仮面ライダージオウ 外伝 FUTURE大戦   作:ボルメテウスさん

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2050:戦術完了

昼の街に残るのは、破壊の余韻だけだった。

粉塵は沈みかけているのに、空気だけが異様に重い。音が消えた後の沈黙が、かえって不気味さを強調していた。

 

瓦礫の山が、内側から軋んだ。

 

鉄骨がねじ切られる鈍い音。

次の瞬間、影が“立ち上がる”というより、地面そのものが盛り上がったように見えた。

 

「来るぞ」

 

ゲイツの声は短く、低い。

言い終わるより早く、衝撃が走った。

 

地面が弾け、衝撃波が三人を襲う。アスファルトが波打ち、ジェットは即座に浮上、スナイプは半歩だけ位置をずらして銃を構えた。

 

影が跳ぶ。

速い。いや、“正確”だ。

 

ゲイツが前に出た瞬間、影の一部が展開した。腕とも刃ともつかない器官が、迎撃の角度で形成される。力任せではない。攻撃が来る位置を“理解した”動きだった。

 

「……っ!」

 

受け止めきれない。

衝突と同時に、ゲイツの身体が弾かれ、壁に叩きつけられる。だが、影は追撃しない。すでに次の迎撃形態へと移行していた。

 

上空でジェットが加速する。

音を置き去りにする速度で背後を取ろうとした、その瞬間――影が歪んだ。

 

迎撃器官が、速度に反応して再配置される。

まるで、来ると分かっていたかのように。

 

「全部……見てやがるのか」

 

ジェットが歯噛みする。

速さも、角度も、通らない。

 

その間、スナイプは撃たない。

銃口は動いている。だが引き金は引かれない。影の変形、迎撃に入るまでのわずかな“溜め”。その一瞬だけを、冷静に追っていた。

 

乾いた銃声が一発だけ響く。

 

狙ったのは中心ではない。

変形途中の関節部。弾丸は弾かれ、外殻にひびを走らせるだけだ。

 

それでも――影の動きが、ほんの一瞬だけ鈍った。

 

「今だ」

 

短い合図。

ゲイツが踏み込み、ジェットが上空から角度を変えて進路を削る。三人の動きが、初めて噛み合った。

 

だが、倒れない。

 

アナザーZOは傷を“理解した”かのように形を変え、さらに強固な迎撃態勢へ移行する。

力も、防御も、対応力も――確実にこちらを上回っている。

 

瓦礫の陰から、ゲイツは静かに立ち上がった。

装甲に走る傷を一瞥し、呼吸を整える。その視線は、なおも形を変え続けるアナザーZOから一度も逸れていない。

 

「……ここから先は、力の出し惜しみはしない」

 

腰のジクウドライバーに、彼は一つのライドウォッチを取り出す。

深い藍色を基調としたその外殻には、剣を象った意匠と《BLADE》の文字。

 

『ブレイド!』

 

短く、切り落とすような起動音。

ゲイツは迷いなくウォッチをドライバーへ装填する。

 

『ライダータイム!仮面ライダーゲイツ!アーマータイム!ブレイド!』

 

時空を切り裂くような回転音と共に、複数の装甲ユニットが空間に出現した。

カードのように展開された光のパネルが、円を描いてゲイツの周囲を巡る。

 

『ターンアップ!』

 

鋭い音声と同時に、最初の装甲が胸部へと叩きつけられる。

深緑と銀を基調としたアーマーが、ゲイツの上半身を覆い、次いで肩、腕、脚部へと順に固定されていく。装着の衝撃は重く、だが無駄がない。

 

右腕には、剣を模したアーマーユニットが形成された。

刀身は実体とエネルギーの中間のように揺らぎ、刃の縁には淡い光が脈打っている。切るための刃というより、“境界を断つ”ための形だ。

 

頭部にも装甲が被さり、ゲイツの複眼は鋭角的なラインを帯びる。

全体のシルエットは重厚だが、過剰な装飾はない。前に出て受け止めるための、防御と制御に特化した姿。

 

仮面ライダーゲイツ ブレイドアーマー。

剣を手にした騎士のようでありながら、その佇まいは攻撃的ではない。

 

ゲイツは一歩、前へ出た。

 

ブレイドアーマーを纏ったゲイツは、一歩前に出た。

構えは低く、剣先は相手を威圧するようには向けない。ただ、確実に間合いへ踏み込むための位置取りだった。

 

アナザーZOが反応する。

外殻がうねり、迎撃器官が展開――だが、先ほどまでの“即応”とはわずかに違う。

 

ゲイツは踏み込んだ。

 

正面から斬りかからない。

振り下ろしでも、突きでもない。

相手の迎撃が完成する“直前”に、横から刃を滑らせる。

 

火花が散る。

切断音ではなく、何かが噛み合わなくなる鈍い衝撃。

 

アナザーZOの一部が、意図しない形で固定された。

迎撃用に展開しかけた器官が、途中で止まり、次の動作へ繋がらない。

 

「……っ!」

 

咆哮と共に、別の部位が強引に形を変える。

力任せの変形。地面が割れ、瓦礫が跳ねる。

 

だがゲイツは下がらない。

次の一撃も、深くは踏み込まない。

刃は当てるが、切り裂かない。

 

封じる。

選択肢を削る。

 

その間に、上空をジェットが駆ける。

だがまだ近づかない。迎撃が完全に死んでいないことを理解している。

 

アナザーZOが強引に身体を引き剥がすように動いた瞬間、

ゲイツは後退しながら、ジカンザックスを引き抜いた。

 

武器が変形する。

重い金属音と共に、弓の形へ。

 

その手に、もう一つのライドウォッチが握られていた。

黒を基調とした外殻。歪んだ刃の意匠。

 

カリスライドウォッチ。

 

アナザーブレイドの消滅と共に残された、“異端の刃”の結晶。

ゲイツは一瞬だけそれを見つめ、迷いなくジカンザックスへ装填する。

 

『フィニッシュタイム!』

 

弓に、異質なエネルギーが収束する。

鋭さはあるが、破壊的ではない。

貫くためではなく、縫い止めるための力。

 

アナザーZOが迎撃態勢に入ろうとする。

だが、先ほど封じた部位が完全に噛み合わない。

 

ゲイツは狙いを定め、引き絞った。

 

「……今だ」

 

放たれた矢は、一直線ではなかった。

空間を“滑る”ように進み、アナザーZOの中心ではなく、

複数の変形起点を結ぶ位置へ突き刺さる。

 

衝撃は小さい。

爆発もない。

 

だが――

 

アナザーZOの身体が、その場で固まった。

迎撃しようとして伸びた器官が、途中で縫い留められ、

無理に動かそうとするたび、全身が軋む。

 

拘束ではない。

それでも、自由ではない。

 

ゲイツは弓を下ろした。

 

その瞬間、空が割れるような音と共に、

ジェットが一気に高度を落とし、戦場へ突入する。

 

同時に、スナイプの銃口が、確実に“止まった標的”を捉えた。

 

戦場の流れが、完全に変わった。

 

縫い止められたアナザーZOが、その場で暴れる。動けないわけじゃない――ただ、動こうとするたびに全身の器官が噛み合わず、軋みだけが街に残響した。

 

スナイプは一歩、射線の中心へ出る。腰のゲーマドライバーには既に“シューティング”の系統が生きている。その状態のまま、もう一つのガシャットを取り出した。――空中戦に最適化された、あの増設パッケージ。公式設定でも、ゲーマドライバーとバンバンシューティングガシャット、ジェットコンバットガシャットを併用してレベルアップする形態だ。

仮面ライダー公式サイト

+1

 

『ジェットコンバット!ガシャット!』

 

スナイプはガシャットを握り込み、低く吐き捨てる。

 

「第参戦術……!」

 

次の瞬間、装填操作に呼応してドライバーが跳ねるように鳴った。

 

『ガッチャーン! レベルアップ!ババンバン!バンババン!バンバンシューティング!アガッチャ!ジェット!ジェット!イン・ザ・スカイ!ジェット!ジェット!ジェットコンバーット!』

 

データの波が足元から噴き上がり、スナイプの装甲が一度“ほどける”ように分解される。粒子になった武装が、今度は空戦仕様の輪郭を描いて再結合していった。

 

胸部には機器のような重装ユニットがせり出し、中心部が脈動する。攻撃力を底上げするための増幅装置が、まるで“コックピット”のように鎖骨から胸元を覆い固める。

 

背中では、翼を模した飛行ユニットが左右へ展開――赤橙のウィングが開き、空気を掴む角度で微調整しながら固定された。空を自在に跳び回るための「エアフォースウィンガー」だ。

そして両腕。前腕から先が“銃”ではなく“砲”へ置き換わる。分厚いバレルが回転軸を見せながら組み上がり、ガトリング砲ユニットが左右に揃って完成する。

 

最後に頭部。オレンジのバイザーが滑り降り、呼吸器のようなマスクが口元を覆って密閉される。視界の反射が一段鋭くなり、戦場が“照準の世界”に切り替わった。

 

仮面ライダースナイプ――コンバットシューティングゲーマー レベル3。

 

スナイプは翼をわずかに震わせ、射角を整える。

縫い止められ、なお暴れるアナザーZOへ、左右のガトリングを同時に向けた。

 

縫い止められたアナザーZOは、怒りとも痛みともつかない振動を撒き散らしながら、その場で“壊れた玩具”のように暴れていた。動けないわけじゃない。動こうとするほど、全身の器官が噛み合わず、軋みと火花だけが増えていく。

 

腹部――そこだけが妙に“重い”。

肉の奥に埋まった異物が、鼓動のたびに光を脈打たせていた。刻まれた《ZO》の文字。アナザーライドウォッチ。

 

ジェットは上空で旋回しながら、わずかに高度を上げた。

“速さ”は逃げにも使えるが、彼にとってはいつも攻撃のための距離だ。落としどころを決めるための助走。

 

地上では、スナイプが翼ユニットを微振動させ、射線の角度を調整している。両腕のガトリングが低く唸り、銃口が一点へ寄っていく。狙いは本体じゃない。異物だけ。

 

「……腹か。嫌なところに埋めたな」

 

スナイプの声は乾いていた。

医者の愚痴に似ている。最悪を最悪として受け取りながら、作業の手を止めない声。

 

ジェットが上から覗き込み、短く返す。

 

「腹部なら、装甲の継ぎ目は多い。剥がす余地はある」

 

「剥がす、ね。派手に裂くのはやめろよ。宿主まで割いたら、治療じゃなく解体だ」

 

「分かってる。俺は“開く”だけだ。撃つのは任せる」

 

スナイプが、鼻で笑った。

 

「最初から、そのつもりだ」

 

アナザーZOが吼え、武器化した腕を無理やり伸ばす。だが、縫い目が抵抗し、途中で引き攣れた。動かそうとしても、動けば動くほど、自分の身体が壊れていく。

 

ジェットはその動きを見て、加速の角度を変えた。

 

「……縛りが効いてる。迎撃の“準備”が遅れてる」

 

スナイプは即座に同意しない。

代わりに、銃口をほんの数センチずらし、アナザーZOの変形途中の関節へ牽制の数発を流し込んだ。

 

『ガガガッ!』

 

狙いは破壊じゃない。動かすな、という命令。

弾の跡が火花になって散り、迎撃器官が展開しきれずに跳ね返る。

 

「……よし。今の動き、もう一回やらせるな」

 

「了解。俺が姿勢を潰す」

 

ジェットが背中のエンジンを“吸い込み”へ切り替えた。

空気が引かれる。粉塵が収束し、アナザーZOの外殻が不自然に引き攣れた。縫い目に引き寄せられるように、巨体の姿勢が崩れる。

 

スナイプがその一瞬を見逃さない。

 

「腹部の光、見えた。位置は……中心より右寄り。そこだ」

 

ジェットの返事は短い。

 

「マーキング頼む」

 

「言われなくてもやる」

 

スナイプはガトリングの回転数を一段落とした。弾幕をやめ、線を作る。腹部の露出予測地点――そこへ“点線”のように弾痕を刻み、ジェットに角度を提示する。

 

「その弾痕の延長線上! そこを剥がせ!」

 

ジェットが頷き、上空で助走距離を取る。

この距離なら、落ちる速度が武器になる。迎撃が成立しない速度帯へ一気に入れる。

 

「行くぞ……!」

 

ジェットが突入する。

ただ落ちるのではない。噴射。次の瞬間、吸い込みが反転し、爆炎が尾を引いた。空を裂く線が一本、垂直に走る。

 

アナザーZOが迎撃しようと武器を展開する――が、遅い。

縫い止めと制圧で、準備が間に合わない。

 

「遅ぇ!」

 

ジェットブレードが触れたのは、腹部の外殻の“継ぎ目”だった。

深く裂かない。えぐらない。剥がす。

外装がめくれ上がり、異物――アナザーライドウォッチの輪郭だけが露出する。

 

スナイプが、待っていたように吐き捨てる。

 

「露出確認。――摘出開始」

 

『クリティカルフィニッシュ!』

 

音声と同時に、ガトリングが収束する。弾幕ではない。面ではなく線。撃つのは一箇所だけ。逃げ場のない一点。

 

ジェットはすれ違いざま、もう一度だけ刃を“押す”。

外殻がウォッチを庇う角度を失う。守りの形が作れない。

 

「今、固定した! 撃て!」

 

「言われなくても撃つ!」

 

『ガガガガガガガッ!』

 

金属が悲鳴を上げた。

腹部のウォッチが震え、ひびが走り、抵抗するように光を膨らませる。だが、膨らんだ光は逃げ場を失って内部で暴れ、ひび割れが加速する。

 

ジェットが着地するより早く、スナイプはさらに狙いを絞った。

最後の数発は、“刻印の中心”だけを撃ち抜く。

 

「――終わりだ」

 

乾いた破砕音。

ガラスと金属が同時に割れたような、嫌に現実的な音だった。

 

光が消える。

アナザーZOの全身が、糸を切られたように崩れ落ちた。武器だった器官が霧散し、外殻が崩れて、ただの“人の形”だけが残る。宿主は力なく倒れ込むが、呼吸はある。生きている。

 

ジェットが一歩寄り、警戒を解かずに言う。

 

「……助かったのか」

 

スナイプは膝をつき、指先で頸動脈を確かめた。呼吸、脈、反射。手順は淡々としていて、戦闘の余韻を切り落とす。

 

「“死なせてない”。それが医者の勝ち方だ」

 

ジェットが、少しだけ息を吐く。

 

「なら、俺たちの勝ちだな」

 

スナイプは顔を上げずに返す。

 

撃破の余韻が残る街に、ようやく“静けさ”が戻りかけた。

しかしそれは勝利の静けさではない。粉塵が沈み、瓦礫がきしみ、遠くで誰かが泣いている――そういう現実の音が戻ってきただけだ。

 

アナザーZOの外殻が霧散した場所に、ひとりの男が倒れていた。

呼吸はある。だが浅い。胸が痙攣するように上下し、指先が勝手に跳ねる。皮膚の下に黒い影が残滓のように走り、心臓の鼓動と噛み合わない。

 

スナイプは駆け寄ると、膝をついて頸動脈に指を当てた。

脈は速い。弱い。冷汗が滲んでいる。

 

「……これ、ショックに入る手前だな」

 

ジェットが一歩寄り、顔をしかめる。

 

「助かったんじゃないのか」

 

「“死んでない”だけだ。放っとけば、次は死ぬ」

 

スナイプは呼吸を確かめ、瞳孔の反応を見て、すぐに顎先を持ち上げる。気道を確保する動きが、戦いの所作よりよほど迷いがない。

 

ゲイツは周囲を警戒しながら、遠くに目を向けた。

まだ終わっていない。破壊音が消えたわけではない。むしろ、街の別方向から同じ質の異変が続いている。

 

「……次が動いてる」

 

その言葉にジェットの肩がわずかに強張る。

助けた命を置いて走る。それは自分の性分に反する。だが、次を放置すれば被害は増える。

 

スナイプは立ち上がり、倒れた男の胸元を一度だけ押さえた。

 

「ここじゃ治せない。搬送する」

 

「搬送?」とジェット。

 

「普通の救急に渡すのは無理だ。説明してる間に状態が悪化する。…それに」

 

スナイプは男の腕を軽く持ち上げる。力は入らないのに、指先が不自然に跳ねる。まるで神経だけが戦闘の続きをしているみたいに。

 

「再暴走の可能性もある。一般人の前で起こったら、取り返しがつかねぇ」

 

ゲイツが即座に理解する。

“時間”や“異常”に関わる案件は、普通の社会システムで処理できない。隠すためではない。守るために、現実から切り離す必要がある。

 

「お前が連れていくのか」

 

「当然だろ。俺は医者だ。後始末までが仕事だ」

 

スナイプは現場の外れへ視線を投げた。そこには、独自調査で動く人間らしく、目立たない場所に停めた車両がある。手配が早い。こういう準備が、彼の“現場主義”を物語っていた。

 

ジェットが一歩踏み出す。

 

「なら、俺も――」

 

スナイプが遮る。声は低いが、言葉は鋭い。

 

「お前が来たら、次が止まらない。分かるだろ」

 

「……っ」

 

「助けた命を無駄にしたくないなら、迷うな。やることをやれ」

 

ゲイツが言う。

 

「俺たちは次へ行く。お前は治療に集中しろ」

 

スナイプは短く頷き、倒れた男を抱え上げた。

担ぐのではない。揺らさないように、呼吸を潰さないように。腕の角度、首の位置――すべてが“運び方”になっている。

 

車の後部を開け、シートを倒す。

ジャケットを丸めて首元に当て、簡易の固定具にする。身体を横向きに寝かせ、吐物があっても詰まらない体勢を作る。

 

ジェットはその手際を見て、口を噤んだ。

戦い方が上手い人間はいる。だが、この手際はそれとは別の“経験”だ。

 

スナイプはドアを閉める前に、ゲイツとジェットへ目を向けた。

 

「いいか。次のアナザーが出てくるなら、また同じことが起きる」

 

ゲイツが無言で頷く。

 

ジェットが言う。

 

「……戻ってくるのか」

 

「必要ならな。だが、今はこいつが先だ」

 

スナイプは一瞬だけ、倒れた男へ視線を落とす。

戦場の敵だったもの。けれど、今はただの患者だ。

 

「死なせない。だから連れてく」

 

ジェットが、短く息を吐いた。

 

「分かった。……頼んだ」

 

スナイプは運転席に乗り込み、キーを回す。

エンジンの低い唸りが、戦場の空気を現実へ引き戻した。

 

発進する直前、窓越しに一言だけ投げる。

 

「追うなら、迷うな。ここで止まったら、次は救えねぇぞ」

 

車は走り去り、粉塵の残る通りの向こうへ消えていく。

 

残されたゲイツとジェットは、同時に破壊音のする方向へ視線を向けた。

遠くでまた、建物が潰れる鈍い音がする。空気が揺れる。

 

ゲイツが言う。

 

「行くぞ」

 

ジェットは頷き、空を見上げた。

この時代の空は低い。何かが、ずっと上から押さえつけているような気配がある。

 

「……空の匂いが悪いな」

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