転生者『虚飾の魔女』(なお中身)   作:白金の絹糸

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 またまた全話からかなりの時間が経過しています。




真央霊術院の特別講師

 

 

 なんか、元柳斎が建てた学校で特別講師をする事になった。

 認めたくないけど、この頭で教師が務まるとでも? 

 

 ▼△▼△▼△

 

「真央霊術院から、隊長の誰かに特別講師として護廷十三隊の歴史について話してほしいとの依頼があった」

 

 隊長格が集まる隊首会。

 昔は滅却師(クインシー)関係とか、結構重要な事を話していたが、最近は大体組織の運営の事で、大体副隊長の六車拳西が何とかしてくれるので適当に流していればいい。最悪エキドナが内容を聞いてくれているし。

 

「誰か立候補してくれる者はおらぬか」

 

 そういえば、最近は現世の技術が少しずつ発展してきていて、あと100年か200年ぐらいあれば、前世のレベルに追い付くような気がする。今までも楽しかったが、やはり娯楽的な意味では平成令和の時代が一番だ。それがもうすぐ。最近の楽しみである。

 

「困ったのう……」

 

 今はもう慣れたとはいえ、このくぎゅうボイス。カラオケとか行きたいものだ。

 

「仕方あるまい。歴史というならば、虚飾か卯ノ花が適任じゃが、どちらが良いか……」

「総隊長。ここは虚飾隊長に任せてみてはどうでしょう。彼女は多くの隊士から慕われていますし、まさに適任かと」

「うむ。では、虚飾に任せるとしよう。良いな、虚飾よ」

 

 原作のパンドラ様の事を考えたらカラオケしている姿とか想像は出来ないが、それはもう仕方ない。この声を活かすのも義務のようなものなのだ。

 何かいい感じの電波ソングとか生まれてないかなー。

 

「これ、聞いておるのか? 虚飾」

「おい、隊長、言われてるぞ」

 

 と、考えていると後ろにいる副隊長に肩を叩かれた。

 

「はい……?」

「お主を真央霊術院の特別講師に任命する」

「……はい……?」

 

 やっば。全然話聞いてなかった。

 これ今どういう状況? 助けてエキドナー! 

 

『…………』

 

 エキドナさーん!? 

 

 ▼△▼△▼△

 

 と、いうワケで特別講師とやらに任命されたのだが。

 

「自分でこんな事を言うのは癪ですが、私にそういうものは合わないと思うのです」

「オマエまた押し付けられてんのかよ……」

「気が付いたら決まってしまっていまして」

「どうせボケッとしてたんだろ」

「寝ずに起きていただけでも褒めてもらいたいぐらいですが」

 

 朽木家で不老不死に愚痴る。こういうのは、大体私が否を言っても押し通されるから困る。

 

「ともかく。ですので、あなたにも協力してもらいたいのです」

「はァ? なんでそうなんだよ。そもそもアタシは部外者だぞ」

「その辺りはどうにでもなるでしょう。霊術院の方には、私の方から話を通しておきますよ」

 

 一人でやるのはちょっとアレなので、不老不死を巻き込む事にする。仮にも五大貴族である朽木家の人間だし、歴史を語らせるのに不足はないだろう。元々隊長もしていたし。

 

「オマエなぁ……アタシに対して無茶振りするのも程ほどにしとけよ?」

「良いではありませんか。あの日から、あなたには遠慮しないと決めましたから」

「あの日からって、オマエそれより前から遠慮なんかなかっただろ。仕事で疲れたからアレ買ってこいとか、代わりに(ホロウ)狩ってこいとか、極めつけはアレだ。初めて現世に行こうって時にピーピー言いやがって。結局全部アタシがやったんだぞ、アレ。子供かっての」

「うるさいですよ」

「そういうトコだぞ、オイ」

 

 色々と言っていたが、結局不老不死は協力してくれる事になった。私には甘いのだ。

『あの日』から早500年以上。あれから姿も変わらず、私たちは仲良くやっていた。姿が変わらないで言うと八千流改め烈もなのだが、アレってどうなってるの? アンチエイジング? 元柳斎を見てみなよ。

 

 ▼△▼△▼△

 

「と、護廷十三隊は創設から今に至るまで、尸魂界を中心として、魂魄の保護や虚の退治などを行ってきました。一番隊から十三隊まで、その隊ごとに特色はありますが、どの隊も協力し合って任務に取り組んでいます。さて。本日は長々と話を聞いてくれてありがとうございました。私たち護廷十三隊は皆さんの入隊をお待ちしています。この後少しの間は教員室にいますので、何か質問や話したい事があれば、いらして下さい。それでは」

 

 ふぅ。何とかやりきった。

 隊長として色々とやっているので、今さら学生の前に立ったところで緊張したりはしないが、ちゃんと授業出来るかどうかは別の話。エキドナだけに任せると授業というよりは、ただただ情報を吐き出すみたいな形になりそうだったので、不老不死と一緒に頑張って内容を考えて、授業中はそれを記憶したエキドナに読み上げてもらっていた。

 

『君はもう少し覚える努力をした方が良いと思うけどね』

 

 ほら、私が中途半端に覚えようとして失敗したら嫌だし。

 

「つーか、これアタシいらなかっただろ絶対」

「いえいえ。いてくれて助かりました。私1人だとナメられてしまっていたかもしれませんし」

「わざわざ隊長羽織着てきてナメられる事はねェだろうよ。そういうヤツがいたら、それはそれでは面白ェけどな」

「面白くありませんが」

 

 ナメられて学級崩壊みたいな事になったら最悪だし。

 入隊したばかりの隊士でもたまにいるんだよなぁ。確かにこの身体の身長はそんなに高くないし、誰もが見惚れるぐらいの美貌だから、そっちに目が行ってただの美少女に見えてしまうのも仕方ないとは思う。ただ、とはいえだ。たまにナンパしてくるような態度のヤツもいたし。

 いや、気持ちは分からんでもないけどね? 

 最近は副隊長の拳西が厳つめなのでそういうのはあんまりないが。

 

「いやぁ、助かりました、虚飾隊長。これで生徒たちも護廷十三隊について深く理解出来たでしょう」

「この程度であればお安い御用です。私は霊術院に通った事がないので、新鮮な体験をさせていただきました」

「そう言ってもらえると助かります」

 

 霊術院からのオーダーとしては、1年に何回か、あるいは1日にまとめて最上級クラスの数だけ授業をしてほしいということ。1日に何回もやるのは疲れるので、何日かに分けてやる事にした。

 こんな事を言ったらアレだが、子供(普通に大人みたいな人もいたが)の前で偉そうに喋るのはちょっと気持ちいいというのもある。

 

「お茶と菓子を用意しておりますので……朽木様のお口に合うかは分かりませんが」

「安物などと言って難癖を付けてはいけませんよ?」

「誰が言うか。馬鹿にしてんだろ、オイ」

「いいえ?」

 

 教員室で用意してもらったお茶とお菓子を堪能する。

 教員室の扉の向こうに生徒の影が見えたので、微笑んで手を振ってやる。この身体は顔がとても良いので、こうしているだけでも大変絵になるのである。

 

「あの、俺、虚飾隊長の九番隊に入りたいです!」

 

 遠くから見ているだけの子も多かったが、こうして話しかけにきた子もいた。

 

「そう言ってもらえると、私もここに来た甲斐があったというものです。必ず叶えられる訳ではありませんが、入隊の際に希望を出す事が出来ます。お待ちしていますね?」

「は、はい!」

 

 隊士の振り分けは、大体どの隊も同じぐらいの人数になるように調整されるが、希望は結構偏る事がある。人気どころで言えば、一番隊や八番隊や十三番隊、あとは私の九番隊。こうして考えると古参の隊長がいる隊に偏っている。

 ただ、それで言うと烈の四番隊は大抵の場合最下位人気なので例外だ。私としては、医療班みたいなものだから戦いの矢面に立つ機会が少ないという意味では、危なくなくて結構良い隊だと思っているのだが。というか、今さらだけど烈がそんな四番隊にいるって違和感すごい。

 

「さすがの人気だなァ、虚飾隊長サマ」

「私の見目が麗しいからでしょうね。それほど人となりを知った訳でもないのに人気というと、見た目が原因でしょうし」

 

 古参組が人気なのは、ベテランには頼りがいがあるとかそういう感じだろうが、その中でも特に私の隊に人気が集中しやすいのは、やっぱり見た目があると思う。

 

「自分で言えるのがさすがだわ」

「事実でしょう?」

「否定はしねェけど」

 

 とはいえ、たくさんの人が希望してくれるのは嬉しいが、全員が全員の希望を叶えられる訳ではないし、なんならその選別も隊長である私がしているし、でちょっと心苦しく思わなくもない。人気なのも困りものだ。

 

「それにしても、立派な学院ですね」

「元々はあのハゲが個人的にやってたらしいけどな。生徒が増えて教師も増やしてってやってる内にどんどん改装していったらしいぜ」

「そうでしたか。ちなみにあなたは通った事があるのですか?」

「いや? オマエと同じでそんなんは全部飛ばしていきなり隊長だったからな。つーか、お行儀良く座って授業とかガラじゃねェし」

「そうだと思いました」

「オマエ馬鹿にしてるだろ?」

「あなたが自分で言ったのでは……?」

 

 周りの教師たちがオロオロと見ているが、ちょっと朽木家というネームバリューにビビり過ぎな気がする。不老不死は朽木家の生まれじゃなくて、途中から嫁に入っただけだから、そんなに気にする必要はないと思うのだが。貴族にしては柄悪いし。

 

「よろしければ、学内を案内していただけませんか? 実は、どのような施設があるのか、興味があったのです」

 

 ともあれ、そうして放課後に学内を案内してもらう事になり、なかなかに有意義な1日を過ごす事が出来た。

 

 ▼△▼△▼△

 

 今さら言う事でもないが、流魂街には2つの大穴がある。滅却師と霊子を分解する虚、それぞれにアル・シャリオを落とした場所だ。

 加減したとはいえ、元は都1つを容易く壊滅させる星の落下だ。何百年か経ったとしても、その跡は今も残っている。だからどうなるという訳でもないが、私はたまにその跡を見に行っている。

 こんな風にした私が言うとアレだが、ちょっと観光スポットみたいで気分転換になる。権能を使えば元通りに出来るが、今さらするつもりもない。

 

 その帰り道。

 

「ぶつかってきたの、そっちやんか。ボクは気にしてない言うてるのに」

「んだと、ガキ……!」

「ギン……」

 

 子供2人が大人に絡まれていた。

 

 流魂街は治安が悪いところも多いし、喧嘩なんかも日常茶飯事というぐらいには見る。一応私にはそれをとめる力があるが、目についたもの全てに介入していたら、きりがない。

 それに、大人同士なら勝手にやっておけという感じなので、よっぽどでなければ素通りする。

 

 ただ、子供が大人に虐められたりするのは普通に不快なので介入するが。

 

「もし、どうされましたか?」

 

 まずは穏便に話を聞いて……。

 

「仲間のガキか……集まってきやがって」

「…………」

 

 ガキではないが、まぁ、今は私服なのでそう見えても仕方ない。

 

「良い大人が、子供に食って掛かるものではありませんよ。話は私が聞きますので」

「なんやの、キミ。急に割って入ってきて。別に頼んでへんのやけど」

 

 あれぇ……? これもしかして助けに入った側にも歓迎されてない? 

 

「あの、来ない方が良かったでしょうか……?」

 

 この場にいる全員にいらない子扱いされたら帰るしかないので、もう1人の女の子にも聞いてみる。すると、ふるふると首を左右に振ったので、ちゃんと来た甲斐はあったようで良かった。

 

「お互いに不幸な行き違いだったという事で、この場は収めていただけないでしょうか」

「ボクは最初から気にしてない言うてるんやけどね」

「あまり、大人の方を困らせてはいけませんよ」

 

 銀髪の少年と金髪の少女の手を取って、その場を離れようとする。

 が、私の肩に手が置かれる。

 

「待てや、コラ」

 

 困った。出来れば穏便に済ませたいのだが。

 

 仕方ない。

 

「穏便に済ませようとしているのが、分かりませんか?」

 

 こっちの方に来る時は一般人に擬態するために霊圧をめちゃくちゃ抑えているが、それをほんの少しだけ開放する。

 いくら子供といっても、さすがに取り返しのつかないレベルの事をやらかしていたら、こんな事はせずに謝らせたり色々と考えるが、今回のは聞く限り本当に大した事ではなさそうだし。

 

「ッ……!?」

「それでは、失礼しますね?」

 

 思わず手を離した男に微笑んで、そして2人の手を引いてその場を離れた。

 

 ▼△▼△▼△

 

 普段は子供を助けても、気を付けて帰るんだよー、みたいな感じで途中で別れるのだが、今回は成り行きで2人が暮らしている家までついていく事になった。

 だからといって何かする事がある訳でもないし、その日はちょっと話して帰った。

 

 少年の方は市丸ギン。少女の方は松本乱菊。

 ギンはともかく、乱菊に懐かれたので、たまーに顔を出すような関係になって数年。

 

「あ、ギン! パンドラさん来たよ!」

「わざわざ言わんでも気ィついてるよ」

 

 大福を片手に訪れると、乱菊が出迎えてくれて、奥からギンも現れた。

 

「大福を買ってきたのですが、一緒に食べませんか?」

「やったー!」

「わざわざええですのに」

「近くを通りましたので」

 

 たまーに顔を出すと言っているように、長居をする事もほとんどないので、大福を食べて軽く雑談したら帰る。子供2人で生活していると聞けば、現代基準では可哀想な感じに思えるが、ここでは生活に困っている様子もない。

 子供を見ていると癒されるので、仕事に疲れた心にメンタルセラピーとして来ているという面もある。まぁ、疲れるほど仕事をしているかと言われると、結構部下の人たちに任せているので黙秘するが。

 

「それでは、そろそろ。またいつか来ますね」

「待ってるねー!」

 

 いつ来るとは決めていないので、いつかとは言いつつも、いつかという言葉を使うほどの間は開けずにまた来る事になるだろう。

 いつの間にかギンがいなくなっていたので、乱菊1人に見送られ、その家を後にした。

 

「なァ、パンドラサン。あんた、死神やろ?」

 

 と、思ったら少し歩いたところにいた。

 

「よく分かりましたね。ここに来るときは私服なので、分からないと思ったのですが」

「そらなァ。初めて会うた時、ボクらと同じ霊力(ちから)見せてたし、いっつも周りに本みたいなん浮いてるし」

 

 個人的な付き合いだし、わざわざ死神の事を言った事はない。死神は荒っぽい仕事もするから、怖がらせたりしてはいけないと思って。

 ただ、確かに思ってみれば斬魄刀である浮遊する書はいつも通りなので、全然隠せていなかった。

 

「ボクも死神なりたいんやけど、手短になれる方法ない?」

「死神になりたいのですか? 危険な仕事もありますが」

「死神なったら瀞霊廷に住めるんやろ? ボク贅沢したいんよ」

 

 意外だ。まぁ、誰でも贅沢はしたいと思うから、不自然ではないけど……。

 

「霊術院にはツテがあるので、話は通せますが……乱菊はどうするのですか?」

「乱菊は1人で生きていける。贅沢したいとか言うて死神なるの恥ずかしいから、乱菊にはナイショにしとってな」

「難しい事を言いますね。あなたが急にいなくなれば、何としてでも聞き出そうとしてくるでしょうに。私まで急にいなくなるのは忍びないですし、どう言い訳したものでしょうか」

「まァ、最悪死神になるのは言うてもええけど。ボクが死神になるまでは待ってくれたらそれでええわ」

「そうですか? それぐらいなら誤魔化しておいても構いませんが」

「じゃ、そういう事で。んで、ボクはどうしたらいいん? その霊術院いうのに行ったらいいん?」

「そうですね……ツテがあるとは言いましたが、入学試験は受けてもらう事になると思うので、近くなったら言いましょう」

「なら待っとくわ」

 

 それから、知り合いのよしみで入試の枠に入れてあげて、ギンは無事に合格。それどころか、6年制のはずなのに飛び級で1年で卒業し、しかも即入隊からの即席官になった。席官といったらその隊の幹部クラスだし、とんでもないエリートだった。

 

 ちなみに、例によって霊術院で特別授業をした時に廊下でバッタリ会った際には、恥ずかしいから入隊しても知り合いとしては接さずに初対面のフリをしてほしいと言われた。かわいいところもあるものである。

 あと、隊長である事には大げさに驚かれた。普通にヒラの隊士だと思っていたらしい。相変わらず失礼な子である。

 

 





 ○パンドラ主
 真央霊術院の特別講師を押し付けられたが、普通に楽しかったのでオッケー。子供が大人に絡まれていたりしたら大人として助けるが、私服だと子供に見間違えられる事もしばしば。
 不老不死と一緒にいる時に周囲の人間がよそよそしくなるのは朽木家のネームバリューのせいと思っているが、そうではなく普通に不老不死と口喧嘩みたいな事をし始めるから。本人たちはじゃれ合っているだけだが、何も知らない周囲の人間は胃を痛めている。

 ○市丸ギン
 正直に言うとパンドラ(死神)主とは関わりたくなかったが、乱菊が懐いてしまったため、それならばと利用する方向に。死神になるまでの時間の短縮になればそれで良いと考えていたが、隊長と知って別の利用方法がないか考え中。好物を聞かれた時に干し柿と答えたのに一度も干し柿を持ってこなかったパンドラ主には少し不満がある。

 ○松本乱菊
 ちょっと年上ぐらい(に見える)のお姉さんが友だちになって嬉しい。ギンがいなくなった理由については、死神になるためとすぐに聞かされていた。自分も死神になろうとしたが、パンドラ主から、ギンは内緒で死神になって驚かせようとしているから、その気持ちを汲んであげてほしいと言われ、一度踏みとどまった(パンドラ主のテキトー吹かし)。しかし、死神になっても一度も顔を見せにこないので、ぷんぷん怒りながら霊術院に入学した。
 
  
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