「孔明様、せっかくの休日です。たまには市中で楽しみにいかれてはどうですか?」
「おはようございます。月英。ではもしよければあなたもご一緒しませんか?祝言前はあなたからのテストで疲れましたから、穏やかな一日を共にできればと思います。」
「そんな、もったいない。ですが、フフフ、そうですね。醜女の変装をした私を選ばれたときは驚きました。」
「ええ。祝言の時に大陸一の美女が同じ声で挨拶してきたのはあなたに勝てなかった唯一の誤算でした。ところで今日のチャーハンはコリコリとた、それでも不快ではなく新しい風を感じます。」
「お気づきですか?孔明様。ネギ、チャーシュー、鶏がら、卵など精のつくものは豊富ですが足りないもの、それは骨を強くするものにございます。そこで、先日の魚の骨をとにかく煮込んで柔らかくしたものを入れました。」
「なるほど。健康と味は相反するもの。それを見事にうまみに変えてしまう。あなたは才媛です。では、いきましょうか。その前に厠に言っておきましょう。布石です。」
月英が支度し、孔明が姿を現す。
「素敵なお召し物です。おや?いつもの羽扇は?」
「悟られましたか。たまには両手を暇にして歩こうと。では、ついでに厠に行ってきましょう。この流れは計算済みです。」
月英が支度を終え、次に化粧にかかった。しばらくして孔明が姿を現した。
「おや?孔明様、五苓散を召しましたか?もしや・・・」
「いいえ、これは入念な支度。あなたと共に過ごすというのにあなたを待たせる時間は作りたくないのです。」
そして孔明は足早に部屋を後にした。
月英は化粧を終え、出かけるのに必要なものを準備した。孔明がほどなく現れた。
「孔明様??柴苓湯の香りですね。やはりどこか・・・」
「月英、あなたは才媛です。ゆえにこそでしょうか。私の真意を測りかねているようですね。孔子はいいました。備わらんことを一人(いちにん)に求むる無かれ。
と。ですが、一人で成そうとする。つまり万全の備えを怠らないことです。」
再び孔明はいそいそと戻っていった。
全ての準備が整い、早速出かけることになった。
穏やかに歩いていると、馬が横を通り水たまりを蹴り、水しぶきが孔明の服に思いきりかかった。
「大丈夫ですか孔明様?ああ、お召し物が。」
「これは読みというものです。御覧なさい。このとおり腹部には一滴もかかっていません。」
そして歩いていくと肉まんの店があった。
「月英、肉まんを一ついかがですか?」
「孔明様ったら、こんな真夏に肉まんなんて、フフフ。稀代の軍師様、しっかりなされませ。フフフ」
「これは一本取られました。喉が渇きませんか?」
「おや?そうですか。では、氷を粉状にして黒蜜をかけたものなど・・・」
「い、いえ大切なあなたは女人、女人は体を冷やすことは毒ですからまたにしましょう。」
話に夢中で歩いていると、子供が孔明にぶつかってきた。
「ごめんなさい、おじさん」
「孔明様!お怪我はありませんか!?」
「もちろんです。子供は元気でなければなりません。おじさん・・・おじさん・・・おじさん・・・まぁいいでしょう。ご覧ください。この通りぶつかられてもしっかり腹部は守られています。」
「孔明様。このロペラミドをお使いください。徳は孤ならず。ですよ。」