仮面ライダージオウ 外伝 FUTURE大戦   作:ボルメテウスさん

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2780:重力の戦い

ソウゴが異変を感じたのは、街の交差点へ足を踏み入れた瞬間だった。

夕方の光がビルの窓に反射し、いつもの街並みを薄く歪ませている。

だが、その歪みは単なるガラスの反射ではなく、時間そのものが一度だけ折れ曲がったように見えた。

 

「この感じ、また誰かが無理やり道を開いてる」

 

ソウゴは足を止め、視線を周囲へ走らせた。

その直後、反対側の路地から仮面ライダーオイカケが姿を現した。

さらにビルの影から、テンガロンハットを思わせるシルエットの仮面ライダーガンナーが歩み出る。

 

「追っていた気配が、ここで途切れたんだ」

オイカケは短く言い、地面の擦れ跡を指でなぞった。

「逃げたというより、移動の出口だけが残された感じだな」

ガンナーは二丁拳銃を抜き、交差点を囲む窓と屋上へ目を走らせる。

 

ソウゴは二人が同じ場所へ集まったことに、心強さより先に不安を覚えた。

仲間が増えるほど、事件の大きさも同時に膨れ上がっている気がした。

それは王になりたいという夢の高揚ではなく、歴史の裂け目が広がる音だった。

 

空間が裂けた。

オーロラの幕にも似た歪みが交差点の中央へ広がり、冷たい光が路面を照らす。

その奥から、白と黒の装甲を纏った異質なライダーがゆっくりと歩み出た。

 

ソウゴは一目で、その存在が普通の怪人ではないと理解した。

こちらを見下ろすような余裕と、戦いを遊戯に変えるような危険な圧がある。

アナザーディケイドによって呼び出された、仮面ライダーエボルだった。

 

「みんな、来るよ、あいつは普通に斬り込ませてくれない」

 

ソウゴはジオウⅡライドウォッチを握り、迷わずジクウドライバーへ装填した。

時間が重なり、未来の断片が視界の奥で光り、危険の線がいくつも見える。

オイカケは低く身を沈め、ガンナーは銃口を左右へ分けて射線を作った。

 

三人は同時に動いた。

ガンナーの弾丸が先に走り、エボルの肩と足元を正確に狙っていく。

オイカケはその弾道の隙間を縫い、逃げ道を塞ぐように背後へ回り込んだ。

ソウゴは未来視でエボルの移動先を読み、二人の攻撃が重なる一点へ踏み込む。

 

だが、エボルはそこにいなかった。

未来に見えた位置から半歩だけ外れ、空間を滑るようにソウゴの斬撃を避ける。

直後に波動が放たれ、三人の間にあった連携の線をまとめて叩き折った。

 

ガンナーの弾丸は途中で軌道を乱され、火花だけを空中へ散らした。

オイカケは追い込むはずの位置から逆に押し返され、壁際へ弾かれる。

ソウゴは未来を見て避けたはずなのに、避けた先へ別の衝撃が置かれていた。

 

「見えてるのに、届かないなんて」

 

ソウゴは膝を沈め、地面を削りながら踏み止まった。

ジオウⅡの力は確かに未来を見せてくれている。

けれど、エボルはその未来を知っているかのように、さらに外側へずれてくる。

 

ガンナーが弾丸を入れ替え、銃身へ新しいエネルギーを流し込んだ。

オイカケもまた体勢を立て直し、エボルの背後へ回るために速度を上げる。

ソウゴは二人の意図を読み取り、今度こそ連携の中心へ自分を置こうとした。

 

「次で動きを止める、合わせてほしい」

ガンナーの声は落ち着き、焦りを一切表に出していなかった。

「逃げる先なら、俺が追い詰めてみせる」

オイカケはエボルの背後へ回り、足元の影を追うように加速した。

 

ソウゴは未来を見た。

ガンナーの一撃がエボルの動きを止め、オイカケが逃げ道を封じる未来だった。

その隙に自分が斬り込めば、一瞬だけでも敵の余裕を崩せるはずだった。

 

三人の動きが重なる。

ガンナーの銃口に光が集まり、オイカケの足がエボルの背後を捉える。

ソウゴは剣を握り直し、未来に見えた勝ち筋へ身体を滑り込ませた。

 

しかし、エボルは笑うように肩を揺らした。

波動が足元から弾け、地面そのものが爆ぜるように隆起した。

射線は崩れ、追跡の足場は砕け、ソウゴの踏み込みは半拍だけ遅れる。

 

その半拍が致命的だった。

エボルはオイカケを孤立させる位置へ滑り込み、片手を軽く振った。

ソウゴは未来視の中で、オイカケが吹き飛ばされる光景を見てしまう。

 

「させない、俺がそこへ行けばまだ間に合う」

 

ソウゴは方向を変え、オイカケを庇うために走った。

その判断でガンナーの射線がわずかに空き、エボルの狙いがソウゴへ移る。

見えていたはずの未来が、仲間を守る選択で別の危険へ変わっていく。

 

エボルの掌から、重く濁った波動が放たれた。

それは速さよりも圧で押し潰す攻撃で、避ければ背後の二人へ向かう。

ソウゴは歯を食いしばり、受ける未来と倒れる未来を同時に見てしまった。

 

「未来が見えても、守れなきゃ意味がない」

 

ソウゴが剣を構えた瞬間、波動の軌道が不自然に沈んだ。

まるで見えない手で地面へ叩きつけられたように、攻撃が真下へ折れ曲がる。

衝撃はソウゴへ届かず、路面だけを深く押し潰して砕いた。

 

ソウゴは息を呑み、未来視にも映らなかった新しい気配を探した。

空中に一人の男が立っていた。

落ちているのではなく、空そのものに足場があるかのように静止している。

 

黒髪に赤いメッシュが入り、黒いフード付きパーカーが風に揺れている。

白いTシャツと紺色のゆったりしたジーパン、黄色いスニーカーが現代の街に妙に浮いていた。

だが、その男の周囲だけは重力の向きが違うように、瓦礫がゆっくり浮いている。

 

男は手を下ろした。

その動作に合わせて、エボルの足元だけが急激に沈み、路面が蜘蛛の巣状にひび割れる。

エボルは初めて、ソウゴたちではなく空中の男へ視線を向けた。

 

「私は北条武吉、仮面ライダーグラビティに変身する者だ」

 

男は穏やかに名乗り、戦場の中心へ静かに降り立った。

ソウゴはその落ち着きに、助かった安堵と同じくらい大きな違和感を覚えた。

未来から来た仲間は何人も見てきたが、この男はさらに遠い場所から来たように感じられた。

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