仮面ライダージオウ 外伝 FUTURE大戦 作:ボルメテウスさん
着地の衝撃が収まる前に、空気が裂けた。
――ガァンッ!!
離れたビルの外壁が、爆発でも火花でもなく、まるで巨大な工具で削り取られたように崩れ落ちる。断面は妙に滑らかで、砕け散ったはずのコンクリートが“切られた”痕を残していた。
瓦礫が降る。粉塵が舞う。
その中心には、まだ“姿”がない。
ジェットは反射で跳び、低い噴射で宙を滑った。視界の端、粉塵の向こうで――何かが蠢く。だが輪郭が定まらない。見えないというより、見せるつもりがないような、奇妙な存在感だけがある。
次の瞬間、地面が盛り上がった。
ドン――ッ!!
アスファルトが裂け、破片が円を描いて跳ね上がる。叩き潰した痕ではない。押し割ったというより、内側から“抉り抜いた”形だ。ジェットの機体に破片が当たり、火花が散る。
「……何だ、これ」
思わず漏れた声は短い。
ゲイツは一歩前に出た。躊躇なく、破壊の中心へ。ジカンザックスの刃先が粉塵を切り裂き、次の攻撃に備える。
そのとき――
ギィン、と金属が擦れるような音が鳴り、粉塵の奥に“腕”が現れた。
腕に似た何か。筋肉の隆起があるのに、皮膚ではなく硬質な外殻。そこから、節のように折れ曲がる刃がせり出している。
ゲイツが斬り込む。
刃が触れる寸前、相手の腕が“折れた”。
いや、形が変わった。腕の側面が開き、薄い板状の器官が展開して盾になる。斬撃は滑り、火花だけが跳ぶ。
ジェットが上から射線を通す。牽制の一撃。
撃たれるより速く、今度は肩口の辺りが盛り上がり、槍のような棘が斜め上に伸びた。射線そのものを弾くのではない。撃つ瞬間に“迎撃する形”へ変わっていた。弾丸が逸れ、路面に突き刺さる。
見て理解できた。
攻撃に反応して防ぐのではない。攻撃の兆しに合わせて、身体が勝手に武装へと組み替わる。
ゲイツが距離を詰めると、刃は刃のままではなく、叩き潰す槌のような形へ変わり、地面を砕いて衝撃波を生んだ。ジェットが回り込もうとすると、背面側から細い刃が跳ね上がり、死角を潰すように空を薙ぐ。
どこが正面で、どこが背中か。
そもそも“武器”と“身体”の境目がない。
粉塵の裂け目に、一瞬だけ刻印が覗いた。
歪んだ肉体に刻まれた二文字。
《 Z O 》
ゲイツの視線が細くなる。言葉は少ない。
「……アナザーZOだ」
ジェットは喉の奥で息を飲み込んだ。
怪物を相手にしている感覚とは違う。これは――“ライダー”の何かを、無理やり歪めたものだ。
そして、次の破壊音が、また遠くで鳴った。
了解しました。
では フェーズ2 を、流れは維持したまま、
説明的な台詞を排し、比喩的・感情的な短い台詞のみ追加して調整します。
粉塵の向こうで、影がうねった。
アナザーZOは走らない。跳ばない。
筋肉が収縮し、骨格が組み替わるだけで距離が消える。
ジェットが上空から急降下する。
刃を振るう、その刹那。
――ギィンッ!
肩口が盛り上がり、円弧状の刃が弾けるように展開した。
攻撃を待っていたのではない。
攻撃が来る未来に、先に形を与えたかのようだった。
「……冗談だろ」
ジェットが空中で体勢を崩す。
刃は空を裂き、背後の看板を真っ二つに切断した。
地面に降りた瞬間、今度は下から。
アスファルトを突き破り、槍状に変形した腕が伸びる。
ジェットブレードで弾くと、その槍は節ごとに分かれ、
衝撃を逃がすように散った。
「奴の身体は……全部、武器なのか!?」
答えるように、アナザーZOの胴体が歪む。
ゲイツが踏み込んだ。
一直線の斬撃。
だが刃が届く直前、胸部が開き、骨の盾が重なり合う。
斬撃は吸い込まれ、止まった。
次の瞬間――
盾が裏返り、叩きつける形へ変形。
衝撃波。
ゲイツの身体が吹き飛び、瓦礫の中を転がる。
「……ちっ」
立ち上がるより早く、ジェットが援護に入る。
高速旋回。連撃。
それに合わせて、アナザーZOの身体が踊るように変わる。
刃には盾。
射線には棘。
接近には衝撃。
「殴っても、斬っても……
形を変えて、返してくるだけかよ!」
一瞬、攻撃が通った。
外殻が削れ、破片が飛ぶ。
だが血は出ない。
代わりに内部から新しい筋繊維が盛り上がり、
欠けた部分を押し出すように置き換わる。
「……壊してるはずなのに……
減ってる感じが、しない」
ゲイツが割り込む。
その瞬間、アナザーZOの腕が鞭のように細く伸び、
二人の間を正確に裂いた。
偶然じゃない。
逃げ道を、潰しに来ている。
瓦礫の向こうで、市民の悲鳴。
「くそ……!」
守ろうと前に出れば、迎撃される。
距離を取れば、破壊が広がる。
街の中心で、アナザーZOは暴れているのではなかった。
ただ――止まれずに、戦い続けている。
そして、その動きが、
わずかにだが――荒く、歪み始めていた。
金属が軋む音が、街全体に広がっていく。
それは建物の悲鳴であり、同時に――戦いが限界に近づいている合図だった。
ジェットのエンジンが唸る。
これまでより強く、長く噴射するが、空気が重い。
軌道を読まれている感覚が、はっきりとある。
「……速さが、通じなくなってきてる」
吐き捨てるような声。
アナザーZOの動きは荒れていた。
だが遅くはない。
無秩序に見えて、その全てが“迎撃のための配置”だ。
ジェットが斬り込む。
同時に、アナザーZOの背中が盛り上がり、
翼のような刃が放射状に展開する。
空間そのものを塞ぐ配置。
「――ッ!」
回避が間に合わない。
ジェットの機体が弾かれ、壁に叩きつけられる。
火花が散り、エンジン音が一瞬、途切れた。
「ジェット!」
ゲイツが前に出る。
迷いはない。
アナザーZOが向きを変える。
狙いは――ジェットではない。
逃げ遅れた市民。
瓦礫の影で、動けずにいる人影。
アナザーZOの腕が伸びる。
拳だったものが、杭のような形へと変わる。
「させるか!」
ゲイツが割り込む。
身体ごと、攻撃線に立つ。
次の瞬間、
アナザーZOの腕が“折れた”。
一本ではない。
複数の関節が同時に曲がり、殺到する刃へと変わる。
迎撃ではない。
完全な――殲滅用の形。
「……っ!」
ゲイツの装甲に、刃が食い込む。
一撃、二撃。
防御が削られ、足元が沈む。
「……ちっ……」
踏みとどまるが、限界は近い。
視界の端で、ジェットが起き上がろうとするが――間に合わない。
アナザーZOの腕が、最後の形へ変わる。
一点に収束した、貫通用の刃。
「……来る、か」
ゲイツは退かない。
剣を構えるでもなく、ただ前に立つ。
その瞬間――
乾いた音が、戦場を切り裂いた。
パンッ――!
銃声は一発だけ。
鋭く、無駄がない。
アナザーZOの刃の“根元”が弾けた。
武装が途中で止まり、形を保てず崩れ落ちる。
「――ッ!?」
初めて、アナザーZOの動きが乱れた。
その間に、ゲイツの身体が引き戻される。
誰かに、腕を掴まれた。
「無茶しやがって」
低い声。
「……下がれ。
お前たちと同じだ。俺も、仮面ライダーだ」
煙の向こうで、男が銃を構えて立っていた。
白衣ではない。
だが、その立ち姿には――場を診る者の眼があった。
次の瞬間、彼は迷いなくベルトに手をかける。
銃を構えた男は、撃ち尽くしたことを確認するように、そのまま、地面に落とす。
その動作に、迷いは一切ない。
「……変身」
低く告げると、彼は紫色のカートリッジ――バンバンシューティングガシャットを取り出す。
『バンバンシューティング!』
軽快で不釣り合いな電子音が、破壊された街に響いた。
男はそのまま、腰に装着された見慣れないベルトへガシャットを装填する。
『ガシャット!』
ベルト中央に展開した発光ライン。
ゲーム機のコントローラーを思わせる意匠――
その瞬間、ゲイツの視線が鋭くなる。
(……あのベルト……)
次の動作で確信に変わった。
男がレバーを引き下げる。
『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!
ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!
バンバンシューティング!』
光が弾け、男の足元からデータのようなエフェクトが立ち上がる。
「……エグゼイドと同じ系統か」
ゲイツが、確信を持って呟いた。
かつて出会った、ゲームの力を使う医者のライダー。
その戦い方、その変身機構――間違いない。
「第二戦術」『レベルアップ!』
音声と同時に、男の身体を覆う光が二段階に分かれて展開する。
下半身に装甲が形成され、続いて上半身が落下するように合体。
『バンバンシューティング!
ガンガンシューティング!
スナイプ!』
銃を模したアーマー。
鋭い眼光を宿すバイザー。
戦闘用に特化した、無駄のないフォルム。
仮面ライダースナイプは、着地と同時にアナザーZOへと銃口を向けた。
「……今度は、外さねぇ」
その立ち姿を見て、ジェットは思わず息を呑む。
速さでも、力でもない。
状況を“診断”した上で戦場に立つ存在。
ゲイツは一歩下がりながら、短く言った。
「……お前は一体」
スナイプは振り返らない。
「良いから、さっさと片付けるぞ」
それと共に地面に落ちた銃を脚で蹴りあげ手元に戻し、構えた。