転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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 たくさんの評価・感想ありがとうございます。
 返せていませんが、ちゃんと読ませてもらっています。




零番隊・和尚

 

 

 八千流がなにやら回道という治癒の術を習っていると小耳に挟んだ。斬るの大好き女である八千流がその真逆である治癒を学ぶという珍しい現象だ。覗きに行こうとするのも当然の話である。

 が、それが良くなかったらしい。

 

「おんしがパンドラじゃな。少し付き合ってもらおうかの」

 

 なんかヤバそうなヒゲ面ハゲ大男に絡まれた。

 

 ▼△▼△▼△

 

 王属特務。最近は零番隊とか呼ばれているらしい霊王宮を守護する部隊のリーダーらしいその男に半ば拉致される形で狭い場所に連れ込まれた。狭い場所とはいっても上空に浮かんでいるらしい霊王宮へ向かうための筒みたいなものだが。

 普通はついていったりしないのだが、見るからにヤバい人っぽいから拒否出来なかった。なんか普通に怖かった。

 あとはエキドナが霊王宮に行ってみたいとか言い出したというのもある。

 

「さて」

 

 で、連れて来られたのは上空に浮かぶ巨大な板みたいな場所。霊王宮というからには宮殿的な感じかと思ったら、ギリシャの神殿とかにありそうな柱? だけ並んでいるひらけ過ぎたところだった。安全柵もないし、強風が吹いたら普通に落ちそうで怖い。

 

「わざわざこんな所まで来てもらったのは、おんしに聞きたい事があっての」

「そうですか。しかし、招待されるにはこの場所は少し寒々しいですね。そもそもあなたの名前すら聞いていませんし。招待する側の立場というものがなっていないのでは?」

「それはすまんかった。じゃが、名乗ったじゃろう? 真の名を呼ぶと書いて真名呼(まなこ)和尚じゃと」

「それはあだ名のようなものでしょう? であれば私の事も白金美少女と呼んでいただけますか?」

 

 一応、地上に転移ポイントはあるから最悪陰魔法の転移で逃げられる。という予防線はあるけども、威圧感があって普通に居心地悪いからもう逃げたくなっている。

 

「やれやれ……兵主部一兵衛(ひょうすべいちべえ)じゃ。ああ、口に出して呼ばない方が良いぞ。喉が潰れるからの」

「それは恐ろしいですね。この声の喪失は世界の喪失ですから」

 

 とまぁ、やっと自己紹介? が済んだワケだが。

 

「単刀直入に聞く。おんし、何者じゃ?」

「何者、ですか。それは難しい事を聞きますね」

「どこか異なる世界より訪れた。その斬魄刀の名もわしには見えん。極め付けは、世界を書き換えたあの力」

「…………」

 

 全部バレてる。不老不死にしか言ってない事も。

 

『面白い。盗聴か、あるいは思考の傍受か、それとも……』

 

 全然面白くないんだけど。

 

「まァ、これまで見た感じ、そう変な事もせんとは思うがの。わしとしては、やりようによっては世界を崩壊させ得るおんしの力を野放しにしておく訳にもいかん」

「……それでは、どうする気ですか?」

「なんせ、わしにとっても未知。それを見極めるために呼んだという訳じゃ」

 

 最悪。絶対消されるやつじゃん。

 出来る出来ないはともかく、世界を崩壊とかする訳ないし。なんのために滅却師倒したり大虚倒さないようにしたと思ってるのか。

 

「そんな事をするつもりはありませんよ。もはやこの世界は私にとっても大切なもの。それを壊す事などありません」

「──今は、じゃろう?」

「──エル・シャリオ」

 

 ゾワリ。鳥肌が立った。

 何してくるつもりか知らないけど、先手必勝。

 霊圧全開、範囲は1人呑み込む程度に絞って威力も上げた。

 

「まあまあじゃの」

 

 しかし、無傷の悪面坊主。

 王属特務、あるいは零番隊。護廷十三隊よりも上みたいな雰囲気を出しているんだから、これぐらいじゃダメなのかもしれない。

 その手には大きな筆のようなものが握られている。斬魄刀だろう。

 

「ま、ここで暴れられても困るからの。あまり気は乗らんが、制圧させてもらおう」

 

 どの口が……! 

 

 もっと強い魔法使うから! 

 

『いつでも』

「アル・クラム」

 

 超重力を発生させる魔法。

 どんな素材でできているかは知らないが、こんな場所で使えば落下一直線だ。

 

「うおっ!?」

 

 床に穴を開け、落下していく悪面大男。

 コレで一件落着──。

 

「やってくれるわい」

「ッ!?」

 

 背後から斬られた──と、錯覚したが、あの男が手に持っているのは筆。斬られてはいない。

 しかし、身体が重くなった。

 

「わしの筆が斬るのは”名”。さて、”パン”よ。半分の力でどこまでやれるかの?」

 

 名前を斬るとかいう概念系の能力。

 危険だ。

 

『これは……真名を介した魂の精髄への干渉か。魔女因子そのものへの干渉ではないが、危険だね』

 

 権能で、その効果をなかった事にする。

 

「ほう、それが力の一端か。やはり斬魄刀とは別の能力じゃな」

「どうやら、本気で私を消したいようですね」

「おっかない事を言うのう。わしはただ、暴れるおんしを大人しくさせようとしているだけじゃというのに」

 

 コイツ……! 

 白々しい! 

 

「──アル・シャリオ」

 

 ここは地上じゃない。被害なんて気にしなくて良い。

 

 もう一回。今度は特異点の方。

 

『いいだろう』

「アル・クラム」

 

 先ほどの重力場を発生させるものではなく、特異点(ブラックホール)を発生させるバージョンのもの。

 当たったらひとたまりもない星の最期。ブラックホールで逃げさせない。

 

「無茶苦茶をしよるわ。黒めよ──『一文字』」

 

 次の瞬間、男を引きつけるはずの特異点の超引力が消失した。

 

「はがっ!? ぶ」

 

 視界が回り、直後背中が爆発したような激痛。

 

「わしの力は『黒』。ひとたび『一文字』を解き放てば、この世界のあらゆる『黒』はわしのもの」

「ぁ……ぎ……」

「ようやく大人しくなったかの」

 

 何故かは分からないが、特異点の引力が私だけに作用していた。けれど、潰されない程度の引力で、私の身体は折りたたまれた。球状に、骨の形なんてお構いなく。

 

『アル・クラムの制御を奪われた? それどころか出力の操作まで。なるほど『黒』か。厄介だね』

 

 さらに、上から何かを塗られた感覚があった。

 痛みが和らぐと同時に全ての感覚が鈍くなっていくような。

 

「──本気で……相手をしなければならないようですね」

「むぅ。塗り潰しただけでは戻るか」

 

 権能で『見間違え』にする。

 

『場合によっては影が使えない可能性があるね』

 

 いいよべつに。いくらでもやりようはあるし。

 

 そして。

 

「卍か────」

「ま、落ち着いたならそれで良いんじゃ」

 

 かくなる上はと卍解しようとした瞬間、肩を組まれた。

 

「は……?」

「出来れば、あの隕石もなんとかしてほしいんじゃがのう」

「は……?」

 

 ▼△▼△▼△

 

 あの後、アル・シャリオの星は権能でなかった事にして、それから他の零番隊の面々にも紹介された。

 麒麟寺天示郎(きりんじてんじろう)。リーゼント。チンピラ。うるさい。嫌い。

 二枚屋王悦(にまいやおうえつ)。グラサン。チャラ男。うるさい。嫌い。

 修多羅千手丸(しゅたらせんじゅまる)。大和撫子。親身になってくれた。好き。

 

 兵主部一兵衛。糞坊主。嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。「すまんかったのう」とか言ってたけど絶対許さない。

 

「どうするよアイツ。さっから無言でみかんを貪ってるが」

「一体何があったのだ?」

「なんか零番隊の奴に襲われたってよ」

「零番隊だと!?」

 

 さっさと転移で地上に戻ってきた。

 そこから朽木邸へ一直線。置いてあったみかんを食べて気を紛らわせている。

 

「まァ、目ェ付けられるところは思い付くが……」

「それは、其方に使った……いや、深くは聞かぬが」

「アタシにも原因があるっつうなら殴り込んでも良いんだがな」

「それは流石に止めるぞ」

 

 もそもそ。もそもそ。

 

「しかし、パンドラは私にとっても恩人。返せぬ恩がある。零番隊がどれほど偉いのかは知らぬが、正式に朽木家として抗議しよう」

 

 もそもそ。もそもそ。

 

「ンなもんに意味があんのかよ」

「相当な意味があるだろう!?」

 

 もそもそ。もそもそ。

 

「つーか、いつまで拗ねてんだよ。みかんが全部なくなるだろうが」

「傷付いた身体は直せても、傷付いた心は直せないのです。私は傷付きました。愛が必要です」

「めんどくせェ……」

 

 あの糞坊主……どうしてくれようか。

 黒を支配するとか言って実際に特異点を自分のものにしていたし、黒い系のものは主導権を奪われるかもしれない。そうなるとやりづらいが、やりようはある。アル・シャリオだって通じるはず。

 

「ったく、コレでいいかよ」

 

 不老不死に、正面から抱き付かれた。

 確かに、愛情表現だ。

 

「良いですね。回復しました」

「やっすい傷だなァ、オイ」

 

 まぁ、いつまでもウジウジしてても良い事はない。ずっと根には持つが。

 

 零番隊、特にあの糞坊主。

 次何かしてきたら冗談抜きで権能で洗脳する。傀儡にする。屍兵にしてやるからな。

 覚えとけよ。

 

 




 
 ○パンドラ主
 本能的に初代の隊長たちとは比べ物にならないぐらいの危険を感じた。簡単にはあしらえないレベルで身の危険を感じるぐらいのイチャモンを付けられたら流石に他人への権能の使用も考えるし、場合によっては洗脳だってやるかもしれない。
 根に持つタイプ。
 零番隊は千手丸以外嫌い。特に和尚は永劫忘れないレベルで嫌い。

 ○兵主部一兵衛
 ただでさえその出自から注目していたのに、世界を好きに書き換えられる可能性があるとなっては流石に見逃せなかった。これまでの行動的に問題ないとは思うものの、だからといって放置は出来ないので見極めるために今回の行動を起こした。
 パンドラ主の出方を見るために殺気を飛ばしたりして言い掛かりをつけた。あれだけやっても書き換え能力を自分の治癒以外に使わなかった事や最後に使おうとしていたのが権能ではなく卍解であった事から、世界はおろか敵にすら簡単には使わないと判断し、護廷十三隊にとっては有益な人物でもあるので様子見で良いとした。
 しかし、『黒』で塗り潰しても復活してきた事から、相応に警戒はしている。
 今回は殺さないように手加減したが、最悪殺せば良いと考えている。(普通に考えて殺してしまえば能力もクソもない。なお)

 ○麒麟寺天示郎&二枚屋王悦
 和尚に客人として紹介され、深くは聞かずにやかましくもてなした。

 ○修多羅千手丸
 他の者に比べて相対的に良く見えただけで、「災難じゃったのう」とちょっと共感しただけで別にそれほど親身になっていた訳ではない。
 
 
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