転生者『虚飾の魔女』(なお中身) 作:白金の絹糸
感想・評価ありがとうございます。かなりのモチベになってます。
扉絵風パンドラ主を描いてみました。
【挿絵表示】
↑パンドラスタイルとしてのアイデンティティのために着崩している。元柳斎からとやかく言われても無視。
滅却師を撃退してからも生活はあまり変わらなかった。強いて言えば、復興作業に駆り出されたぐらいだろうか。心なしか、他の隊よりも我が九番隊に回されるものが多かったように感じた。
元柳斎に文句を言うと、私が結構な範囲で被害を出したからという答えが返ってきた。
だったらアンタの方が復興作業すべきでは?
九番隊のメンバーから不満が出るかと思ったが、特にそんな事はなかった。むしろ、非公式の隊長格付けで他の隊の人たちにより強く出られるようになったと嬉しそうに言っていた。この前のアル・シャリオによって隊士たちの間で私と元柳斎の評判が並んだらしい。強さ的な意味で。
まぁ、喜んでいるなら良し。元柳斎に並んでるなら、他の隊長たちはそろそろ襲ってくるのを辞めてほしいが。アイツらは私のシャリオをアトラクションか何かと勘違いしている節がある。元柳斎にも襲撃かけろよ。そんで燃やされろ。
そうして滅却師襲来事件から十年と少し。代わり映えのない日々を過ごしていると、九番隊の隊舎に不老不死が現れた。見知らぬ黒髪の少年を連れて。
「その方は?」
「なんか
「
「……これは、ご丁寧に。護廷十三隊九番隊隊長、虚飾パンドラと申します」
胸を張る少年へ、とりあえず自己紹介を返したものの。
え? 夫って言った? 不老不死の夫って言った?
嘘でしょ!? 言ったら悪いけど、こんな粗暴女の夫!?
「テメェも何普通に挨拶してんだよ。オイ、ガキ。夫になるっつーならコイツのにしときな」
「えっと、どういうお話ですか……?」
「夫、夫ってウッセェからよ。発情期のガキの相手なんかしてられっかっつーの。お前が相手してやってくれや」
「何を言うか! 我は其方だからこそ婚姻を申し込んでおるのだ! 誰でも良いという訳ではないぞ!」
「コイツの方が顔も声も良いだろ」
「顔と声が良ければ良いという話でもない! そもそも顔も声も我は其方の方が好みである!」
一体何を見せられているのだろうか。
「あの、惚気は他所でやってくれませんか?」
「誰が惚気だ、ぶっ殺すぞ!?」
▼△▼△▼△
それからというもの、不老不死に付きまとう少年の姿がところどころで見られた。
意外だったのが、それを不老不死が好きにさせているという事実だ。無抵抗という訳ではなく、言い争っているような場面もあったが、それでもボコって追い返すような事はしていないらしい。
「不老不死と親しい其方に相談なのであるが、強くなるにはどうすればよい?」
「はい……?」
「弱い奴には興味がないと言われてしまってな。隊士たちに聞けば其方、護廷十三隊でも一、二を争う強さだそうではないか。これほどの適任はいないであろう」
うーん。さて、どうしたものか。
たぶん私が一番向いてないまであると思うんだけど。
『君の戦い方は霊圧にものを言わせた魔法による力押し。霊圧も真似出来なければ、そもそも魔法も君だけの固有能力も同然。教えるなんてとても無理だろうね』
じゃあ代わりに教えてもらってもいいですかね。
『ボクの姿は君にしか見えないし、ボクの声も君にしか聞こえない。それでどうやって教えろというんだい?』
そんな事言われても分かってますから。分かってますから!
「斬魄刀は持たない故、斬術は難しいが、素手で出来るものを教授願う。一先ずは四楓院家の奴のように戦えるのが目標であるぞ」
「彼のように、ですか……彼は喜々として相手の頭を吹き飛ばそうとするので、あまりおすすめはしませんが……」
「何!? そ、そうなのか……!?」
「ええ。そもそも、私を除いて、隊長たちは皆似たようなものですよ。手本とするのは勧められませんね」
まぁ、それを言ったらこの子が嫁にするとか言ってる不老不死もその一人なのだが。
「と、ともかくだ! それならば尚の事、其方が適任ではないか」
「いえ、一番の問題が残っています」
「何だ、その問題とは」
「私には白打も瞬歩もほとんど使えないという事です」
正直ちょっとめんどくさいので正直に白状した。
私には斬魄刀があるが、もちろん斬術も出来ない。というか、初めて始解して以来、一度も刀の形に戻らずにずっと本の形で私の周りに浮かんでいるので、刀を握るという前提にも立てていない。
パンドラ様の細腕で殴り合いとか出来ないので白打ももちろん出来ないし、瞬歩はそれっぽい事は出来るようになったとは思うものの、不老不死にはドタバタしすぎとか言われたし、たぶんちゃんとは出来てない。
「……それでどうやって隊長をやっているのだ?」
「それは私が一番聞きたい事ですね……」
ホントにマジで。なんでこんな事になってるんだろうか。
全部元柳斎が悪い。
「……しかし実際、我には其方しかいないのだ。我が五大貴族の朽木家だからと、まともに取り合うのは不老不死か其方ぐらいでな」
「貴族……それでそのような尊大な話し方に?」
「当然である」
「当然ですか……」
なんかよく分からないけど貴族らしい。
まぁ、確かに、言われてみればただの子供がこんな偉そうにしてたら普通にシバかれてると思う。そうなっていないのは、貴族で偉いから。あんまり子供の頃から調子に乗らせていると将来ロクな大人にならないような気もするけども。
「隊長たちは、そんな肩書などに拘らないと思いますが……」
「隊長たちが恐ろしいと言ったのは其方であろう!?」
「いえ、出会い頭に斬りかかってきたりするぐらいで」
「それは恐ろしいと何が違うのだ!?」
「適当に返り討ちにすれば良いのでは?」
「我が戦う方法を身に着けたいと言った事を忘れておらぬか!? それが出来るなら苦労はしない! 其方、あまりものを考えずに喋っているのではないだろうな!?」
失礼な。
私が善意で話に付き合ってあげているというのを忘れているのではないだろうか。貴族か何か知らないけど追い出すぞ、こら。
「……元柳斎に話をしておきますので、彼から話を聞いてもらっても?」
他の隊長たちならともかく、元柳斎は出会い頭に斬りかかってくるような事はないので適任だろう。仲裁にかこつけて刀をぶん回してくる事はあるけども。
「ま、待つのだ!」
「どうされましたか?」
「その元柳斎とは、山本元柳斎重國の事で相違ないか?」
「ええ、そうですが」
「それは困る」
「なぜですか?」
「怖い」
「…………」
▼△▼△▼△
「おかしいであろう!? いくら斬魄刀があるとはいえ、心得のない者を虚と戦わせるか!?」
「実戦あるのみ、と言うでしょう?」
「実践の字が違うのではないか!?」
「似たようなものですよ」
「やはり其方、馬鹿であるな!?」
部下の人が虚が現れたというので、黒羽少年を連れて虚退治へ向かった。そして、斬魄刀を渡して虚の前に放り出した。現在、黒羽少年は虚に追いかけられて逃げ回っている。
ちなみに渡した斬魄刀は私のものではない。かといって部下の人から借りたものでもなければ、もちろん黒羽少年が護廷十三隊に入って斬魄刀を授けられたという訳でもない。
あれは所有者のいなくなった斬魄刀だ。私は入る前から持っていたが、基本的に斬魄刀は護廷十三隊に入る時か、もしくは元柳斎がやっている学校の授業中? に貰えるらしい。ただ、斬魄刀の所有者が殉職したり、何らかの理由で護廷十三隊を離れる時はその斬魄刀を回収し、保管する事になっている。その中の一本を借りてきた訳だ。
で、なんで私にそんな事が出来るかと言うと、簡単な話。いつかの隊首会で誰がその保管庫の管理をするかという話になった時に押し付けられたのである。
「比較的弱い虚です。あなたはある程度霊圧もあるのですから、逃げる必要はありませんよ」
まぁ、私が同じ状況で魔法が使えないとかになったら普通に逃げるけど。
『性格の悪さが出ているね』
だまらっしゃい。
もしかしたら秘められた力とかが覚醒するかもしれないでしょうが。
「くっ……や、やってやろうではないか! この程度、我の敵では……ぐわっ!?」
あっ、黒羽少年が何かに躓いて転んだ。
仕方ない。
「シャリオ」
範囲を絞った星の光。ちょうど虚の頭を呑み込むぐらいの太さに調節した一条の光を放った。
最近分かった事だが、シャリオはホースから出る水のように範囲を狭めると威力を上げる事が出来る。まぁ、べつに元々威力が足りない場面はそんなにないから使う事はほとんどないけど。今のように近くの者を巻き込まないように込める霊力を減らして威力を弱める時の方が圧倒的に多い。
隊長相手? 範囲絞ってエル・シャリオなんて撃って死んじゃったらどうするの。普通のデフォルトエル・シャリオで半死にみたいな状態になる事も珍しくないのに。周りの建物? 知らん。
「……。驚いた。其方、これほどの術が使えたのか……」
「これ一本で隊長をやっているようなものですから」
「そうか……其方に指導を頼むのは誤りな気がしてきたぞ」
「最初からそう言ったでしょう?」
結局、その後も黒羽少年は虚を倒す事は出来ず、お開きとなった。
斬魄刀は貸したままになったけど、べつに大丈夫だよね? 文句言われても私に斬魄刀の管理押し付けたみんなが悪いんだし。まぁ、みんなヘコヘコするぐらいの貴族なら後から何か言われても黒羽少年のせいにすればいいか。
▼△▼△▼△
次の日、黒羽少年は私の隊首室に突撃してくる事はなかった。たぶん諦めたのだろう。仕方ない。私でも諦めると思う。
というか、友人の立場から言ってはなんだが不老不死を嫁にするのもやめた方がいいのでは、と思わなくもない。貴族ってガラじゃなさすぎるし。
「ちげェよ! 何回言わせんだ、ああン!? 腰が入ってねェって言ってるだろうが、ザコが!」
「こ、こうか!?」
「テメェはこっちにケツを突き出して何がしてェんだ、発情猿ッ!!」
「ぐあぁッ!? わ、我の尻が……!?」
こわ〜。
何か怒鳴り声が聞こえてきたから影から覗いてみたら不老不死と黒羽少年だった。見たところ、私に聞いても埒が明かないと思ったのか、不老不死に直接指導を頼んだらしい。
「父上にも叩かれた事のなかった我の尻が……!」
「テメェの腑抜け親父の話なんざ知るかよ!」
「ち、父上の侮辱はいくら其方といえど許さんぞ!」
「テメェが言い出したんだろうが、ボケが!」
これは、なんだろうか。
ケンカップル? 不老不死に言い返せる人なんて直属の部下でもそうはいなさそうなのに、やっぱり普通に言い合いしてるし。
なんか、もはや逆にお似合いな気がしてきた。
「……つーか、アタシに近付くための力をアタシに聞こうって、どういう神経してんだよ、テメェ。恥ずかしくねェのか?」
「恥は……承知だ」
「開き直りかよ。そんなに女のケツが好きならいくらでも方法はあるだろ。金で買うとかよ。得意だろ、テメェら貴族なら」
「……それでは意味がないのだ。我が惚れたのは、其方なのだ。たとえ天を衝くほどの富があろうとも、其方を振り向かせられないならば意味がない……!」
なんか熱い展開になってきたっぽい。
これって、このまま覗いてていいやつかな。物陰からイマジナリーエキドナと二人して顔だけ出してるような形になってるけど。
『そう言いながら、これっぽちも背を向けるつもりがないんだね?』
そりゃ、気になるでしょうが!
というか、強欲の魔女であるエキドナの方が気になってるんじゃないの?
『当然さ。ボクは知識欲の権化。知識とはボクのためにあるようなものだからね』
だったら黙って覗く!
「何と言われようと、我は諦めるつもりはない! 必ずや、其方を振り向かせてみせよう!」
「ハッ、だったらさっさと斬魄刀を拾え。次離したらこの話はナシだ」
「望むところである!」
なんかスポ根始まった。
かと思ったら、また少しして言い合いを始めた。やっぱりケンカップルか?
▼△▼△▼△
あれから数年後。
「其方には何度も迷惑をかけたな。こうして不老不死と婚姻を結ぶ事が出来たのも、其方の手助けあってこそ。礼を言う」
「いえいえ。私も良いものを見せて頂きましたから。愛。素晴らしいですね」
ちょこちょこと私のところに顔を出しながらも、なんと黒羽少年は見事に不老不死を落とし、ついには結婚のご挨拶みたいな事をしてくるまでになった。
私に出来た事といえば、怪我の手当と愚痴を聞いた事ぐらい。大変微笑ましく聞かせて頂きましたとも。
「それにしても、意外でした。あなたはそういう事には興味がないと思っていましたので」
「そんだけコイツの根性が据わってたっつー事だ」
ずっと話は聞いてたし、覗き見もしてたから知ってるけど、黒羽少年の根性も大したものである。心なしか不老不死も丸くなったような気がする。
これも愛の力だろうか。名言『愛。素晴らしいですね』頂きました(自画自賛)。
「思えば、最初から他の方たちに比べて彼には優しかったですね」
「やはり我の魅力が溢れてしまっていたのであろうな!」
「誰が魅力だ、ちんちくりん」
まぁ、口ではなんやかんや言いつつもずっと付き合ってあげてたから、あながち間違ってはなさそうな気もする。私からすると生意気なクソガキみないな印象ではあるけども。
性格的に、不老不死はムカついたらだれ彼構わずボコるので、そうしなかったという事はあんなに付きまとうような事をされてもムカつかなかったという事だろうか。もしかして、こういうのがタイプなのだろうか。
こいつショタコンか……?
「ともかく、おめでとうございます。あなた方の事を近くで見ていた身として、我が事のように嬉しく思います」
何はともあれ、めでたい事だ。
貴族なのだから、結婚式も盛大にやるのだろうか。友達の結婚式というものに行った事はないから結構楽しみである。友人代表のスピーチとか考えておいた方が良いかな?
○パンドラ主
今回はほとんど物陰から覗いていただけ。ただし、霊圧で普通にバレている。
○齋藤不老不死
公式からの情報が少なすぎる眼帯ツインテール。朽木家と何か関わりがあるとも、ないとも考察されている。不老不死という、朽木と真逆の意味の言葉を名前にしているのが怪しいとか逆に怪しくないとか。
拙作では、朽木家に嫁入りする形で関わる事になった。
別にショタコンではない。ちょっと子供に優しいだけ。
○朽木黒羽
拙作オリジナルキャラ。
10歳ぐらいの見た目の少年。父親が病死したため、若くして当主となった。虚に襲われたところを不老不死に救われ、一目惚れをした。
多少柔らかくはあるが、席官でも逃げ出すレベルのしごきを数年間耐え抜き、自分を認めさせた。ついでに普通に強くなった。
実は不老不死と婚姻を結ぶ前に、所有者のいなくなった斬魄刀を勝手に使っていた事が問題となり、色々あった結果、正式に護廷十三隊に入隊して正式に斬魄刀を手に入れた。所属はもちろん六番隊。その問題に付随してパンドラ主と元柳斎のやり合いを間近で見る事になった。髪の毛がちょっと燃えた。
山本元柳斎怖い……。
○山本元柳斎重國
気軽に流刃若火を抜きすぎている自覚はあるが、表面上丁寧に取り繕っているが内心ナメ腐っているクソガキ(パンドラ主)を懲らしめるためには仕方ないと思っている。ただし、やり過ぎると尸魂界が壊れるので、まだ懲らしめるところまで行った事はない。
あと数百年もすれば落ち着くはず。