仮面ライダージオウ 外伝 FUTURE大戦 作:ボルメテウスさん
夕暮れの西日が差し込むクジコジ堂にジョニーを連れ帰ったのは良いが、説明するべきことが山積していた。
キッチンからトレイを持った順一郎が現れた。
「おかえり~!今日は随分長い買い出しに行ってくれたねぇ」
いつも通りのんびりした口調だが、見慣れない客に気づいて小首をかしげる。
「初めまして!僕は常磐順一郎、この店の店主さ。君もお客さん?」
「あぁ……迷惑かけてすまない。俺はジョニーだ」
「ふぅん?なんか昔の映画みたいな名前だね!コーヒーでも飲む?紅茶もあるけど」
「いや、俺は……ラムネがあればありがたい」
順一郎がぱあっと目を輝かせる。
「おぉ!ラムネ!いいチョイスだね!確か戸棚に去年のお祭りの余りがあっ……あ!そうだ!ちょっと待っててね!」
足早に奥へ消え、ガチャガチャと物音を立てながら戻ってくる。その手には青い瓶ラムネが三本。
「おお!まさかまだあったとは……懐かしいなぁ。よくみんなで飲んだんだ」
蓋を押してビー玉が沈む独特の音が三度響く。ゲイツが怪訝そうな顔でジョニーを見つめる。
「おいおい、ただのラムネ好きに見えんがな。お前は何者だ?」
「ジョニーだって名乗っただろう。他に何が必要だ?」
そうすると。
「まぁ、色々とあったんだよ、俺にも。それで聞くけど、お前達は仮面ライダーなのか?」
「あぁ、そう言えば自己紹介はまだだったね、俺は常磐ソウゴ!こっちはゲイツにツクヨミにウォズ!」
「・・・俺の名前もそうだが、お前達の名前もかなり変わってるな。まぁいい。俺はジョニー、仮面ライダーガンナーだ」
「ガンナー? また新しいライダーか……」
ゲイツが腕を組みながら唸る。ソウゴは壁のカレンダーをちらりと見た。今の時代は2018年だ。だがジョニーはそのカレンダーを目にして初めて気づいたように眉をひそめた。
「ここは……俺の時代じゃないのか?」
一同が凍りつく。時計の針が止まったように空気が緊張した。
「どういう意味だ?お前はいつから来てる?」
ゲイツの声が鋭くなる。
ジョニーは困惑した表情で答えた。
「俺の記憶違いじゃなければ……2023年の春だったはずだ。こんな古いデザインのカレンダーだなんて……」
ソウゴの胸中に閃光が走る。これまで何度も体験してきたタイムトラベラーの反応と同じだ。彼はゆっくりと口を開いた。
「君は……未来から来たんだね?」
「未来?」
ジョニーは首を傾げる。
「いや……俺にとってはこれが現在だ。だがジョニーは……違う時代の人間なのか?」
時を超える旅路は常に孤独なものだ。ソウゴ自身が経験したことだった。だからこそ彼は微笑んだ。
「2018年……」
ジョニーが呟く。その言葉は未知の概念を咀嚼するかのように響いた。
そうしていると。
「2023年!」
ソウゴの声が跳ね上がった。彼は興奮を抑えきれずに身を乗り出す。
「その時代には『仮面ライダーシノビ』って存在したか?」
ジョニーは一瞬ぽかんとしたが、すぐに思い当たったように頷いた。
「ああ……シノビさんか。一緒に戦ったことがある。少し前に共闘したかな」
その言葉にソウゴの目が輝いた。まるで宝物を見つけた少年のように。
「やっぱり!本当なんだ!」
ツクヨミが驚いて声を上げる。
「あのシノビが本当に君の時代に存在したってこと?」
ゲイツも珍しく目を見開いている。
「しかも共闘しただと?消滅したはずのライダーが」
ウォズが静かに本を開きながら呟いた。
「これは、確かに興味深いな」
「どういう事なんだ?」
それらの会話に、ジョニーは首を傾げる。
ソウゴは静かに深呼吸した。心臓が早鐘を打っている。シノビの未来が存在するはずがない──その矛盾が頭の中で渦巻いていた。
かつてオーマの日は、「オーマジオウが君臨せず、ゲイツリバイブが救世主となる」という形で結末を迎えたはずだった。歴史が大きく変わる分岐点であり、その後に訪れるはずだった未来は完全に塗り替えられていた。少なくともソウゴ達はそうなっていたと思われた。
「ウォズ」
「ああ、我が魔王」
ウォズがゆっくりと本を閉じる。その目には鋭い洞察が宿っていた。
「シノビが存在しない未来が確定したのは、オーマの日が決定的に変化したからだ」
ゲイツが眉をひそめる。
「つまり……俺たちが作った未来にはシノビが存在するはずがないと?」
「理論上はね」
ツクヨミが不安そうにジョニーを見る。
「でも今、彼はシノビと一緒に戦ったと言った……それってどういうこと?」
ウォズが再び本を開き、ページを慎重にめくる。
「おそらくだが、先日のアナザージオウとの戦いで、破損してしまった事が影響している可能性がある。この事から、本来ならば消滅した未来もまた合わさってしまった可能性はある」
「それじゃ、あの仮面ライダーも未来から?」
「・・・いや、あの仮面ライダーは、難しいね。確かに未来から来たが、仮面ライダー555の歴史に存在した仮面ライダーだ」
「何?」
そう言うとウォズは続ける。
「彼は仮面ライダー555のもしかしたらの歴史に存在した仮面ライダーサイガだ」
「あぁ、確かに555にどこか似ていたけど、そうなんだ」
そう、ソウゴが納得している所で。
「だが、それだと可笑しいだろ、だって、555は」
「あぁ、ライドウォッチがここにある以上は、555の歴史にいたはずのサイガは現れないはず。現れる理由があるとしたら」
「スウォルツっ」
ここに来て、連想して現れたのは、スウォルツ。
そう、その場にいたジョニーを除く面々は頷く。
「・・・何やら気になるけど、どういう事か説明してくれるか?」
「そうだね、スウォルツが何を企んでいるのか。それを知る必要はある」
そう、ウォズはジョニーを怪しみながらも、ゆっくりと話し始める。
ソウゴ達が、そんな話をしていた時。
路地裏に響く異様な音。暗がりで何かが蠢いていた。鈍い光沢を放つ鱗が湿った路面に触れるたび、粘液が糸を引く。
赤い皮膚はところどころ剥がれ落ち、内側からの脈動が透けて見える。喉仏が上下し、生温かい液体が溢れ出す。肉を千切る音は耳障りで、骨が砕ける乾いた音がそれに続く。爪の間から垂れる鮮血が石畳に染み込んでいく。
犠牲者の肌に浮かんだ汗と脂が混合物になり、獣臭さと腐敗臭が鼻腔を刺す。食らうものは瞳孔の細長い目で獲物を見下ろし、次の一口を求めている。
胴体に刻まれた「2018」と背中に刻まれた「AMAZON ALPHA」の文字が暗闇に浮かび上がり、獲物が最期の痙攣をするたびに怪人は満足そうに口角を上げた。