて行って全部出遅れたら何しに来たんだという話になる。
という事で花太郎の手を握って跳ぶ。私のドタバタ瞬歩でもここなら気にならないし。
「はゃ……あぁ……!?」
今いた第何かも分からない塔? 建物? から外に出て、砂漠の砂のような地面を派手に蹴り上げながら感じる霊圧の元へと向かう。他の人ならもっとスマートにいけると思うのだが、いまだに上手く出来ないのはやっぱり私に才能がないからなのだろうか。
この絵がパンドラ様像に合っているかとか言われたら黙秘するが、花太郎はこっちを見る余裕もなさそうなので良しとする。
「おー、やっと来たか」
その場所にたどり着くと、一護やルキアたちが大量の骸骨みたいな破面と戦っていた。そしてそれを珍しく見守っていたのは不老不死だ。
「どれも殺してなかっただろ?」
「まだ私が見たのは一体だけですが、確かに死んでいませんでした。ところで、あなたは混ざらないのですか?」
「経験を積ませてやろうって考えてやってんだよ。どうせ雑魚だしな。上に一体、他にもまだ何体かいるっぽいが、こりゃ期待出来ねェな。藍染とかいう奴は現世に行っちまうしよ。なんであっちに行っちまうかねェ……もう全部あのハゲに取られて終わりだろ」
「ですね。念の為、後で確認しに行こうとは思っていますが」
「これ終わったらアタシは帰るわ。また難癖つけられんのも面倒くせェしな」
なんて話していると一護が塔に跳び登って行った。
「そういえば、通信越しに何やら元柳斎と喧嘩でもしているようでしたが」
「あァ、あれな。殴り合いになったんだが、長次郎の奴が割り込んできやがってな。アイツぶん殴ったら騒ぎになって有耶無耶になったわ」
「それは災難でしたね」
長次郎が。
喧嘩止めに入っただけなのにぶん殴られた長次郎かわいそ。
あ、骸骨が何体かこっち来た。
「チッ……雑魚がよ」
不老不死が斬魄刀を一振り。
その軌道上の砂は抉られ、まるで海が割れたような様相になった。モーセかな?
「テメェら、真面目にやれやぶっ飛ばすぞッ!!」
「「スミマセンッ!!」」
ルキアと恋次が勢いよく返事をした。息ピッタリ。
泰虎がビックリしてるよ。
なんて思ってたら上から何か落ちてきた。
「あン……? 雑魚破面かよ」
不老不死が片手でキャッチしたのは、黒髪ツインテールの少女の姿をした破面だった。
破面って女の子型もいるんだね。新しい発見。
「ぅあ……」
「せっかくですし話を聞いてみるのはどうでしょう。地図も何もないので、うまくいけば時間が短縮出来るかもしれません」
「確かにな。他の破面がいるところまで案内させるか」
敵の本拠地に攻め込んでいる以上地図なんてあるわけもなし。霊圧を撒き散らしてくれているなら私にも分かるが、変に隠れて隙を狙っている破面とかがいた場合、ちょっと面倒くさい。
「オイ、ガキ。残ってる中で一番強ェ奴のとこに案内しろや」
「ぅ……」
「意識が朦朧としているようですね」
「めんどくせェ……上に井上いんだろ。治させるか」
そんな事を言って不老不死が塔に跳び登っていったので、飛んで追いかける。
一護が空けたのか、横穴から乗り込む形で塔の上から真ん中ぐらいのフロアに乗り込んだ。
「井上。コイツ治せ」
そしてそこにはちゃんと織姫がいた。
「え……?」
「聞こえなかったのか? 治せって言ってんだろ」
「あ、はい……!」
もうちょっと優しくしてあげない?
まぁ、ともかくとして、織姫が女の子破面を治療してくれたので話を聞こうと……。
「オイ、ガキ。残ってる中で一番強ェ奴のとこに案内しろや」
「ひっ……」
霊圧で怖がらせるのやめてね。その霊圧禍々しいんだから。
「あまり怖がらせてはいけませんよ。彼女は私たちに協力してくれる立場なのですから」
安心させるように、その身体を抱き寄せる。
「安心してください。私は味方、ですから」
虚は所詮怪物だから知能もちょっと言葉が分かる事があるぐらいでそこらの動物と変らないと思うのだが、破面になったらそれよりは賢くなっているっぽい。前に戦った破面もある程度話せたし。
だから、こうして守ってあげて味方ですよーとポーズすれば従順になったりしないかなと思ったわけだ。
「聞いてんのか、ああン!?」
「ひっ……ぃ……」
不老不死が髪の毛を掴んで至近距離でメンチを切ったので、女の子破面の目を手で覆って隠してあげた。それと同時に頑張って霊圧を調整して不老不死の霊圧を押し返す。
「怖い思いをさせてしまいましたね。どうぞこちらへ。あちらで二人で話しましょう」
目を覆って隠して、耳元で囁く。
飴と鞭作戦。今考えた。
ずっと一緒にいるからもう気にもならないが、不老不死は普通にガラが悪いし、態度も横柄で、そしてそれを押し通せる実力を持つ。
まぁ、強さこそ正義みたいな風潮がある組織に所属していたのだから仕方ないのかもしれない。そういう組織に所属したからそういう気質になったのか、そういう気質だからそういう組織に所属したのかは分からないが。
普通に後者な気はするが、トップがアレなので諦めるしかない。今もそういう雰囲気あるし。文句は元柳斎にどうぞ。私がトップならもっとカジュアルな組織にする。トップとかならないけど。
ともかくとして、一般的に見て怖い不老不死から守ってあげて、私に従順になってもらおうという作戦だ。震えていたし、結構効果はあるんじゃなかろうか。
「落ち着きましたか?」
「な……なん……なのよ、アンタら」
「実はあなたたち破面と仲良くなりたいと思いまして」
「……意味わかんない……アンタ、死神じゃないの……?」
「死神ですよ。ですが、あなたと仲良くなりたいというのは本当です。死神は確かに虚と戦いますが、実は好き好んで戦っているわけではありません。本当は仲良くなりたいと思っているのですよ」
実際問題、普通の虚ならまだしも破面は魂魄のバランスとかも含めて倒したくないし、仲良くなれるならそれに越した事はない。今は藍染一派が支配してるっぽいから難しいかもしれないが、今回の一件が片付いたら適当に春水辺りを親善大使にして虚圏と仲良くやれたら平和で良いと思う。
「そういうわけで、他の破面の方ともお話ししたいのですが、案内していただけませんか?」
「そんなの、そこに……」
と、女の子破面が指をさしたのは、一護が戦っている兜みたいな仮面の破面と、不老不死に絡みにいったと思われる身体がゴツい破面。
あ、ゴツい方が蹴り飛ばされて下に落ちていった。下にはルキアたちがいるけど大丈夫?
逆に一護が戦っている方はもっと上の方に登っていった。
今思ったが、大きい塔みたいな建物の中に複数の塔が立っているみたいなここの構造ってかなり変だ。室内のくせに外みたいな真っ昼間みたいな青空が見えるし、かと思えば外に出ると夜みたいな感じだから頭がバグりそう。
室内の塔の途中まで登ってきて、上から半分ぐらいのフロアにいるわけだが、一護たちは外側の塔の外まで上がって行ったようだ。
「とりあえず下の奴ぶっ殺してくるわ」
「殺してはいけませんよ」
「おー」
不老不死は飛び降りていった。ルキアたちに押し付けたわけではないらしい。
「そういえば、名前を聞いていませんでしたね。私は虚飾パンドラと申します。あなたの名前を聞いても構いませんか?」
「ロリ……アイヴァーン」
「良い名前ですね。これからもぜひ仲良くしましょうね」
まだ情報とかはあまり得られていないが、破面を懐柔するという意味では結構成功しているのではなかろうか。こうやって普通に話せてるし。襲いかかってきたりせずに。
とりあえずは比較的強そうな二体の破面。上に行った方と下に行った方。
まぁ、下のは不老不死に任せれば良いとして、向かうなら上の方かな。なんかちょっと前に急に破面の霊圧が大きくなったし。
「あの」
「おや、どうしましたか? 織姫」
「あたしを上に連れて行ってくれませんか」
「そうですね。一緒に行きましょうか」
▼△▼△▼△
何やら織姫とロリの間で何かあったらしく、三人で上に向かおうとするとひと悶着あった。どちらかと言うとロリの方が一方的に敵視しているというか嫌っているような感じだったが、どちらかを放置していくのもアレなので、仲裁して宥めた。
途中で上に行った破面の霊圧が更に大きく禍々しいものに変化していたし、一護もどうなっているか気になった。
「では、行きましょうか」
塔の横穴から上を見上げると、青空に穴が空いて月が覗いていた。
二人をそれぞれ左右の腕で包むように持って、飛行魔法で飛ぶ。
あんまりおおっぴらに飛ぶのもアレかなと思ったが、霊子を足場に出来るとはいえ、いちいちジャンプするの面倒くさくなったし。
そうしてたどり着いた偽りの青空の向こう。
「あら……」
帰刃というやつだろう。姿を変えて黒い翼を生やした破面は、細長い尻尾で首を絞めるような形で一護の身体を持ち上げていた。
胸に穴の空いた一護の身体を。
「くろ、さき……くん……? そんな、いや……いやああああああ!!」
雑に投げ捨てられた一護の元へと織姫が駆け寄る。
もうちょっと早く来た方が良かったな……。夏梨になんて言おう。いや、私が行かせたわけじゃなくて一護は勝手に来ただけではあるんだけども。
「なに、あれ……」
そして、ロリの方は破面の方を見て困惑している。
「帰刃というものなのでは?」
「違う……あんなの知らない」
まぁ、ともかくとして。
放っておいたら織姫もやられそうなので。
「名前を聞いても構いませんか?」
「何者だ」
「護廷十三隊所属、九番隊隊長をしています虚飾パンドラと申します」
「ウルキオラ・シファーだ」
「良い名前ですね。ぜひ仲良くしたいものです」
さて、どうしたものか。
今まで戦った破面より強そうだし、迂闊に倒す事は出来ないのだが、とはいえ一護を殺されてしまった以上、織姫の前で表立って仲良しこよしは角が立つし。
なんて考えていたら、天井を破って新たに一人。
不老不死だった。
「こっちの方が面白そうじゃねェか」
「おや、下の方はどうしたのですか?」
「あァ、半殺しにしてルキアにやってきた。アイツもらうぞ?」
「ええ」
まぁ、任せておけばいいか。うん。
「次はアタシの相手しろや、オラァ!!」
ドンパチが始まった。
とりあえず避難させた方が良いかと織姫の方へ歩み寄る。膝をついて一護の身体に縋りついている姿は気の毒だが、私に出来る事はない。権能でも使わない限りは。
所詮はと言ったらアレだが、最近知り合ったばかりだし、わざわざ権能を使うつもりもない。声をかけて同情するぐらいか。
「お悔やみを──」
と、思っていたら、音もなく一護が立ち上がった。
だが、様子がおかしい。顔の仮面はともかく、頭には角が生えているし、身体は生気を感じさせない白色に変色している。
「オオオオオアアアアアアッッ!!!」
「ご無事で良かったです。すぐに治療を……」
「アアアアアアッッ!!」
角の間にエネルギーが集まっていく。虚閃の前兆だ。
話通じてるかな、これ? もしかして虚化が暴走してる?
エキドナさん、どう思います?
『六車拳西たちの時と似ているね。理性を失い、仮面だけに留まらない全身に及ぶ変質。彼らはこの状態を経て仮面だけの虚化へ、黒崎一護の順序はその逆になってはいるけれど』
とりあえず虚閃への対処をと、手を向けると一護は不老不死の方に虚閃を放った。不老不死というよりウルキオラの方かもしれないが。
「テメェもかかってこいや、クソガキィ!!」
虚閃を斬魄刀で真っ二つに斬りながら昂ぶる不老不死。二発目を装填する一護。対抗するように霊圧を収束させていくウルキオラ。
「……離れましょうか」
巻き込まれてはかなわないので、織姫とロリを掴んで下に下りる事にした。
▼△▼△▼△
下ではさっきより何倍も大きくなった破面とルキアたちが戦っていた。
戦っているというには、少し押されていたが。
「シャリオ」
織姫とロリを近くに置いて、巨体の横顔に星の光を放つ。ルキアがその手に掴まれて全身を握り潰されそうになっていたから仕方ない。的が大きくて助かる。
「ぐおおお……!!」
巨大な手を離れて落ちるルキアを受け止め、織姫の近くに置く。
「少し休んでいてください」
不老不死が半殺しにしたという話だったが、普通にピンピンしているように見える。
「話が通じる方であれば良いのですが」
直後、上から何かが落ちてきて巨体を下敷きにした。
「オオオオオアアアアアアッッ!!」
相変わらず暴走してるっぽい一護だった。
「…………」
続いて何か落ちてきたと思ったら今度はウルキオラだ。
「そんなモンかァ!? 出せるモン全部出してこいや!!」
頭上、新たに空いた穴から怒鳴っているのは不老不死。
「
巨体を下敷きにしたまま、隣の一護を横目にウルキオラは雷でできたような槍を天井に放つ。
「らァッ!!」
飛び降りた不老不死が雷槍を切り裂き、勢いそのままに斬りかかった。
大きく砂煙が上がる。
「痛ぇだろうがぁ──ッ!!」
「アアアアアアッッ!!」
「もっと暴れてみろやァッ!!」
あーあー、もうめちゃくちゃだよ。
もっと砂煙が上がって、その中でドンパチやってるのが分かる。
織姫たちもっと遠くに避難させた方が良いかな。なんて考えていると、何かがこっちに飛んできた。飛んできたというよりも、投げ飛ばされでもしたという表現の方が正しいかもしれない。
それは地面を少し転がり、止まった。
「あ……」
織姫が反応する。
ウルキオラだった。
「ここまでか。思い通りにはならんな」
ゆっくりと立ち上がるが、覇気はない。
「落ち着いてお話が出来そうですね」
「ようやくお前たちに、少し興味が出てきたところだったんだがな」
「それは嬉しいですね。私もあなたに興味があります」
見た目はそこまで傷付いている感じはしないが、疲れでもしたのだろう。話をしてくれる気になったというのは良い事だ。
「俺が怖いか、女」
「いいえ──」
「こわくないよ」
「そうか」
あ、もしかして私じゃなくて織姫に話しかけてた!? 恥ずかし!
かと思えばウルキオラの翼がサラサラと砂みたいに。
こちらに伸ばした手が織姫の手と触れる、その場所からも砂のように身体が崩壊していく。
ちょっと待って! なに満足そうな顔してるのかな?
封印! エキドナさん封印して! 陰魔法でいい感じに今の状態のままで!
『全く……ただの延命処置にしかならないよ』
大丈夫、大丈夫!
ウルキオラの身体は黒い結晶のようなものに包まれた。
ギリギリセーフ!
「何を……したんですか?」
「あのままでは彼が死んでしまうところでしたから。現状のまま固定しました」
「生きてるんですか……?」
「ええ。少なくとも今は」
あっちはまだドンパチやってるなぁ……。
「どういう状況カネ?」
「おや、マユリ」
なんて考えていたら背後からマユリが。その後ろには色んな荷物を積んだ荷車を引いたネムも。
「見ての通り不老不死が暴れているところです」
「その破面は?」
「彼女はロリ・アイヴァーン。私の協力者です」
「ホウ、協力者」
「その荷物はどうしたのですか?」
「何やら科学者を自称する破面から得た戦利品だヨ」
「科学者の破面ですか。興味深いですね」
破面にそんな頭脳を持つ個体がいるなんて驚きだ。しかも、マユリの機嫌が良さそうなところを見るに結構本格的だったのかもしれない。
「そして私は黒腔の機構をも解析を──」
上機嫌に語ってくれていたマユリの頭上、何かが通り過ぎたかと思えば、それはちょうど荷車に激突した。
「…………」
口が開いたままのマユリ。
飛んできたのは一護だった。
「野蛮人が……ッ!!」
あっ、マユリがブチ切れた。
しーらない。
○パンドラ主
虚圏に乗り込んだは良いが、実はほとんど破面と戦っていない。
○朽木不老不死
普通に遊んでいる。ウルキオラが再生能力を自慢してきたので、それなら多少は大丈夫かと思ったら普通に殺しかけた。途中ウルキオラ、暴走一護と三つ巴みたいな事をしていたが、割り込まなければ普通にその二人で戦っていただけなので、ただただ引っ掻き回している。
マユリの戦利品をぶっ壊した。
○ロリ・アイヴァーン
優しさのパンドラ主と恐怖の不老不死の飴と鞭作戦によってちょっとだけ頭をバグらされた。今後もパンドラ主にはどこか従順になるし、不老不死を前にすると震え出す。
当たり前のように織姫と二人きりで置かれるタイミングもあったが、ちょっとだけ頭がバグっていたので人質にするという考えが浮かばなかった。ただ、パンドラ主が織姫と二人を連れて行こうとした時にゴネて、そのせいで一護がウルキオラにやられる瞬間に間に合わなかったのである意味戦犯。
○涅マユリ
不老不死に半殺しにされたところから何とか回復したザエルアポロに勝利。原作のように戦利品をゲットし、黒腔も解析したが、その成果を不老不死によってぶっ飛ばされた一護に破壊された。
○ウルキオラ・シファー
「心か…………サラサラ」を途中キャンセルされた。
最上級大虚を死なせるわけにはいかないので仕方ない。
○山田花太郎
途中から完全に忘れられている。