仮面ライダージオウ 外伝 FUTURE大戦 作:ボルメテウスさん
アナザーアマゾンアルファが吠え猛り、
破壊された車を掴んで投げつけてくる。
「避けろ!!」
ゲイツが叫び、ソウゴとジョニーが飛び退く。
車はアスファルトを削りながら回転し、火花が散った。
蓮太郎は震える膝を押さえつけ、前を見た。
胸の奥に宿った“熱”が消えない。
(俺は……守りたい……
誰かの未来を……!)
ジョニーが蓮太郎に向かって叫ぶ。
「蓮太郎さん!!
未来のあんたが俺に教えてくれた言葉を……!!」
蓮太郎は唇を震わせた。
「俺の……?」
「そうだ!
“人を守る為に、影となれ”
それが、あんたの教えだ!!」
その瞬間、
蓮太郎の脳裏に紫の残像が一気に流れ込む。
──忍。
──跳躍。
──影身。
──戦った感覚。
──守った人の涙。
「っ……あ……!」
身体が熱い。
心臓が爆発するように脈打つ。
その時、ウォズは、自分の手元にあるライドウォッチを見つめると、
《シノビミライドウォッチ》
「どうやらこの時空の歪みが関係しているようだな」
蓮太郎が息を呑む。
「君は……?」
「今はそれよりも、これを受け取りたまえ」
ウォズは蓮太郎の手にミライドウォッチを投げ渡す。
「未来が失われた今、君は本来シノビには変身できない。
ですが──
“歴史の揺らぎ”が起きた今なら一時的に復元可能です」
蓮太郎の目に迷いが宿る。
「俺に……できるのか……?」
ジョニーが即答した。
「できますよ。未来のあんたが……その証拠です」
蓮太郎は強く瞼を閉じ、震える息で言った。
「……守りたい。誰かの未来を……!」
「俺は……誰かを守る未来を、諦めない!」
ウォッチを受け取ると、紫の残光が蓮太郎の全身を包む。
奪われたはずの記憶が、一瞬だけ戻るような感覚。
蓮太郎がベルトを構え、低く呟く。
蓮太郎は足を大きく蹴り上げ、
地面に手をつき、
跳ね上がるように体を反転させながら印を結ぶ。
最後に――
メンキョカイデンプレートをを回転させる。
「変身!」『誰じゃ?俺じゃ?忍者!(ニンジャ〜!)』
回転、火花、紫の閃光。
胸、腕、脚――
紫の炎に焼かれたようなエフェクトが走り、そこに黒装束のパーツが重なるように具現化する。
最後に、頭部へと光が集まり、手裏剣型のフェイスプレートがカチリと音を立てて固定された。
火煙がはらりと晴れた時、そこに立つのは――
静謐な忍の気配を纏う仮面の戦士。
仮面ライダーシノビ。
軽く風が巻き、彼の背後に残影が揺れる。
シノビは鋭い視線で前方を見据え、一歩踏み込むと同時に紫の残像を散らしながら敵へと奔った。
『シノービ!見参!』
「忍と書いて、刃の心……仮面ライダーシノビ!!」
その一言が、シノビの誕生の瞬間だった。
「シノビ、変身が出来たんだ」
「ありがとう、ソウゴ、それにジョニーも」
「蓮太郎さん、なんで記憶が」
「分からない、けど、俺がこの姿になった時、僅かだけど記憶があったんだ。だからこそ」
それと共に、シノビは見つめる。
「今は、あいつを止める!だから頼む」
「・・・勿論だ」
「うんっ行こう!」
それと共に、3人のライダーは、真っ直ぐとアナザーアマゾンアルファへと向かって、走り出す。
瓦礫が積み重なった通りに、アナザーアマゾンアルファが咆哮しながら突進する。
「ガンナー!右から来るぞ!」
「任せて、王様!」
ガンナーは銃を抜き、滑り込むように回避しながら弾丸で牽制。
その横を紫の残光が駆け抜ける。
「忍法・影走り!」
シノビが高速の残像でアナザーを翻弄し、
死角へ回り込んで一撃を叩き込む。
「はぁぁぁ!!」
そして、その反対側から、ソウゴは、そのまま蹴り上げる事で、胸に直撃。
3人の攻撃が重なり、アナザーは大きく吹き飛ぶ。
だが、倒れない。
肉片のような赤い装甲が蠢き、すぐに形を取り戻していく。
「マジか」
「どうやら、本来のアナザーライダーの能力だけじゃなく、アマゾンの再生能力まであるようだ」
「アマゾンの再生能力?」
「あぁ、元々、人を喰らう事を細胞レベルまで染みこんでいるアマゾン細胞を持つライダーだ。おそらくは、その能力が反映された結果」
「あの再生能力に、大きさって事か」
そう、改めて、アナザーアマゾンアルファの大きさを見て呟く。
「それに、倒したとしてもアナザーライダーには、アナザーライドウォッチを破壊しないと、すぐに再生する」
「・・・俺の時と同じか」
そう、自身もかつてはアナザーライダーとして変身した事もあり、蓮太郎は呟く。
「復活するのは、倒した直前なんですか?」
「うぅん、アナザーライドウォッチがもう1度、使われた時だけど」
「・・・だったら、話は簡単ですね」
そう、ガンナーは手に持つ銃を見つめる。
「アナザーライダーが復活する前にアナザーライドウォッチを破壊する。それだけです」
「それだけって」
「・・・不可能ではないとは言えない。だが、もしもスウォルツ達がいる場合は」
「それでも、0じゃないですよね」
それに対して、2人は。
「だったら、蓮太郎!俺達は」
「あぁ、アナザーアマゾンアルファを倒す!」
それと共に、2人は走り出す。
「よし……忍者と一緒なら、こうだよね!」
『鎧武』
鳴り響く音声と共に、ソウゴはそのままライドウォッチをジクウドライバーに装填し、ウォッチを回す。
オレンジ色の光が弾け、鎧が重なるように装着されていく。
『アーマータイム! ソイヤッ、鎧武!』
六本の大橙丸Zが背中・腕・脚へと展開し、ジオウ鎧武アーマーが大地に着地した。
「行くよ、みんな!」
そう六本の刀が一斉に展開し、
斬撃がまるで花のように周囲へ咲き乱れる。
ズババババッ!!
背中のサブアームからの斬撃がアナザーを押し返し、
脚のトンファー刃が低い姿勢からすくい上げる。
「それっ!」
勢いを利用しながら、回転斬りを叩き込む。
「忍法――影分身!」
シノビが地面を蹴ると、光の残像が次々に増殖し、
アナザーアマゾンアルファを取り囲む。
アナザーアマゾンアルファが腕を振り回すたび、分身が霧のように散り、
本体は背後へ移動して強烈な蹴撃を加える。
ドガァッ!!
「ぐっ」
2人による連携により、徐々に肉が削ぎ落とされていく。
そして。
「ここから行くぞ!」
アナザーアマゾンアルファの咆哮が響き渡り、
道路の亀裂から黒い煙が吹き上がる。
シノビは一歩前に出ると、指先をすっと立て、
静かに印を結び始めた。
「……忍法、奥義」
ドライバーにメンキョカイデンプレートを押し込み、
盤面を勢いよく回転させる。
『セイバイ忍法!!』
紫電が地を走り、シノビの影が膨れ上がった。
次の瞬間――
十、二十、三十……いや、数えきれないほどの“影分身”が一斉に走り出した。
「ニンッ!!」「ニンッ!!」「ニィィン!!」
分身たちの掛け声が四方八方から重なり、
アナザーアマゾンアルファの身体に無数の斬撃と蹴撃が突き刺さる。
腕、腹、肩、腰、背中。
気づけば、アナザーアマゾンアルファの巨体は影分身の渦に呑まれていた。
パパパパパッ!!
ガガガガガッ!!
影が弾け、次の影がすぐに繋ぐ。
息つく暇すら与えない速度だ。
アナザーアマゾンアルファがいくら腕を振り回しても、掴めるのは残像だけ。
分身は斬られても霧のように消え、本体へ到達できない。
「オオオオオアァァッ!!」
アナザーアマゾンアルファが苦痛と苛立ちの叫びをあげる。
影分身たちの群れのさらに後方。
“本物のシノビ”は一歩も動いていなかった。
まるで全てを見切っているかのように。
そして――印を解き、静かに呟く。
「ここだ」
地を蹴った瞬間、空気が裂けた。
ドッ!!
影分身の攻撃の波が左右へ割れ、
その中心を本体のシノビが一直線に突き抜ける。
アナザーアマゾンアルファの上空へ跳び上がると、
逆さの姿勢から足を鋭く突き出した。
「はぁっ!!」
ゴッッシャァァン!!
踵がアナザーの頭頂部に直撃し、
巨体が地面へと叩き落とされる。
アスファルトが爆ぜ、クレーターが広がる。
動きを封じられたアナザーへ、
シノビは最後の印を結び、地に着地する。
アナザーアマゾンアルファがシノビの影分身攻撃から逃れようと、
怒号と共に地面を抉りながら跳び退いた瞬間。
ジオウは静かに腕を上げ、小さな声で告げた。
「これで終わりだ」『フィニッシュタイム!』
ジョニーが口笛を漏らす。
『スカッシュ!タイム!ブレーク!!』
鎧武ウォッチがドライバーから弾けるように光り、ジオウの体表を橙色の紋様が走る。
同時に彼の右手には巨大な刀──《大橙丸Z》が形成される。
刀身が光の果汁を纏い、
柑橘の香りが風に混じるような気さえした。
「ハッ!!」
地面を蹴る音は一度だけ。
しかしその加速は視界を置き去りにする。
ジオウは一直線に駆け、
アナザーアマゾンアルファの横を── すれ違いざまに 豪快に斬り抜けた。
ズバァァァァン!!
橙色の残光が軌跡を描き、アナザーの胸部へ“巨大な橙の切断線”が走る。
アナザーが振り返ろうとする前に、ジオウは刀を振り向けず、前方のまま静かに立ち止まる。
アナザーアマゾンアルファの身体が発光し、その周囲に“丸くて、少し歪んだオレンジのエネルギー”が広がっていく。
子供がクレヨンで描いたような、
曲がり、ブレ、よじれた円。
だがその光は強烈だ。
ボコッ……ボコボコッ……!
内部から圧迫されるように膨張し、オレンジの皮のようなエネルギー殻がバキバキと音を立てて割れていく。
歪んだオレンジ型エネルギーは一気に弾け飛び、濃密な橙光の爆発を伴ってアナザーアマゾンアルファを包み込んだ。
果汁のように弾ける光の粒が夜空へ散り、その中心にいた怪物の影は完全に消し飛んでいた。
アナザーアマゾンアルファが呻き声を上げながら膝をついた瞬間、
周囲の空気が――止まった。
風も、音も、揺れる瓦礫さえも、すべてが粘性を帯びたように緩慢になる。
ただ一人、ガンナーだけが、静止した世界を歩くようにゆっくりと銃口を上げた。
「引き金は2度いらねぇ……一発がすべてだ。」
時間が完全に沈黙した。
――そして。
『MASTERBREAKER!!』
甲高い電子音と同時に、銃口から放たれた光弾が静止した世界を切り裂く。
光の軌跡はひと筋の線となり、寸分の狂いもなくアナザーライドウォッチへ直撃。
――瞬間、
時計仕掛けの世界が破裂したように時間が再始動し、
アナザーアマゾンアルファは断末魔の咆哮を上げながら崩れ落ちた。
砕け散るアナザーライドウォッチの破片が、
まるで花びらのように舞う。
「だから言ったろ。一発で決めるって。」
激闘の余韻が薄れ、焦げたアスファルトの匂いだけが残る。
夜の街に、ようやく風が戻ってきた。
蓮太郎は静かに胸元へ手を当て、
そこから紫の光を帯びたシノビミライドウォッチを取り出した。
表面には、さっきまで確かに宿っていた“シノビ”の気配がある。
しかし、その輝きは徐々に弱まり、まるで眠りにつくように静かになっていく。
その変化を見届けてから、蓮太郎はそっとウォッチを閉じた。
「良いの?」
ソウゴは確認すると、彼もまた頷く。
「今の俺が、この力を使う時じゃありません。
“未来の忍者”なんて言われても……今の俺には、まだ背負える器じゃない」
ガンナー――ジョニーが帽子を指先で押し上げ、
少し意外そうに目を細める。
「だが、お前さんの力じゃなきゃ倒せなかった敵だぜ?
それでも、手放すのかい」
蓮太郎は二人に歩み寄り、両手でシノビミライドウォッチを差し出した。
「だからこそです。
俺は“借りた力”で勝っただけ。
でも、二人は……自分の力で未来を切り開ける人たちだ。」
少しの沈黙。
蓮太郎の言葉は真っ直ぐ過ぎて、逆に胸に刺さる。
「この力は、今の俺には大きすぎる。
だから……今は、君達が持っていてください。
必要な時が来たら――その時こそ、俺がシノビとして戦う」
ソウゴはゆっくりと手を伸ばし、
蓮太郎の思いごとミライドウォッチを受け取った。
「わかった。
蓮太郎の未来……俺達がちゃんと繋いでおくよ」
ジョニーも肩をすくめながら笑う。
「その時は、その時さ。
お前さんが“本物の忍び”になる日を、楽しみにしてるぜ」
蓮太郎は深く一礼し、
静かに言った。
「ありがとうございます。
――必ず、取り戻してみせます。
俺自身の“未来”を」
その誓いは、夜風に揺れる街の中で確かな響きを残した。