転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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 お待たせしました。
 決着です。



あっけない幕切れ

 

 

「あァ、こらアカン。本気出し過ぎや、パンドラサン」

 

 空座町、上空。見える範囲は全て漆黒の闇で覆われたその空を見上げながら市丸ギンは呟く。

 

「こっちの気ィも知らんのやろな……総隊長の苦労が偲ばれるなァ、ホンマに」

 

 突然霊圧が跳ね上がったかと思えば、上空からの隕石の雨。いくらこの街がダミーだとしても、その被害は空座町の範囲では収まらなかっただろう。

 結果的にアールベルティが上手く機能したから良かったものの、それがなければとんでもない事になっていただろう。

 

「ま、余裕を奪ってくれたと思うとこか」

 

 上空、闇のさらに上でとんでもない爆発が連続して起こっているのを眺めながら、市丸ギンは穿界門を開いた。

 

 ▼△▼△▼△

 

 ▼△▼△▼△

 

 逃げた先は尸魂界か虚圏の二択。私なら敵しかいない尸魂界よりもアジトもあって仲間もいる虚圏の方に行くので、虚圏に戻る事にした。

 

憤怒(ミネルヴァ)、行きますよ」

「今回だけだから! 後で皆癒やしにしてやるんだから!」

「ええ。では強欲(エキドナ)、虚圏への転移をお願いします」

 

 サテラの影を収め、ミネルヴァに声をかける。途中のようだったが、たぶん生き残っている破面の治療は出来たと思う。

 今さら思ったけど、破面を治療したら護廷十三隊側とまたドンパチし始めたりするかな、これ。ちょっと、放置はマズいか。

 

嫉妬(サテラ)、破面の方々を回収していただけますか?」

 

 腕のような細い影がそれぞれバラバラの方向へ伸びていく。

 

「捕まえた」

「では、虚圏へ」

 

 そうして、私たちは虚圏へ転移した。

 

 ▼△▼△▼△

 

「おまッ、何だそりゃ!?」

 

 虚圏へ戻ってきて一番、ルキアや一護にちょっかいを掛けていたであろう不老不死が飛んできた。

 

「見せるのは初めてですね。私の卍解です」

「オマエ、卍解はあの隕石じゃねェのかよ!?」

「すみません。言っていませんでしたね。今までのものはただの始解です」

 

 べつに不老不死には隠さなくても良かったが、今まで話題に出なかったから言っていなかった。不老不死もアル・シャリオが卍解だと当たり前のように認識していたから、わざわざ話題に上げるような事もなかったのだろう。

 

「アレで始解かよ……つーか、卍解の具象化か? それ。具象化して戦わせる系の卍解はたまにあるけどよ。七人? おかしくね?」

「具象化ではあると思いますが、詳しい事は聞かれても分かりません」

「それはそれでどうなんだよ……」

 

 だってねぇ? なんで七人いるのとか言われても、いるんだから仕方ないとしか答えられないし。

 

「無駄に話している暇があるのかい? ここに来た目的はただの雑談ではないはずだよ」

「喋んのかよ!?」

「それは喋りますよ。あなたも斬魄刀とお話しするでしょう?」

「そりゃそうだがよ……違ェだろ、色々と」

 

 まぁ、エキドナの言う通り雑談をしに来たわけではない。惣右介を追ってきたのだ。

 だが、集中してみてもあの霊圧は感じない。霊圧を抑えて隠れている可能性もあるが、尸魂界の方に行った可能性もある。

 

「そういえば、ウルキオラを瀕死のまま封印していたのでした。憤怒(ミネルヴァ)、治してきていただけますか?」

「もちろん! いくわよ!」

「どうしてボクまで──」

 

 ミネルヴァがエキドナの首根っこを掴んで飛んでいった。

 

「……で? オマエはどこで何してたんだよ。何匹も破面捕まえてよ」

「実は現世に様子を見に行っていたのですが、手こずっている様子でしたので。急遽私が戦う事になったのです」

「あのハゲはどうしたんだ?」

「どうやら負けてしまったようです」

「オイ嘘だろ!?」

 

 気持ちは分かる。普通に考えて元柳斎が負けるとは思わないよね。

 

「で、戻ってきたっつー事はそいつボコったのか?」

「途中で逃げられてしまいまして。こちらに逃げてきたかと思ったのですが」

「そんな気配はなかったな」

「やはり尸魂界の方ですか」

 

 無駄足だったかもしれないが、まぁ、ウルキオラを治療出来たなら良しとしよう。どの道何とかしないといけなかったし。

 

「それにしても、あのハゲを倒した野郎を追い詰める卍解か。とんでもねェ霊圧は感じるが」

「気になりますか?」

「おう、後で()らせろや」

「今でも構いませんよ。怠惰(セクメト)

「はぁ、後で文句は受け付けないさね」

「オラ、こい!」

 

 せっかく広い場所にいるので。広い場所といっても信じられない事に屋内ではあるが。

 不老不死はシャリオとかエル・シャリオをアトラクションか何かと勘違いしている節があるので、多少強めにいっても大丈夫だ。

 

 直後、不老不死が盛大に地面の砂を削りながら吹っ飛んでいった。いくつか見える塔を貫通してもなお止まらず、屋外まで吹っ飛んでいった。

 直前に防御姿勢をとっていたのはさすがというか何というか。不可視なのに、気配とかで分かるんだろうか。

 

「さて」

 

 まぁ、不老不死の事は良いとしてだ。どうせ後で戦わせろって言ってくるから、ここでやるか尸魂界に戻ってからやるかの二択だし。

 問題は連れてきた破面たち。影に掴まれているとはいえ、大人しくしてくれて助かりはするが。

 

「私としては、これまでの事は水に流して仲良く出来ればと思っているのですが、どうでしょうか」

「……まずはこいつらを解放してやってくれないか? あんたの卍解にビビっちまってる。安心してくれ。暴れたりしない。そうだな?」

「お、おい! 何言ってんだよスターク!」

「黙ってろリリネット。俺もお前も、他の奴らも助かったのはこの隊長さんのお陰だろ。そもそも戦ったところで勝てねぇよ」

「分かりました。嫉妬(サテラ)

 

 どうやら代表らしいスタークと呼ばれた破面の言葉に従って、サテラに影を収めてもらう。

 解放した破面は、その言葉の通り暴れる事はなかった。むしろ、呆然としているような印象だ。

 

「今回の件は不幸な行き違いでした。私たち死神はあなた方と敵対するつもりはありません。ただ、藍染惣右介が介入したために、こんな事になってしまいました」

「俺は藍染様に恩がある。仲間に出会えたのも藍染様のお陰だからな。ただ、あの人からすればあんたは敵かもしれないが、俺らは用済みらしい。十刃が藍染様の配下って事には変わりないが、少なくとも新しい命令がくるまでは自由にやらせてもらうさ」

「つまり、仲良くしていただけるという事ですね?」

「仲良く出来るに越した事はない、と俺は思ってる。お前らもいいな?」

 

 穏便に済みそうで良かった。

 全員に暴れられたら面倒な事になってたから。今エキドナいないし。

 

「では、代表のあなたの名前を聞いても構いませんか?」

「ああ。コヨーテ・スタークだ」

「虚飾パンドラです。あなた方と友好的なお付き合いが出来る事を期待しています」

「なぁ、隊長さん」

「はい?」

「あんたの霊圧……いや、何でもない。デカすぎるとそうなるのか……」

 

 この後、破面たちの霊圧を感知して駆け付けてきた烈たち他の隊長に事情を説明し、エキドナとミネルヴァが戻ってきた事で私は尸魂界に転移した。

 何か私がその場にいた事にかなり驚いていたが、私がいてもおかしくなくない? 元々虚圏にいたのに。霊圧? ああ、エキドナたちもいたから霊圧がちょっと違って感じられたのかな? 

 その割に不老不死は私がいる事自体には驚いていなかったが。

 

 ▼△▼△▼△

 

 ところ変わって尸魂界。

 とりあえず瀞霊廷に転移したのだが、惣右介の霊圧は全然違う場所から感じられた。

 あっちの方は転移ポイント作ってないし、どうしようか。

 

「何か良い魔法はありませんか?」

「転移で、という話なら難しい。ただ、速く飛んでいきたいという話ならいくらでもやりようはある」

「ではそれで」

「な、なんだか……い、嫌な予感が、する……する、よ?」

 

 と、今まで影が薄かったカーミラ。

 まぁ、言いたい事は分かる。エキドナがいくらでもやりようはあるとか言い出したら怖いよね、うん。他のみんなは気にしてなさそうだけども。そういう方面では一番感性が合いそう。

 今回は私が言い出したからアレだが。

 

「おー、すごい勢いで飛んでるなー!」

「こんなに密着してるとぉ、食べたくなっちゃうかもぉ」

 

 サテラの影を繭のようにして私たちはその中に、それをエキドナの魔法で超高速で飛ばす事で現場に急行する事にした。ちゃんとは見ていないが、ジェットエンジン的な感じでやっているのだと思う。

 

「もう着くよ」

 

 という事で減速し、サテラの影繭も解除した。

 空中で投げ出される形だが、私には霊子を足場にするという技術があるため、落下したりはしない。今さらではあるが、私だけでなく魔女のみんなにもその技術はあるらしい。

 よくよく考えると、これってかなり便利な技術だよね。セクメトなんか原作では大瀑布に落ちて死んじゃったらしいし。

 それとは別に飛行魔法もあるわけだし。

 

 まぁ、そんな事は良いとして。

 見下ろすと、ただの流魂界のはずの場所に見覚えがあり過ぎる光景が。

 

「空座町のような気がするのは私だけですか?」

「空座町そのものだね」

 

 とりあえず下りてみると、ギンが倒れていた。

 そのそばには乱菊が。

 

「どういう状況ですか?」

「虚飾……隊長……」

 

 乱菊が地面に座り込んで抱えているギンの身体には、胸の辺りをバッサリと斬られたような跡がある。周りには他の霊圧は感じないし、乱菊がやるとも思えないので、惣右介と仲間割れでもしたのだろうか。

 

 なんて考えていたらミネルヴァがギンを殴りつけ(癒やし)た。

 

「……ボクみたいな裏切り者、治して良かったん?」

「あたしはあたしの流儀に従って傷を癒やすだけよ!」

「……情報を得るため、と言っておきましょうか」

 

 べつに良いんだけどね? 治療してあげても。

 こっちが対象を指定したらちゃんと従ってくれるし。今のは隙を見せた私が悪いかな、うん。

 

「パンドラサンが隙を作ってくれたから、いける思ったんやけど……あかんかったなァ」

「ギン、あんた……」

「なるほど、もしや惣右介についたのもそれが狙いで?」

「何でも良いですやろ」

「なんて事言ってんの、命の恩人に!」

「痛っ、痛い……分かった、分かったから」

 

 話を聞くと、ギンは元々良いタイミングで仕留めるために惣右介の近くにいたらしい。元々悪い奴だって知っていたなら相談してくれても良かったのに。乱菊を除いた死神の中では一番付き合いが長いのだから。

 そう言うと、仮に相談したとしてもそれが私ではなく鏡花水月によってそう見せられた偽物の可能性もあると言われてしまったので黙るしかない。鏡花水月に騙されていたのは私にとっても黒歴史なので掘り返さない。

 

「そうでした。一つギンにお願いが」

「お願い?」

「ええ。これから先、虚圏の破面たちとも仲良くしていきたいとしてスタークと話をつけたのですが、やはり虚圏に死神側の大使のような者がいた方が話を通しやすいと思いまして」

「まさかそれになれて言うてるんですの?」

「話が早くて助かります」

 

 ギンなら元々破面たちとも関わりがあっただろうから適任だろう。スタークは結構話が通じそうだったが、虚ではあるし。ちゃんと話が分かっている者が常駐してくれると助かる。

 

「何するんだー、ドラ?」

 

 テュフォンの耳を塞いでおく。

 止まってくれと言ったら止まってくれるとは思うが、事を起こさないのが一番なので。

 

「拒否権は……ないんやろなぁ」

「元より処刑もやむなしの大罪人なのですから、拒否するなら罪人として処理しなくてはなりません。子供の頃から知っている身として、心苦しくはありますが」

「……ホントにそれで良いん? パンドラサンは。後で裏切り者見逃した事バレるかもしれんのに」

「構いませんよ。たかが一人の罪人の罪を裁く事と虚圏との友好関係。比べるべくもないでしょう? 本音を言うと、既に私がスタークと話をつけてしまった以上、色々と押し付けられてしまう未来が見えていますので」

 

 そう、放置は出来ないのだから、後で瀞霊廷側と虚圏側で話し合いをする必要がある。どうせその時に色々と押し付けられるのは私なのだ。だったら、その時に少しでも楽を出来るように備えておくのは当然。

 

「そういえば、他の方々は?」

「隊長たちは藍染にやられた傷がまだ……」

「では、この会話が聞かれる心配もありませんね。ミネルヴァの治癒を中断してしまいましたから、後で戻るとしましょう」

 

 ドンパチやっている気配もないからそうじゃないかとは思っていたが、他のみんなはまだ現世にいるらしい。

 

 とりあえずは、決着をつける事かな。

 

「随分と、悠長にしているものですね」

 

 霊圧を辿っていった先には羽が生えたりしてさらに姿が変わっている惣右介。それと、見覚えのある制服を着た数人の男女。

 あと、派手なよく分からない格好をしている男が一人。手には魔法のステッキみたいなものを持っている。惣右介に突撃しようとしていたから、サテラの影で止めてもらった。

 

「私はもはや、死神も虚も超越した存在となったのだ。事を急ぐ必要もない」

「先ほどは逃げ惑っていたというのに、随分強気ではありませんか」

 

 さっきよりも霊圧が大きくなったかな? 

 まぁ、とはいえさすがと言うべきか。その自信は見習って行きたいところだ。

 

「あ、あんたは……一護の……」

「おや?」

 

 見覚えのある制服は、一護が通っている高校のもの。その顔を見てみると、見覚えがあった。

 

「あなたは確か一護のクラスメイトの……」

 

 チラッとエキドナの方を見る。

 

「……有沢竜貴(たつき)

「そうでした、竜貴。それと……」

「……浅野啓吾、本匠千鶴、小川みちる」

「啓吾、千鶴、みちる。学校で会った以来ですね」

 

 さすがエキドナ先生。

 そういえば記憶の置換はしていなかった。色々とゴタゴタしてたし。まぁ、後で考えれば良いだろう。

 

「な、何をするのかね、ガールズ!?」

 

 そして、見覚えのない派手な男。

 

「おー、変な格好だなー」

「なぬっ!? これは変な格好ではなくて──」

「あはー、変な格好!」

「NO────ゥッ!!」

 

 なんかテュフォンに気に入られてるし。

 

「ともかく、危険ですので下がっていてください」

「そうだ! ここは危険だ! ガールズのような一般人は下がって……一般人……? と、とにかく下がっているのだ!」

 

 形だけみたらコック帽のような黒い帽子(前に何かのマークが描かれている)にサングラス、ファーが付いたマントというなかなかの格好だ。

 ダフネを見て一瞬戸惑っていたが、見ず知らずの者を庇おうとする姿勢はすごいと思う。見たところ普通の人間っぽいのに、あんな明らかにバケモノの惣右介に立ち向かおうというのだから。

 私が同じ立場なら逃げの一択だ。力があるからこんな事が出来るが、力がなかったら脱兎のごとく逃げ出している。

 

「あなたの心意気はとても素晴らしいものです。ですが、適材適所という言葉があります。あなたの戦場はここではありません。ここは、私に任せていただけませんか?」

「しかし、私はドン・観音寺。戦いから逃げては子どもたちに示しがつかんのだ……!」

「ですが、ここで倒れてしまっては、あなたがいずれ救うはずだった数多の命を見捨てる事になってしまいます」

「むゥッ……!」

「ご安心を。私には彼を倒す策があります」

「……ならばここはガールズに任せよう! だがッ! 危なくなったらヒーローを呼ぶのだぞ! 『助けて! ドン・観音寺!!』とな!」

「ええ。頼りにしています、ヒーロー」

 

 ドン・観音寺と名乗った男が竜貴たちを連れて離れていった。ちゃんと引き際が分かっているのも好感が持てる。

 

「さて。決着をつけるとしましょうか」

 

 改めて、惣右介の方を見る。

 よくもまあ、こんな何回も変身出来るものだと感心する。

 

「しかし、また逃げられてしまっては面倒ですから。暴食(ダフネ)怠惰(セクメト)

「特別ですよぉ」

「はぁ、さっさと終わらせるさね」

 

 まず動いたのはダフネ。自分の腕で拘束を破り、両目の目隠しを外した。すなわち、左目だけでなく両目の魔眼の解放。

 両目の魔眼にさらされてどんな状況になっているのか想像もしたくないが、動きが止まった惣右介をセクメトの衝撃波が吹き飛ばす。

 

 ここでは戦いたくないので、ひとまずこの場から離す。なぜこんな場所に空座町があるのかは分からないが、少し離れれば誰もいない荒野が広がっている。暴れる場所には困らない。

 

「ここならば大丈夫でしょう。好きに暴れてください。憤怒(ミネルヴァ)は待機でお願いします」

 

 サテラに地面一面に影を展開してもらい、物理的にも暴れて大丈夫なフィールドを生成。

 あとはもうみんなに好きに暴れてもらう事にした。

 

「好きにして良いんだね?」

「そこはかとなく不安ではありますが、彼を倒してくれればそれで構いません」

 

 エキドナの好きにさせるのは不安がないではないが。策略とかそういう腹黒方向じゃないから大丈夫だよね? 

 

「はぁ、言ってくれるもんさね。ふぅ、面倒事はごめんだっていうのにさ」

「おー、いくぞー!」

「食べても食べても再生するってぇ、食糧として最高かもぉ」

 

 漆黒のフィールドで、魔女たちが思い思いに暴れ始める。

 エキドナは炎に氷、風と様々な魔法を使ったかと思えばやっぱりアル・シャリオを落とし出す。

 セクメトは衝撃波でタコ殴りに。

 ダフネは直接惣右介の身体を食べたかと思えば、なんか白鯨とか黒蛇とか出してるし。

 テュフォンが本気を出してきたのか、惣右介の身体は崩れては再生して崩れては再生して、みたいな事になってるし。

 ちゃっかりカーミラが近付く事で動きを止めていたりもする。

 アル・シャリオの隕石が迫り、みんなが離れたかと思えば漆黒の地面から夥しいほどの影が溢れ出し、息をつく暇はない。

 

 普通に可哀想になってきた。

 そもそもエキドナ、セクメト、サテラだけでも過剰火力なのに、再生能力がなかったらその時点でアウトなテュフォンに、デバフ役としてもダフネ、カーミラは強すぎる。

 

「オオオオオ────ッ!!」

 

 空中で眺めていると、どうやってサテラの影から抜け出してきたのか背後にさっきよりもスリムになった惣右介が迫ってきた。また進化でもしたのだろうか。

 その手には斬魄刀はない。その代わりに、虚閃のようにエネルギーが集まっている。

 

「しぶといですね」

 

 しかし、常に私の背中にくっついているサテラがオートでガードしてくれるため、私に届く事はない。

 そして、サテラの背中から伸びた影が惣右介の胴体を貫き、直後に身体の内側から数十もの影が突き破るように飛び出てくる。普通ならこの状態でも死ぬと思うのだが、当たり前のようにピンピンしている。

 突き刺さった影を振り回すようにして、惣右介は漆黒の地面に投げ捨てられた。

 

 そもそも影に落ちた時点で普通はアウトなのだが。

 これ、どうやって倒そうか。

 

「封印という手は?」

「あくまで問題の先延ばしにしかならないね。藍染惣右介が魔女因子を持っていれば話は別だが」

 

 何発アル・シャリオを撃っても死なないし、セクメトの衝撃が何度身体を砕いても死なないし、サテラの影が飲み込んでグチャグチャにしても死なないし。

 テュフォンの権能は効いている。ダフネの権能も効いている。カーミラの権能も効いている。

 ただ、死なないし、止まらない。

 今もさらに進化して姿が変わっていってる気がするし。

 

 うーん、困った。

 霊力が切れるまで続ければ再生しなくなるのかもしれないが、霊力が切れる前にこっちよりも強く進化してしまう可能性もある。

 

「“滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器──”」

 

 詠唱する余裕すら出てきたっぽいし。

 もうここまできたら途中で進化が止まるというのは楽観だろう。最悪無限に強くなる可能性すら考えなければならない。

 

「もはや君の出番だと私は思うけれどね」

「そうですね……」

 

 もうそれしかないかな……。

 

「破道の九十!! 黒棺ッ!!」

「──アル・クラム」

 

 真っ黒なドーム状のものが組み上がっていくが、特異点の方のアル・クラムによって真横から抉られるように崩壊した。

 さらに、ほとんどそのブラックホールが如き超重力の中心にいた惣右介は、漆黒の玉に身体を引き寄せられ、グチャグチャのバキバキになるが、魔法を解除すれば再生してしまう。

 

 パンパンと手を叩いて、魔女たちの攻撃をやめさせる。あんな中には飛び込めないからね。

 

「もう良いでしょう?」

「何?」

「『あなたは十分に満足した』。『罪を償う気になった』のですから」

 

 不自然に惣右介が停止する。

 こうしないと止まらなそうだったし、仕方ない。

 

「何故だ……何故、これほどの力を持ちながら動かない。何故あんなものに従っていられる」

「あんなものとは? 元柳斎の事でしょうか。確かに頑固なところはありますが、そう悪く言うものではないでしょう」

 

 責任とか全部押し付けてるしね。

 

「違う……こんなものは、私の……!」

「『これはあなたの意志』ですよ。『何の介在もなく、あなたが決定した事』なのですから」

「…………」

 

 あー、びっくりした。

 権能に対抗しようとしてた? もしかして。

 怖っ。『虚飾の権能』破ろうとしてた? 怖すぎ。

 

 重ねがけ。重ねがけ。

 耳元でささやくように権能を重ねがけた。

 

「では行きましょうか」

 

 罪を償う気になった惣右介は黙って私の後ろをついてくる。

 後ろから刺されそうで怖いからまだ卍解は解除しない。

 

 ▼△▼△▼△

 

 結局あの後、ちょっとの間なら封印していても良いかと思ったので、一旦惣右介の事は陰魔法で封印して現世に戻った。

 まだ治療出来ていなかった者たちをミネルヴァに治療してもらって、事の顛末を報告。

 

「ええ。惣右介は今封印している状態です。それほど長くは持ちませんから、出来る事なら引き取っていただきたいところです」

「その封印とやらは、どれほど保つ?」

「さて、どうでしょう……」

「二、三年程度なら問題はないよ。それ以上は保証しかねる」

 

 一応元柳斎の事も治して、周りには他の隊長や副隊長たちが集まっている。

 桃は倒れたままだが、外傷によるものではなく精神的なものだからミネルヴァの治療対象外らしい。まぁ、そのうち復活するだろう。

 

「そうか。なるほど……それがお主の卍解か」

「ええ。一応言っておきますが、アル・シャリオが卍解だと勘違いしていたのはあなたの方ですから、私に責任はありませんよ」

「否定もせずにぬけぬけと…………。まあ良い。それに救われたのも事実じゃ。空座町のみならず、周辺の一帯にまで影響を及ぼした事に対して言いたい事はあるが……」

「仕方ないでしょう? どこかの誰かが職務を全う出来ていなかったのですから」

 

 何か影響を出していたしても、私の責任ではないので。

 

 あ。

 一個ミスったかも。

 

「あの、もしかしてなのですが、卍解を解いたら惣右介の封印も解けるのでは?」

「なんじゃと!?」

 

 オル・シャマクならともかく、さっき惣右介にかけて置いてきた封印は一般的な陰魔法を用いた封印。離れていようとも、術者とはパスが繋がっていて、そのパスが切れると封印は十全な効果を発揮出来ない。そうでなくても二、三年しか保証はないらしいし。

 これがただの氷とかなら術者がどうなろうが氷は氷なので、自然に解けたり壊されたりするまではそのままだが、あの封印は違う。権能で抵抗する気は奪えてはいるはずだが、念には念を重ねて強力なものにしたのだ。常に術者からマナもとい霊力が供給される形の。

 

「ああ、確かに」

 

 卍解する事で魔法の行使能力はエキドナに移っているが、卍解を解除すれば私に戻ってくる。卍解した時にエル・クラムが解除されたように、違う術者扱いになってしまうのだ。

 まぁ、べつに封印をかけ直せば良いだけではあるが、ちょっと面倒くさポイントを作ってしまった。

 

「その卍解、いつまで保つ!?」

「はい? 特に時間制限などはありませんが」

「ならば死ぬ気で保たせい!」

「いえ、べつに卍解を解いてから再び封印し直せば良いだけで……」

「万が一があればどうする!」

「はぁ……」

 

 いや、まぁ、万が一の事を言われたら弱いんだが。

 実際、権能に抗われそうになったし。

 

「分かりました。ですが、彼女たちはどうすれば?」

「隊士扱いで構わん。好きにせい」

 

 という事になった。

 とりあえず自己紹介でもしとく? 

 

 

 





 ○パンドラ主
 卍解時の必殺技は『七魔女大進撃』(魔女たちを好きに暴れさせる。相手は死ぬ)。卍解している時はサテラがオートで守ってくれる。
 この度、魔女たちが臨時席官として九番隊に所属する事になった。隊士たちの胃は死ぬ。

 ○藍染惣右介
 原作以上に進化したし、なんならもっと進化しそうだったが、『虚飾の権能』によって強制的に罪を償う気にさせられてしまった。魔女たちの権能に晒されて原作よりもかなり可哀想な目にあった。
 現世から撤退し、ギンの裏切りも退けた事で進化を果たし、もう勝てると思って余裕を出していたらまだ進化が足りなかった。
 不死身になったので、あのまま戦い続けていればいずれ魔女たちを上回っていたが、パンドラ主が割り込んできたのでその前に敗北してしまった。

 ○市丸ギン
 尸魂界の空座町へ逃れてきた藍染へ裏切りの刃を向けたが、原作のように敗北。追いかけてきた乱菊に看取られ、死に行くところをミネルヴァによって癒やされた。
 勝手に虚圏の駐在大使に任命されたが、拒否権はないのでひっそりと虚圏で生き続ける事に。

 ○現世の隊長や副隊長たち
 藍染の事はパンドラ主に任せて(あんなのに割り込めないので任せるしかない)負傷者の手当てに回っていた。

 ○ドン・観音寺
 空座防衛隊にマジカルガールズ(パンドラ主と魔女たち)をスカウトするつもりでいる。ただし、ダフネの事は虚の仲間だと思っている。

 ○仮面の軍勢
 主に藍染によって負わされた傷の応急手当をしていた。原作と同じように胴体で真っ二つにされてしまったひよ里だけは優先度が高かったため、破面たちと一緒にミネルヴァに治療されていた。

 ○浦原喜助
 最低限の応急手当に手を貸した後、念の為藍染を追って尸魂界へ向かった。『崩玉』と融合した藍染が殺せなくなると予想して封印の手段を用意していたが、パンドラ主が全て自分でやってしまったので出番なし。
 
 
 ひとまず描きたかったところまでは書き切りました。
 この先の展開はまだ考えていないので、更新はスローペースになります。
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